平成24年9月29日、姫路市の日本触媒姫路製造所で爆発火災が起き、消防職員1名が殉職しました。
その2日後の10月1日、消防庁は消防危第220号・消防特第195号で、化学プラントにおける事故防止等の徹底を通知しました。
通知は、同種事故の再発防止と事故後の適切な対応を、化学プラントを有する関係事業者に求めています。
この記事では、事故の経緯と対象、5項目の中身と見落としやすい点を、消防庁の通知と現行の条文をもとに解説します。
うちの事業所にも危険物を扱う設備があります。
化学プラントの爆発火災を受けて、消防庁が通知を出したと聞きました。
はい。
平成24年10月1日に、消防庁が5項目の徹底を求めました。
事故の原因が分かってから、対応すればよいのでしょうか。
いいえ。
通知は、原因の究明中でも再確認を求めています。
- 消防庁は平成24年10月1日の消防危第220号・消防特第195号で、化学プラントを有する関係事業者に事故防止等の徹底を求めました。
- きっかけは平成24年9月29日の日本触媒姫路製造所の爆発火災で、消防職員1名が殉職し、消防職員23名を含む35名が負傷しました。
- 通知の時点で事故の原因は究明中でしたが、同種事故の再発防止と事故後の適切な対応のために、5項目が示されました。
- 項目のひとつが、暴走反応等の異常な現象が生じたら、直ちに消防機関に通報することで、根拠は石油コンビナート等災害防止法第23条第1項です。
- 見落としやすいのは、爆発や火災の発生危険性と影響範囲を、現場に到着した消防隊にも周知できるよう、あらかじめ計画や訓練をしておくことです。
▼
目次
化学プラントの爆発火災はなぜ通知が出るまでになったのか

通知は、同種事故の再発防止と、事故後の適切な対応を求めています。
平成24年9月29日、株式会社日本触媒姫路製造所において、消防活動中の消防職員1名が殉職、消防職員23名を含む35名が負傷する(平成24年9月30日18時30分現在)爆発火災が発生しました(別紙)。この事故については現在原因の究明が行われているところですが、平成24年4月22日には三井化学株式会社岩国・大竹工場において、また、平成23年11月13日には東ソー株式会社南陽事業所において死傷者を伴う爆発火災が発生していることにかんがみ、同種事故再発防止とともに事故後の適切な対応を図るため、貴職におかれましては下記事項について化学プラントを有する関係事業者に対し徹底いただきますようお願いします。
日本触媒姫路製造所の事故では、消防活動中の消防職員1名が殉職し、消防職員23名を含む35名が負傷しました。
通知は、同じ平成24年4月に三井化学の岩国・大竹工場で、平成23年11月に東ソーの南陽事業所で、死傷者を伴う爆発火災が起きていたことも挙げています。
通知の時点で、日本触媒の事故の原因は究明中でした。
別紙は、消防庁が平成24年9月30日18時30分現在の状況をまとめた第9報です。 別紙の内容は、次の表のとおりです。
| 項目 | 別紙(第9報)の内容 |
|---|---|
| 発生場所 | 姫路臨海特別防災区域(兵庫県姫路市)、第1種特定事業所 |
| 施設 | アクリル酸製造施設(危険物施設の製造所) |
| 火災の概要 | アクリル酸混じりの廃液(第4類第2石油類)を一時貯蔵するタンク(許可容量70立方メートル)の異常な温度上昇により爆発炎上し、隣接するアクリル酸タンクとトルエンタンクに延焼。爆発警戒中の消防車両にも延焼 |
| 覚知・鎮火 | 9月29日14時05分に覚知、9月30日15時30分に鎮火 |
| 死傷者 | 死者1名(消防吏員)、重症5名、中等症9名、軽症21名 |
| 火災原因 | 調査中 |
事故が起きたあとに出された通知なのですね。
はい。
殉職者を出した爆発火災を受けた通知です。
この通知はだれに何を求めているのか

徹底を求められているのは、化学プラントを有する関係事業者です。
貴職におかれましては下記事項について化学プラントを有する関係事業者に対し徹底いただきますようお願いします。また、貴都道府県内の市町村(消防の事務を処理する一部事務組合及び広域連合を含む。)に対しても、この旨の情報提供をお願いします。
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(略)
四 第一種事業所 石油コンビナート等特別防災区域(以下「特別防災区域」という。)に所在する事業所であつて、(略)が一以上となるものをいう。
五 第二種事業所 特別防災区域に所在する事業所のうち第一種事業所以外の事業所であつて、(略)都道府県知事が指定するものをいう。
六 特定事業所 第一種事業所及び第二種事業所をいう。
通知は、都道府県から市町村にも、この旨を情報提供するよう求めています。
別紙は、事故が起きた事業所を、姫路臨海特別防災区域の第1種特定事業所と記しています。
石油コンビナート等災害防止法は、特別防災区域にある事業所のうち、一定の基準以上のものを第一種事業所、都道府県知事が指定したものを第二種事業所とし、あわせて特定事業所と呼びます。
通知の項目3が根拠に挙げる第23条第1項は、この特定事業所の話です。 通知の概要は、次の表のとおりです。
| 項目 | 通知の内容 |
|---|---|
| 通知 | 平成24年10月1日 消防危第220号・消防特第195号「化学プラントにおける事故防止等の徹底について」 |
| 発出 | 消防庁危険物保安室長、消防庁特殊災害室長 |
| 宛先 | 各都道府県消防防災主管部長、東京消防庁・指定都市消防長 |
| きっかけ | 平成24年9月29日の日本触媒姫路製造所の爆発火災(別紙は第9報) |
| 求めたこと | 化学プラントを有する関係事業者への、5項目の徹底 |
うちの事業所も対象になるのでしょうか。
通知は、化学プラントを有する関係事業者に徹底を求めています。
通報の条文は、特定事業所が対象です。
消防庁が求めた5項目の中身は何か

制御の条件、監視の方法、異常時の通報、消防隊への周知、対策の見直しです。
1 化学反応を伴う製造工程、自己反応により温度・圧力が上昇するおそれのある化学物質等について、これらを安全に制御するための条件を再確認し、従業者に周知徹底すること。
2 異常が生じたかどうかの監視方法や判断指標(温度、圧力等)を再確認し、適切な運転管理を徹底すること。
3 暴走反応等異常な現象が生じた場合、石油コンビナート等災害防止法(昭和50年法律第84号)第23条第1項の規定に基づき、直ちに消防機関に通報することを徹底すること。
4 爆発や火災の発生危険性及びその影響範囲について、現場対応に当たる従業者、また、現場到着した消防隊に周知し、適切に安全管理を行うことができるよう、あらかじめ計画、訓練等すること。
5 上記1~4について、必要に応じ、対策の見直しを図ること。
第1に、製造工程や化学物質を安全に制御する条件を再確認し、従業者に周知徹底します。
第2に、異常が生じたかどうかの監視方法や判断指標を再確認し、適切な運転管理を徹底します。
第3に、暴走反応等の異常な現象が生じたら、直ちに消防機関に通報します。
第4に、爆発や火災の危険性と影響範囲を、従業者と消防隊に周知できるよう、計画、訓練等をします。
第5に、第1から第4について、必要に応じて対策を見直します。 5項目を整理すると、次の表のとおりです。
| 項目 | 通知が求めていること | あてはまる場面 |
|---|---|---|
| 1 | 安全に制御するための条件の再確認と、従業者への周知徹底 | 化学反応を伴う製造工程、自己反応により温度・圧力が上昇するおそれのある化学物質等 |
| 2 | 監視方法や判断指標(温度、圧力等)の再確認と、適切な運転管理の徹底 | 異常が生じたかどうかの判断 |
| 3 | 直ちに消防機関に通報することの徹底 | 暴走反応等異常な現象が生じた場合 |
| 4 | あらかじめ計画、訓練等すること | 爆発や火災の発生危険性及びその影響範囲の、従業者と消防隊への周知 |
| 5 | 対策の見直し | 必要に応じて、上記1~4について |
つまり、制御と監視と通報と周知と見直しの5項目ですね。
そのとおりです。
特に異常時の通報は、条文の裏付けがあります。
実務で見落としやすいのはどこか

見落としやすいのは、対象の広さ、通報の早さ、消防隊への周知の3点です。
特定事業所においてその事業の実施を統括管理する者は、当該特定事業所における出火、石油等の漏洩その他の異常な現象の発生について通報を受け、又は自ら発見したときは、直ちに、石油コンビナート等防災計画の定めるところにより、その旨を消防署又は市町村長の指定する場所に通報しなければならない。
2 消防署長又は市町村長は、前項の通報を受けた場合には、直ちに、石油コンビナート等防災計画の定めるところにより、その旨を石油コンビナート等防災本部、警察署、海上警備救難機関その他の関係機関に通報しなければならない。
第1に、対象は化学反応を伴う工程だけではありません。
通知は、自己反応により温度・圧力が上昇するおそれのある化学物質等も、安全に制御する条件を再確認する対象にしています。
第2に、通報は直ちに行います。
条文は、統括管理する者が異常な現象を知ったときに直ちに通報するよう定め、通報を受けた消防署長等は関係機関へも通報します。
第3に、消防隊への周知も、計画と訓練の対象です。
通知は理由までは書いていませんが、別紙には、爆発警戒中の消防車両にも延焼したと記されています。
通報は、状況を見極めてからでもよいのでしょうか。
いいえ。
条文は、直ちに通報するよう定めています。
明日から何を確認し、どう備えればよいのか

自分の事業所に当てはめて、次の5点を確かめてみてください。 確認は、条件・監視・通報・周知・見直しの順に進めます。
通報の連絡経路と、消防隊へ伝える手順は、夜間や休日でも動くかを見ておきましょう。
設備や運転条件が変わったときは、そのたびに見直します。
- 化学反応を伴う工程や、自己反応で温度・圧力が上昇するおそれのある物質について、安全に制御する条件を書類と現場で照らし、従業者へ周知する
- 温度・圧力などの監視方法と判断指標を確かめ、異常かどうかを現場で判断できる形になっているかを見る
- 異常な現象が起きたとき、直ちに消防機関へ通報する担当者と連絡経路を、夜間と休日を含めて決めておく
- 爆発や火災の危険性と影響範囲を、現場に到着した消防隊へ伝える手順を決め、訓練に組み込む
- 上の4点に不備が見つかったときや、設備・運転条件が変わったときは、対策を見直す
まず、うちの通報の連絡経路が夜間も動くかを確かめます。
夜間や休日の体制も、一緒に確認してください。
よくある質問
まとめ
通報と周知の手順を見直して、いざというときに備えます!
防火管理や消防設備の備えの相談も、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「化学プラントにおける事故防止等の徹底について」(平成24年10月1日 消防危第220号・消防特第195号 消防庁危険物保安室長・消防庁特殊災害室長通知。別紙:株式会社日本触媒姫路製造所爆発火災(第9報) 平成24年9月30日18時30分現在)
- 石油コンビナート等災害防止法(昭和50年法律第84号)第2条・第23条 e-Gov法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





