地下や屋内の駐車場にハロゲン化物消火設備や粉末消火設備を置くとき、開口部や避難経路、煙の抜け方は、どこまで条文で決まるのでしょうか。
その線引きについて、消防庁は都道府県からの疑問に、質疑応答 の形で答えてきました。
この記事では、昭和50年代の質疑応答から五つを選び、現行の条文と照らして読みます。
開口部の閉鎖、避難経路、粉末の放出方式、消火剤の排出、煙の充満を、順に確かめます。
駐車場の消火設備って、窓や出入口まで関わってくるんですね。
そこが質疑応答で問われた点です。
五つの質疑応答を、順に見ていきます。
昔の回答は、今の条文とどうつながっているんでしょうか。
一つずつ確かめます。
現行の条文に当てはめて読みます。
- 階高の三分の二以下にある開口部でも、放射した消火剤の流失で消火効果を減ずるおそれがないと認められれば、自動閉鎖装置は不要と答えられました
- ハロン1301の防護区画を通って避難する経路は、上階の階段入口付近の表示灯か、防煙区画した通路と防火戸を設ける指導のうえで認められました
- 駐車場の粉末消火設備は、昭和52年には全域放出か移動式とされ、昭和53年には第三種粉末の下向きヘッドなら局所放出方式も可と答えられました
- 放出した消火剤の排出は、自然換気でも機械換気でもよく、自然換気の開口部は床面積の100分の1以上を目安に、機械排出には非常電源を設けるとされました
- 移動式の設置場所は、二面以上が外気に接する常時開放の開口部などで煙が有効に排除でき、安全に消火活動できる場所をいうと答えられました
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目次
階高の三分の二以下にある開口部には、自動閉鎖装置が必ず要るのか

昭和52年に、地下駐車場のドライエリア側にある開口部を、どこまで規制するのかが示されました。
(昭和52年4月12日 消防予第67号 消防庁予防救急課長から宮城県総務部長あて)
現行の規則第20条第4項第2号の4イは、ハロン1301の全域放出方式の開口部を、規則第19条第5項第4号イ(ロ)及び(ハ)の例によると定めています。
その(ロ)は、床面からの高さが階高の三分の二以下の位置にある開口部で、放射した消火剤の流失により消火効果を減ずるおそれのあるもの又は保安上の危険があるもの に、消火剤放射前に閉鎖できる自動閉鎖装置を設けることと定めています。
自動閉鎖装置を設けない開口部がある場合は、規則第20条第3項第1号イ(ロ)が、消火剤の量を加算する計算を求めています。ドライエリアの容積を足す方法が、そのまま条文にあるわけではありません。
なお、階段室などに面して開口部を設けてはならないとする(イ)は二酸化炭素の定めで、ハロン1301の開口部はこの(イ)を例にしていません。回答は図面の個別の開口部への答えなので、自分の建物では、開口部の位置と高さを図に落として所轄の消防機関に確かめます。
低い開口でも、流失のおそれがなければ閉鎖は要らないんですね。
はい。
流失のおそれと保安上の危険で、閉鎖の要否が決まります。
ハロン1301の防護区画を通って避難する経路は、認められるのか

昭和51年に、百貨店の駐車場でその避難経路を認めてよいかが問われました。
問2(要旨) 用途変更の申請が建築基準法により必要と思われるが、申請がなされていない時点で消火設備の着工届が出された場合、受理して支障ないか。
答2 さしつかえない。なお、用途変更される旨を建築主事等へ連絡されたい。
(昭和51年12月13日 消防予第120号 消防庁予防救急課長から愛媛県生活環境部長あて)
現行の規則第20条第4項第1号は、駐車の用に供される部分には、全域放出方式のハロゲン化物消火設備を設けること と定めています。回答の前提になった全域放出方式は、今も駐車場で求められる方式です。
表示灯は、第14号イ(ハ)が、防護区画の出入口等の見やすい箇所に消火剤が放出された旨を表示する表示灯 を設けることと定めています。回答は、上階の階段入口付近にも表示灯を設けるよう指導する内容でした。
着工届は、消防法第17条の14が、甲種消防設備士が工事に着手しようとする日の十日前までに届け出ることと定めています。回答2は、用途変更の申請がまだでも受理してよいとしたうえで、建築主事等への連絡を求めていました。避難経路を防護区画の中に置く計画は、事前に所轄の消防機関に確かめます。
防護区画を通る避難経路も、対策をすれば認められるんですね。
はい。
表示灯か防煙区画した通路と防火戸で、上階から手当てします。
駐車場の粉末消火設備は、局所放出方式にできるのか

駐車場に設けるとき、放出方式を局所放出にできるのかについて、昭和52年と昭和53年に二つの答えが出ています。
問(昭和53年・要旨) 第3種粉末を使用する粉末消火設備を駐車の用に供される部分に設置する場合に、噴射ヘッドを当該駐車の用に供される床面を対象として放射区画を設定し、天井又はスラブ下にヘッドを下方に向けて取付け、放射された粉末薬剤が床面及び防護対象物を包含するように設けた場合、局所放出方式とすることができるか。ただし、消火薬剤量は省令第21条第3項第2号イの規定に準じて設けるものとする。
(昭和52年1月27日 消防予第12号 消防庁予防救急課長から各都道府県消防主管部長あて)
(昭和53年2月21日 消防予第32号 消防庁予防救急課長から各都道府県消防主管部長あて)
現行の規則第21条第4項第1号ただし書は、駐車の用に供される部分に設ける粉末消火設備に使用する消火剤は、第三種粉末とする と定めています。昭和53年の問が第三種粉末に限っていたことと合います。
局所放出方式の消火剤の量は、規則第21条第3項第2号が、算出した量に1.1を乗じた量以上と定めています。問が「同号イに準じて」としたのは、この局所放出方式の計算のことです。
回答は、ヘッドを天井の下向きに付けて粉末が床面と防護対象物を包むように設けるという条件つきです。条件を外した設計まで認めたものではないので、局所放出方式にする計画は所轄の消防機関に確かめます。
前の年は駄目だったのに、あとで認められたんですね。
はい。
あとの答えは、ヘッドの向きと粉末の届き方を条件にしています。
放出した消火剤を出す開口部は、床面積の何分の一あればよいのか

昭和53年に、その排出の方法と、自然換気に必要な開口の大きさが示されました。
答2 お見込みのとおり。
(昭和53年2月6日 消防予第24号 消防庁予防救急課長から山形県生活福祉部長あて)
現行の規則第20条第4項は、放出された消火剤及び燃焼ガスを安全な場所に排出するための措置を講じること を、規則第19条第5項第18号の例によると定めています。「自然換気又は機械換気のいずれか」という選択は、今の条文の文言と合います。
二酸化炭素の質疑応答では、同じ自然換気の開口部が床面積の10分の1以上とされていました。ハロン1301は100分の1以上で、消火剤によって数字が違います。
一方、機械排出装置の非常電源は、規則の非常電源の条文が「当該設備を有効に一時間作動できる容量以上」と定めるだけで、排出装置には触れていません。この回答は昭和53年のものなので、機械排出を選ぶ計画は、電源の扱いを所轄の消防機関に確かめます。
自然換気なら、窓の面積の合計が決め手なんですね。
はい。
容易に開けられる窓の面積の合計が、床面積の100分の1以上です。
「煙が著しく充満するおそれのある場所以外」とは、どんな開口の場所をいうのか

昭和50年に、その「煙が著しく充満するおそれのある場所以外」の意味が示されました。
(昭和50年6月16日 消防安第65号 消防庁安全救急課長から各都道府県消防主管部長あて)
現行では、移動式のハロゲン化物消火設備は規則第20条第5項が、移動式の粉末消火設備は規則第21条第5項が、規則第19条第6項第5号を例にしています。その号は、火災のとき煙が著しく充満するおそれのある場所以外の場所に設置すること と定めています。回答が解釈した文言は、番号が第6項第5号に移って今も生きています。
同じ趣旨で、昭和53年には、地下駐車場(地下1階地上5階の銀行)について粉末の移動式を置けるかが問われ、添付資料から煙が著しく充満するおそれのある場所に該当すると解するとされました(昭和53年4月10日 消防予第59号 消防庁予防救急課長から茨城県総務部長あて)。地下の駐車場は、置けない側になりやすい例です。
回答は、開口の面と常時開放という条件を示すだけで、開口の面積の数値までは示していません。自分の駐車場が当たるかは、開口の位置を図に落として所轄の消防機関に確かめます。
二面が外に開いていないと、移動式は置けないんですね。
はい。
常時開放の開口が二面以上あることが、目安の一つです。
よくある質問
まとめ
回答が、条文とつながりました。
うちの駐車場も確かめてみます!
質疑応答も、今の条文の意味を理解するために読めます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第17条の14
- 消防法施行令第13条
- 消防法施行規則第19条・第20条・第21条
- ハロン1301消火設備について(昭和51年12月13日 消防予第120号 消防庁予防救急課長から愛媛県生活環境部長あて回答)
- ハロゲン化物消火設備を設置する場合の開口部について(昭和52年4月12日 消防予第67号 消防庁予防救急課長から宮城県総務部長あて回答)
- 粉末消火設備を設置する場合の薬剤量の算出について(昭和52年1月27日 消防予第12号)
- 第3種粉末を使用する粉末消火設備について(昭和53年2月21日 消防予第32号)
- ハロン1301を使用するハロゲン化物消火設備の放出消火剤の排出措置について(昭和53年2月6日 消防予第24号)
- 消防法施行規則第19条第5項第5号中「以外の場所」の解釈について(昭和50年6月16日 消防安第65号)
- 特殊消火設備(粉末移動式)の地下駐車場への設置の可否について(昭和53年4月10日 消防予第59号)
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や機関の名称、単位等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





