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移動タンク貯蔵所の立入検査ではなぜ定期点検の義務違反が最も多かったのか|平成22年の全国結果と保安確保の重点項目を解説

移動タンク貯蔵所の立入検査結果を示す銀色のタンクローリーの写真

構内にタンクローリーが出入りするとき、その車両が検査を受けているかを気にしたことはあるでしょうか。
消防庁は、移動タンク貯蔵所と危険物運搬車両への立入検査の結果を、平成22年12月24日の消防危第296号で通知しました。
この記事では、通知に書かれた検査結果と、違反が多かった項目、現行の条文との関係、確かめたいことを解説します。

タンクローリーも、消防の立入検査を受けているのですか。
結果がどうだったのか気になります。

はい、消防庁が全国の結果をまとめています。
まず、通知の書き出しから確かめましょう。

検査で、どんなことが分かったのですか。

基準に合わない車両が17.15%ありました。
順に見ていきます。

この記事の結論
  • 消防庁危険物保安室長は、平成22年12月24日の消防危第296号で、移動タンク貯蔵所等に対する立入検査の結果を示し、保安確保の徹底を求めました。
  • 平成22年10月を中心に24,321台を検査し、基準不適合等の車両は4,171台(17.15%)で、前年の18.14%から0.99ポイント下がったものの、依然高い水準でした。
  • 項目別では、定期点検に係る義務違反が1,254件で最も多く、そのうち漏れの点検の未実施が528件でした。
  • 通知の別記は、定期点検、消火器2個以上、接地導線、底弁の閉鎖など7項目を重点項目に挙げています。
  • 通知は助言で、現行の規則は移動貯蔵タンクの漏れの点検を5年を経過する日の属する月の末日までに1回以上行うよう求めています。

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秋の立入検査、基準不適合の車両、定期点検の違反が最多の流れと、漏れの点検と点検記録と完成検査済証を示した図解

消防庁はなぜ秋に移動タンク貯蔵所と危険物運搬車両を検査したのか

路肩に停まった銀色のタンクローリーの左に、コーンとパトカーが並んだイラスト
通知の書き出しは、立入検査を依頼した日付と期間を書いています。
まず、その部分を引いて確かめます。
消防危第296号「移動タンク貯蔵所等に対する立入検査結果について」(平成22年12月24日、消防庁危険物保安室長)は、次のように述べています。
さて、平成22年8月17日付け消防危第177号により、平成22年10月1日から同年10月31日までの期間を中心に実施をお願いした移動タンク貯蔵所等に対する立入検査の実施結果について、別添1のとおりまとめましたので送付します。
この通知は、平成22年10月を中心にした立入検査の結果を、全国分まとめたものです。
「移動タンク貯蔵所」とは、車両に固定されたタンクで危険物を貯蔵し、取り扱う貯蔵所のことで、いわゆるタンクローリーです。
危険物を容器に入れて車で運ぶ「危険物運搬車両」も、同じ検査の対象です。
消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第十条第1項(現行、抜粋)
指定数量以上の危険物は、貯蔵所(車両に固定されたタンクにおいて危険物を貯蔵し、又は取り扱う貯蔵所(以下「移動タンク貯蔵所」という。)を含む。以下同じ。)以外の場所でこれを貯蔵し、又は製造所、貯蔵所及び取扱所以外の場所でこれを取り扱つてはならない。
危険物の運搬の基準は、消防法第16条が、容器、積載方法、運搬方法について政令で定めるとしています。
通知の日付を時系列に並べると、次のとおりです。
日付通知など内容
平成22年8月17日消防危第177号10月を中心にした立入検査の実施を依頼
平成22年10月1日から10月31日立入検査の中心期間全国の消防機関が、一部は警察機関の協力を得て実施
平成22年12月24日消防危第296号実施結果を、都道府県の消防防災主管部長と東京消防庁と指定都市の消防長へ通知
平成22年12月24日別添2の通知全日本トラック協会など3団体へも結果を通知し、注意喚起

検査は、毎年同じように行われているのですか。

通知に、最近5年間の推移の表が付いています。
平成18年度から22年度まで、毎年の数字が並んでいます。

平成22年の立入検査では何台の車両が基準に適合しなかったのか

屋根の下に銀色のタンクローリーが五台並んだ車庫のイラスト
通知の本文は、検査の結果を最初に書いています。
まず、その部分を引いて確かめます。
消防危第296号は、検査結果について次のように述べています。
これによりますと、移動タンク貯蔵所等における基準不適合等車両の割合は17.15%(前年18.14%)であり、昨年と比較し0.99ポイント減少したものの、依然高い水準にあります。
なかでも、移動タンク貯蔵所における立入検査の重点項目として挙げている定期点検に係る義務違反は1,254件(前年1,494件)であり、昨年と比較し240件減少したものの、他の項目に比べて非常に多く、憂慮される状況です。
検査した24,321台のうち、基準不適合等の車両は4,171台で、割合は17.15%でした。
内訳は、移動タンク貯蔵所が23,574台のうち4,076台(17.29%)、危険物運搬車両が747台のうち95台(12.72%)です。
別添1の総括表によると、実施した消防機関は782、実施した場所は7,087か所でした。
検査を実施した場所別に見ると、割合の違いがはっきり出ています。割合の列は、通知の数字を割り算した値です。
実施場所実施車両数不適合等車両数割合
道路上2,151台528台24.55%
常置場所13,068台2,085台15.96%
危険物の積卸し場所811台82台10.11%
その他7,544台1,381台18.31%
移動タンク貯蔵所の合計23,574台4,076台17.29%
「道路上」には、走行中の車両を道路に接した空地等に誘導して検査した場合も含まれる、と通知の備考に書かれています。
道路上で検査した880か所のうち873か所は、警察機関の協力がありました。
最近5年間の推移は、次のとおりです。
年度実施車両数不適合等車両数不適合率
平成18年度25,142台4,901台19.49%
平成19年度24,952台4,655台18.66%
平成20年度25,649台4,868台18.98%
平成21年度25,027台4,540台18.14%
平成22年度24,321台4,171台17.15%

割合が下がっているなら、安心してよいのですか。

通知は、依然高い水準と書いています。
検査した車両の約6台に1台が、基準に合っていませんでした。

項目別ではどの違反が多く、どんな傾向があったのか

タンクローリーの後ろ側に、底弁と接地線と赤い消火器が付いたイラスト
別添1の項目別内訳は、違反を条文ごとに数えています。
まず、書類の備え付けの根拠を、現行の条文で確かめます。
危険物の規制に関する政令(昭和三十四年政令第三百六号)第二十六条第1項第9号(現行、抜粋)
移動タンク貯蔵所には、第八条第三項の完成検査済証、法第十四条の三の二の規定による点検記録その他総務省令で定める書類を備え付けること。
移動タンク貯蔵所の違反は、定期点検、書類の備付け、電気設備の順に多くなっています。
通知は、違反の多い項目を網掛けで示しています。表には、件数の多い項目と、前年より増えた項目を抜き出しました。
定期点検に係る義務違反は1,254件で、前年より240件減りましたが、他の項目より大きな数字です。
項目別の合計は6,366件で、不適合車両の実数4,037台より多く、通知はこの差の理由を書いていません。
項目平成22年度平成21年度増減
定期点検に係る義務違反(法第14条の3の2)1,2541,494-240
 うち漏れの点検未実施528639-111
完成検査済証等の備付け義務違反(令第26条第1項第9号)712716-4
電気設備、接地導線の不良等(令第15条第1項第13号、第14号)67065317
危険物取扱者の保安講習義務違反(法第13条の23)614636-22
消火器の未設置等 その他(令第20条)5905891
表示、標識の未掲示等 その他(令第15条第1項第17号)55748275
塗料の剥離発錆27725621
移動タンク貯蔵所の項目別合計6,3666,603-237
危険物運搬車両の項目別合計は128件(前年152件)で、移動タンク貯蔵所よりずっと少ない数字です。
表の「その他」の中身までは、通知に書かれていません。
前年より増えた項目もあり、電気設備は17件、表示・標識のその他は75件、塗料の剥離発錆は21件増えています。

点検の違反が、一番多いのですね。

1,254件で、書類の備付けの違反も712件あります。
点検と書類は、一緒に見られます。

定期点検の義務違反はなぜ最も多く、漏れの点検はいつまでに行うのか

タンクローリーが圧力試験の装置につながれ、右に書類のバインダーが置かれたイラスト
定期点検の根拠は、消防法第14条の3の2と、危険物の規制に関する規則です。
まず、条文を確かめます。
消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第十四条の三の二(現行)
政令で定める製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、これらの製造所、貯蔵所又は取扱所について、総務省令で定めるところにより、定期に点検し、その点検記録を作成し、これを保存しなければならない。
危険物の規制に関する規則(昭和三十四年総理府令第五十五号)第六十二条の五の四(現行、抜粋)
移動タンク貯蔵所に係る定期点検は、第六十二条の四の規定によるほか、告示で定めるところにより、令第八条第三項の完成検査済証(略)の交付を受けた日又は直近において当該移動貯蔵タンクの漏れの点検を行った日から五年を経過する日の属する月の末日までの間に一回以上当該移動貯蔵タンクの漏れの点検を行わなければならない。
漏れの点検は、5年ごとの期限を、記録の日付で管理します。
一般の定期点検は、規則第62条の4により、原則として1年に1回以上です。
定期点検の違反1,254件のうち、通知が「漏れの点検未実施」として別に数えているのは528件で、約4割にあたります。
点検を行う人の要件は規則第62条の6に定められているので、頼むときは、その要件を満たす事業者かを確かめます。
点検を済ませても、点検記録と完成検査済証を車両に備え付けていなければ、書類の違反になります。
確かめること根拠期限の目安
定期点検消防法第14条の3の2、規則第62条の41年に1回以上
移動貯蔵タンクの漏れの点検規則第62条の5の4完成検査済証の交付日か前回の点検日から5年を経過する日の属する月の末日まで
点検記録と完成検査済証の備付け令第26条第1項第9号車両への備付けを常に

毎年の点検は、してきたつもりです。
それで足りるのでしょうか。

漏れの点検は、完成検査済証の交付日か前回の点検日から5年で期限になります。
記録の日付を、確かめてください。

通知が示した重点項目は現行の条文でどう確かめればよいのか

開いた運転席のドアと、ダッシュボードのオレンジ色のフォルダと、赤い消火器が並んだイラスト
通知の別記は、保安確保のための重点項目を7つ挙げています。
まず、その部分を引いて確かめます。
消防危第296号の別記「危険物の移送等における保安確保のための留意事項」は、次のように述べています。
1 移動タンク貯蔵所の設備及び維持管理に関する事項
(1)定期点検(特に5年以内の期間ごとの漏れの点検)の実施と、その結果及び完成検査済証の車両への備付けの徹底
(2)必要な消火設備(消火器は2個以上)の設置と維持管理の徹底
(3)電気設備又は接地導線の維持管理の徹底(断線等の有無の確認)
(4)危険物の類、品名及び最大数量を表示する設備並びに標識の設置の徹底
2 貯蔵、取扱い、移送及び運搬に関する事項
(1)閉鎖不良が重大な事故につながるおそれのあるマンホールのふた及び底弁の閉鎖の徹底
(2)危険物取扱者免状の携帯及び危険物取扱者の保安講習受講の徹底
(3)必要なイエローカード又は容器イエローカードの携行の徹底
7項目は、車両の設備と、書類と、乗務する人の三つに分けて確かめられます。
現行の条文と照らすと、次の表のようになります。
イエローカードは、通知に携行率の数字が載っていますが、この記事では根拠の条文まで確かめていません。
重点項目現行の根拠条文通知の数字
定期点検と完成検査済証の備付け法第14条の3の2、規則第62条の5の4、令第26条第1項第9号違反1,254件と712件
消火器を2個以上設ける規則第35条第2号違反の多い項目として網掛け
電気設備と接地導線令第15条第1項第13号、第14号違反670件
類、品名、最大数量の表示と標識令第26条第1項第6号の2、令第15条第1項第17号違反の多い項目として網掛け
マンホールのふたと底弁の閉鎖令第26条第1項第7号通知は閉鎖の徹底を求めている
免状の携帯と保安講習法第16条の2第3項、法第13条の23、規則第58条の14保安講習の違反614件
イエローカードの携行通知本文では条文が示されていない携行率は移動タンク貯蔵所96.7%(263台/272台)、危険物運搬車両83.3%(35台/42台)
通知の数字は平成22年度のものなので、いまの状況を示すものではありません。次の五つは通知に書かれた義務ではなく、通知と条文を踏まえた実務上のおすすめです。
  • 車内の書類入れに、完成検査済証と点検記録があるかを見る
  • 漏れの点検の最後の日付から、5年を経過する日の属する月の末日が過ぎていないかを見る
  • 消火器が2個以上備え付けられ、使える状態かを見る
  • 接地導線に断線がなく、底弁とマンホールのふたがきちんと閉まるかを見る
  • 乗務する危険物取扱者の免状の携帯と、保安講習の受講時期を見る

うちは運送会社に頼んでいますが、確認できるのでしょうか。
どこを見ればよいですか。

まず、点検記録と完成検査済証の写しを見せてもらいましょう。
運送会社の管理状況を確かめる入り口になります。

よくある質問

Qこの通知で、移動タンク貯蔵所の義務は新しく増えたのですか?
Aいいえ。通知は消防組織法第37条の規定に基づく助言で、新しい義務を定める文言はありません。義務は、消防法令に別に定められています。
Q基準不適合等車両の17.15%は、全国のタンクローリーの17.15%が違反という意味ですか?
Aいいえ。検査を実施した24,321台のうち4,171台の割合で、全車両を調べたものではありません。
Q定期点検は、毎年行えばそれで足りるのですか?
Aいいえ。一般の定期点検は原則1年に1回以上ですが、移動貯蔵タンクの漏れの点検は、5年を経過する日の属する月の末日までに1回以上行う必要があります。
Q通知の数字は、いまの状況を示していますか?
Aいいえ。検査は平成22年10月を中心に実施されたもので、現在の状況を示すものではありません。自社の車両の状況は、所轄の消防署に確かめてください。

まとめ

✔消防庁危険物保安室長は、平成22年12月24日の消防危第296号で、移動タンク貯蔵所等の立入検査の結果を通知した
✔検査した24,321台のうち、基準不適合等の車両は4,171台(17.15%)で、依然高い水準だった
✔項目別では、定期点検の義務違反が1,254件で最も多く、漏れの点検の未実施が528件だった
✔完成検査済証と点検記録の備付けも、712件の違反があった
✔通知の別記は、点検、消火器、接地導線、底弁の閉鎖など7項目を重点項目に挙げた
✔漏れの点検は、現行の規則で5年を経過する日の属する月の末日までに1回以上行う
✔通知は助言のため、個別の適否は所轄の消防署に確かめる

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防危第296号「移動タンク貯蔵所等に対する立入検査結果について」(平成22年12月24日 消防庁危険物保安室長)別添1・別記
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第10条・第13条の23・第14条の3の2・第16条・第16条の2 e-Gov法令検索
  • 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第15条・第20条・第26条 e-Gov法令検索
  • 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第35条・第58条の14・第62条の4・第62条の5の4・第62条の6 e-Gov法令検索

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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