非常警報設備や放送設備は、単独だけで完結する設備ではありません。
スプリンクラー設備や自動火災報知設備とどこまで連動させてよいのか、配線や機器をどこまで共用してよいのかは、現場で判断に迷う場面が続きます。
古い質疑応答には、こうした線引きを一つひとつ確かめた回答が残っています。
今回は5つの質疑から、兼用できる範囲とできない範囲の境界線を見ていきます。
うちのビルはスプリンクラー設備と放送設備の両方が入っています。
これって、どこまで一緒に動かしてよいものなんでしょうか。
実は条文の号ごとに、兼用してよい範囲が細かく決まっているんです。
配線をまとめてよい場合もあれば、まったく認められない場合もあります。
設備ごとに違うんですね。
うちの非常警報設備がどちらに当たるのか、知りたいです。
はい、昔の質疑応答に実例が5つ残っています。
順番に見ていきましょう。
- スプリンクラー設備の作動信号は、放送設備の起動(発信機の作動)と同じに扱ってよい
- 放送設備のスピーカーを省略できる部屋は、2以上の隣接区域のスピーカーでカバーしてもよい
- 複合装置の非常警報設備を2台つなぐ配線は、条件を満たせば同じ金属管にまとめられる
- 既存の自動火災報知設備に出火階と直上階に限る鳴動方式が無ければ、令第32条のみなし規定は使えない
- 複合用途建築物の非常ベルは、収容人員の合計だけでなく無窓階かどうかでも変わる
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目次
スプリンクラーが作動した信号は放送設備の起動とみなせるか

その警報の中身に、スプリンクラー設備の作動信号を含めてよいかが問われました。
スプリンクラーヘッドが開いて水が出たという事実は、発信機のボタンが押されたのと同じ重みを持つ情報だからです。
放送のメッセージも「火災が発生しました」ではなく「スプリンクラー設備が作動しました」と言い換えてよいとされています。
配線の分け方ではなく、信号の意味で判断するという考え方が、ここでの核になります。
水が出たことも、ボタンを押したのと同じ扱いになるんですね。
はい、どちらも火災発生を知らせる信号として同じに扱われます。
スピーカーを置かない部屋は隣の部屋のスピーカーで届かせてよいか

その省略の仕方が、1部屋につき1個のスピーカーに限られるのかが問われました。
隣の部屋のスピーカーが1個だけ8メートル以内に届いていれば足りますが、両隣の部屋のスピーカーを合わせて条件を満たす形でも差し支えないとされています。
小部屋が両側を別の放送区域に挟まれているような間取りでは、この考え方が使えます。
いずれにせよ、実測で水平距離を確かめることが前提になります。
両隣から音が届けば、真ん中の部屋にはスピーカーを置かなくてよいんですね。
そのとおりです。
ただし水平距離8メートル以内という条件は、実測で確かめてください。
複合装置の非常警報設備を2台つなぐ配線は同じ管に入れてよいか

電圧の違う2つの回路を、同じ管に収めてよいかという論点です。
電源回路には600ボルトビニル絶縁電線以上の絶縁性能を持つ電線を、起動回路には600ボルト耐熱ビニル絶縁電線以上の耐熱性能を持つ電線を使うことが前提になります。
条件を満たさない電線のまま同じ管にまとめると、絶縁や耐熱が不足して事故につながりかねません。
配管工事をまとめて簡素化できるかどうかは、電線の仕様まで確認してから判断します。
配管をまとめれば、工事も点検も楽になりそうですね。
ただし電線の絶縁性能と耐熱性能の条件を満たしていることが前提です。
鳴動方式の無い既存の自動火災報知設備はみなし規定を使えるか

ただし、その自動火災報知設備自体が新しい基準を満たしていない場合が問われました。
非常電源や音響装置の性能が基準どおりでも、出火階とその直上階に限って警報を発する鳴動方式という1点が欠けていれば、自動火災報知設備として非常警報設備の代わりにはなりません。
令第32条は「同等以上の性能があれば認める」特例であって、基準の一部を免除する規定ではないからです。
古い建物ほど、この鳴動方式が後から追加された基準であることに注意が必要です。
非常電源も音響装置もちゃんとしているのに、それでも駄目なんですか。
はい、鳴動方式という1点だけでもみなし規定は使えません。
一度点検で確かめておくと安心です。
複合用途建築物の非常ベルは無窓階かどうかで決まるか

階ごとの人数と、窓の有無の関係が問われました。
この建物の収容人員は合計39人で、全体では50人に届きません。
ただし地階又は無窓階の収容人員が20人以上になると、別の基準で設置義務が生じます。
1階のカフェー30人がもし無窓階にあれば、この基準に単独で該当してしまうということです。
合計の人数だけ見ていたら、見落とすところでした。
はい、各階ごとの窓の状態まで確かめることが大切です。
よくある質問
まとめ
兼用できる範囲が、思っていたより細かく決まっているんですね。
うちのビルも一度見直してみます。
はい、条文の号ごとに確かめてから工事に進むのが安全です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則第25条の2(非常警報設備に関する基準)
- 消防法施行規則第14条(スプリンクラー設備に関する基準)
- 消防法施行令第24条(非常警報器具又は非常警報設備に関する基準)
- 消防法施行令第32条(特例基準)
- 非常警報設備の基準(昭和48年消防庁告示第6号)
- 消防庁「放送設備の設置に係る技術上の基準の運用について」(平成6年2月1日消防予第22号)
- 消防庁「消防用設備等に係る執務資料の送付について」(昭和53年9月6日消防予第165号)
※この記事は記事作成時点の法令・基準にもとづいています。実際の設計・施工にあたっては、必ず所轄の消防署にご確認ください。





