給油取扱所の周囲には、火災による被害の拡大を防ぐためのへい(塀)を設けなければなりません。
昭和37年から39年にかけての消防庁の質疑応答には、へいの高さや空地の寸法をどう決めるかを尋ねる問い合わせが残っています。
この記事では、そのうちの五つの論点を取り上げ、現行の危険物の規制に関する政令や規則と照らして読みます。
当時の基準と、今も変わっていない部分を、順に確かめます。
給油取扱所のへいの高さって、何メートルって決まっているんでしょうか。
今は二メートル以上です。
でも昔は近接する家の軒まで必要だった例があります。
基準そのものが変わったってことですか。
一つずつ確かめます。
変わった部分と変わらない部分の両方があります。
- へいの「防火上安全な高さ」は、当時は近接建築物の位置や構造により具体的に判断するとされていました
- 近接する家屋がある場合、へいはその軒下までの高さを求められた例がありますが、現行は一律二メートル以上に加え輻射熱の計算式を満たすことが基準です
- 固定給油設備を2基以上設置する場合の設置間隔は、当時も今も規制されていません
- 窓や出入口の防火戸を木製(防火木材使用)にすることは認められていましたが、現行の政令に乙種という区分はもうありません
- 道路面が改修で高くなったときは、改修後の道路面を基準に空地やへいの高さを再計算します
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目次
へいの「防火上安全な高さ」はどのように判断するのか

昭和37年には、その「防火上安全な高さ」をどう判断すればよいか、数値の基準を示してほしいという照会が奈良県から寄せられました。
(昭和37年4月6日 自消丙予発第44号 予防課長から奈良県地方課長あて回答)
現行の政令第17条第1項第19号は、給油取扱所の周囲に、高さ二メートル以上の塀又は壁であつて、耐火構造のもの又は不燃材料で造られたものを設けることを定めています。さらに規則第25条の4の2は、開口部を有しないことと、総務省令で定める輻射熱の計算式を満たすことを求めています。
建物ごとの個別判断ではなく、数値と計算式で判断する仕組みに変わったと読めます。
当時は数字を示していなかったんですね。
はい。
今は二メートル以上+計算式という数値基準です。
近接する建物がある場合、へいはその軒下までの高さを求められるのか

昭和39年には、Y病院に隣接する給油取扱所のへいの高さについて、香川県から具体的な照会がありました。
(昭和39年5月23日 自消丙予発第43号 予防課長から香川県総務部長あて回答)
現行の政令第17条第1項第19号は、建物ごとの軒高を基準にせず、一律に高さ二メートル以上と定めています。規則第25条の4の2が求める輻射熱の計算式を満たせば、近接する建物の軒の高さに応じて個別に判断する必要はありません。
採光や通風といった民事上の問題を行政庁が考慮しないという考え方自体は、当時も今も変わっていません。
軒までって、けっこう高くなりそうですね。
はい。
今は一律二メートル以上に変わっています。
固定給油設備を2基以上設置する場合、設置間隔に基準はあるのか

昭和37年には、山形県から、固定給油設備を2基以上設置する場合の設置間隔について照会がありました。
(昭和37年4月6日 自消丙予発第44号 予防課長から山形県民生部長あて回答)
現行の政令第17条第1項第12号も、固定給油設備について、道路境界線・敷地境界線・建築物の壁という三つの基準線からの間隔を定めるのみで、固定給油設備どうしの間隔は定めていません。
給油空地の中で自動車の出入りや給油作業が安全かつ円滑にできるかどうかは、規則第24条の14が求める給油空地の広さ全体で考える事柄であり、この点は当時と変わっていません。
これは今もない規制のままなんですね。
はい。
五つのうち唯一、当時のまま変わっていない点です。
窓及び出入口に設ける防火戸は木製でもよいのか

昭和37年には、窓及び出入口の戸については乙種防火戸でも支障ないとされていたことから、乙種防火戸を木製(防火木材使用)にできるかという照会が岩手県釜石市から寄せられました。
(昭和37年4月6日 自消丙予発第44号 予防課長から岩手県釜石市消防長あて回答)
現行の政令第17条第1項第17号は、窓及び出入口(総務省令で定める自動車等の出入口を除く。)に、単に「防火設備を設けること」と定めています。当時の質疑にあった甲種・乙種という防火戸の区分は、現行の条文の文言にはありません。
戸の仕様をどう満たすかは条文だけでは決められないため、具体的な製品の選定は所轄の消防機関に確認します。
乙種とか甲種とか、もう聞かない言葉ですよね。
はい。
今は単に「防火設備」とだけ条文に書かれています。
道路面が改修で高くなった場合、空地やへいの高さはどう再計算するのか

昭和39年には、国道の改修で道路面が40センチメートル高くなったことに伴う給油取扱所の改修補償費の算出について、秋田県から照会がありました。
(昭和39年5月29日 自消丙予発第47号 予防課長から秋田県消防長あて回答)
現行の条文でも、給油空地は政令第17条第1項第2号・第4号が定める広さと舗装を、建築物は第17号が定める構造を、へいは第19号が定める高さを、それぞれ満たす必要があります。「周囲の地盤面を基準に高さを考える」という昭和39年の答えの考え方自体は、現行の条文の構造とも矛盾しません。
具体的な高さの再計算は、改修後の図面をもとに所轄の消防機関に確認します。
道路が変わると、全部の高さを数え直すんですね。
はい。
新しい道路面が基準になる、という考え方は今も同じです。
よくある質問
まとめ
へいの高さが、条文とつながりました。
うちの給油取扱所も、今の政令で確かめてみます!
質疑応答も、今の条文の意味を理解するために読めます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令第17条
- 危険物の規制に関する規則第24条の14・第25条の4の2
- 昭和37年4月6日 自消丙予発第44号(給油取扱所を設置しようとする場合、自動車等が出入りする側の疑義について・固定給油設備の設置間隔・事務所等を耐火構造とした場合へいを免除することについて・木製の乙種防火戸を設けた場合について)
- 昭和39年5月23日 自消丙予発第43号(給油取扱所の周囲に設ける「へい」の高さについて)
- 昭和39年5月29日 自消丙予発第47号(給油取扱所の周囲にある空地の舗装面の高さについて)
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や機関の名称、単位等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





