建物の中で火事が起きると、燃える火より先に、煙が人の避難を妨げます。
その煙を外へ出す排煙設備は、建築基準法施行令で、どの建物に要るのか、どんな造りにするのかが決まっています。
昭和46年の建設省の質疑応答には、倉庫や更衣室、ボーリング場のレーンにも排煙設備は要るのかといった問い合わせが残っています。
この記事では、その中から5問を取り上げ、現行の建築基準法施行令と照らして読みます。何に排煙設備が要り、何が要らないとされたのかを、順に確かめます。
排煙設備にも、昔の質疑応答があるんでしょうか。
はい。
昭和46年に、建設省が答えたものが残っています。
昔の質疑応答は、今の政令とどうつながるんでしょうか。
一つずつ確かめます。
現行の条番号に読み替えながら読みます。
- 特殊建築物の部分が500平方メートル以内でも、事務所などを足して建物が超えれば、排煙設備は必要と答えています
- 延べ面積が1,000平方メートルを超える建物の200平方メートルを超える居室は、居室を合計せず個々の居室の床面積で見ると答えています
- 倉庫や更衣室、機械室、電気室は防火上支障がなければ不要とされ、包装材や溶接がある場合は火災荷重や引火物の有無で個別に判断すると答えています
- 引違い窓などに付けたひもは、高さなどが合えば手動開放装置と解されるが、電動式の押ボタンは解されないと答えています
- ディーゼルエンジンで排煙機を駆動する方式は、五つの要件を備えれば予備電源を設けなくてよいとされました
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目次
特殊建築物の部分が小さくても、他の用途を足して500平方メートルを超えれば排煙設備は要るのか

昭和46年には、劇場や病院などの用途に使う部分は小さいが、事務所など他の用途を足すと建物が大きくなる場合の扱いが、大阪府建築士会から建設省に問われました。
(昭和46年12月4日 住指発第905号 建設省住宅局建築指導課長から大阪府建築士会あてに回答)
現行の政令第126条の2第1項も、冒頭で、法別表第1(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途の特殊建築物で、延べ面積が500平方メートルを超えるものには、排煙設備を設けなければならないと定めています。延べ面積は建築物全体の面積ですから、回答と符合します。
ただし、同項のただし書には、排煙設備を設けなくてよい建築物や部分が、第1号から第5号まで挙げられています。当てはまるかどうかは、次の論点で確かめます。今の計画については、特定行政庁や建築主事、指定確認検査機関に確認します。
用途の部分が小さくても、建物全体で見るんですね。
はい。
延べ面積が基準になります。
延べ面積が1,000平方メートルを超えるとき、200平方メートルを超える居室は合計で数えるのか

昭和46年の同じ質疑には、居室の床面積の数え方についての問いもありました。
(昭和46年12月4日 住指発第905号 建設省住宅局建築指導課長から大阪府建築士会あてに回答)
現行の政令第126条の2第1項は、「延べ面積が1,000平方メートルを超える建築物の居室で、その床面積が200平方メートルを超えるもの」と書いています。条文が「居室で、その床面積が」と一室について書いているので、回答の読み方と合います。
ただし、建築物の高さが31メートル以下の部分にある居室で、床面積100平方メートル以内ごとに防煙壁で区画されたものは、除かれます。
なお、政令第116条の2第2項には、ふすまや障子など随時開放できるもので仕切られた二室は一室とみなす規定があります。ただ、これは窓その他の開口部を有しない居室の判定についての規定で、回答が直接ふれたものではありません。
大きな部屋が一つあるかどうかで見るんですね。
はい。
居室ごとに面積を見ます。
倉庫や更衣室、ボーリング場のレーンには、排煙設備を設けなくてよいのか

昭和46年の質疑には、倉庫、更衣室、機械室、電気室や、可燃性の包装材、溶接作業、ボーリング場のレーン部分がそれに当たるかという問いがありました。
(昭和46年12月4日 住指発第905号 建設省住宅局建築指導課長から大阪府建築士会あてに回答)
当時の第3号と第4号は、現行の政令第126条の2第1項ただし書の第3号と第4号に当たります。第3号は階段の部分、昇降機の昇降路の部分その他これらに類する建築物の部分を、第4号は、機械製作工場、不燃性の物品を保管する倉庫その他これらに類する用途の建築物で、主要構造部が不燃材料で造られたものその他火災の発生のおそれの少ない構造のものを、除いています。
回答は、判断の軸を示しています。用途が似ているかは火災荷重で、構造が同等かは引火、着火及び火災成長の危険性で見ます。包装材の量が物品の量より多いとき、引火物があるときが、外れる例です。
現行の条文で、ボーリング場は、ただし書の第2号に、学校、体育館、スキー場などと並んで書かれています(学校等)。回答のハは、当時の運用に基づく答えなので、今の計画では、条文の第2号に当たるかどうかを、特定行政庁や建築主事に確認します。
倉庫でも、燃えるものが多いと外れるんですね。
はい。
火災荷重と引火物の有無で見ます。
窓に付けたひもや押ボタンは、排煙口の手動開放装置になるのか

昭和46年の質疑には、窓に付けたひもや、電動式の押ボタンが、その手動開放装置に当たるかという問いがありました。
(昭和46年12月4日 住指発第905号 建設省住宅局建築指導課長から大阪府建築士会あてに回答)
当時の第4号、第5号、第9号は、現行の政令第126条の3第1項の第4号、第5号、第9号に当たります。第4号は、排煙口に手動開放装置を設けることを求め、第5号は、手で操作する部分を、壁に設ける場合は床面から80センチメートル以上1.5メートル以下の高さに、天井から吊り下げて設ける場合は床面からおおむね1.8メートルの高さに設け、見やすい方法で使用方法を表示することを求めています。
ホの電動式の押ボタンについて、現行の第6号には、手動開放装置とは別に「遠隔操作方式による開放装置」という言葉があります。手動開放装置と書き分けられている点は、回答と符合しますが、今の計画で押ボタンを使うときは、どちらに当たるかを、特定行政庁や建築主事に確認します。
3台の排煙機の問いには、すべての排煙口に手動開放装置が必要と答えています。現行の第9号は、排煙機を、一の排煙口の開放に伴い自動的に作動するものとしており、これは手動開放装置とは別の求めです。
ひもでも、手で開けられれば装置になるんですね。
はい。
高さと使用方法の表示は、条文で確かめます。
ディーゼルエンジンで動かす排煙機には、予備電源が要らないのか

昭和46年には、常用電源が断たれたときにディーゼルエンジンで駆動する方式の排煙機の扱いについて、建設省が各特定行政庁と建築主事に通知しました。
(昭和46年7月30日 住指発第510号 建設省住宅局建築指導課長から各特定行政庁、建築主事部長あてに通知)
現行の政令第126条の3第1項第10号は、「電源を必要とする排煙設備には、予備電源を設けること」と定めていて、条文自体は変わっていません。通知は、その条文の読み方を、ディーゼルエンジン駆動の場合について示したものです。
五つの要件は、電源が断たれたときに自動で切り替わること、燃料を防火上安全に区画すること、排煙設備からの熱を遮ること、屋外の機器を雨水などから保護すること、季節による機能低下を防ぐことです。要件を備えることが前提で、備えなければ予備電源が要る、という読み方になります。
この通知が今の運用でも同じように扱われるかは、この記事からは断定できません。ディーゼル駆動の排煙機を設けるときは、特定行政庁や建築主事に確認します。
エンジンで動かせば、予備電源は要らないんですね。
はい。
五つの要件を備えることが前提です。
よくある質問
まとめ
質疑応答が、条文とつながりました。
うちの建物も、今の政令で確かめてみます!
質疑応答も、今の条文の意味を理解するために読めます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法施行令第116条の2・第126条の2・第126条の3
- 昭和46年12月4日 住指発第905号(建築基準法の疑点(排煙設備)について)
- 昭和46年7月30日 住指発第510号(内燃機関によって駆動される排煙設備の取扱いについて)
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や機関の名称、単位等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





