建物の工事が終わってから、確認申請書が消防に回ってくることがあります。
消防長や消防署長は、その建物に同意するのか、それとも、違反を直させるのが先なのかが、迷いどころです。
消防の実務書には、この場面を扱った質疑応答が、いくつも並んでいます。
この記事では、その中から5問を取り上げ、現行の消防法と建築基準法に照らして読みます。すでに建った違反、建築後の違反、確認前の命令、完成後の申請書、申請書との食い違いを、順に確かめます。
建物ができてから同意を求められることも、あるんでしょうか。
はい。
確認の手続が、工事のあとになってしまう例が、質疑に出てきます。
そのとき消防は、どう考えるんですか。
一つずつ確かめます。
現行の条文に当たれるところは、当たって読みます。
- すでに建った建物が建築基準法の防火の規定に違反していれば、不同意として書類を返すのが当然です。ただし、返して終わりではなく、違反箇所の改築を求めます
- 建築後に構造違反になったものは、同意の取消しではなく、消防法第5条の命令で措置すると答えています
- 確認を経なければ手がつけられないという意見は、明らかな誤りです。改修命令は、消防法第5条や建築基準法第9条で出せます
- 工事が終わった建物の確認申請書は、便宜の措置にすぎず、実質的な違反の是正を先にします。誠意がなければ、受理を拒否できます
- 申請書と完成した建物が食い違い、建物が防火の規定に違反していれば、申請書が適法でも不同意にできると答えています
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目次
消防の同意は、建物の何を見て決まるのか
建築確認をするときは、消防長や消防署長の同意が要ります。消防法第7条第1項は、確認をする権限を持つ行政庁や指定確認検査機関が、同意を得なければ確認をすることができないと定めています。防火地域と準防火地域以外の一般の住宅などは、ただし書で除かれています。同意の基準は、第7条第2項にあります。消防長や消防署長は、その建築物の計画が、法律や命令、条例の規定のうち建築物の防火に関するものに違反しないときは、同意しなければなりません。建築基準法第93条第2項にも、同じ趣旨の規定があります。
期限は、建築基準法第6条第1項第4号に係る場合が同意を求められた日から3日以内、その他の場合が7日以内です。同意できない理由があるときは、その期間内に、理由を通知します。
以下の5問は、この仕組みが、工事のあとに動き出したときの扱いです。
すでに建っている違反建築物に、消防は同意するのか

質疑応答には、その建物が建築基準法の構造の規定に違反している場合の扱いが出てきます。
(消防法第7条の同意に関する質疑応答(回答は発出当時のもの) 同意と違反建築物についての回答)
同意の基準は、計画が防火の規定に違反しないことです。すでに建った建物であっても、その基準は変わりません。違反があれば同意できないのが原則です。
一方で、書類を返しても、建物そのものは消えません。そのため、回答は、建築行政庁との連絡と、建築者への働きかけによって、違反箇所を実際に直させることまで求めています。
返して終わりではないんですね。
はい。
改築の実現まで、見届けます。
建ててから構造違反になったとき、同意は取り消せるのか

質疑応答は、その場合に、同意を取り消せるかを取り上げています。
(消防法第7条の同意に関する質疑応答(回答は発出当時のもの) 建築後の構造違反についての回答)
現行の消防法第5条第1項は、防火対象物の位置、構造、設備や管理の状況が、火災の予防に危険であるときなどに、権原を有する関係者へ、改修、移転、除去、工事の停止や中止などを命じられると定めています。
ただし書は、他の法令により建築などの許可や認可を受け、その後に事情の変更がないものを、命令の対象から外しています。回答は、建築後の違反を、申請の計画からの事情の変更ととらえ、ただし書には当たらないとしています。
なお、使用の禁止や停止などの命令は、現行では第5条の2の規定によるもので、要件と罰則が別に定められています。
同意した後でも、消防は動けるんですね。
はい。
事情の変更があれば、第5条の命令の対象です。
確認を経なければ手がつけられない、という意見は正しいのか

(消防法第7条の同意に関する質疑応答(回答は発出当時のもの) 無届の違反建築物についての回答)
建築基準法第9条第1項は、特定行政庁が、建築基準法令の規定に違反した建築物に対して、工事の施工の停止や、除却、移転、改築、修繕、使用禁止などの是正の措置を命じられると定めています。
消防の側にも、第5条の命令があります。二つの命令の道が並んでいるので、確認が先か命令が先かで動けなくなることはありません。
違反建築物の是正命令は、別の記事で詳しく解説しています。
手続の順番で、足止めされなくていいんですね。
はい。
二つの命令のどちらでも、出せます。
工事が終わった建物の確認申請書は、受け付けなければならないのか

前の問のように、工事が終わった建物について、あとから確認申請書が出されたときの扱いが、続けて答えられています。
(消防法第7条の同意に関する質疑応答(回答は発出当時のもの) 完成後の確認申請書についての回答)
確認は、工事の前に、計画を審査するための制度です。完成後に申請書を出させても、審査の意味が薄くなるため、回答も、理論的にはおかしいと認めています。
それでも便宜の措置を認めるのは、書類を整えることよりも、実害のある違反を直させることを優先するからです。誠意のない申請は、受理を拒否できるとも答えています。
書類が整うだけでは、足りないんですね。
はい。
実質の是正が先です。
申請書と完成した建物が食い違うとき、消防は不同意にできるのか

(消防法第7条の同意に関する質疑応答(回答は発出当時のもの) 申請書と完成建築物が相違する場合の回答)
同意の基準は、計画が防火の規定に違反しないことでした。申請書が適法でも、現に建っている建物が違反していれば、その基準を満たしません。
問に出てくる建築基準法第35条の2は内装の制限、第36条は防火壁など、防火に関する技術的基準を政令に委ねる規定です。回答は、いずれも防火に関する規定として扱っています。
関係者の側から見ると、申請書だけ整えても、建物が違えば通らない、ということです。
建物のほうを、見ているんですね。
はい。
現地の建物が、判断の基準になります。
よくある質問
まとめ
完成後の確認申請は、便宜の措置なんですね。
うちも、工事の前に確認を済ませます!
確認は、工事の前に受けるのが原則です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第5条・第7条
- 建築基準法第6条・第9条・第93条・第99条
- 消防法第7条の同意に関する質疑応答
※本記事は公表されている法令および通知に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や機関の名称等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





