駐車場や工場の消火設備は、建物の構造しだいで「固定式でないといけないのか」「人が持って使う移動式で足りるのか」という疑問が出ます。
そんなとき消防庁は、都道府県や消防本部からの疑問に、質疑応答の形で答えてきました。
この記事では、昭和54年から平成5年までの質疑応答から五つを選び、移動式で済ませられるかを軸に現行の条文と照らします。
立体駐車装置から電気オーブンまで、順に読みます。
駐車場の消火設備は、固定式でないとだめなんでしょうか。
そこが質疑応答で問われた点です。
五つの質疑応答を、順に見ていきます。
回答は、今の条文とどうつながっているんでしょうか。
そこを一つずつ確かめます。
現行の条文に当てはめて読みます。
- 立体駐車装置は、上段に足場がなければ全域放出方式が適当とされ、足場を設けて消火活動が十分できるなら移動式粉末も認められました
- 機械式駐車場でも、消火用足場などなら移動式粉末で差し支えなく、原則は各段を一つの階とみなして設置します
- 段差のある敷地の屋上駐車場は、道路に接していても屋上として設置対象になり、非常時に道路へ出られる部分を二か所以上設ければ令第32条で免除できるとされました
- 自動車修理工場は、容易に煙が抜ける構造でなければ、煙が著しく充満するおそれのある場所に当たり移動式は使えません
- 電気オーブンは、電気を熱に変える機器として火気に当たりますが、電気オーブンだけなら最大消費熱量が毎時30万キロカロリーに満たず設置義務の対象外です
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目次
立体駐車装置の上段に足場がないとき、移動式の消火設備は認められるのか

そこに移動式の消火設備を置いてよいのかが、昭和56年に問われました。
なお、中段および上段については、足場を設けるなど消火活動が十分行えるようにした場合は、移動式粉末消火設備とすることができるか。
延べ面積は394.94平方メートル、収容能力は26台×2。
(昭和56年5月14日 消防予第109号 消防庁予防救急課長から石川県総務部長あて回答)
令第13条第1項の表は、昇降機等の機械装置により車両を駐車させる構造で、車両の収容台数が10台以上のものを、水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備の設置対象にしています。
移動式の粉末消火設備の技術基準は、令第18条第2号が、防護対象物の各部分から一のホース接続口までの水平距離が15メートル以下と定めています。規則第21条第5項は、この設備の基準の細目を規則第19条第6項第2号から第5号の2までの例によるとしており、その第5号が「火災のとき煙が著しく充満するおそれのある場所以外の場所」に設置することを求めています。
回答は、人が近づけず消火活動が十分に期待できない段には固定式の全域放出方式が適当で、足場を設けて活動できるようにした段には移動式粉末を認める、という整理です。なお、全域放出方式の不活性ガス消火設備は、規則第19条第5項第1号の2が、常時人がいない部分以外には設けてはならないと定めています。
足場さえあれば、移動式でもいいんですね。
はい。
消火活動が有効にできるかどうかで決まります。
機械式駐車場の移動式粉末消火設備は、各段に一つずつ設けなければならないのか

平成5年の質疑応答は、設置の単位を答えています。
問2 移動式の粉末消火設備として差し支えないとした場合、消火設備の設置方法としては、各段を1の階とみなして設置させる必要があるか。それとも、2段ごとに消火設備を設置することで足りるか。
答2 原則として各段を1の階とみなして設置する。ただし、2つの段の車両を1の段の移動式消火設備により有効に消火できる場合は、2段ごとに設置することとして差し支えない。
(平成5年11月29日 消防予第320号 消防庁予防課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
答1は、前の昭和56年の回答と同じ考え方です。機械式でも、消火用足場を設けるなど消火活動が有効に実施できるなら移動式粉末が選べます。
答2の「各段を1の階とみなす」という原則は、令第18条第2号のホース接続口の基準と合わせて考えると理解しやすくなります。ホースが届くのは、接続口から水平距離で15メートルの範囲です。上下に重なる段は、そのまま一つの範囲には数えにくいため、まず段ごとに置くのが原則になったと考えられます。
例外として、一つの段の移動式消火設備で、二つの段の車両を有効に消火できるなら、二段ごとでもよいとされました。設計では、二つの段を一つの設備で消火できることを、図面で示す必要があります。
設置の単位は段ごとが基本なんですね。
そうです。
二段まとめる例外は、有効に消火できる根拠が要ります。
段差のある敷地の屋上駐車場は、道路に接していれば設置対象から外れるのか

地盤面に段差があって、屋上が道路と接している場合にどう扱われるのかが、昭和59年に問われました。
(1) 屋上として、消防法施行令第13条に定める水噴霧消火設備等の設置対象とする。
(2) 令第8条区画されているので、屋上とはしないで屋外として消防用設備等の設置対象としない。
(3) 道路との接道面を現在の1か所から2か所に増加したときは、(2)の取扱いとする。
(4) 道路との接道面を全面とした場合は、(2)の取扱いとする。
ただし、質問の防火対象物については、非常の場合に車が道路に出られる部分を2か所以上設けた場合は、消防法施行令第32条の規定を適用し、水噴霧消火設備等を設置しないことができる。
(昭和59年4月24日 消防予第78号 消防庁予防救急課長から福岡県消防防災課長あて回答)
令第8条は、開口部のない耐火構造の床又は壁などで区画されたときは、その区画された部分を別の防火対象物とみなす通則です。設問の(2)は、この区画があるので屋上ではなく屋外扱いにできないかを問うたもので、回答は(1)、つまり屋上として設置対象になるとしました。
現行の令第13条第1項の表は、駐車の用に供される部分について、屋上部分にあっては床面積が300平方メートル以上を対象にしています。ただし、駐車するすべての車両が同時に屋外に出ることができる構造の階は、対象の階から除くと書かれています。
昭和59年の回答が示した「非常の場合に車が道路に出られる部分を二か所以上設ける」という特例は、これに近い発想と読めます。ただし、今の条文の書き方は当時と違います。屋上の駐車場では、車が同時に屋外へ出られる構造かどうかを、最初に確かめます。
道路に接しているだけでは、外れないんですね。
はい。
出口が二か所以上ある構造かどうかがポイントでした。
自動車修理工場は、煙が抜ける建物とみなして移動式を使ってよいのか

長野市消防局の照会に、消防庁は建物の状況を一つずつ確かめて答えました。
概要 鉄骨造(簡易耐火建築物)3階建て、修理工場の床面積は738平方メートル。同時に修理できる台数は普通車6台と大型車3台、作業人員は10名から15名。
建築物の状況 (1)建物の周辺には避難に十分な空地がある。(2)修理工場内から外部への出入口は十分にある(通常時はオーバースライダーを簡単に手動開放できる)。(3)簡易耐火構造で延焼の恐れのある部分がない。(4)内装は不燃材料及び準不燃材料。(5)通常時の歩行最長距離は20メートル以内。(6)建築基準法による1,000平方メートルの防火区画がある。(7)修理工場内は作業員のみで通常10名から15名程度。(8)建築基準法による排煙設備(手動連動オペレーター式)が設けてある。(9)採光が床面積の二十分の一以上ある。(10)窓、出入口の開放できる面積が床面積の20パーセント以上ある。(11)消防法の無窓階にならない。
(昭和60年2月14日 消防予第29号 消防庁予防救急課長から長野県生活環境部長あて回答)
当時の規則第19条第5項第5号は、現在は規則第19条第6項第5号に位置しています。移動式の粉末消火設備は、規則第21条第5項がこの号の例によると定めているため、火災のとき煙が著しく充満するおそれのある場所以外の場所です。
設問の工場は、空地、出入口、不燃の内装、排煙設備、採光、開放できる窓と、煙対策に見える条件が並んでいました。それでも回答は、容易に煙が抜ける構造とはなっていないと判断しています。回答は、どの項目が決め手かまでは示していません。
設計では、窓と出入口があるから大丈夫という発想では足りません。移動式を選ぶ前に、所轄の消防機関と、煙が抜ける構造かどうかを協議します。
設備が整っていても、煙が抜けるとは限らないんですね。
そうです。
構造で判断されることを覚えておきます。
電気オーブンは、消火設備の基準にいう火気に当たるのか

電気オーブンが多量の火気を使用する部分に入るのかが、昭和57年に問われました。
2 オーブン類のみが含まれるとすれば、工場内は不燃材料で内装され、熱源が密閉された電気オーブンのみを設置した場合、電気オーブンから火災が発生しても、他に延焼するおそれは少ないと考えられることから、令第32条の規定を適用し、特殊消火設備の設置を免除してもよろしいか。また、ガスオーブンを設置した場合はどうか。
3 2の令第32条の適用ができないとすれば、自然排煙設備を設置した場合に、移動式特殊消火設備を設置してよろしいか。また、非常電源付機械排煙設備とした場合はどうか。なお、当該工場には自動火災報知設備と屋内消火栓が設置されている。
2 前段、後段いずれも令第32条の規定を適用することは適当でない。
3 前段、後段いずれも、昭和51年7月20日消防予第37号中別紙第一、4に掲げる各項目を満足する場合には、令第32条の規定を適用して移動式消火設備によることとしてさしつかえない。
(昭和57年5月10日 消防予第104号 消防庁予防救急課長から長崎県総務部長あて回答)
令第13条第1項の表は、鍛造場、ボイラー室、乾燥室その他多量の火気を使用する部分で、床面積が200平方メートル以上のものを対象にしています。回答1は、火を燃やす機器に限らず、電気を熱に変えて働く電気オーブンのような機器も、この「火気」に含めて数えるとしました。
対象になるかどうかは、熱量でも決まります。回答1は、電気オーブンのみの場合は最大消費熱量が毎時30万キロカロリー(キロワットに直すと約350)に満たないので、設置義務の対象にならないとも述べています。
昭和54年の質疑応答(昭和54年9月11日消防予第173号)は、この線引きを整理しています。「その他多量の火気を使用する部分」は、最大消費熱量の合計が毎時30万キロカロリー以上のものが設置されている場所とし、30万キロカロリー未満に令第32条を適用できるとした従来の回答の部分は、削除されたものと解するとしました。
回答2と回答3は、対象になった場合の話です。令第32条による免除は適当でないとされ、移動式は、昭和51年の通達の別紙が挙げる各項目を満たす場合に限って令第32条を適用して認められる、という組み立てです。
電気でも火気に数えるんですね。
はい。
熱量と床面積の両方で確かめます。
よくある質問
まとめ
回答が、条文とつながりました。
うちの建物も確かめてみます!
質疑応答も、今の条文の意味を理解するために読めます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第8条・第13条・第18条・第32条
- 消防法施行規則第19条・第21条
- 特殊消火設備の設置について(昭和56年5月14日 消防予第109号 消防庁予防救急課長から石川県総務部長あて回答)
- 機械式駐車場に設置する水噴霧消火設備等に係る質疑について(平成5年11月29日 消防予第320号 消防庁予防課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
- 消防法施行令第13条の取扱いについて(昭和59年4月24日 消防予第78号 消防庁予防救急課長から福岡県消防防災課長あて回答)
- 水噴霧消火設備等を設置すべき防火対象物について(昭和60年2月14日 消防予第29号 消防庁予防救急課長から長野県生活環境部長あて回答)
- 消防用設備等の設置等の疑義について(昭和57年5月10日 消防予第104号 消防庁予防救急課長から長崎県総務部長あて回答)
- 消防用設備等技術基準に関する疑義等について(昭和54年9月11日 消防予第173号 消防庁予防救急課長から宮城県総務部長あて回答)
- 電気設備が設置されている部分等における消火設備の取扱いについて(昭和51年7月20日 消防予第37号 消防庁予防救急課長)
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や機関の名称、単位等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





