地区計画が定められた区域では、市町村の条例で、建物の用途に制限が定められることがあります。
その用途の制限は、用途地域の制限を、あとから変えることになるのかが気になるところです。
建築基準法第68条の2第5項は、市町村が国土交通大臣の承認を得て、条例で用途地域の用途制限を緩和できると定めています。
決め手になるのは、どんな目的で、だれの承認を得て、どの規定を緩和できるかです。
今回は建築基準法第68条の2第5項と第48条、施行令第136条の2の5第1項第一号が定める、地区計画の条例による用途制限の緩和について、条文の中身と、防火管理者が押さえておきたい点をあわせて解説します。
地区計画の区域では、用途地域の制限を条例で緩められることがあると聞きました。
いつでも自由に緩められるのでしょうか。
条文は、国土交通大臣の承認を求めています。
まず、条文から見ていきましょう。
緩和の前に、地区計画の条例で用途を制限する根拠があるのですね。
その根拠は、どこに書かれていますか。
建築基準法第68条の2に根拠があります。
順に確認していきますね。
- 建築基準法第68条の2第5項は、市町村が国土交通大臣の承認を得て、条例で第48条第1項から第13項までの制限を緩和できると定めています。
- 緩和の目的は、用途地域における用途の制限を補完し、区域の特性にふさわしい土地利用の増進等を図ることです。
- 緩和の対象は、第48条の第1項から第13項までの制限で、第14項は挙げられていません。
- 第5項の目的の書き方は、集落地区計画を除く区域を前提にしています。
- 条例による用途の制限は、施行令第136条の2の5第1項第一号が、合理的な制限であることが明らかなものと定めています。
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目次
なぜ地区計画の区域では条例で建築物の用途を制限できるのか

まず、条文を確認しましょう。
定めるのは、市町村です。
対象になるのは、地区整備計画等が定められている区域に限られます。
条文には、敷地、構造、建築設備と並んで、用途に関する事項が挙げられています。 この用途の制限は、用途地域の制限とは別に、条例で定めるものです。
用途地域の制限そのものは、建築基準法第48条が定めています。
あとで、その条文を確認します。
条例で用途を制限するのは、市町村なのですね。
用途の制限は、どんな基準で決まりますか。
施行令第136条の2の5が、基準を定めています。
条文で、確認しましょう。
条例で用途を制限するときはなぜ合理的な制限であることが明らかでなければならないのか

用途の制限は、第一号です。
地区計画の区域と、再開発等促進区などの区域で、書き分けられています。
条文を、確認しておきましょう。
一 建築物の用途の制限 次に掲げるものであること。
イ 地区計画の区域(再開発等促進区及び開発整備促進区を除く。)にあつては、当該区域の用途構成の適正化、各街区ごとの住居の環境の保持、商業その他の業務の利便の増進その他適正な土地利用の確保及び都市機能の増進による良好な環境の街区の形成に貢献する合理的な制限であることが明らかなもの
ロ 地区計画の区域のうち再開発等促進区又は開発整備促進区にあつては、当該再開発等促進区又は開発整備促進区にふさわしい良好な住居の環境の確保、商業その他の業務の利便の増進その他適正な土地利用の確保及び都市機能の増進に貢献する合理的な制限であることが明らかなもの
求められるのは、市町村が好きに決めた制限ではなく、合理的な制限であることが明らかなものです。
再開発等促進区又は開発整備促進区では、その区域にふさわしい住居の環境の確保などに貢献する制限です。
同じ第一号のハからヘには、ほかの地区計画の区域の書き方があります。 第一号の区域ごとの書き分けを、表にまとめます。
| 区分 | 区域 | 合理的な制限かどうかを見る観点 |
|---|---|---|
| イ | 地区計画の区域(再開発等促進区と開発整備促進区を除く) | 用途構成の適正化と良好な環境の街区の形成への貢献 |
| ロ | 再開発等促進区又は開発整備促進区 | その区域にふさわしい住居の環境の確保などへの貢献 |
| ハ | 防災街区整備地区計画の区域 | 住居の環境の確保などへの貢献と特定防災機能の確保 |
| ニ | 歴史的風致維持向上地区計画の区域 | 住居の環境の確保などへの貢献と歴史的風致の維持及び向上 |
| ホ | 沿道地区計画の区域 | 業務の利便の増進などへの貢献と道路交通騒音による障害の防止 |
| ヘ | 集落地区計画の区域 | 区域の特性にふさわしい住居の環境の保持など |
用途の制限にも、区域ごとの基準があるのですね。
もとの用途地域の制限は、どこで決まりますか。
建築基準法第48条が、地域ごとに定めています。
次に、その条文を確認します。
用途地域の用途制限はなぜ第48条の第1項から第13項まで地域ごとに定められているのか

第1項と第4項を、条文で確認しておきましょう。
(同条第四項)第二種中高層住居専用地域内においては、別表第二(に)項に掲げる建築物は、建築してはならない。ただし、特定行政庁が第二種中高層住居専用地域における良好な住居の環境を害するおそれがないと認め、又は公益上やむを得ないと認めて許可した場合においては、この限りでない。
第1項の書き方は、別表第二(い)項に掲げる建築物以外は建築してはならない、というものです。
第4項の書き方は、別表第二(に)項に掲げる建築物は建築してはならない、というものです。
前者は建てられるものを挙げ、後者は建てられないものを挙げています。 第48条の第1項から第13項までを、表にまとめます。
| 項 | 用途地域 | 別表第二の項 | 書き方 |
|---|---|---|---|
| 第1項 | 第一種低層住居専用地域 | (い)項 | 掲げる建築物以外は不可 |
| 第2項 | 第二種低層住居専用地域 | (ろ)項 | 掲げる建築物以外は不可 |
| 第3項 | 第一種中高層住居専用地域 | (は)項 | 掲げる建築物以外は不可 |
| 第4項 | 第二種中高層住居専用地域 | (に)項 | 掲げる建築物は不可 |
| 第5項 | 第一種住居地域 | (ほ)項 | 掲げる建築物は不可 |
| 第6項 | 第二種住居地域 | (へ)項 | 掲げる建築物は不可 |
| 第7項 | 準住居地域 | (と)項 | 掲げる建築物は不可 |
| 第8項 | 田園住居地域 | (ち)項 | 掲げる建築物以外は不可 |
| 第9項 | 近隣商業地域 | (り)項 | 掲げる建築物は不可 |
| 第10項 | 商業地域 | (ぬ)項 | 掲げる建築物は不可 |
| 第11項 | 準工業地域 | (る)項 | 掲げる建築物は不可 |
| 第12項 | 工業地域 | (を)項 | 掲げる建築物は不可 |
| 第13項 | 工業専用地域 | (わ)項 | 掲げる建築物は不可 |
地域ごとに、別表第二の項が決まっているのですね。
第14項は、この表に入っていません。
第14項は、用途地域の指定のない区域の規定です。
第5項の緩和との関係は、次に確認します。
地区計画の条例はなぜ国土交通大臣の承認を得て用途制限を緩和できるのか

条文を、確認しておきましょう。
緩和を行うのは、市町村が定める条例です。
条件は、目的の達成のために必要と認めることと、国土交通大臣の承認を得ることです。
対象は、第48条の第1項から第13項までで、第14項は含まれていません。
目的の書き方で、集落地区計画は除かれています。 仮の例で、読み方を確かめます。
第一種低層住居専用地域の区域で、第1項の制限を受けていたとします。
市町村が、第5項に基づいて、承認を得た条例で緩和を定めたと仮定します。
その場合、どこまで緩和されるかは、条例の条文を読んで確かめることになります。
数値や用途は、あくまで読み方の例です。
緩和できるかどうかは、条例の条文で確かめるのですね。
第48条のただし書とは、どこが違いますか。
許可の手続と承認の手続が別々に定められています。
次に、二つを並べて確認します。
第48条のただし書の許可と条例による緩和はなぜ別のものなのか

その許可の手続は、第15項が定めています。
条文を、確認しておきましょう。
許可をするのは、市町村ではなく、特定行政庁です。
手続は、意見の聴取と建築審査会の同意です。
第16項に、意見の聴取や同意を要しない場合の例外があります。 二つの仕組みを、表にまとめます。
| 項目 | 第48条のただし書の許可 | 第68条の2第5項の緩和 |
|---|---|---|
| 行うもの | 特定行政庁が許可する | 市町村が条例で緩和する |
| 手続 | 意見の聴取と建築審査会の同意(第15項) | 国土交通大臣の承認 |
| 対象の規定 | 第48条の各項の制限 | 第48条第1項から第13項までの制限 |
ただし、テナントの入れ替えや用途を変える計画があるときには、関係する場面があります。
判断に迷うときは、市町村の窓口への相談も欠かせません。
明日から次の点を確認してください。
- 建物のある区域に地区計画等が定められているかを、市区町村の窓口で確認して記録する。
- 用途を制限する条例と、その緩和の規定があるかを、市区町村で照会しておく。
- 用途を変える話や新しいテナントの話が出たら、その用途が条例で認められているかを、窓口で事前に確認する。
- 用途地域の制限が緩和されている場合は、根拠の条例の条文を、写しで保管しておく。
- 消防用設備等の判断は、所轄消防署へ相談する。
用途の話と消防の話を混同しないように、それぞれの窓口へ確かめておきましょう。
地区計画の有無と、条例の内容を、まず確認します。
用途を変える前には、窓口にも聞いてみます。
状況が分かれば、あとの相談も早くなります。
相談は、建築の窓口と消防の両方の窓口にしておくと安心です。
よくある質問
まとめ
地区計画の有無と、条例の内容を、確認しておく必要があるんですね。
この記事の内容を管理者にも共有します!
区域の条例と用途の扱いが分かれば、用途変更やテナントの相談も進めやすくなります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第四十八条・第六十八条の二・同法施行令第百三十六条の二の五(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。用途の制限とその緩和の内容は市町村の条例ごとに確認が必要な場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





