牛舎や豚舎そのものに消火器具や自動火災報知設備の特例があることは知られてきました。
ところが令和4年に規則が変わったとき、通路や事務所、荷造りの作業場のような「どちらとも言えない部分」の扱いが現場で割れました。
そこで施行と同じ日付で、消防庁が追加の運用通知を出しています。
この記事では、その通知が消火器具と感知器と消防用水についてどこまで線を引いたのかを解説します。
牛舎は消防用設備等の特例があると聞いたので、消火器も何も置かなくてよいと思っていました。
特例があっても全部の部分が外れるわけではありません。
令和4年に国が出した運用通知が、その境目を示しています。
事務所や荷造りの作業場はどうなるのでしょうか。
そこがまさに通知の本題です。
順番に見ていきましょう。
- 畜舎等の特例(消防法施行規則第32条の3)は令和4年の改正と同じ日に、消防予第144号の運用通知で留意事項が示されました。
- 特例の対象施設であっても、通路部分・事務所等の執務作業部分・梱包等の作業部分は消火器具の設置対象から外れません。
- 自動火災報知設備の感知器は外部の気流が流通する場所に限り、消防本部と協議のうえ省略を検討できます。
- 消防用水は規則第32条の3第6項の規定があっても、別棟としての取扱いはこれまでどおり変わりません。
- 堆肥舎にはバイオマス燃料を製造・保管する施設や排せつ物を加熱処理する施設は含まれません。
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目次
なぜ畜舎等の特例に追加の運用通知が必要になったのか

書き換えと同じ日付で、国は追加の留意事項を示しています。
特例の条文(消防法施行規則第32条の3)は「専ら家畜の飼養又は家畜排せつ物の処理若しくは保管の用に供する部分」という書き方で範囲を区切っています。
けれども実際の畜舎には事務所や通路や荷造りの作業場のような、家畜の飼養そのものではない部分が混在します。
条文の言葉だけでは個々の消防本部の判断が割れかねないため、改正と同じ日に運用通知が出されました。
自分の畜舎がこの特例の対象になるかどうかは、まず所轄の消防本部に図面を見せて確かめるところから始めます。
規則の改正と同じ日に通知まで出ていたのですね。
それだけ境目の判断が難しいということです。
次は具体的にどの部分が対象外になるかを見ましょう。
通知が対象外だと示しているのはどの部分か

いずれも家畜の飼養や排せつ物の処理そのものではない部分です。
1つ目は家畜専用ではない通路部分で、人や台車が行き来する共用の通路がこれに当たります。
2つ目は畜産経営の執務や作業、農業用機械の保管に使う部分で、そこに至る廊下等の共用部分も含まれます。
3つ目は排せつ物の保管場所のうち、梱包の機械や梱包材が置かれている部分です。
具体的な設置場所そのものは条文に数値で書かれておらず、個々の畜舎等の実態を踏まえて管轄の消防本部と協議して決めることとされています。
どれも人が出入りする場所ばかりですね。
そのとおりです。
次は感知器と消防用水について通知が何を求めているかを見ます。
感知器と消防用水について通知は何を求めているのか

根拠になっているのは規則の別の条文です。
通知は、規則第23条第4項第1号ロの「外部の気流が流通する場所」に当たるなら、感知器を省略できることに留意するよう求めています。
壁が開放的で風が通り抜ける畜舎部分はこれに当てはまりやすい一方、どこまでが該当するかは管轄の消防本部との協議が前提です。
消防用水については、告示第3第5号(3)ロ(ロ)の「これに類する部分」を天井近くの煙を排出できる壁面等と解釈したうえで、規則第32条の3第6項の渡り廊下による別棟のみなし規定があっても、「消防用設備等の設置単位について」(昭和50年3月5日付け消防安第26号)による別棟の取扱いはそのまま続くとしています。
風通しのよい畜舎なら感知器はいらないということですか。
自己判断はできません。
次は実務で見落としやすい落とし穴を確認しましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

堆肥舎という言葉の範囲にも落とし穴があります。
堆肥を作っているように見えても、バイオマス燃料の製造・保管や排せつ物の加熱処理を行う施設は、特例でいう堆肥舎に含まれません。
同じように、「特例の対象施設だから消火器具も要らない」という読み方も誤りで、通路・事務所・梱包作業場では消火器具が必要なままです。
感知器の省略も同じ構造で、外部の気流が流通する場所に見えても、最終的な判断は管轄の消防本部との協議に委ねられています。
図面上で「特例の対象施設」と「消火器具等が外れない部分」を別々の色で塗り分けておくと、こうした思い込みを防げます。
堆肥舎という名前が付いていれば安心だと思っていました。
名前よりも中で何をしているかで決まります。
最後に明日からの動き方をまとめます。
明日からなにを確認すればよいのか

通知が最後に挙げている水利の活用まで含めて確認しておきます。
まず図面に通路部分・事務所等の執務作業部分・梱包等の作業部分を塗り分け、特例があっても消火器具が必要な範囲を明らかにします。
次に外部の気流が流通する場所に当たりそうな部分をリストアップし、感知器の省略が可能かを管轄の消防本部に確認します。
あわせて、畑地かんがい用水や家畜の飲料用の貯水槽を消防水利として活用できないか、大規模な畜舎では個別に相談しておくと安心です。
最後に、消火器の使用方法や通報の手順を含めた訓練を計画的に実施し、初動対応の実効性を高めておきます。
まず図面の塗り分けから始めてみます。
それができれば消防本部との相談もすぐ進みます。
最後によくある質問を確認しておきましょう。
よくある質問
まとめ
まず図面に対象外の部分を塗り分けてみます。
それが今日いちばん効く一手です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令の一部を改正する政令等の運用について(通知)(令和4年3月31日付け消防予第144号、消防庁予防課長)
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第23条第4項第1号・第32条の3
- 畜舎等に係る基準の特例の細目(令和4年消防庁告示第2号)
- 消防用設備等の設置単位について(昭和50年3月5日付け消防安第26号)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





