収容人員は、階と棟と敷地で、どう数え分けるのか。
避難器具は階ごとに、非常警報は棟ごとに、防火管理者は敷地ごとに、収容人員の見方が変わります。
消防の実務書には、この数え分けを一つずつ確かめた昭和52年の質疑応答が並んでいます。
この記事では、その中から5問を取り上げ、現行の条文に照らして読みます。収容人員をどの単位で数えるのかを、順に確かめます。
収容人員は、建物全体で一つの数字じゃないんですか。
いいえ。
何の基準に使うかで、数える単位が変わります。
その使い分けが、よく分からないんです。
一つずつ確かめます。
現行の条文に当たれるところは、当たって読みます。
- 避難器具は階ごとの収容人員、非常警報は棟ごとの収容人員、防火管理者は敷地の棟を合算した収容人員で見ると答えています
- 従業者が移動して食堂や会議室を使う階は、その階の従業者数に食堂等の分を加算すると答えています
- 和式の宿泊室は、室ごとに割った数の端数を切り上げると答えています
- 簡易宿所で基準面積以下の宿泊室は、床面積にかかわらず一室を一として数えると答えています
- 登録すれば自由に出入りできる老人福祉センターは、一時に使用する最多数に従業者の数を合算すると答えています
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目次
収容人員は、どの条文で決まっているのか
防火管理者を定める防火対象物は、消防法第8条第1項の委任を受けた施行令第1条の2第3項が、用途ごとに収容人員が十人・三十人・五十人以上かどうかで定めています。収容人員は、防火対象物に出入りし、勤務し、または居住する者の数です。その算定方法は、同条第4項が総務省令に委ね、消防法施行規則第1条の3が用途ごとに定めています。
一方、避難器具は施行令第25条が、階ごとの収容人員で設置を決め、非常警報器具・非常警報設備は施行令第24条が、収容人員で設置を決めています。
同じ「収容人員」でも、どの基準に使うかで、数える範囲が違うのが、以下の5問の出発点です。
階と棟と敷地で、収容人員はどう数え分けるのか

同じ収容人員でも、階で数えるのか、棟で数えるのかが分かれます。質疑応答は、その使い分けを確かめています。
(昭和52年1月6日消防予第3号 予防救急課長から大阪府生活環境部長あて回答)
現行の施行令第25条は、避難器具を階ごとの収容人員で設置すると定め、第24条は防火対象物の収容人員で非常警報器具や非常警報設備の設置を定めています。
敷地の合算は、施行令第2条が、同一敷地内で管理権原者が同一の防火対象物を、法第8条第1項の適用では一の防火対象物とみなすと定めていることに対応します。
ただし回答は、一つの棟の従業者だけが他の棟を使うときは、その棟の収容人員に入れないとも答えています。同じ人を、二重に数えない読み方です。
同じ建物でも、基準ごとに数え方が違うんですね。
はい。
何の基準かを先に決めます。
従業者が別の階の食堂や会議室を使うとき、収容人員はどう数えるのか

従業者の数は、通常勤務する席のある階で数えます。では、食堂等を使いに移動した人は、どちらに数えるのでしょうか。
(昭和52年1月6日消防予第3号 予防救急課長から大阪府生活環境部長あて回答)
現行の施行規則第1条の3第1項は、(4)項の防火対象物について、従業者の数に、従業者以外の者の使用に供する部分の数を合算します。数え方は、飲食・休憩の部分を3平方メートル、その他の部分を4平方メートルで、床面積を割ります。
回答は、この数え方を借りて、食堂等の分をその階の収容人員に加算する扱いを示しています。階ごとの避難器具の判断に限った扱いである点に注意が要ります。
使う基準で、数え方が変わるんですね。
はい。
階ごとの判断に限った加算です。
和式の宿泊室は、端数を切り上げて数えるのか

割り切れなかった端数を、どう扱うのかが問題になります。質疑応答は、その扱いを確かめています。
(昭和52年1月6日消防予第3号 予防救急課長から大阪府生活環境部長あて回答)
現行の施行規則第1条の3第1項は、(5)項イについて、和式の宿泊室を宿泊室ごとに、床面積を6平方メートルで除して得た数で数えると定め、簡易宿所と主として団体客を宿泊させるものは3平方メートルとしています。
条文の文言には、端数の扱いが書かれていません。回答は、室ごとの端数を切り上げることで、小さな宿泊室でも一人分は数える結果になる読み方を示しています。
端数は、切り捨てじゃないんですね。
はい。
宿泊室ごとに切り上げます。
簡易宿所の小さな宿泊室は、床面積にかかわらず一室を一として数えるのか

3平方メートルで割ると、一に満たない宿泊室が出ます。質疑応答は、その場合の数え方を確かめています。
(昭和52年1月6日消防予第3号 予防救急課長から大阪府生活環境部長あて回答)
前の問で見た、端数を切り上げる考え方と同じ方向の回答です。3平方メートルに満たない宿泊室も、一人分として数えます。
現行の施行規則第1条の3第1項は、簡易宿所と主として団体客を宿泊させるものについて、3平方メートルで除して得た数と定めています。宿泊室が小さいほど、宿泊者の数が実際より少なく出ないようにする読み方です。
小さな部屋でも、一人分は数えるんですね。
はい。
一室を一として数えます。
登録すれば自由に出入りできる施設では、来館者をどう数えるのか

地域の高齢者が、登録すれば自由に出入りできます。質疑応答は、その来館者を収容人員にどう入れるのかを確かめています。
(昭和52年1月6日消防予第3号 予防救急課長から大阪府生活環境部長あて回答)
現行の施行規則第1条の3第1項は、(6)項ロについて、従業者の数と、老人・乳児・幼児その他の要保護者の数を合算して算定すると定めています。
登録した人の数を全部足すのではなく、同じ時刻に使う人の最多数で数える読み方です。出入りが自由で、常に全員がいるわけではない施設の実態に合わせています。
登録者の全員じゃなくて、同時にいる人数なんですね。
はい。
最多数で数えます。
よくある質問
まとめ
数え方にも、細かい決まりがあるんですね。
うちも、基準ごとに確認します!
数える前に基準を確認するのが安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第8条
- 消防法施行令第1条の2・第2条・第24条・第25条
- 消防法施行規則第1条の3
- 昭和52年1月6日消防庁予防救急課長の回答(消防予第3号)
※本記事は公表されている法令および通知に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や言葉づかい等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





