スプリンクラー設備の基準は、そのままでは収まらない建物や新しい部品に出会うことがあります。
そんなとき消防庁は、都道府県や消防本部からの疑問に、質疑応答の形で執務資料として答えてきました。
この記事では、平成20年から平成30年までの執務資料と、平成9年の評価に関する質疑応答から、五つを選んで現行の条文と照らします。
福祉施設の免除から負圧式流水検知装置まで、順に読みます。
基準どおりにできない建物は、どうすればいいんでしょうか。
その受け皿が令第32条の特例です。
五つの質疑応答を、順に見ていきます。
通知は、条文とどうつながっているんでしょうか。
そこを一つずつ確かめます。
現行の条文に当てはめて読みます。
- 平屋で延べ面積1,000平方メートル以上の既存福祉施設は、区画・避難口・介助者を満たせば、令第32条の特例で水道連結型を置け、さらに条件を満たせば免除も認められました
- 水道に連結していないスプリンクラー設備でも、放水量や放水圧力が確保できれば、水道連結型と同等以上として令第32条を適用できるとされました
- 負圧式の流水検知装置は、負圧に使える継手とヘッド、型式承認の範囲内での使用と圧力異常の音響警報が条件でした
- 直径0.15メートル未満の換気口等は、開口部の面積を数えるときに、開口部として取り扱わないとされました
- 放水型ヘッド等の評価は任意が、極力受けるよう指導され、確認試験済みの装置は放水試験を省略できるとされました
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目次
延べ面積1,000平方メートル以上の平屋の福祉施設は、どんな条件でスプリンクラーを免除されるのか

既存の施設のうち、平屋建てで延べ面積が1,000平方メートル以上の大きなものに、どこまで特例が認められるかが問われました。
1 次の(1)及び(2)に適合する防火対象物であること。
(1) 延べ床面積1,000平方メートルごとに防火区画されていること。
(2) 延べ床面積1,000平方メートルごとにされている区画ごとに直接屋外に通ずる避難口があること。
2 防火対象物の延べ床面積を1,000で除した数(1未満のはしたの数は切り捨てるものとする。)の介助者を確保していること。
3 上記1に適合する防火対象物のうち、小規模社会福祉施設に対する消防用設備等の技術上の基準の特例の適用について(平成19年6月13日付け消防予第231号。「231号特例通知」)の所定の記に該当するものであること。
現行の令第12条第2項第3号の2は、特定施設水道連結型スプリンクラー設備を、防火上有効な措置が講じられた構造の部分を除いた床面積の合計が1,000平方メートル未満のものに限り設置できると定めています。つまり1,000平方メートル以上の規模では、本来この型を使えません。
そこで令第32条の出番です。令第32条は、消防長又は消防署長が、位置、構造、設備の状況から判断して、基準によらなくても火災の発生や延焼のおそれが著しく少なく、被害を最少限度に止められると認めるときは、この節の規定を適用しないとする条文です。回答は、1,000平方メートルごとの防火区画と区画ごとの避難口、それに介助者の確保がそろえば、この特例を使えるという内容です。
大きな施設を、水道につないだ簡易な設備で足りるものと見なすには、それだけ厳しい区画と人の手当てが前提になっています。
大きい施設ほど、区画と人が条件になるんですね。
はい。
免除には、区画と避難口と介助者がそろう必要があります。
水道につながっていないスプリンクラー設備は水道連結型と同じ扱いにできるのか

では水道が使えない敷地で、タンクとポンプによって同じ性能を出す設備はどう扱われるのでしょうか。
令第12条第2項第3号の2は、特定施設水道連結型を、水源として水道の用に供する水管を連結したものであって、次号に規定する水量を貯留するための施設を有しないものと定義しています。この定義から外れる設備は、そのままでは特定施設水道連結型として扱えません。
回答は、水道に連結していなくても、水源と加圧送水装置などで放水量や放水圧力が確保されるなら、同等以上の性能を持つものとして令第32条を適用できるとしています。
設備の型を名前で決めるのではなく、必要な性能が確保されているかで判断するという考え方です。ただし、特例を認めるのは所轄の消防長又は消防署長ですから、設計の前に相談します。
水道が使えない敷地でも、道はあるんですね。
はい。
性能の確保を、図面と計算で示します。
二次側が負圧の流水検知装置を使うとき、消防庁は何を確かめるよう求めたのか

新しい技術を使った負圧式のものを設置するとき、何を確認すべきかが問われました。
(1) 負圧の状態で使用できる配管継手、閉鎖型スプリンクラーヘッドを使用すること。
(2) 流水検知装置の弁体の開放に係る要件等、型式承認時に認められた範囲内において使用すること。
(3) 閉鎖型スプリンクラーヘッドが破損する等の原因で、流水検知装置の二次側配管内の圧力に異常が発生した場合に音響等で異常を知らせる措置を講ずること。
なお、一般社団法人日本消火装置工業会では、設問にある流水検知装置を用いたスプリンクラー設備に設けられる閉鎖型スプリンクラーヘッドについて、当該工業会が実施する試験により、負圧環境下での閉鎖機能が確保され、かつ、異常開放時の検知が可能であることが確認された閉鎖型スプリンクラーヘッドの型式番号等を当該工業会のホームページに掲載する予定としていることから、参考とされたい。
令第37条は、閉鎖型スプリンクラーヘッド(第8号)と、スプリンクラー設備に使用する流水検知装置(第9号)を、検定対象機械器具等として挙げています。流水検知装置の技術上の規格を定める省令の第12条は、新たな技術開発に係る流水検知装置について、総務大臣が同等以上の性能があると認めた場合は、大臣の定める規格によることができると定めています。設問の流水検知装置は、この特例を受けた予作動式のうち、二次側を負圧にするものです。
この方式は、二次側に水が満ちておらず、大気圧より低い圧力に保たれています。ヘッドが破損すると二次側の圧力が変わるため、圧力の異常を音響等で知らせることが条件とされました。
設計や工事では、継手とヘッドが負圧に使えるものかを、型式番号で確かめます。
負圧でも使える部品を選ぶんですね。
そうです。
異常を知らせる措置まで、セットで考えます。
直径0.15メートル未満の換気口は、開口部の面積に数えなくてよいのか

壁の外側に小さな換気口があるとき、それも開口部に数えるのかが問われました。
また、規則第12条の2第1項第1号及び第2号、第13条第1項第1号、同条第2項、第28条の2第1項第4号及び第4号の2、同条第2項第3号及び第3号の2並びに7号省令第3条第3項第4号の規定においても同様に取り扱ってよいか。
現行の規則第13条第1項第1号の2は、10階以下の階の居室を耐火構造の壁及び床で区画し、そのハで、区画する壁及び床の開口部の面積の合計を8平方メートル以下、一の開口部を4平方メートル以下と定めています。開口部には、防火戸などを設けるよう求めています。
回答は、外気に開放されている部分に面する換気口のうち、直径0.15メートル未満のもの、又は直径0.15メートル以上で防火設備が設けられたものは、この開口部として取り扱わないとしました。直径0.15メートルの円の面積は約0.018平方メートルです。それより大きい換気口でも、防火設備が設けられていれば同じ扱いです。
後段は、開口部の面積を数える他の規定でも、同じ扱いにしてよいという答えです。ただし、換気口が外気に開放された部分に面しているかを、図面で確かめます。
小さい換気口まで面積に数えるのかと思っていました。
そこが整理された点です。
大きさと防火設備の有無で扱いが分かれます。
放水型ヘッド等の評価は受けなければならないのか

事前の評価を受ける仕組みが、義務なのか任意なのかが問われました。
Q36 一定の設置要件を満たす高天井の部分に設置される放水型ヘッド等SP設備以外のもので放水型ヘッド等SP設備及び当該設備の高天井の部分への設置要件について評価が行われるものについて、防火対象物の関係者の理解が得られない場合には、評価を受けないこととなると思われるが差し支えないか。
Q38 確認試験を受け基準適合表示がされている主要構成装置については、設置時の消防検査で、当該確認された事項に関し基準適合を確認することをもって足りることとして差し支えないとされているが、設置現場における放水試験を省略することとしてよいか。
Q36 放水型ヘッド等SP設備に係る評価は、事前に当該計画が基準に適合しているかを確認するものであり、極力当該評価を受けるよう指導されたい。なお、防火対象物の関係者の理解の得られない場合にあっては、基準への適合性について、事前の情報提供、設置実績等を踏まえ、指導、確認等されたいこと。
Q38 差し支えない。なお、配管等が適正にされているかを確認するための通水試験は行うことが望ましい。
放水型ヘッド等は、規則第13条の4第2項が、消防庁長官が定める性能を有する放水型スプリンクラーヘッドその他のスプリンクラーヘッドと定めた設備です。評価は、検定協会(日本消防検定協会)が計画の段階に、基準への適合性を審査する制度です。
Q36は、任意でも、受けるよう強く勧められるという扱いです。関係者が乗り気でなくても、消防機関が情報提供や設置実績を踏まえて指導します。
Q38は、確認試験を受けて基準適合の表示が付いた主要な構成装置なら、設置現場での放水試験を省略できるという答えです。配管などが正しく施工されたかを確かめる通水試験は、行うことが望ましいとされました。
評価は、設計者にとっては、消防機関との協議を円滑にする手段になります。
任意でも、受けたほうがいいんですね。
はい。
現場の試験を減らす効果もあります。
よくある質問
まとめ
通知が、条文とつながりました。
うちの施設も確かめてみます!
質疑応答も、今の条文の意味を理解するために読めます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第12条・第32条・第37条
- 消防法施行規則第12条の2・第13条・第13条の4
- 流水検知装置の技術上の規格を定める省令(昭和58年自治省令第2号)第12条
- 消防用設備等に係る執務資料の送付について(平成20年12月2日 消防予第314号 消防庁予防課長から各都道府県消防主管部長、東京消防庁・各指定都市消防長あて回答)
- 消防用設備等に係る執務資料の送付について(平成21年3月31日 事務連絡 消防庁予防課から各都道府県消防防災主管部(局)、東京消防庁・各指定都市消防本部あて)
- 消防用設備等に係る執務資料の送付について(平成25年3月18日 事務連絡 消防庁予防課から各都道府県消防防災主管課、東京消防庁・各指定都市消防本部あて)
- 消防用設備等に係る執務資料の送付について(平成30年6月15日 消防予第426号 消防庁予防課長から各都道府県消防防災主管部長、東京消防庁・各指定都市消防長あて)
- 放水型ヘッド等を用いるスプリンクラー設備に係る質疑応答について(平成9年2月19日 消防庁予防課設備専門官から各都道府県消防主管課長あて)
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や機関の名称、単位等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





