危険物を取り扱う製造所や一般取扱所では、火花を発するおそれのある機器の使用が長く制限されてきました。
スマートフォンや携帯型の無線機を現場に持ち込めず、連絡や記録に不便を感じていた方も多いはずです。
令和7年6月、消防庁がこの運用を見直す通知を出しました。
一定の条件を満たせば、防爆構造でない機器も屋外で使用できるようになっています。
危険物の製造所で現場のスマホ使用がずっと禁止扱いになっていて困っています。
最近少し緩和されたと聞いたんですが本当でしょうか。
はい。
令和7年6月の消防危第140号で、一定の条件を満たせば屋外でスマートフォンなどを使えるようになりました。
条件を満たせば防爆構造じゃない普通の機器でも使えるということですね。
具体的に何を守ればいいのか知りたいです。
そうです。
屋外であること・ガス濃度・予防規程への記載という3つがポイントになります。
- 令和7年6月30日の消防危第140号により、製造所・一般取扱所でも条件を満たせば防爆構造でない電気機械器具等が使用できます。
- 対象になるのは屋外の場所に限られ、建物内部の屋内エリアは対象外です。
- 可燃性蒸気等の濃度が25%LEL未満であると認められる場所であることが条件です。
- 予防規程または自主行動計画等に、検知器の携行や退避手順などの必要事項を定めておく必要があります。
- 令和7年12月17日の消防危第253号で検知器の警報設定値や精度の基準が明確化され、運用はより厳格になりました。
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目次
危険物施設の電気機器はなぜ今まで防爆構造でなければ使えなかったのか

その根拠となる条文と、今回の通知が出た背景を確認します。
(消防危第140号 令和7年6月30日 消防庁危険物保安室長から各都道府県消防防災主管部長・東京消防庁・各指定都市消防長あて)
スマートフォンや携帯型の無線機も、内部で火花を発するおそれのある電気機械器具等に当たるため、可燃性蒸気等が滞留するおそれのある場所では原則として持ち込めません。
一方で近年は、現場の巡回や記録にスマートフォンを使うスマート保安の流れが進み、原則を維持したまま安全に使える条件を整理する必要が出てきました。
そこで消防庁は、検討会の結果をもとに、屋外に限って運用を緩和する通知を出したのです。
うちも現場でスマホが使えなくて、記録を全部手書きしています。
ずっとそういうものだと思っていました。
原則は今もそのとおりです。
ただ屋外に限り、一定の条件を満たせば使えるようになりました。
どの場所のどの機器が緩和の対象になるのか

屋外か屋内かで扱いがはっきり分かれます。
⑴ 屋外の場所であること。
⑵ 可燃性蒸気等の濃度が25%LEL(LEL:爆発下限界濃度)未満であると認められる場所(以下「非危険場所」という。)であること。
(消防危第140号・消防危第253号による改正後)
製造所・一般取扱所の屋外にあるタンクヤードや配管の点検通路などが想定され、屋内の反応室や倉庫内は原則どおり防爆構造の機器しか使用できません。
屋外であっても、可燃性蒸気等の濃度が25%LEL以上と評価される場所は対象外です。軒やひさしの下のように開放性が高い場所は「屋外」として扱われますが、評価自体は第三者評価機関の結果等を踏まえて個別に行う必要があります。
うちの製造所は屋外にタンクがいくつもあります。
そこなら使える可能性があるということですね。
はい。
ただ濃度の評価が別途必要になるので、まず現況を測ることから始めます。
緩和を受けるには何を満たせばよいのか

予防規程等への記載が欠かせない条件になっています。
ア 非危険場所に出入りする者が、可燃性蒸気等の検知器を携帯し、当該検知器を常時稼働させることで安全を確認すること。
イ アに定める事項について十分な教育訓練を受けた者以外の者が、電気機械器具等を携帯した状態で非危険場所に入ることを禁止すること。
屋外・濃度未満という場所の条件を満たしていても、予防規程または自主行動計画等に検知器の携行や教育訓練の実施といった事項を定めていなければ、緩和は適用されません。
検知器を持たずに非危険場所へ入ること自体を、十分な教育訓練を受けた者以外には禁止する仕組みも組み込む必要があります。
つまり「場所の条件」と「ルールの条件」の両方がそろって、初めて緩和の対象になるということです。
場所が屋外ならそれだけで使えると思っていました。
予防規程の見直しも必要なんですね。
そうです。
検知器の携行手順や教育訓練の実施まで定めておく必要があります。
ガス検知器と退避の手順はどこを見落としやすいのか

性能の基準と、検知したあとの退避手順まで見落とさないようにします。
Ⅳ 警報設定値が25%LEL以下であること。
(令和7年12月17日 消防危第253号による改正。改正前は「0.1%LEL以下の精度での測定及び記録が可能なもの」とされていた)
改正前は測定精度だけが求められていましたが、改正後は警報設定値が25%LEL以下であることと、指示精度の数値がそろって求められるようになっています。既存の検知器を使い回す場合は、この基準を満たしているかの確認が必要です。
また、警報が出たあとにどこへ退避するかを現場で考えるのでは遅く、退避場所と退避経路をあらかじめ決めておくことが条件に含まれています。
検知器を買っただけ、持たせただけでは条件を満たさない、という点が見落としやすいところです。
今使っている検知器がそのまま使えるのか心配になってきました。
警報設定値と精度を確認してみましょう。
退避場所も非危険場所ごとに決めておく必要があります。
固定式の機器は明日から何を確認すればよいのか

Wi-Fiルーターのように固定して使う機器は、扱いが少し異なります。
照明・消火設備・警報設備など事故時に機能の確保が求められる設備は、従来どおり防爆構造が必要です。
一方でWi-Fiルーターや通信中継器のような設備は、可燃性蒸気等を検知したら通電を自動で遮断する仕組み(インターロック等)を備えれば、防爆構造でなくても設置できます。
明日からは、現場にある固定機器を「事故時に機能が必要なもの」と「そうでないもの」に分け、後者から遮断の仕組みの検討を始めるとよいでしょう。
Wi-Fiルーターにも対策が必要なんですね。
はい。
通電を遮断するインターロックがあれば設置できます。
よくある質問
まとめ
屋外なら使える条件がよく分かりました。
まずは予防規程の見直しから始めてみます!
検知器の選定や予防規程の記載は、所轄消防機関への確認が一番確実です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防危第140号(令和7年6月30日 消防庁危険物保安室長)製造所又は一般取扱所において電気機械器具等を使用する場合の運用について
- 消防危第253号(令和7年12月17日 消防庁危険物保安室長)「製造所又は一般取扱所において電気機械器具等を使用する場合の運用について」の一部改正について
- 危険物の規制に関する政令第24条第13号・第9条第1項第17号・第37条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





