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危険物の流出事故で虚偽の通報をするとどうなるのか|消防法第16条の3が定める応急措置と通報義務を解説

危険物の流出事故で虚偽の通報をするとどうなるのかを解説する記事のアイキャッチ画像

危険物を貯蔵し、又は取り扱う施設では、配管やタンクから危険物が流出する事故が起こり得ます。
事故が起きたとき、現場が最初にすべきことと、誰に通報すべきかは消防法で決められています。
通報を怠ったり、虚偽の通報をしたりすると、個人に罰則が科されます。
消防法第16条の3が定める応急措置と通報義務、そして罰則が及ぶ範囲までを順に見ていきます。

倉庫のタンクから危険物が漏れているのに気づきました。
まず何をすればいいのでしょうか。

慌てずに、まず応急の措置と通報の順番を確認しましょう。
消防法第16条の3に、やるべきことが明確に書かれています。

応急の措置と通報、両方が必要なんですね。
通報を間違えたらどうなるのか心配です。

正当な理由なく虚偽の通報をすると、個人に罰則が科されます。
条文を順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 危険物の流出事故が起きたら、施設の所有者・管理者・占有者は直ちに応急の措置を講じなければなりません
  • 事故を発見した者は、消防署・市町村長の指定した場所・警察署・海上警備救難機関の4か所のいずれかに直ちに通報する義務があります
  • 正当な理由なく虚偽の通報をした者には、30万円以下の罰金又は拘留が科されます(第44条第10号)
  • 応急の措置を講じていないときは、市町村長等が措置を講ずべきことを命ずることができます
  • 虚偽通報の罪に両罰規定は及びませんが、命令違反の罪には両罰規定が及び法人にも50万円以下の罰金が科されます

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危険物流出事故の応急措置と通報から虚偽通報の罰則、命令違反の両罰規定までの流れを示した図解

危険物が流出する事故が起きたら施設はまず何をすべきか

危険物施設で油が流出し担当者が応急の措置をとっている様子を示した図
製造所・貯蔵所・取扱所で危険物の流出事故が起きたとき、現場が最初にすべきことは条文で決められています。
後回しにしてよい措置ではありません。
消防法第十六条の三第一項
製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、当該製造所、貯蔵所又は取扱所について、危険物の流出その他の事故が発生したときは、直ちに、引き続く危険物の流出及び拡散の防止、流出した危険物の除去その他災害の発生の防止のための応急の措置を講じなければならない。
応急の措置が最優先です。
対象は製造所・貯蔵所・取扱所の所有者・管理者・占有者で、立場に関わらず課される義務です。
やるべきことは、流出及び拡散の防止、流出した危険物の除去、そのほか災害の発生を防ぐための応急の措置です。
移動タンク貯蔵所も貯蔵所の一種として、この規定の対象に含まれます。
措置を怠ったまま放置すると、このあと見るとおり市町村長等から命令を受けることもあります。

漏れを見つけたら、まず止める作業から始めればいいのでしょうか。

そのとおりです。
拡散の防止と除去が応急の措置の中心になります。

事故を見つけた人は誰に通報しなければならないのか

危険物流出事故の通報先である消防署や警察署など4か所を示した図
応急の措置と並行して、通報も義務づけられています。
通報先は条文で具体的に数えられる場所に限られています。
消防法第十六条の三第二項
前項の事態を発見した者は、直ちに、その旨を消防署、市町村長の指定した場所、警察署又は海上警備救難機関に通報しなければならない。
通報先は4か所です。
消防署・市町村長の指定した場所・警察署・海上警備救難機関のいずれかに、直ちに通報すれば義務を果たせます。
通報義務を負うのは事故を発見した者であり、必ずしも施設の所有者・管理者・占有者に限りません。
どこへ通報するかより、直ちに連絡することが重要です。
通報先を迷って時間を使うより、まず近い通報先へつなぐことを優先してください。

消防署ではなく警察署に連絡してしまったら、義務を果たしていないことになるのでしょうか。

いいえ、問題ありません。
条文が並べる4か所のどこでも義務を果たせます。

正当な理由なく虚偽の通報をするとどうなるのか

虚偽の通報をした個人が罰則を科される場面を示した図
通報そのものだけでなく、虚偽の通報にも罰則が用意されています。
対象になる行為を正確に確認します。
消防法第四十四条(抜粋)
次のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金又は拘留に処する。
十 正当な理由がなく消防署、第十六条の三第二項の規定により市町村長の指定した場所、警察署又は海上警備救難機関に同条第一項の事態の発生について虚偽の通報をした者
虚偽の通報には罰則があります。
正当な理由なく虚偽の通報をした者は、30万円以下の罰金又は拘留に処されます(第44条第10号)。
対象になるのは、第16条の3第2項が定める4か所のいずれかへの通報内容が虚偽だった場合です。
拘禁刑は定められておらず、拘留という別種の自由刑が選択肢になっている点が特徴です。
誤報と虚偽は別で、事実と異なると知りながら通報した場合に限られると考えられます。

通報した内容が後から間違いだと分かったら、それだけで罰せられるのでしょうか。

いいえ、対象は正当な理由なく虚偽と知って通報した場合です。
誠実に通報していれば問題になりません。

応急の措置をしていないと命令が出ることもあるのか

市町村長等が応急措置命令を出し行政代執行に至る流れを示した図
応急の措置そのものを怠っている場合には、別の手段が用意されています。
行政が動く仕組みを確認します。
消防法第十六条の三第三項
市町村長等は、製造所、貯蔵所(移動タンク貯蔵所を除く。)又は取扱所の所有者、管理者又は占有者が第一項の応急の措置を講じていないと認めるときは、これらの者に対し、同項の応急の措置を講ずべきことを命ずることができる。
措置を怠ると命令が出ます。
市町村長等は、応急の措置を講じていないと認めるときに措置命令を出すことができます。
移動タンク貯蔵所については、市町村長が同様の命令を出せると定められています(第16条の3第4項)。
命令を受けた者が履行しない、又は履行が十分でないときは、行政代執行法の定めるところにより消防職員等が代わって措置をとることもできます(第16条の3第5項)。
命令違反には、このあと見る刑罰が別に定められています。

命令を受けても何もしなかったら、行政が代わりに措置をしてしまうのでしょうか。

そのとおりです。
行政代執行法に基づき消防職員等が措置をとることができます。

この罰則に両罰規定は及ぶのか

虚偽通報の罪には両罰規定が及ばず命令違反の罪には法人にも罰金が及ぶ違いを示した図
消防法には、行為者だけでなく法人も罰する両罰規定があります。
ただし、すべての罪に及ぶわけではありません。
消防法第四十五条(抜粋)
三 第三十九条の二第一項若しくは第二項、第三十九条の三第一項若しくは第二項、第四十一条第一項(同項第三号、第五号及び第七号を除く。)、第四十二条第一項(同項第七号及び第十号を除く。)、第四十三条第一項、第四十三条の四又は前条第一号、第三号、第十一号、第十二号若しくは第二十二号 各本条の罰金刑
虚偽通報の罪に両罰規定は及びません。
第45条第3号が両罰の対象に挙げるのは、前条(第44条)の第1号・第3号・第11号・第12号・第22号だけです。
虚偽通報を定める第44条第10号はこの列に含まれておらず、虚偽通報の罪は個人だけが罰せられます。
一方で、第16条の3第3項又は第4項の命令に違反した者は第42条第1項第9号で処罰され、この号は第45条第3号の対象です(同項第7号及び第10号の除外には当たりません)。
命令違反には、行為者を罰するほかに法人にも50万円以下の罰金刑が科されます。

嘘の通報をしたら、会社も一緒に罰金を取られるということですか。

いいえ、虚偽通報の罪には両罰規定が及びません。
ただし命令に違反した場合は会社にも罰金が科されます。

よくある質問

Q危険物の流出事故で軽微なものでも応急の措置と通報は必要なのか?
A条文は量の大小を区別していません。危険物の流出その他の事故が発生した場合はすべて応急の措置と通報の対象です。
Q通報先を消防署ではなく警察署にしても問題ないのか?
A問題ありません。条文は消防署・市町村長の指定した場所・警察署・海上警備救難機関の4か所を並べており、どこに通報しても義務を果たしたことになります。
Q虚偽の通報をした場合、拘禁刑になることはあるのか?
Aこの罪の法定刑は30万円以下の罰金又は拘留で、拘禁刑は定められていません。拘留は拘禁刑とは別の種類の刑です。
Q応急の措置命令に違反した場合、会社にも罰金が科されるのか?
A科されます。第42条第1項第9号の命令違反は第45条第3号の両罰規定の対象で、行為者を罰するほかに法人にも50万円以下の罰金刑が科されます。

まとめ

✔危険物の流出事故が起きたら、施設の所有者・管理者・占有者は直ちに応急の措置を講じなければなりません
✔事故を発見した者は、消防署・市町村長の指定した場所・警察署・海上警備救難機関の4か所に直ちに通報しなければなりません
✔正当な理由なく虚偽の通報をした者には30万円以下の罰金又は拘留が科されます(第44条第10号)
✔応急の措置を講じていないときは、市町村長等・市町村長が措置を講ずべきことを命ずることができます
✔命令に従わないときは行政代執行法により消防職員等にその措置をとらせることができます
✔命令に違反した者には6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金が科されます(第42条第1項第9号)
✔虚偽通報の罪に両罰規定は及びませんが、命令違反の罪には両罰規定が及び法人にも50万円以下の罰金が科されます

通報は迷わず4か所のどこかにすればいいと分かりました。
両罰規定が及ぶ範囲も整理できました。

まず応急の措置、そして直ちに通報。
この順番を覚えておいてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第16条の3
  • 消防法第42条第1項第9号
  • 消防法第44条第10号
  • 消防法第45条第3号

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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