解体や改修の工事現場では、足場に張るシートと、アスベストの粉じんを閉じ込めるためのシートが、同じ現場に並んで使われることがあります。
見た目はどちらも大きなシートですが、消防法上の扱いはまったく違います。
消防庁は令和7年6月、執務資料としてこの区別を明確にする質疑応答を示しました。
この記事では、工事用シートとアスベスト飛散防止シートがなぜ別の規制を受けるのか、現場でなにを確認すればよいのかを解説します。
工事現場の足場に張ってあるシートは、どれも防炎シートだと思っていました。
実は消防法上の工事用シートと、アスベスト対策のシートは別物です。
消防庁が令和7年の執務資料で整理しています。
アスベストを防ぐためのシートには、防炎性能はいらないのですか。
はい、必要ありません。
順番に見ていきましょう。
- 消防法施行令第4条の3第3項が定める防炎対象物品の「工事用シート」に、アスベストの飛散を防止するプラスチックシートは含まれません。
- 工事用シートとは、工事現場の周囲その他危害防止上必要な部分に、落下物による危害を防止するために使用される帆布等のことです。
- 消防庁予防課長は令和7年6月17日、消防予第246号「防炎規制に係る執務資料の送付について」でこの区別を示しました。
- アスベスト飛散防止シートが防炎規制の対象外だからといって、現場の安全対策が不要になるわけではありません。
- 現場では、足場のシートが工事用シートかアスベスト飛散防止シートかを区別して確認する必要があります。
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目次
工事用シートとアスベスト飛散防止シートの違いはなぜ問題になったのか

解体や改修工事の現場では、落下物を防ぐためのシートと、粉じんを閉じ込めるためのシートが同時に張られることがあります。
どちらも大きな布やシートですが、消防法が防炎性能を求めているのは片方だけです。
執務資料が示したのは、質疑応答という実務向けの整理です。
工事現場では、足場の外側を覆う工事用シートと、解体・改修で生じるアスベストの粉じんを閉じ込めるための隔離シートが、同時に張られる場面が増えています。
見た目が似ているため、現場で「このシートも防炎シートのはず」と思い込みやすいところです。
消防庁予防課は、全国の消防本部が立入検査等で判断に迷わないよう、この区別を質疑応答としてまとめました。
本通知は、消防組織法第37条の規定に基づく助言として発出されたものです。
同じ現場に2種類のシートがあるなんて、知りませんでした。
見た目は似ていますが、目的も規制も別物です。
まず工事用シートの定義を確認しましょう。
消防法上の工事用シートとはどの物品を指すのか

消防法施行令は、防炎性能が必要な物品の一つに工事用シートを挙げています。
対象になるのは、工事現場で使われるシートのうち、特定の役割を持つものに限られます。
工事用シートは「落下物による危害防止」のための帆布等です。
施行令第4条の3第3項は、防炎性能が必要な物品として工事用シートを名前で挙げています。
消防予第246号の回答は、この工事用シートを「工事現場の周囲その他危害防止上必要な部分に、落下物による危害を防止するために使用される帆布等」と説明しています。
足場の外側に張る、資材や工具の落下を防ぐためのシートが典型例です。
工事中の建築物は、施行令第4条の3第1項により防炎防火対象物とみなされるため、このシートに防炎性能が求められます。
足場に張るシートは、だいたいこの工事用シートということですね。
そのとおりです。
では、アスベスト対策のシートはどう扱われるのか見てみましょう。
アスベスト飛散防止シートはなぜ防炎規制の対象から外れるのか

解体工事でアスベストの粉じんを閉じ込めるために張るプラスチックシートは、工事用シートとは別物として扱われます。
消防予第246号は、この点をはっきり「含まれない」と回答しています。
アスベスト飛散防止シートは工事用シートに含まれません。
工事用シートが防ぐのは落下物による危害であり、アスベスト飛散防止シートが防ぐのは粉じんの飛散で、そもそも目的が違います。
同じ「シート」という言葉でも、果たす役割が異なれば、防炎性能を求める根拠(施行令第4条の3第3項の列挙)には当たりません。
この回答により、アスベスト飛散防止シートに防炎ラベルや防炎性能を求める必要はないことが明確になりました。
ただし、防炎規制の対象外であることは、他の安全対策が不要という意味ではありません。
見た目は工事用シートに似ているのに、扱いが違うのですね。
目的が違うので当然です。
次は見落としやすい落とし穴を確認します。
現場で見落としやすいのはどこか

防炎規制の対象外だからといって、アスベスト飛散防止シートの現場に安全上の決まりが無いわけではありません。
石綿障害予防規則など、別の枠組みで隔離や粉じん対策が求められます。
見落としやすいのは「規制が無い」という思い込みです。
アスベスト含有成形品を切断等の方法で除去する作業では、作業場所をビニルシート等で隔離することが、石綿障害予防規則で別途求められています。
防炎規制の対象外=安全対策が何もいらない、という意味ではありません。
工事現場に両方のシートが同時にある場合、足場を覆う工事用シートとアスベスト隔離用のシートを混同すると、どちらの基準も満たせていない状態に気づきにくくなります。
消防本部の立入検査でも、この2つを区別して確認することが求められます。
規制の対象外というだけで、安心してはいけないのですね。
そのとおりです。
最後に、明日から確認すべきことをまとめます。
明日から工事現場で何を確認すればよいのか

現場で見かけるシートが工事用シートかアスベスト飛散防止シートかは、張られている場所と目的で見分けられます。
判断に迷うときは、施工者や管理権原者に確認するのが確実です。
まず、シートの役割を確認します。
足場の外側を覆い、落下物を防ぐためのシートであれば工事用シートであり、防炎ラベルの有無を確認します。
解体・改修区域を囲み、粉じんの飛散を防ぐためのシートであればアスベスト飛散防止シートであり、隔離や集じん・排気の状況を確認します。
どちらに当たるか分からないときは、施工者や管理権原者に用途を確認します。
消防本部への事前相談も、現場での思い込みを防ぐ有効な手段です。
次の立入検査では、シートの役割から確認してみます。
それが一番確実な一歩です。
最後によくある質問を確認しておきましょう。
よくある質問
まとめ
さっそく現場のシートの区別から確認します!
それが現場トラブルを防ぐいちばん確実な一歩になります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防予第246号「防炎規制に係る執務資料の送付について」(通知)(令和7年6月17日、消防庁予防課長)
- 消防法施行令(昭和三十六年政令第三十七号)第4条の3
- 石綿障害予防規則(平成十七年厚生労働省令第二十一号)第6条の2
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





