商店街のアーケード、道路をまたぐ通路、バスを待つ人のための屋根、地面の下を通る洞道。
道路の上や下に造られるものは、建物とは少し違う形をしていて、消防の目でどう見られるのかが、迷いどころです。
消防の実務書には、この場面を扱った昭和54年から55年の質疑応答が並んでいます。
この記事では、その中から5問を取り上げ、現行の条文に照らして読みます。基準を超えたアーケード、境界に近い上空通路、アーケードの上の通路、バス停の上屋、洞道を、順に確かめます。
道路の上に屋根や通路があると、消防はどこを見るんでしょうか。
はい。
消防活動や避難への影響を、確かめます。
洞道は、建物ではないのに、消防の対象になるんですか。
一つずつ確かめます。
現行の条文に当たれるところは、当たって読みます。
- アーケードの道路の基準を若干超え、側面の建物の一部が防火構造でない場合でも、消火器や自動火災報知設備、ドレンチャー設備や排煙の開放設備などを足すことで、設置を認めた例があります
- 道路の上空の通路は、隣地境界線から10メートル以内が原則です。ただし、隣の建物や環境などから防火上の支障がないと見て、4.5メートルや4.3メートルでも認めた例があります
- アーケードの屋根の上に通路を架けることも、耐火構造と自動閉鎖の防火戸、排煙窓を備えるなどして、認めてさしつかえないと答えています
- バス停留所の上に建物と一体でつくる長い屋根は、上屋ではなく、アーケードにあたると答えています
- 地下の洞道は防火対象物で、分類は工作物です。洞道とつながる建物は、洞道と合わせて一の防火対象物とされています
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目次
道路の上や下に造るものは、どの決まりの網にかかるのか
道路の中や上に建築物を造ることは、建築基準法第44条第1項が、原則として禁じています。ただし書の第4号は、公共用歩廊その他政令で定める建築物で、特定行政庁が安全上、防火上、衛生上支障がないと認めて許可したものを、例外にしています。同条第2項により、許可の前には建築審査会の同意が要ります。政令で定める建築物は、建築基準法施行令第145条第2項にあります。道路の上空の渡り廊下その他の通行や運搬の用に供する建築物で、学校や病院などの通行の危険を防ぐもの、5階以上の避難施設として必要なもの、多数人の通行や多量の物品の運搬に供して道路の交通の緩和に寄与するものが挙げられています。
消防の側では、消防法第7条第1項が、建築の許可や確認をする行政庁に、消防長や消防署長の同意を得ることを求めています。あわせて、消防法施行令別表第1の(18)項は、延長50メートル以上のアーケードを、防火対象物の一つに挙げています。
以下の5問は、この仕組みが、道路の上や下にあるものに当てはめられた例です。
道路の基準を若干超えるアーケードは、設備を足せば認められるのか

質疑応答は、そのときに設備を足すことで認められるかを取り上げています。
(昭和54年11月21日消防予第222号 消防庁予防救急課長から愛媛県生活環境部長あて回答)
足された対策は、初期消火と警報、夜間の避難、外からの延焼への備え、煙を逃がす開放設備、日ごろの管理と、幅広く並んでいます。基準から外れた分を、設備と管理で補うという考え方です。
現行の建築基準法では、アーケードは第44条第1項ただし書の第4号の許可の枠で扱われます。あわせて、延長50メートル以上のアーケードは、消防法施行令別表第1の(18)項の防火対象物です。
側面の建物の防火構造は、現行の建築基準法第2条第8号に定義があります。今の計画については、特定行政庁と、所轄の消防署に、確認します。
基準を超えても、設備で補えるんですね。
はい。
設備と管理をまとめて示した例です。
隣地境界線に近い道路上空の通路は、認められることがあるのか

敷地の都合で、その距離を確保できない例が、質疑応答に出てきます。
(昭和54年11月27日消防予第227号 消防庁予防救急課長から佐賀県総務部長あて回答)
判断の材料は、付近が住宅と田地で防火上恵まれた環境であること、隣の建物の構造、隣地所有者の承諾、通路そのものが耐火構造であることでした。距離だけでなく、周りの条件を積み上げている点に注意が要ります。
その後、宮崎県からも、境界線までが最少4.3メートル程度の通路について問い合わせがあり、通路が鉄骨造の耐火構造で、隣接する建物も耐火構造であることなどを踏まえて、認めてさしつかえないと回答されています(昭和55年5月22日消防予第103号)。
現行の建築基準法施行令第145条第2項は、道路の上空の渡り廊下を許可する場合の建築物の種類を定めています。第3項は、構造を鉄骨造や鉄筋コンクリート造などとし、屋外に面する部分にガラスなどを使わないことや、側面に高さ1.5メートル以上の壁を設けることを定めています。消防の側の運用は、別の記事で詳しく解説しています。
距離が足りなくても、認められることがあるんですね。
はい。
周りの状況を踏まえて、個別に判断します。
アーケードの屋根の上に、通路を架けることはできるのか

通路が、アーケードの屋根の上を通るときの扱いが、質疑応答に出てきます。
(昭和55年1月23日消防予第11号 消防庁予防救急課長から宮崎県生活福祉部長あて回答)
着目された点は、屋根から通路までの高さ、通路の耐火構造、建築物との間の自動閉鎖の防火戸、排煙窓、そして両方のビルの消防設備でした。消防活動と避難の両方を、寸法と構造で確かめています。
通路は、現行の建築基準法施行令第145条第2項の第3号にある「道路の交通の緩和に寄与するもの」などの要件を、あらためて確認する必要があります。当時と今の条文の細部が同じ結論になるかは、この記事からは断定できません。
アーケードの上でも、通路が架かるんですね。
はい。
高さと構造を、確かめました。
バス停の上に、建物と一体で造る長い屋根は、上屋なのかアーケードなのか

バスを待つ人のために、複合ビルの前に設ける屋根は、アーケードなのか、それともただの上屋なのかが、質疑応答に出てきます。
(昭和55年3月28日消防予第50号 消防庁予防救急課長から山形県生活福祉部長あて回答)
名前が「上屋」や「がんぎ」であっても、判断は、路面上に相当の区間連続して設けられる公益上必要な建築物や工作物にあたるかどうかです。
消防法施行令別表第1の(18)項は、延長50メートル以上のアーケードを、防火対象物に挙げています。屋根の延長がその長さになる場合は、この項が関わります。個別の計画は、所轄の消防本部に確認します。
名前が違っても、中身で決まるんですね。
はい。
連続した屋根かどうかを見ます。
地下の洞道は、防火対象物になるのか

質疑応答は、洞道が防火対象物にあたるかから問うています。
(昭和55年5月22日消防予第101号 消防庁予防救急課長から秋田県民生部長あて回答)
消防法第2条第2項は、防火対象物を、山林、舟車、船きょやふ頭に繋留された船舶、建築物その他の工作物、これらに属する物と定めています。建築物でなくても、工作物であれば防火対象物になります。
洞道とつながる建物は、洞道と合わせて一の防火対象物とされました。一方で、設備の設置は、別棟扱いの考え方を当てはめてよいとされています。消防法施行令第32条は、消防長や消防署長が、火災の発生や延焼のおそれが著しく少ないと認めるときに、設備の基準を適用しない特例です。第3問の回答は、別の回答の例と同様に扱うと答えています。
洞道の届出については、別の記事で解説しています。
洞道も、防火対象物なんですね。
はい。
工作物として、扱われます。
よくある質問
まとめ
道路の上や下にも、消防の目が届くんですね。
うちも、計画の前に確認します!
計画の早い段階で相談するのが安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第2条・第7条
- 消防法施行令第32条・別表第1
- 建築基準法第2条・第44条
- 建築基準法施行令第145条
- 昭和54年から昭和55年の消防庁予防救急課長の回答(消防予第222号・第227号・第11号・第50号・第101号)
※本記事は公表されている法令および通知に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や機関の名称、単位等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





