防火区画の壁に、空気を通すための小さな穴を開けたくなることがあります。
消防用設備の基準では、その穴が壁の扱いを左右する場合があります。
消防庁は令和7年3月31日の通知で、防火ダンパーと開口部相互間の距離に関する質疑への回答を示しました。
この記事では、令8区画の壁と通気口・換気口の関係を、消防庁の回答をもとに解説します。
区画の壁に、通気口を付けたいという相談を受けました。
そもそも、付けてもよいのでしょうか。
壁の端の作り方で答えが分かれます。
消防庁の通知が、その分かれ目を示しています。
分かれ目というのは、具体的にどこにあるのですか。
開口部がないことを求める場合と、防火戸を設ける場合とで、扱いが違います。
- 令8区画の壁の両端や上端は、原則として外壁や屋根から50センチメートル以上突き出させると規則第5条の2第3号が定めています。
- ただし書のうち「開口部が設けられていないこと」とする場合は、面積の小さい通気口や換気口も設けられませんと消防庁は示しています。
- 防火戸を設けるただし書ロの場合は、防火ダンパーを設け、開口部相互間を90センチメートル以上離せば適合として差し支えないと、令和7年に回答されました。
- 令8条第2号の区画で使う防火戸に、防火シャッターは含まれ、耐火クロススクリーンとドレンチャーは含まれないとされています。
- これらは消防庁の助言としての執務資料ですので、個別の建物は所轄消防本部で確認する必要があります。
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目次
令8区画の壁の端は外壁や屋根からどれだけ突き出させるのか

条文どおりの壁で区切られた部分は、消防用設備の技術基準の上で、別々の防火対象物とみなされます。
防火対象物が次に掲げる当該防火対象物の部分で区画されているときは、その区画された部分は、この節の規定の適用については、それぞれ別の防火対象物とみなす。
一 開口部のない耐火構造(略)の床又は壁
二 (略)建築基準法第二条第九号の二ロに規定する防火設備(防火戸その他の総務省令で定めるものに限る。)のうち、防火上有効な措置として総務省令で定める措置が講じられたもの(前号に掲げるものを除く。)
その構造を細かく定めているのが、消防法施行規則第5条の2です。
同条第3号は、壁や床の端の処理について次のように定めています。
耐火構造の壁等の両端又は上端は、防火対象物の外壁又は屋根から五十センチメートル以上突き出していること。ただし、耐火構造の壁等及びこれに接する外壁又は屋根の幅三・六メートル以上の部分を耐火構造とし、かつ、当該耐火構造の部分が次に掲げるいずれかの要件を満たすものである場合は、この限りでない。
イ 開口部が設けられていないこと。
ロ 開口部に防火戸(略)が設けられており、かつ、耐火構造の壁等を隔てた開口部相互間の距離が九十センチメートル以上離れていること。
突き出させない場合は、幅3.6メートル以上の部分を耐火構造にしたうえで、イかロのどちらかを満たします。
消防庁は令和6年の通知で、この3.6メートルについて、壁を介して両側にそれぞれ1.8メートル以上が耐火構造となっていることが望ましいと示しています。
| 方式 | 規則第5条の2第3号の求め |
|---|---|
| 突き出させる方式 | 壁等の両端や上端を、外壁や屋根から50センチメートル以上突き出す |
| ただし書イ | 幅3.6メートル以上を耐火構造とし、その部分に開口部を設けない |
| ただし書ロ | 幅3.6メートル以上を耐火構造とし、開口部に防火戸を設けて、開口部相互間を90センチメートル以上離す |
突き出させない方法が、2通りあるのですね。
はい。
イは開口部なし、ロは防火戸と距離で成り立つ方式です。
開口部なしの方式で小さな通気口や換気口を設けられないのはなぜか

通気口や換気口のように小さな穴でも、開口部にならないのかが疑問になります。
通知は、開口部の大小を問わず、通気口や換気口も含めて開口部として扱うとしています。
「穴が小さいから問題ない」という判断は、この方式では通りません。
なお、この通知は施行令の改正に合わせて、令8区画の運用をまとめたものです。
同じ通知は、壁の端の突き出しについても、床や壁それぞれが外壁や屋根から50センチメートル以上突き出す形を想定しています。
小さな換気口くらいなら、開けても目立たない気がします。
目立つかどうかではなく、開口部の有無で決まります。
イを選ぶなら、その部分は穴を設けない設計にします。
防火戸を設ける方式なら通気口や換気口はどう扱われるのか

令和7年の執務資料で、通気口や換気口の扱いが質疑として示されました。
条件は、防火ダンパーを設けることと、壁を隔てた開口部相互間を90センチメートル以上離すことの2つです。
対象は、質疑にあるとおり「面積の小さい」通気口や換気口などです。
通知は、どこまでを「面積の小さい」と扱うかの数値や、防火ダンパーの仕様までは示していません。
そのため、線引きが微妙な開口部は、設計の早い段階で消防本部に確認しておくのが安全です。
イとロで、通気口の扱いがずいぶん違うのですね。
そのとおりです。
イは設けられない、ロは防火ダンパーと距離を満たせば適合と扱えます。
令8条第2号の区画で使う防火戸にはどんなものが含まれるのか

第2号は、防火設備のうち総務省令で定めるものを使う区画で、規則では防火戸とされています。
令第八条第二号の総務省令で定める防火設備は、防火戸とする。
区画の防火設備として、どれを選べるかを判断するときの基準になります。
同じ通知には、あと2問があります。
第5条の3第2項第1号ロの階段について、建築基準法令で設置が義務でない場合でも、建築基準法令に適合させることが望ましいと答えています。
また、令和6年消防庁告示第7号の「閉鎖型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備」に、特定施設水道連結型スプリンクラー設備は含まれないことと、パッケージ型自動消火設備で代えられないことも、お見込みのとおりとされています。
| 問 | 消防庁の回答の要点 |
|---|---|
| 問1 防火戸の範囲 | 防火シャッターは含む。耐火クロススクリーンとドレンチャーは含まない |
| 問2 通気口・換気口 | 防火ダンパーと90センチメートル以上の距離で、規則第5条の2第3号ロに適合として差し支えない |
| 問3 階段の構造 | 設置が義務でなくても、建築基準法令に適合させることが望ましい |
| 問4 スプリンクラー設備 | 特定施設水道連結型は含まれず、パッケージ型自動消火設備で代えることもできない |
耐火クロススクリーンは、区画の防火戸としては使えないのですね。
令8条第2号の区画では、そう整理されています。
設計の前に、使える設備を確認しておきましょう。
設計や改修で区画の壁をめぐって明日からなにを確認すればよいのか

そのうえで、壁の端の処理と、開口部の有無を見ていきます。
一方で、消防庁が全国の消防本部へ示した考え方ですので、設計の前提として押さえておく価値があります。
次の5点を、自分の建物に当てはめて確認してみてください。
- 区画が、令第8条の第1号(耐火構造の壁)か第2号(防火戸など)のどちらに当たるかを決める
- 壁の両端や上端が、外壁や屋根から50センチメートル以上突き出しているかを図面で見る
- 突き出させない場合は、幅3.6メートル以上の耐火構造と、イかロのどちらかを選ぶ
- 通気口や換気口があれば、イでは設けられない、ロでは防火ダンパーと90センチメートル以上の距離を確かめる
- 第2号の区画で使う防火戸が、防火シャッターか防火戸であり、クロススクリーンやドレンチャーでないことを確かめる
通気口の位置と方式を、図面で洗い出してみます。
お願いします。
迷う点は、設計者や所轄消防本部と早めに詰めてください。
よくある質問
まとめ
区画の壁と開口部を、もう一度見直してみます!
防火区画の確認も、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「消防用設備等に係る執務資料の送付について(通知)」(令和7年3月31日 消防予第141号 消防庁予防課長)
- 「消防法施行令の一部を改正する政令等の運用について(通知)」(令和6年3月29日 消防予第155号 消防庁予防課長)
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第8条、消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第5条の2・第5条の3 e-Gov法令検索
- 消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。個別の建物の区画の判断は、所轄消防本部や設計者にご確認ください。





