BLOG

不活性ガス消火設備の貯蔵容器はなぜ弁と本体で検査の周期が分かれるのか|高圧ガス保安法の容器再検査と点検要領の抜取りを解説

不活性ガス消火設備の貯蔵容器はなぜ弁と本体で検査の周期が分かれるのかを解説するアイキャッチ画像

不活性ガス消火設備の貯蔵容器には、消火剤を出す容器弁と、それを支える容器本体という、2つの部品があります。
弁の安全性点検は消防庁の点検要領にもとづく抜取り再検査ですが、容器本体には別の法律の検査が待っています。
しかもこの2つの検査は、周期も発動の条件もまったく別物です。
この記事では、弁と容器本体それぞれの検査の仕組みと、見落としを防ぐ管理の仕方を整理します。

容器弁の点検に合格していれば、容器そのものは何もしなくていいのですか。

いいえ、容器本体には別の検査が控えています。
順番に見ていきましょう。

弁の点検と容器の検査は、どちらも消防法の話ですよね。

実は根拠になる法律が違います。
その違いから整理します。

この記事の結論
  • 貯蔵容器には容器弁と容器本体という別の部品があり、別の検査制度の対象になります。
  • 容器弁等は消防庁の点検要領(別添2)にもとづく抜取り再検査の対象です。
  • 容器本体は高圧ガス保安法の「容器再検査」の対象で、根拠は第48条第1項第5号です。
  • 容器本体の再検査周期は容器保安規則第24条で決まり、一般継目なし容器は5年、溶接容器等は経過年数で5年または2年に分かれます。
  • 2つの期限は別々に進むため、容器ごとに型式・製造年と前回の容器再検査年月を記録して管理する必要があります。

▼

容器弁の点検は点検要領にもとづく抜取り再検査、容器本体は高圧ガス保安法にもとづく容器再検査という、同じ貯蔵容器に対する2つの別の検査の流れを示した図解

容器弁の点検と、容器本体の検査はなぜ別物なのか

灰色の円筒形のガスボンベの上部に紺色の容器弁が付き、弁の部分だけが円で囲まれて本体と視覚的に区別されているイラスト
まず、何と何が別物なのかを確かめます。
貯蔵容器は、次の2つの部品でできています。 容器弁(安全装置を含む)と、容器本体(ボンベそのもの)は、別の制度の対象です。
容器弁等の安全性点検は、消防庁の点検要領の別添2(平成26年3月31日消防予第138号)が根拠です。
抽出は型式ごとに決め、製造年の古いものから抜き取り、告示の年数内に全数の点検を終える仕組みになっています。
抜取りの本数や合否の詳しい決まりは、不活性ガス消火設備の容器弁の安全性点検では何本を抜き取るのか|抽出数と耐圧・気密性能点検数の表を点検要領で解説で解説しています。
一方、容器本体(ボンベ)は消防法の対象ではありません。
高圧ガス保安法(昭和26年法律第204号)の対象で、だから根拠になる法律そのものが違います。
高圧ガス保安法(昭和26年法律第204号)第48条第1項〔充てん〕
高圧ガスを容器(再充てん禁止容器を除く。)に充てんする場合は、その容器は、次の各号のいずれにも該当するものでなければならない。〔中略〕五 容器検査若しくは容器再検査を受けた後又は自主検査刻印等がされた後経済産業省令で定める期間を経過した容器又は損傷を受けた容器にあつては、容器再検査を受け、これに合格し、かつ、次条第三項の刻印又は同条第四項の標章の掲示がされているものであること。
容器本体には、高圧ガス保安法の「容器再検査」という検査が控えています。
条文が定める期間を経過した容器は、容器再検査に合格していなければ、高圧ガスを充てんする要件を満たせません。
だから点検の前に、容器弁の点検結果だけでなく、容器本体の再検査状況も確かめておきましょう。

容器再検査と、さっきの容器弁の点検は同じ検査のことですか。

いいえ、別物です。
容器再検査は容器本体側の制度で、根拠条文も別です。

容器本体の検査はどの周期で回ってくるのか

継目のない滑らかな灰色のガスボンベの横に、長針と短針のある丸い時計のアイコンが置かれたイラスト
次に、容器本体の検査がいつ来るのかを見ます。
条文の委任の先には、次の定めがあります。
容器保安規則(昭和41年通商産業省令第50号)第24条第1項〔容器再検査の期間〕
法第四十八条第一項第五号の経済産業省令で定める期間は、〔中略〕それぞれ次の各号に掲げる期間とする。一 溶接容器、超低温容器及びろう付け容器(〔中略〕)については、製造した後の経過年数〔中略〕二十年未満のものは五年、経過年数二十年以上のものは二年 〔中略〕三 一般継目なし容器については、五年
容器の作り方によって、容器再検査までの期間が変わります。
不活性ガス消火設備の貯蔵容器・起動用ガス容器は、継目なし容器か溶接容器等のいずれかで作られています。
まとめると、次のとおりです。
容器の種類容器再検査の周期
一般継目なし容器5年
溶接容器等(経過年数20年未満)5年
溶接容器等(経過年数20年以上)2年
溶接容器等は、経過年数が20年を超えると、周期が5年から2年に短くなります。
だから設置から年数がたった容器ほど、次の期限が早く巡ってくることになります。
だから点検の前に、設置している容器が継目なし容器か溶接容器等か、そして経過年数を確かめておきましょう。

どの容器がどちらの種類かは、見ればわかるものですか。

溶接容器等は胴体に溶接線が見えます。
継目なし容器には、その線がありません。

容器弁側の「年数」とはどう違うのか

溶接線のある灰色のガスボンベの横に大きさの違う丸い時計アイコンが2つ並んで置かれたイラスト
続いて、弁側の「年数」と何が違うのかを整理します。
容器弁側の仕組みは、次のとおりでした。 容器弁側は「型式のグループ」を単位に、年数内で計画する抜取りです。
告示が定める25年(二酸化炭素)または30年(二酸化炭素以外)という年数の中で、型式ごとに古いものから抜き取って点検を終えればよい、という「範囲内で計画する」仕組みです。
一方、容器本体側の容器保安規則第24条の周期は、容器1本ごとに来る「個体の期限」です。
期限が来たら、その容器は容器再検査を受けなければ、高圧ガスの再充てんの要件(第48条第1項第5号)を満たせなくなります。
だから「弁の点検さえ計画どおりに進めていれば安心」とは言えません。
容器本体の期限は、弁の計画とは無関係に、容器1本ごとに別々に進んでいきます。

弁の点検を計画どおり進めていれば、容器本体の期限も自然に間に合いますか。

いいえ、無関係に進みます。
弁は型式単位の計画、容器本体は1本ごとの期限です。

2つの期限がズレるとなぜ困るのか

簡単なカレンダーのアイコンが2つ並び、左には青いチェックマーク、右には赤い禁止マークが置かれたイラスト
では、このズレがなぜ問題になるのかを見ます。
強さがまったく違う2つの期限が、同じ容器にかかっています。 弁側の抜取りと、容器側の容器再検査では、期限の強さが違います。
弁側の抜取り再検査は、告示の年数内であれば計画的に数本ずつ進めればよく、多少前後しても即座には問題になりません。
しかし容器本体の容器再検査は、期限を過ぎると、高圧ガス保安法第48条第1項第5号の要件(容器検査又は容器再検査に合格していること)を満たさなくなります。
その結果、その容器には高圧ガスを充てんできなくなるおそれがあります。
弁の点検記録だけを見て「この設備は点検済みだから大丈夫」と判断すると、容器本体側の期限切れに気づかないまま放置してしまう危険があります。
だから2つの期限は、別々に記録して、個体ごとに突き合わせておきましょう。

弁の点検記録に「合格」と書いてあれば、その容器はもう安心ですか。

弁は安心でも、容器本体の再検査期限が別に進んでいます。
両方を確かめないと安心できません。

実務では2つの期限をどう管理すればよいのか

グリッド状の空欄が並んだクリップボードに、ペンを持つ手が書き込んでいるイラスト
最後に、実務でどう管理すればよいかを整理します。
容器ごとに記録しておきたい情報は、次の2種類です。 型式・製造年と、容器の種類・前回の容器再検査年月を、容器ごとに並べて記録します。
1つ目は型式と製造年で、弁側の抜取り順位を決める基準になります。
2つ目は容器の作り方(継目なし容器か溶接容器等か)と、前回の容器再検査年月で、容器本体側の次回期限を決める基準になります。
この2種類を容器1本ごとに並べておけば、弁の点検計画と容器本体の再検査期限を、それぞれ別の列として同時に確認できます。
弁の点検で不良が見つかった場合は、点検要領の手順にそって抽出した全数を確認します(詳しい手順は37145を参照)。
容器本体の再検査期限が近づいている、または過ぎている場合は、消防法側の点検とは別に、高圧ガス保安法の手続きにそって容器再検査を受けます。
記録を容器ごとの個体管理にしておけば、「弁は点検したのに容器本体の期限を見落とした」という事態を防げます。

結局、何を基準に点検・検査の計画を立てればいいですか。

容器ごとの型式・製造年・容器の種類・前回の容器再検査年月の4つです。
まずこれを表にすることです。

よくある質問

Q容器弁の点検と、容器本体の検査はどこが違いますか?
A容器弁の点検は消防庁の点検要領(別添2)にもとづく抜取り再検査、容器本体の検査は高圧ガス保安法の容器再検査で、根拠になる法律も周期もまったく別です。
Q容器本体の再検査は何年ごとに必要ですか?
A容器保安規則第24条により、一般継目なし容器は5年、溶接容器等は経過年数20年未満なら5年、20年以上なら2年です。
Q容器弁の点検が合格していれば、容器本体の再検査は不要ですか?
Aいいえ。別の制度なので、弁が合格していても、容器本体の再検査期限が来れば高圧ガス保安法にもとづく再検査が必要です。
Q2つの期限を見落とすとどうなりますか?
A容器本体の再検査期限を過ぎると、高圧ガス保安法第48条第1項第5号の要件を満たさなくなり、高圧ガスの再充てんができなくなるおそれがあります。

まとめ

✔貯蔵容器には「容器弁」と「容器本体」という別の部品があり、それぞれ別の制度の対象になる
✔容器弁等は消防庁の点検要領(別添2)にもとづく抜取り再検査の対象である
✔容器本体は高圧ガス保安法の「容器再検査」の対象で、根拠は第48条第1項第5号である
✔容器本体の再検査周期は容器保安規則第24条で決まり、一般継目なし容器は5年である
✔溶接容器等は経過年数20年未満なら5年、20年以上なら2年に切り替わる
✔弁側は年数内に全数完了する計画、容器側は期限を過ぎると再充てんできない個体ごとの期限という違いがある
✔実務では型式・製造年・容器の種類・前回の容器再検査年月を容器ごとに記録し、両方の期限を並べて管理する

まず、容器ごとに型式・製造年・容器の種類の一覧を作るところから始めます!

2つの検査は、別々に進むので注意が必要です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第17条の3の3(消防用設備等の定期点検及び報告)
  • 高圧ガス保安法(昭和26年法律第204号)第48条第1項第5号
  • 容器保安規則(昭和41年通商産業省令第50号)第24条第1項
  • 消防用設備等の点検要領の一部改正について(平成26年3月31日消防予第138号)別添2 不活性ガス消火設備等の容器弁等の点検要領

※本記事は公表されている法令・告示および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。点検・検査の実際の進め方は設備の状況と所轄消防署・検査機関の指導によります。個別の判断は、消防設備士や所轄消防署、高圧ガス保安法の検査機関にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
不活性ガス消火設備の貯蔵容器はなぜ弁と本体で検査の周期が分かれるのかを解説するアイキャッチ画像
不活性ガス消火設備の貯蔵容器には、消火剤を出す容器弁と、それを支える容器本体という、2つの部品があります。 弁の安全性点検は消防庁の点検要領にもとづく抜取り再検査ですが、容器本体には別の法律の検査が待っています。 しかも...
リクルート 採用情報はこちら →
採用ページ 一緒に働く仲間を募集中 → フランチャイズ (株)防災屋と一緒に開業する → 協力業者 協力業者さん募集中 →