パチンコ店で大きな火災が起きると、同じ業種のお店の経営者は「うちは大丈夫か」と落ち着かなくなるのではないでしょうか。
平成21年7月5日、大阪市此花区のパチンコ店で火災があり、消防庁予防課長は翌日の7月6日に、消防予第296号で全国の消防へ緊急点検の指導を求めました。
ただし、この通知は新しい義務を作る法令ではなく、火災の原因も確定していない段階で出されています。
この記事では、通知が出された理由、対象、求めた内容、読むときの落とし穴、確認手順を、通知と現行の条文をもとに解説します。
パチンコ店の火災があると、同業のうちも心配になります。
国は、そのとき何を求めるのですか。
消防庁は火災の翌日に、緊急点検の指導を求める通知を出しました。
まず、通知の文面を確かめましょう。
法令が変わったのか、それとも別の話なのか知りたいです。
新しい義務を作る通知ではありません。
順番に整理します。
- 消防庁予防課長は平成21年7月6日の消防予第296号で、大阪市此花区のパチンコ店火災を受けて、同種店舗の関係者へ防火安全対策の点検を指導するよう求めました。
- 通知に添付された第4報(7月6日13時現在)では、死者4人、負傷者19人とされ、火災原因は調査中でした。
- 通知は、放火の指摘があることから放火火災防止対策の指導に特に留意するよう求め、平成16年の消防予第253号を参考にするよう述べています。
- 建物は複合用途の(16)項イで収容人員は390人、最新の立入検査の指摘事項は防火対象物定期点検未報告でしたが、通知は指摘事項と火災との関係を述べていません。
- 現行の政令は、(16)項イなどで収容人員が300人以上の防火対象物に定期点検報告を求め(令第4条の2の2第1号)、点検は一年に一回行います(規則第4条の2の4)。
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目次
消防庁はなぜパチンコ店の火災の翌日に緊急点検を求める通知を出したのか

まず、通知の書き出しで経緯を確かめます。
去る7月5日に発生した大阪市此花区のパチンコ店における火災(別添参照)によって死者4人、負傷者19人の被害が発生しました。このような火災の発生を防止するため、緊急に同種店舗の関係者に対し、防火安全対策の点検を行うようご指導をお願いします。
宛先は、各都道府県消防防災主管部長、東京消防庁、各指定都市消防長です。
通知には、消防庁がまとめた火災の第4報(平成21年7月6日13時現在)が別添として付いています。
別添の火災原因の欄は「調査中」で、通知の時点では原因が分かっていません。
なお、通知に添付された資料は、建物名や店舗名も記していますが、この記事では載せません。
| 項目 | 別添(第4報)の内容 |
|---|---|
| 火災の日時 | 平成21年7月5日、覚知は16時16分、鎮圧は16時34分、鎮火は20時22分 |
| 被害 | 死者4人、負傷者19人(重症5人、中等症3人、軽症11人) |
| 建物の用途 | 複合用途の(16)項イ。1階がパチンコ店、2階は事務所と診療所、3階は学習塾と電気室、4階は診療所と事務所、5階は展示場、6階は事務所 |
| 建物の規模 | 耐火構造、地上6階、延べ面積2,384平方メートル、収容人員390人。焼けたのは1階部分の400平方メートル |
| 設置されていた消防用設備等 | 消火器、屋内消火栓設備、自動火災報知設備、避難器具、誘導灯 |
| 最新の立入検査 | 平成21年3月17日、指摘事項は「防火対象物定期点検未報告」 |
火災の原因がまだ分からない段階で、通知が出たのですね。
はい。
原因の究明を待たずに、同じ業種へ点検を呼びかけています。
緊急点検の対象になる「同種店舗」とはどんな店なのか

令別表第一の用途区分と合わせて確かめます。
遊技場又はダンスホール
複合用途防火対象物のうち、その一部が(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供されているもの
パチンコ店は、令別表第一の(2)項ロの遊技場として扱われるのが一般的です。
火災のあった建物は、パチンコ店のほかに診療所や学習塾などが入った複合用途の(16)項イでした。
つまり、単独のパチンコ店だけでなく、パチンコ店が入居するビルの関係者も、通知を読んでおく価値があります。
ただし、複合ビルの他の店舗まで「同種店舗」に含まれるかは、通知に書かれていません。
| 用途 | 通知の建物との関係 | 根拠 |
|---|---|---|
| 遊技場 | 火災のあった1階のパチンコ店にあたる | 令別表第一(2)項ロ |
| 複合用途 | 建物全体の区分。1階のほか診療所や学習塾なども入っていた | 令別表第一(16)項イ |
| 同種店舗 | 範囲は通知に書かれていない | 通知の本文 |
入居しているビルの用途も、確かめておいたほうがよいですね。
はい。
店舗の用途とビル全体の用途の両方を見ます。
通知は所轄の消防にどんな指導を求めたのか

通知の後半の文章で確かめます。
また、本火災については現在関係当局により火災原因の究明が行われているところですが、放火によるものとの指摘もなされていることから、特に放火火災防止対策の指導についてご留意をお願いいたします。なお、この際には、「量販店等における防火安全対策の徹底について」(平成16年12月20日付消防予第253号・消防安第236号)を参考としてください。
一つ目は、同種店舗の関係者に対して、防火安全対策の点検を行うよう指導することです。
二つ目は、放火の指摘があることから、放火火災防止対策の指導に特に留意することです。
三つ目は、指導の際に、平成16年の消防予第253号・消防安第236号を参考にすることです。
253号の内容は、量販店の放火火災を機にまとめられた通知として、別の記事で詳しく解説しています。
| 求め | 通知の言葉 | 誰への求めか |
|---|---|---|
| 点検の指導 | 緊急に同種店舗の関係者に対し、防火安全対策の点検を行うよう指導 | 消防機関(都道府県は市町村へ周知) |
| 放火への留意 | 特に放火火災防止対策の指導について留意 | 消防機関 |
| 既存通知の参照 | 「量販店等における防火安全対策の徹底について」を参考 | 消防機関 |
国が点検を義務づけるのではなく、消防が指導するのですね。
そのとおりです。
通知は消防機関あてに出されています。
通知を読むときに見落としやすいのはどこか

通知の性格、原因の扱い、立入検査の指摘、点検報告の対象です。
法第八条の二の二第一項の政令で定める防火対象物は、別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十六)項イ及び(十六の二)項に掲げる防火対象物であつて、次に掲げるものとする。
一 収容人員が三百人以上のもの
二 (略)
法第八条の二の二第一項の規定による点検は、一年に一回行うものとする。(ただし書は略)
通知の末尾には、消防組織法第37条の規定に基づく助言として発出すると書かれています。
二つ目は、火災の原因が調査中だった点で、放火は「指摘もなされている」と書かれているだけです。
三つ目は、別添の立入検査の欄に、平成21年3月17日の指摘事項として「防火対象物定期点検未報告」とありますが、通知はその指摘と火災との関係を述べていない点です。
四つ目は、定期点検報告の対象が、パチンコ店だから一律に決まるのではなく、収容人員などの条件で決まる点です。
通知の建物は、複合用途の(16)項イで収容人員が390人なので、条文の文言に当てはめると、令第4条の2の2第1号の収容人員300人以上にあたる形です。
| 見落としやすい点 | 通知や条文の書き方 | 確認のしかた |
|---|---|---|
| 通知の性格 | 消防組織法第37条の規定に基づく助言 | 新しい義務ではなく、既存の義務を確かめる機会と読む |
| 火災原因 | 調査中。放火の指摘があるとだけ記載 | 原因を断定した説明をしない |
| 立入検査の指摘 | 最新の立入検査の指摘事項として「防火対象物定期点検未報告」 | 火災との関係は通知に書かれていないと押さえる |
| 点検報告の対象 | 令第4条の2の2第1号は収容人員300人以上などを対象にする | 自分の建物の用途と収容人員を確かめる |
未報告の指摘が、火災の原因だったわけではないのですね。
通知は、そこまでは述べていません。
事実として書かれたことだけを読みましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

そこで、通知と条文から、確認したい点を五つに整理します。
緊急に同種店舗の関係者に対し、防火安全対策の点検を行うようご指導をお願いします。
次の手順は通知に書かれた義務ではなく、通知と条文を踏まえた実務上のおすすめです。
個別の適否は、所轄の消防署で確かめてください。
- 自分の建物が令第4条の2の2の対象か、用途と収容人員から確かめ、対象なら最後に報告した日と次の期限を控える
- 建物の外周や店内に、燃えやすい物を置いていないか、閉店後の状態も含めて見回る
- 消火器、屋内消火栓設備、自動火災報知設備、避難器具、誘導灯の点検記録を確かめる
- 複合ビルなら、他の階の事業者と避難経路や連絡の方法を共有できているか確かめる
- 不明な点は、消防の指導を待たずに所轄の消防署へ相談する
まず、定期点検報告の対象かどうかを確かめます。
それが入り口です。
用途と収容人員から見てください。
よくある質問
まとめ
定期点検報告の対象から、確かめます!
防火対象物の点検と放火対策の見直しは、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防予第296号「パチンコ店における火災の発生を踏まえた緊急点検について」(平成21年7月6日 消防庁予防課長)別添「大阪市此花区パチンコ店火災(第4報)」
- 消防法(昭和23年法律第186号)第8条の2の2 e-Gov法令検索
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)別表第一(2)項ロ・(16)項イ、第4条の2の2 e-Gov法令検索
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第4条の2の4 e-Gov法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





