雑居ビルのテナントで、消防計画が事務所の棚にしまわれたままになっていないでしょうか。
消防庁予防課は、平成24年4月17日の事務連絡で、雑居ビル等のテナントの消防計画を従業員に周知する方策を示しました。
通知には、火災時の任務分担や通報要領を、従業員の誰もが確認できる場所に掲示することが望ましいと書かれています。
この記事では、通知の背景、消防計画の根拠、掲示物の内容、届出の扱い、明日から確かめることを解説します。
雑居ビルのテナントでは、消防計画を従業員に知らせるのが難しいと聞きます。
消防庁は何を示したのでしょうか。
はい、消防庁が事務連絡で方策を示しています。
まず、通知の中身から確かめましょう。
掲示するだけで、本当に役に立つのですか。
通知には、届出の扱いなど押さえる点があります。
順に見ていきます。
- 消防庁予防課は、平成24年4月17日の事務連絡「雑居ビル等における消防計画の実効性向上を図るための周知方策について」で、掲示物の具体例を都道府県と東京消防庁、指定都市の消防本部に示しました。
- 通知は、雑居ビルのテナント等で、消防計画の内容が従業員に周知されていないために、記載された内容に基づく対応が行われなかった事例が散見されると述べています。
- 通知が示す方策は、火災時の任務分担、行動要領、消防隊への報告、119番通報要領等を、事務室、厨房、店内など誰もが容易に確認できる場所に掲示することです。
- 掲示物は消防計画の添付書類の位置付けで、更新したときに新たな消防計画の届出は必要ないとされています。
- 掲示は「望ましい」とされた方策で、消防計画の本体を変更するときの届出は、消防法施行規則第3条に従って別に必要です。
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目次
消防庁はなぜ雑居ビルの消防計画の周知方策を示したのか

まず、その冒頭の部分を引いて確かめます。
消防計画は、防火対象物における防火管理の基本的な対応を定めるものであり、火災等の発生の未然防止や発生時における被害の軽減を図るため、その内容については当該防火対象物における事業所の従業員等に広く周知をし、理解を得ることが求められます。
しかしながら、雑居ビルのテナント等では、当該計画の内容が従業員に周知されていないために、記載されている内容に基づいた対応が行われなかった事例が散見されています。
本文は、特定の火災の名前を挙げていません。
通知の骨組みを、表にまとめます。
| 項目 | 通知の内容 |
|---|---|
| 発出 | 平成24年4月17日、消防庁予防課の事務連絡 |
| 宛先 | 各都道府県消防防災主管課、東京消防庁、指定都市の消防本部 |
| 課題 | 雑居ビルのテナント等で、消防計画の内容が従業員に周知されていない事例が散見される |
| 方策 | 火災時の任務分担などを、従業員の誰もが容易に確認できる場所に掲示する |
| 別添 | 掲示物の具体例(火災時における任務分担の例、119番通報要領の例) |
宛先の各都道府県消防防災主管課には、市町村にも周知するよう求めています。
消防計画は、届け出たら終わりではないのですか。
いいえ、通知は従業員への周知が求められるとしています。
次に、消防計画の決まりを確かめましょう。
消防計画は誰が何のために作るものなのか

まず、条文を引いて確かめます。
(略)その他多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め、政令で定めるところにより、当該防火対象物について消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わせなければならない。
消防法施行規則第3条第1項は、消防計画に定める事項を挙げています。
その中に、通知の掲示物と重なる事項があります。
| 規則第3条第1項第1号の事項(抜粋) | 内容 |
|---|---|
| ト | 防火管理上必要な教育に関すること |
| チ | 消火、通報及び避難の訓練その他防火管理上必要な訓練の定期的な実施に関すること |
| リ | 火災、地震その他の災害が発生した場合における消火活動、通報連絡及び避難誘導に関すること |
| ヌ | 防火管理についての消防機関との連絡に関すること |
リの事項は、火災時の消火活動、通報連絡、避難誘導です。
通知の掲示物と重なるという対応づけは、通知の文言ではなく、この記事の整理です。
消防計画は、テナントごとに作るものですか。
防火対象物ごとに、防火管理者が作る計画です。
テナントごとかどうかは建物の管理の形で変わるので、所轄の消防署に確かめましょう。
通知は掲示物にどんな内容を載せるよう示したのか

まず、その部分を引いて確かめます。
このことから、雑居ビルのテナント等の消防計画を、より効果的に従業員に周知するための方策として、火災発生時における従業員の任務分担、行動要領、消防隊への報告、119番通報要領等を従業員の誰もが容易に確認できるような場所(事務室、厨房、店内等)に掲示することにより、火災等の災害が発生した際において、有効に対応ができるようにすることが望ましいと考えられます。
別添の「火災時における任務分担」は、その具体例です。
内容を、表にまとめます。
| 区分 | 別添の例の内容 |
|---|---|
| 火災時の任務 | 通報=119番通報とその後の各任務の補助、初期消火=消火器や屋内消火栓等を用いた初期消火、避難誘導=メガホンや拡声器を活用した在館者の避難誘導 |
| 火災発生時 | 大声で周りに知らせる(「火事だー!」) |
| 通報のとき | 住所、目標(東西南北のどちら側か)、何が燃えているのか、逃げ遅れやけが人の有無、自分の氏名と連絡先 |
| 消火器を使うとき | 安全ピンを引き抜く、ホースを向ける、レバーを強く握る |
火事の場合の流れを、表にまとめます。
| 消防本部の言葉 | 通報者の答え |
|---|---|
| はい、119番です。火事ですか?救急ですか? | 火事です。 |
| 場所はどこですか? | 住所(分からない場合は、目印となる目標) |
| 何が燃えていますか? | 状況を報告する |
| 逃げ遅れやけが人はいますか? | 状況を報告する |
| あなたのお名前と電話番号をお願いします。 | 自分の名前と電話番号 |
| すぐに消防車と救急車が向かいます。危ないと思ったら、ただちに避難してください。 | (消防本部からの最後の案内) |
掲示物は、通知が決めた様式があるのですか。
いいえ、別添は具体例です。
通知は、事業所の指導で活用するよう示しています。
掲示物を作ったとき消防計画の届出はどうなるのか

まず、その部分を引いて確かめます。
なお、掲示物については、事業所が作成する消防計画の添付書類としての位置付けとするものであり、当該添付書類を更新した際の新たな消防計画の届出は必要ないものとします。
一方、消防法施行規則第3条は、消防計画を変更するときの届出を定めています。
条文を引いて確かめます。
防火管理者は、令第三条の二第一項の規定により、防火対象物の位置、構造及び設備の状況並びにその使用状況に応じ、次の各号に掲げる区分に従い、おおむね次の各号に掲げる事項について、当該防火対象物の管理について権原を有する者の指示を受けて防火管理に係る消防計画を作成し、別記様式第一号の二の届出書によりその旨を所轄消防長(消防本部を置かない市町村においては、市町村長。以下同じ。)又は消防署長に届け出なければならない。防火管理に係る消防計画を変更するときも、同様とする。
場面ごとの扱いを、表にまとめます。
| 場面 | 通知と規則の扱い |
|---|---|
| 掲示物(添付書類)だけを更新した | 新たな消防計画の届出は必要ないとされている(通知) |
| 消防計画の記載事項そのものを変更する | 変更するときも届出が必要(規則第3条第1項) |
| 掲示すること自体 | 通知は「望ましい」と示している |
| 掲示物の様式 | 別添は具体例で、様式は決められていない |
この点は、通知の文言ではなく、実務上の注意です。
掲示物を直したら、消防計画の届出も毎回出すのですか。
通知は、掲示物の更新だけなら新たな届出は不要としています。
ただし、消防計画の本体を変える場合は、届出が必要です。
明日から掲示物で何を確認すればよいのか

まず、その部分を引いて確かめます。
③避難誘導
店内にいる人に火災の発生を知らせ、指示に従うよう伝える。頭を低く、ハンカチ等を口にあてて、煙を吸わないように伝える。非常口、避難階段へ誘導する。在館者の人数、けが人の有無を確認する。
3 消防隊へ報告すべきこと
①出火場所、テナント名称等 ②初期消火、避難誘導の状況 ③逃げ遅れ、けが人の有無
通知が示す点を、確認表にまとめます。
| 確認すること | 通知が示す内容 |
|---|---|
| 掲示の場所 | 従業員の誰もが容易に確認できる場所(事務室、厨房、店内等) |
| 任務分担 | 通報、初期消火、避難誘導の三つ |
| 通報の内容 | 住所、目標、何が燃えているのか、逃げ遅れやけが人の有無、氏名と連絡先 |
| 消防隊への報告 | 出火場所とテナント名称等、初期消火と避難誘導の状況、逃げ遅れとけが人の有無 |
| 消防計画との関係 | 添付書類の位置付けで、更新時の新たな消防計画の届出は不要 |
- 事務室、厨房、店内など、従業員の誰もが見える場所に掲示があるかを確かめる
- 掲示の任務分担が、消防計画の本体と食い違っていないかを確かめる
- 通報要領の住所とテナント名称が、実際の店舗の情報と合っているかを確かめる
- 新しく入った従業員にも、掲示の場所と内容を伝える
- 訓練のときに、掲示を見ながら通報と消火器の操作を確かめる
掲示は、貼ったら終わりでよいのですか。
何から確かめればよいですか。
まず、掲示が誰もが見える場所にあるか確かめましょう。
そのあと、内容が消防計画と合っているか見ます。
よくある質問
まとめ
掲示の内容を、消防計画と合わせて確かめます!
消防計画の周知は、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 事務連絡「雑居ビル等における消防計画の実効性向上を図るための周知方策について」(平成24年4月17日 消防庁予防課)
- 消防法(昭和23年法律第186号)第8条 e-Gov法令検索
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第3条 e-Gov法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





