消火器の点検では、放射試験をした消火器を、あとで再充填して使うのが普通です。
ところが樹脂製の消火器には、放射試験をしたら良否に関わらず廃棄するという決まりがあります。
消防庁の点検要領は、そのほかにも樹脂製消火器だけの廃棄の基準を定めています。
この記事では、樹脂製消火器の点検で何をしたら廃棄になるのかを整理します。
点検で放射したら、その消火器は捨てるのですか。
樹脂製消火器は、良否に関わらず廃棄と点検要領にあります。
順番に見ていきましょう。
廃棄になるのは、放射したときだけでしょうか。
周長・化粧カバー・製造年にも基準があります。
数字も確かめます。
- 樹脂製消火器は、点検で放射試験を行ったら良否に関わらず廃棄します。
- 本体容器の周長が400mmを超えるものは廃棄します。
- 化粧カバーが外れているものは、キャップ側もレバー側も廃棄します。
- 製造年から10年を経過したものは、耐圧性能を確認せず廃棄します。
- この決まりは、通常の点検要領とは別に定められた樹脂製消火器専用の点検要領にあります。
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目次
なぜ樹脂製消火器には別の点検要領があるのか

樹脂製消火器は、その要領のままでは点検できない項目があるとされました。
平成26年3月に本体容器にポリエチレンナフタレートを用いた樹脂製消火器が消火器の技術上の規格を定める省令第53条の規定に基づき基準の特例の適用を受けた。キャップ等が化粧カバーで覆われ、分解整備及び再充填等ができない構造となっていることから、消防予第172号により点検を実施することが困難な項目があるため、点検要領を新たに定めた。
新たな技術開発に係る消火器について、その形状、構造、材質及び性能から判断して、この省令の規定に適合するものと同等以上の性能があると総務大臣が認めた場合は、この省令の規定にかかわらず、総務大臣が定める技術上の規格によることができる。
通常の消火器は、内部を点検して再充填できることが前提です。
樹脂製消火器はこの前提が成り立たないため、廃棄の基準が細かく書かれています。
樹脂製消火器が破裂した事故の経緯は、厨房の樹脂製消火器の破裂事故の記事で扱っています。
点検票も、いつもの様式でよいのですか。
通常の点検票を使い、機器点検に載っていない項目は斜線で処理する決まりです。
点検要領の一般的留意事項にあります。
本体容器の周長が400mmを超えたらなぜ廃棄なのか

目で見るだけでなく、本体容器にメジャーを当てて確かめます。
点検方法は目視及び本体容器周長の測定。判定方法は、消火薬剤の漏れ、変形、損傷、著しい腐食等がないこと。
※(ア)著しい損傷又は変形のあるもので機能上支障のおそれのあるものは廃棄すること。
※(イ)本体容器周長が400mmを超えるものは廃棄すること。
点検要領は、400mmという数字を廃棄の線として書いています。
膨らんだ容器を周長で見つける趣旨と読めますが、点検要領は基準値の根拠までは書いていません。
消火器が腐食や劣化で傷んだ事故は、消火器の破裂事故の記事で扱っています。
周長は、何をどこに当てて測るのでしょうか。
点検要領は本体容器周長の測定と書くだけで、測る位置までは書いていません。
具体的な手順は、メーカーの取扱説明書や消防設備士にご確認ください。
化粧カバーが外れていたらなぜ廃棄なのか

点検要領は、このカバーの状態を二か所で見ます。
押し金具及びレバー等の操作装置は、化粧カバー及びレバー部について目視及び手で確実に装着されていることを確認する。キャップも、化粧カバーについて同様に確認する。
※化粧カバーが外れているものにあっては、廃棄すること。
(3) 化粧カバーは分解しないこと。
一般的留意事項が、化粧カバーを分解しないことを求めています。
点検の場で外してはいけないカバーが、もともと外れているなら廃棄という組み立てです。
指示圧力計が緑色の範囲外のものも、点検要領は廃棄としています。
汚れたときは、カバーを外して掃除してよいのですか。
点検要領は、汚れははたき・雑きんで掃除するとしています。
シンナーやベンジンなどの有機溶剤は使わない決まりです。
放射試験をしたら良否に関わらず廃棄するのはなぜか

樹脂製消火器では、これを行ったあとの扱いが通常と違います。
(6) 点検結果の良否に関わらず放射試験を行ったものは廃棄すること。
第2 欠陥があった場合は、(1)消火薬剤の固化がある場合は欠陥試料と同一製造年のもの全数について欠陥項目の確認を行うこと。(2)それ以外の欠陥のあった試料は廃棄すること。
第3 放射の試料は本体容器を透かして見る確認のあとに行うこと。放射した試料は廃棄すること。
再充填ができない構造なので、放射した分は使い切りになると読めます。
放射試験は、製造年から5年を経過したものなどを抜取り方式で行います。
外形の点検で腐食が認められたものは、放射しない決まりです。
消火器の廃棄の方法は、使わなくなった消火器の廃棄方法の記事をご覧ください。
点検のたびに、消火器が減ってしまうのでしょうか。
放射するのは、抜取りの試料だけです。
ロットの作り方と抜取り方は、点検要領の別添に書かれています。
製造から10年を超えたらなぜ耐圧性能を確認せず廃棄するのか

樹脂製消火器は、確認そのものを行わない決まりです。
製造年から10年を経過したもの又は消火器の外形の点検において本体容器に腐食等が認められたものについては、耐圧性能の確認は実施せず該当する消火器は廃棄する。
製造年から10年を超える消火器は廃棄すること。製造年から5年を超え10年以下の消火器は、5年でロット全数の確認が終了するよう概ね均等に製造年の古いものから抽出する。
注)2014年製造品は、2020年点検から5年を超えていると判断する。
耐圧性能を水圧で確かめる通常の方法は、分解できないこの構造には当てはまりません。
点検要領はそのため、年数と外形の腐食で廃棄を決める形にしています。
通常の消火器の型式失効と交換期限は、古い消火器の交換が必要な理由の記事で扱っています。
製造年から5年を超えたものは、全部放射するのですか。
5年を超え10年以下のものは、5年でロット全数の確認が終わるよう、製造年の古いものから均等に抽出します。
放射の試料もこの抜取りの中から取ります。
よくある質問
まとめ
樹脂製かどうかは、点検の前に確認しておきます!
通常の消火器と廃棄の基準が違うので、点検前の仕分けが大切です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 基準の特例を適用した検定対象機械器具等の点検要領について(平成26年12月5日 消防予第473号 消防庁予防課長)別添 点検要領 第1 樹脂製消火器
- 消火器の技術上の規格を定める省令(昭和39年自治省令第27号)第53条
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第31条の6
※本記事は公表されている法令および消防庁の点検要領に基づく一般的な解説です。点検要領は改正されることがあります。個別の判断は、消防設備士や所轄消防署にご確認ください。





