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補助散水栓は屋内消火栓の代わりになるのか|起動装置の取り外しから水源の共用まで質疑応答5問を解説

補助散水栓と屋内消火栓の関係を質疑応答で解説する記事のアイキャッチ画像。廊下の壁に取り付けた赤い消火栓箱と天井のスプリンクラーヘッド

スプリンクラー設備のある建物では、ヘッドを設けない部分を補うために、補助散水栓を設けることができます。
ところが、補助散水栓を使うと警報が遅れる、共用型の起動装置は外してよいのか、ヘッドの無い階に置けば屋内消火栓は要らないのか、といった疑問が出ます。
消防庁は平成の通知などで、これらに答えを示しました。
認められる範囲と認められない範囲の分かれ目を、5つの質疑で確かめます。

補助散水栓って、屋内消火栓とどう違うんですか?

スプリンクラー設備に設ける、ヘッドの未警戒部分を補う設備です。
5つの質疑で順に見ていきます。

警報や起動装置の扱いにも、決まりがあるのでしょうか。

警報も起動装置も、質疑で答えが示されています。
認められるものと認められないものを比べます。

この記事の結論
  • 補助散水栓を使うと音響警報の作動が遅れる場合があっても、人が操作し人が対応しているため、問題がないと考えられるとされました
  • 2号消火栓と補助散水栓の共用型は、起動装置を取り外して使用しても差し支えないが、操作性等に悪影響がないことの確認が必要とされました
  • スプリンクラー設備の設置義務が無い部分に補助散水栓だけを置いても、屋内消火栓設備の設置を免除することはできないとされました
  • 規則第13条第3項でヘッドを設けない部分は、補助散水栓を設置することで、屋内消火栓設備を設置しなくてもよいとされました
  • 西棟と東棟のスプリンクラー設備の水源と加圧送水装置は、令第32条を適用し、3つの条件を満たせば共用してさしつかえないとされました

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補助散水栓とスプリンクラー設備をめぐる質疑応答5問として、警報の遅れ、起動装置の取り外し、屋内消火栓の免除、ヘッドを設けない部分の代替、水源とポンプの共用を並べた図解

補助散水栓を使うと音響警報が遅れるのは是正させるべきか

事務所の廊下の壁に赤い補助散水栓の箱が付き、その隣の柱に赤い警報ベルが付いたイメージ
スプリンクラー設備のヘッドが開くと、流水検知装置が働いて音響警報が鳴ります。
補助散水栓を使ったときは、この音響警報の作動が遅れる場合があるため、是正させるべきかが問われました。
問1(要旨) 補助散水栓を使用した場合、加圧送水装置の起動は自動的に行われるが、音響警報装置の作動は遅れる場合がある。是正させるべきか。
答 スプリンクラー設備のスプリンクラーヘッドが作動した場合の音響警報は、スプリンクラーヘッドが自動的に作動することから、その旨を関係者に知らせることを目的としている。補助散水栓を使用した場合に、音響警報装置の作動が遅れるのは、補助散水栓の放水量は60リットル毎分以上とされており、流水検知装置の作動水量に満たないためによると考えられる。しかし、補助散水栓は、人が操作するものであり、放水しているときは、人が対応していることから、音響警報装置の作動が遅れても問題がないと考えられる。
警報が遅れても、補助散水栓は人が操作するから問題がないという答えでした。
規則第14条第1項第4号は自動警報装置の基準で、発信部には流水検知装置または圧力検知装置を用いると定めています。補助散水栓のノズルの放水量は、規則第13条の6第4項第2号が、放水圧力0.25メガパスカル以上、放水量60リットル毎分以上と定めています。
回答は、この放水量が流水検知装置の作動水量に満たないために警報が遅れるという整理をしたうえで、放水しているときは人が対応しているので問題がないとしました。
なお、現行の規則第14条第1項第4号イは、警報を「スプリンクラーヘッドの開放又は補助散水栓の開閉弁の開放により」発するものと定めています。実際の設備で警報がどう発する設計になっているかは、設置時の設計図書と消防機関の指導で確かめてください。

警報が遅れても、人が操作しているから問題ないんですね。

この回答ではそう整理されました。
設計上の警報の出し方は消防機関に確かめてください。

2号消火栓と補助散水栓の共用型は起動装置を外して使ってよいか

壁に付いた赤い補助散水栓の箱と、その隣の床に外されて置かれた橙色のスイッチ箱のイメージ
屋内消火栓の2号消火栓と補助散水栓を兼ねた、共用型の箱があります。
これをスプリンクラー設備の補助散水栓として使うとき、加圧送水装置にかかる起動装置を取り外してよいかが問われました。
問2(要旨) 2号消火栓及び補助散水栓の共用型のものを、スプリンクラー設備の補助散水栓として使用する場合にあっては、加圧送水装置にかかる起動装置を取り外して使用してよいか。
答 差し支えない。
なお、起動装置を取り外すことにより、操作性等の機能等に悪影響を与えないことを確認することが必要である。
共用型の箱の起動装置は、取り外して使用して差し支えないという答えでした。
スプリンクラー設備の加圧送水装置の起動装置は、規則第14条第1項第8号が基準を定めています。閉鎖型スプリンクラーヘッドを用いる設備では、自動火災報知設備の感知器の作動、または流水検知装置もしくは起動用水圧開閉装置の作動と連動して、加圧送水装置を起動できるものとされています。
回答は理由を書いていませんが、スプリンクラー設備側の起動の仕組みがあるため、共用型の箱の起動装置は外せると読めます。そのうえで、操作性等に悪影響がないことの確認が必要とされています。
外したことで箱の操作がしにくくなったり、ほかの機能に影響が出たりしないかは、取り外しの前に実機で確認してください。

起動装置は外せても、操作性の確認は要るんですね。

はい、その確認が条件です。
外したあとの操作を必ず確かめます。

スプリンクラー設備の義務が無い階に補助散水栓だけ置けば屋内消火栓を免除できるか

三階建ての建物の断面で、最上階の天井にだけヘッドが並び、下の二階には壁に赤い消火栓の箱があるだけのイメージ
階数が11階以上の建物で、10階以下の部分にはスプリンクラー設備の設置義務がなく、屋内消火栓設備の設置義務がある、という設問です。
その1階から10階に補助散水栓だけを置いて、屋内消火栓の代わりにできるかが問われました。
問3の1(要旨) 次図のような場合において、屋内消火栓設備が義務設置となる部分について補助散水栓で代替することができるか。階数11以上の非特定防火対象物の1〜10階部分について補助散水栓で代替可能か。(図は、11階以上がスプリンクラー設備の義務、1〜10階がスプリンクラー設備の義務無で屋内消火栓設備の義務)
答 補助散水栓は、スプリンクラーヘッドの設置を要しない部分をカバーし、スプリンクラーヘッドの未警戒部分を補完するものであり、これにより屋内消火栓設備との重複設置を排除したものである。したがって、1のように、スプリンクラー設備の設置義務の無い部分に補助散水栓のみを設置しても、法令上は令第12条に規定される技術上の基準又はこれに準じて設置したこととは認められず、これをもって屋内消火栓設備の設置を免除することはできない。
しかし、設問の1のように同一建築物内にスプリンクラー設備及び屋内消火栓設備の設置が義務付けられている場合において、両方の設備を同時に使用した場合においても、所定の性能を得られることなど所定の措置を講じた場合には、令第32条を適用し、併設するスプリンクラー設備と屋内消火栓設備の水源、ポンプ及び配管等の共用を認めることができる。
スプリンクラー設備の義務が無い部分に補助散水栓だけを置いても、屋内消火栓の免除には使えないという答えでした。
令第12条第2項第8号は、スプリンクラー設備に補助散水栓を設けることができると定めています。補助散水栓はスプリンクラー設備の一部なので、スプリンクラー設備が要らない部分に補助散水栓だけを置いても、令第12条の基準に沿った設備とは認められないという整理です。
ただし、同じ建物にスプリンクラー設備と屋内消火栓設備の両方が義務付けられているときは、令第32条を適用して、水源、ポンプ、配管等を共用することができると答えています。条件は、両方を同時に使っても所定の性能が得られることなどです。
現行の令第12条第1項第3号は、地階を除く階数が11以上の防火対象物を掲げ、総務省令で定める部分を除くとしています。10階以下の部分の扱いは規則第13条が細かく定めているので、実際の建物では最新の条文で、どの部分に何の設備が必要かを確かめてください。

補助散水栓だけでは、免除にならないんですね。

はい。
ポンプや配管の共用は令第32条で別に認められます。

規則第13条第3項でヘッドを設けない部分は補助散水栓で代替できるか

広い建物の断面で、左半分の天井に橙色のヘッドが並び、右半分の階段とトイレ側の壁に赤い消火栓の箱が付いたイメージ
延べ面積が6,000平方メートル以上の特定防火対象物で、スプリンクラー設備と屋内消火栓設備の両方が義務となる建物という設問です。
規則第13条第3項によりヘッドを設けない部分について、補助散水栓で代替できるかが問われました。
問3の2(要旨) 延べ面積6,000平方メートル以上の特定防火対象物で規則第13条第3項の規定によりスプリンクラーヘッドを設けない部分について、補助散水栓で代替可能か。(図は、スプリンクラー設備の義務と屋内消火栓設備の義務の両方がある建物)
答 (問3の1と同じ答えの後段)2の場合にあっては、規則第13条第3項の規定によりスプリンクラーヘッドを設けない部分に、補助散水栓を設置することにより、屋内消火栓設備を設置しなくてもよいものである。
ヘッドを設けない部分は、補助散水栓を設置すれば屋内消火栓設備を設置しなくてよいという答えでした。
規則第13条第3項は、令第12条第2項第1号でヘッドを設ける部分を、次に掲げる部分以外の部分と定めています。掲げられているのは、階段、浴室、便所、通信機器室、電子計算機器室、エレベーターの機械室、発電機や変圧器のある場所、エレベーターの昇降路、パイプダクト、直接外気に開放されている廊下、手術室などです。
こうした部分にはヘッドを設けなくてよいので、そのままでは消火設備が届かない空白ができます。補助散水栓は、その空白を補うものです。回答は、この補助散水栓を設置すれば、屋内消火栓設備を別に設置しなくてもよいとしました。
補助散水栓の設け方は、規則第13条の6第4項が、階ごとに、その階の各部分から一のホース接続口までの水平距離15メートル以下となるように設けることなどを定めています。ヘッドを設けない部分に置くときは、ヘッドを設けない部分がどこかを、最新の規則第13条第3項で確かめてください。

ヘッドを付けない場所には、補助散水栓を置けばいいんですね。

そう答えられました。
水平距離15メートルの範囲も確かめてください。

西棟と東棟でスプリンクラー設備の水源と加圧送水装置を共用してよいか

離れて建つ二つの低い建物の間に灰色の碑があり、右の建物の隣の紺色のポンプ小屋から二棟へ青い配管が伸びるイメージ
同じ敷地に、令別表第1(1)項イの西棟と東棟があり、どちらも無窓階のある建物です。
スプリンクラー設備のポンプは東棟にしか設けておらず、水源と加圧送水装置を両棟で共用してよいかが、大分県から問われました。
問(要旨) 消防用設備等の設置については、各棟ごとの規制が原則であるが、当該防火対象物のスプリンクラー設備の加圧送水装置及び水源を西棟、東棟に共用することについて、消防法施行令第32条を適用し、これを認めてよいか。(用途は令別表第1(1)項イで、西棟、東棟とも無窓階。スプリンクラーポンプは東棟だけに設置している状況)
答 防火対象物における消防用設備等に関する技術基準の適用については、原則として棟単位であるが、設問については、次により設置する場合、令第32条の規定を適用し、同一敷地内に存する防火対象物に設置するスプリンクラー設備の水源及び加圧送水装置を共用することを認めてさしつかえない。
1 水源は、同一敷地内に存する防火対象物のうち令第12条第2項第4号の規定により算出した量のうち最大となる量以上のものであること。
2 スプリンクラー設備の加圧送水装置の能力は、同一敷地内に存するいずれの防火対象物においても令第12条第2項第5号に規定する性能が得られるものであること。
3 その他令第12条の技術上の基準により設けること。
棟ごとの原則に対して、3つの条件を満たせば共用してさしつかえないという答えでした。
消防用設備等の基準は、原則として棟ごとに当てはめます。この回答は、令第32条を適用する場合として、同一敷地内での水源と加圧送水装置の共用に、次の3つの条件を付けました。
  • 水源:各棟について令第12条第2項第4号で算出した量のうち、最大となる量以上。
  • 加圧送水装置:どの棟でも、令第12条第2項第5号が定める放水の性能が得られること。
  • その他:そのほかは、令第12条の技術上の基準どおりに設けること。
令第32条は、消防長または消防署長が認めるときの特例なので、共用が当然に許されるわけではありません。共用を考えるときは、各棟の必要水量と必要な性能を算出し、最大の棟に合わせて足りるかを整理してから消防機関へ相談してください。

共用するなら、一番大きい棟に合わせるんですね。

水源はそうです。
ポンプの性能はどの棟でも足りる必要があります。

よくある質問

Q補助散水栓は、どんな基準で設けるのですか?
A規則第13条の6第4項が、階ごとに各部分から一のホース接続口までの水平距離が15メートル以下となるように設けること、ノズルの先端で放水圧力が0.25メガパスカル以上、放水量が60リットル毎分以上の性能とすることなどを定めています。
Q補助散水栓の箱には、何を表示しますか?
A箱の表面に「消火用散水栓」と表示します。あわせて、補助散水栓の上部には、取付け面と15度以上の角度となる方向に沿って10メートル離れたところから識別できる赤色の灯火を設けます。
Q令第32条の特例は、誰が認めるのですか?
A消防長または消防署長が、防火対象物の位置、構造、設備の状況から判断して、火災の発生や延焼のおそれが著しく少なく、被害を最少限度に止められると認めるときに適用されます。
Qスプリンクラー設備の水源の水量は、何で決まるのですか?
A令第12条第2項第4号が、防火対象物の用途、構造、規模またはヘッドの種別に応じて、総務省令で定めるところにより算出した量以上と定めています。算出の方法は規則第13条の6にあります。

まとめ

✔補助散水栓は、スプリンクラー設備に設けることができる、ヘッドの未警戒部分を補う設備
✔補助散水栓の使用で音響警報が遅れても、人が操作し人が対応しているため、問題がないと考えられる
✔共用型の起動装置は、取り外して差し支えないが、操作性等に悪影響がないことの確認が必要です
✔スプリンクラー設備の義務が無い部分に補助散水栓だけを置いても、屋内消火栓設備の免除にはならない
✔同じ建物でスプリンクラー設備と屋内消火栓設備の両方が義務のときは、令第32条の適用で水源、ポンプ、配管等を共用することができます
✔規則第13条第3項でヘッドを設けない部分は、補助散水栓を設置すれば屋内消火栓設備を設置しなくてよい
✔西棟と東棟の水源と加圧送水装置は、令第32条の適用で、最大の水量と、どの棟でも足りる性能を条件に共用できます

補助散水栓の扱いは、条件つきで決まっていると分かりました。
うちの建物の設備も確かめてみます!

どの回答も、スプリンクラー設備と消火栓の役割分担を見ていました。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行令第12条・第32条
  • 消防法施行規則第13条・第13条の6・第14条
  • 屋内消火栓設備の2号消火栓及びスプリンクラー設備の補助散水栓に係る質疑応答について(平成元年10月3日 消防予第110号 消防庁予防課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
  • スプリンクラー設備の加圧送水装置及び水源に係る質疑について(平成3年8月12日 消防予第163号 消防庁予防課長から大分県総務部長あて回答)
  • 消防実務六法 質疑応答編

※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答はそれぞれの発出当時のもので、条番号や機関の名称、単位等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。

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