BLOG

防炎物品の洗濯試験はなぜ水の硬さまで決められているのか|耐洗たく性能の基準とJIS規格の引用変更を解説

防炎物品の洗濯試験はなぜ水の硬さまで決められているのかを解説する記事のアイキャッチ画像。クリーム色のカーテンと業務用洗濯機が並ぶ洗濯施設の写真

防炎カーテンのラベルは、洗濯したあとも防炎性能が保たれるかどうかで様式が分かれています。
消防庁は令和8年3月18日、その判定に使う洗たく試験の基準の一部を改正する告示について、都道府県や消防長へ通知しました。
改正されたのは、洗たく液に使う温水の硬度を測るJIS規格の引用の部分です。
この記事では、耐洗たく性能の基準が何を決めているのかと、今回の改正で変わった点を整理します。

防炎カーテンは、洗濯しても防炎性能が残るのでしょうか。

それを確かめる試験の基準が、消防庁の告示で定められています。
その基準が令和8年3月に一部改正されました。

水の硬さまで決めているのは、どうしてなのでしょうか。

洗たく液の作り方は、告示で細かく決められています。
順に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 令和8年3月18日の通知(消防予第76号)は、耐洗たく性能の基準(昭和48年消防庁告示第11号)の一部改正を知らせるものです。
  • 改正されたのは、洗たく液に使う温水の硬度を測る引用規格で、JIS K0101がK0102-3に改められました。
  • 洗たく液は、硬度が炭酸カルシウム換算で5ミリグラム毎リットル以下の温水に、粉末洗たく石けんを1リットル当たり1グラム混ぜて作ります。
  • この基準は、防炎表示の様式のうち、どれを付すべきかを判定するためのものです。
  • 告示は令和8年3月18日から施行され、経過措置はありません。まずは、自施設のカーテンの防炎ラベルの様式を確認します。

▼

洗たく液をつくり、洗たくと乾燥を繰り返し、洗たく後の防炎性能から防炎表示の様式を判定する流れを示した図解

洗たく試験の基準はなぜ改正されたのか

重ねた青いバインダーの上に通知の紙が置かれ、右側の実験台に空のビーカーが三つと試験管立てが並ぶイラスト
この通知は、水質の試験方法を定めたJIS規格の再編が背景にあると説明しています。
まず、通知が何を理由に出されたのかを原文で確認します。
(防炎性能に係る耐洗たく性能の基準の一部を改正する件について(通知) 令和8年3月18日消防予第76号 消防庁予防課長)日本産業規格(JIS)では、これまで水質の環境基準や排水基準等の試験方法として「K0101(工業用水試験方法)」、「K0102(工場排水試験方法)」が採用されていましたが、(略)類似する2つの規格を統合した上で試験対象分野毎に分冊化し、新たな規格として全5部からなる「JIS K0102 規格群(工業用水・工場排水試験方法)」が制定されました(令和6年10月21日までに公示済み。)。従前の「K0101(工業用水試験方法)」については、令和8年中に廃止される予定です。これに伴い、防炎性能に係る耐洗たく性能の基準(昭和48年消防庁告示第11号)について、同基準で引用している「K0101(工業用水試験方法)」を統合後の同等の規格である「K0102-3(工業用水・工場排水試験方法―第3部:金属)」に別添のとおり改正するものです。
(同通知 記)第一 施行期日に関する事項 改正告示は、令和8年3月18日から施行すること。第二 経過措置に関する事項 経過措置なし。
改正の理由は、引用していたJIS規格の統合と、従前の規格の廃止予定です。
通知によると、これまで水質の試験方法には、K0101(工業用水試験方法)とK0102(工場排水試験方法)が使われていました。
試験項目が多く改正作業が煩雑だったため、類似する2つの規格を統合し、全5部の規格群にまとめたと説明されています。
従前のK0101は令和8年中に廃止される予定で、告示が引用する規格を、統合後の同等の規格に改めるのが今回の改正です。
発出は令和8年3月18日で、消防庁予防課長から各都道府県消防防災主管部長、東京消防庁・各指定都市消防長に宛てた消防予第76号です。

引用している規格が変わるので、告示も直したのですね。

はい、通知は同等の規格に改めるものだと書いています。
次は、この基準が何を決めているのかを確認しましょう。

耐洗たく性能の基準は何を決めているのか

淡いクリーム色のカーテンが吊るされ裾に小さな白いタグが付いた左側と、丸めたカーペットと畳んだ布が並ぶ右側のイラスト
防炎物品には、防炎性能を有する旨の表示を付けることができます。
その表示の様式が、洗濯に耐えるかどうかで分かれます。
消防法第八条の三第二項 防炎対象物品又はその材料で前項の防炎性能を有するもの(第四項において「防炎物品」という。)には、総務省令で定めるところにより、前項の防炎性能を有するものである旨の表示を付することができる。
消防法施行規則第四条の四第一項第二号 防炎表示は、別表第一の二の二に定める様式により行うこと。別表第一の二の二 三 一及び二に掲げる防炎物品以外の防炎物品 イ 消防庁長官が定める防炎性能に係る耐洗濯性能の基準に適合するもの(1)水洗い洗濯及びドライクリーニングについて基準に適合するもの(2)水洗い洗濯について基準に適合するもの(3)ドライクリーニングについて基準に適合するもの ロ イに掲げるもの以外のもの
(防炎表示制度の運用について 平成13年2月6日付け消防予第42号 別添3 防炎表示を付する者の登録の基準等の運用上の留意事項 第3)1 この耐洗たく性能基準は、防炎物品(カーテンその他これに類する幕類)に規則別表第1の2の2に掲げる4種類の防炎表示の様式のうち、いずれを付すべきかを判定するためのものであること。
この基準は、防炎表示の様式のうち、どれを付すべきかを判定するためのものです。
別表第1の2の2の三は、カーテンなどの防炎物品の表示を、耐洗濯性能の基準に適合するもの(イ)と、それ以外のもの(ロ)に分けています。
イはさらに、水洗い洗濯とドライクリーニングの両方、水洗い洗濯のみ、ドライクリーニングのみの3つに分かれます。
運用通知は、この基準を使って、4種類の様式のうちどれを付すかを判定すると説明しています。
通知は、この基準を、様式を判定するためのものと位置付けています。

ラベルの様式が分かれるのは、洗濯後の性能を確かめるからですか。

はい、基準に適合するかどうかで表示の様式が分かれます。
次は、洗たく液の条件を見ていきます。

洗たく液はどんな水と石けんで作るのか

白い前面投入式の洗たく試験機が左にあり、右に目盛り付きの洗たく槽と粉末石けんの箱と小さな計量スプーンが置かれたイラスト
水洗い洗たくの試験では、洗たく液の作り方が決まっています。
ここに、今回の改正の対象になった温水の硬度が出てきます。
(防炎性能に係る耐洗たく性能の基準 昭和四十八年消防庁告示第十一号 第三 二(二)イ 令和八年三月十八日改正後)温水(日本産業規格(産業標準化法(昭和二十四年法律第百八十五号)第二十条第一項の日本産業規格をいう。以下同じ。)K〇一〇二―三(工業用水・工場排水試験方法―第三部:金属)に定める全硬度の測定方法により測定した場合に炭酸カルシウム換算濃度が五ミリグラム毎リットル以下のものに限る。以下同じ。)一リットル当たり日本産業規格K三三〇三(粉末洗濯石けん)に定める無添剤の粉末洗たく石けん一グラムの割合で混入した液(以下「洗たく液」という。)を、洗たく槽に十四センチメートルの深さになるまで入れること。
(防炎性能に係る耐洗たく性能の基準の一部を改正する告示について(通知) 昭和61年3月7日消防予第21号 消防庁予防救急課長)2 改正の概要(1)水洗い洗たく及びドライクリーニングについては、所定の洗たく機、ドライクリーニング機等を用いる洗たく方法のほかに、これらと同等以上の洗たく性能を有する方法により行うことができることとされた(第三、二関係)。(2)水洗い洗たくに使用する温水の硬度が定められたこと(第三、二(二)イ関係)。これは、水洗い洗たくに使用する温水の硬度の違いにより水洗い洗たく後の防炎性能に違いが出るため、温水の硬度を定めることにより地域差による水洗い洗たく性能に差異が生じないようにされたものである。
洗たく液は、硬度を限定した温水に粉末洗たく石けんを混ぜて作ります。
温水は、JIS K0102-3の全硬度の測定方法で測り、炭酸カルシウム換算濃度が5ミリグラム毎リットル以下のものに限られます。
洗たく液は、温水1リットル当たり、JIS K3303に定める無添剤の粉末洗たく石けんを1グラムの割合で混ぜて作り、洗たく槽に14センチメートルの深さまで入れます。
硬度を定めた理由について、昭和61年の通知は、地域差で水洗い洗たくの性能に差が出ないようにするためだと説明しています。
今回の改正の表を見ると、5ミリグラム毎リットル、1グラム、14センチメートルの数値は改正前と同じで、入れ替わったのは引用先の規格です。

水の硬さで、洗濯後の結果が変わることがあるのですね。

通知は、硬度の違いで防炎性能に違いが出るためと書いています。
次は、回数や温度の決まりを見ましょう。

洗たくの回数や温度はどこまで決まっているのか

畳んだ青い布が五枚並ぶ左側と、白い乾燥機と木製の定規が置かれた右側のイラスト
洗たく液のほかにも、試験の条件はいくつか決められています。
運用通知は、その考え方を説明しています。
(防炎表示制度の運用について 平成13年2月6日付け消防予第42号 別添3 防炎表示を付する者の登録の基準等の運用上の留意事項 第3)2 水洗い洗たく又はドライクリーニングを5回繰り返し行うのは、当該防炎対象物品の耐用年数及び洗たく頻度等を考慮したものであること。(略)4 試験体の大きさが、規則第4条の3第4項に規定している燃焼試験の際の大きさより周囲5センチメートルずつ大きくなっているのは、洗たくによる布のほぐれを考慮したものであるが、著しいほぐれを起すおそれのある布にあっては、あらかじめ試験体の周囲のほぐれを防止する措置を施すこと。
(防炎表示制度の運用について 平成13年2月6日付け消防予第42号 別添3 防炎表示を付する者の登録の基準等の運用上の留意事項 第3)6 上記5のほか耐洗たく性能の基準に示した各種数値(洗たく回数及びすすぎ回数の数値を除く。)は、標準値であること。なお、温度の数値については、その特殊性から次の範囲まで認めるものであること。イ 液温 プラスマイナス2度 ロ 乾燥温度 プラスマイナス5度
洗たくは5回繰り返し、試験体は燃焼試験の大きさより大きく用意します。
5回という回数は、防炎対象物品の耐用年数と洗たく頻度などを考えて決めたものと、運用通知は説明しています。
試験体は、燃焼試験の大きさより周囲5センチメートルずつ大きくします。洗たくで布がほぐれることを考えたものです。
洗たく回数とすすぎ回数を除く数値は標準値で、温度だけは、液温がプラスマイナス2度、乾燥温度がプラスマイナス5度まで認められます。
洗たく機等や洗たく方法は、これらと同等以上の洗たく性能を有する方法で行う場合は、告示の定めによらなくてもよいとされています。

試験の回数や温度まで、数字で決められているのですね。

はい、回数も温度も、数値で示されています。
最後に、確認することを整理しましょう。

明日から何を確認すればよいのか

何も書かれていないチェック欄付きのクリップボードと吊るされたクリーム色のカーテンが左にあり、右に畳んだカーテンと洗濯かごが並ぶイラスト
今回の通知に書かれているのは、告示の改正の内容です。
確認したいのは、防炎ラベルの様式と、改正の範囲です。
(防炎表示制度の運用について 平成13年2月6日付け消防予第42号 別添3 防炎表示を付する者の登録の基準等の運用上の留意事項 第2)(略)なお、耐洗たく性能の基準に適合しない生地その他の材料又は耐洗たく性能試験を行わない防炎物品である生地その他の材料については、規則別表第1の2の2の防炎表示の様式のうち「洗濯をした場合は要防炎処理」を付記した表示を付すこととなるが、この場合の製造業者にあっては、洗たく試験機を要しないものであること。
まず、自施設で使っているカーテンの防炎ラベルの様式を確認します。
基準に適合しない生地などには、「洗濯をした場合は要防炎処理」を付記した表示を付すと、運用通知は説明しています。
今回の告示改正は、令和8年3月18日から施行され、経過措置はありません。
通知が示しているのは、引用する規格をK0102-3に改めることで、洗たく液の硬度・石けん・深さの数値は、表の上では改正前と同じです。
洗濯や防炎処理のやり直しに迷うときは、防炎表示を付けた事業者や所轄消防署に確認しておくと確実です。

うちの施設では、何から確かめればよいのでしょうか。

まずはカーテンの防炎ラベルの様式を見ましょう。
あわせて、洗濯の指示も確かめておきます。

よくある質問

Q今回の改正で、洗たく試験の条件は厳しくなったのですか?
A通知は、引用している規格を統合後の同等の規格に改めるものと説明しており、試験を厳しくするという記載はありません。改正の表でも、5ミリグラム毎リットル、1グラム、14センチメートルの数値は改正前と同じです。
Qすでに使っているカーテンは、取り替えや洗い直しが必要ですか?
A通知には、既存の防炎物品の取り替えなどに関する記載はありません。告示は令和8年3月18日から施行され、経過措置は定められていません。
Qドライクリーニングの基準も変わったのですか?
A改正の表では、第三の三(ドライクリーニング)は「略」「同上」と示されており、今回の改正の対象にはなっていません。
Q全硬度は、どのように測ることになっているのですか?
A告示は、JIS K0102-3に定める全硬度の測定方法で測定し、炭酸カルシウム換算濃度が5ミリグラム毎リットル以下のものと定めています。

まとめ

✔消防予第76号は、洗たく試験の基準(昭和48年消防庁告示第11号)が引用するJIS規格を改める通知
✔改正の理由は、JIS規格の統合と、従前のK0101の廃止予定
✔この基準は、防炎表示の様式を判定するための試験の条件を定めたもの
✔洗たく液は、硬度が5ミリグラム毎リットル以下の温水に、粉末石けんを1リットル当たり1グラム混ぜて作る
✔洗たくは5回繰り返し、液温はプラスマイナス2度まで認められる
✔令和8年3月18日から施行され、経過措置はなく、ドライクリーニングは改正の対象外
✔まずは自施設のカーテンの防炎ラベルの様式を確認する

まずは防炎ラベルを確認します!

カーテンの防炎対策は、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 防炎性能に係る耐洗たく性能の基準の一部を改正する件について(通知)(令和8年3月18日 消防予第76号 消防庁予防課長)
  • 防炎性能に係る耐洗たく性能の基準の一部を改正する告示について(通知)(昭和61年3月7日 消防予第21号 消防庁予防救急課長)
  • 防炎表示制度の運用について(平成13年2月6日付け消防予第42号)別添3
  • 防炎性能に係る耐洗たく性能の基準(昭和48年消防庁告示第11号)
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第8条の3
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第4条の4・別表第1の2の2

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
防炎物品の洗濯試験はなぜ水の硬さまで決められているのかを解説する記事のアイキャッチ画像。クリーム色のカーテンと業務用洗濯機が並ぶ洗濯施設の写真
防炎カーテンのラベルは、洗濯したあとも防炎性能が保たれるかどうかで様式が分かれています。 消防庁は令和8年3月18日、その判定に使う洗たく試験の基準の一部を改正する告示について、都道府県や消防長へ通知しました。 改正され...
リクルート 採用情報はこちら →
採用ページ 一緒に働く仲間を募集中 → フランチャイズ (株)防災屋と一緒に開業する → 協力業者 協力業者さん募集中 →