建物を増築したり、駐車場や宿泊施設に転用したりすると、消防法上の扱いはどう動くのでしょうか。
屋上に増築した部分や、ゴルフ場のカート置場、トレーラーハウスを使った宿泊施設、ドライブインに増設した秘宝館のように、判断に迷いやすい実例が消防庁の質疑応答に残されています。
いずれも消防庁へ寄せられた照会とその回答で、現行の消防法施行令と照らし合わせて読むことができます。
五つの問いと答えを順に確かめます。
うちのビルも屋上に増築する計画があるんですが。
これって既存の建物と別扱いになるんでしょうか。
増築の仕方によっては、別の防火対象物とみなされることがあります。
消防庁が示した具体的な回答を見てみましょう。
ゴルフ場のカートやトレーラーハウスみたいな、ちょっと変わった施設も気になります。
こういうのも項が決まっているんですか。
はい、どれも消防庁の照会と回答で示されています。
五つの実例を順番に確認していきましょう。
- 屋外専用の階段で区画されていれば、増築した7階部分は令第8条の区画として別の防火対象物とみなされます
- 区画されていても建物全体の階数が条件を満たせば連結送水管の設置義務は別に生じます
- ゴルフ場のカート置場は(13)項イの駐車場として扱われます
- トレーラーハウスを宿泊施設として貸し出すと(5)項イの旅館等に区分されます
- ドライブインに秘宝館を増設すると(16)項イの複合用途防火対象物になります
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目次
屋上に増築した部分は令第8条の区画とみなせるか

区画の仕方が鍵になります。
この回答は昭和55年3月12日の消防予第37号で、消防庁予防救急課長から各都道府県消防主管部長あてに示されたものです。
現行の消防法施行令第8条でも、開口部のない耐火構造の床又は壁で区画されていれば別の防火対象物とみなす考え方は変わっていません。
ポイントは、増築部分専用の屋外階段であることです。既存の階と共用していると、この区画は認められません。
増築を検討するときは、まず動線を既存棟と分けられるかどうかを確認しましょう。
増築した部分だけ専用の階段にすれば、別の建物として扱ってもらえるんですね。
共用の階段だと駄目なんですか。
はい、下の階でも使う共用階段だと区画と認められません。
専用の動線を確保できるかがポイントです。
令第8条区画とみなされても連結送水管の設置義務は消えないのはなぜか

同じ照会のなかで、連結送水管の扱いも確認されました。
現行の消防法施行令第29条では、地階を除く階数が7以上の建築物、または地階を除く階数が5以上で延べ面積6,000平方メートル以上の建築物に連結送水管の設置を義務付けています。
令第8条は消防用設備等の設置単位を分ける規定ですが、連結送水管は建築物全体の階数や延べ面積で判定されるため、区画の内と外をまたいで適用されます。
増築で建物全体の階数が基準に達すれば、増築部分が別の防火対象物とみなされていても、連結送水管の設置義務は発生します。
増築の計画段階から、区画の扱いと設備の設置義務を分けて確認しておくことが大切です。
区画で別の建物として扱われても、設備の基準は建物全体で見られるんですね。
ちょっとややこしいです。
はい、区画の単位と設備の設置基準の単位は必ずしも一致しません。
増築のときは両方を分けて確認しましょう。
ゴルフ場のカート置場は消防法上どの用途になるのか

使用するカートの種類が判断の手がかりになります。
この回答は平成9年2月26日の消防予第36号で、消防庁予防課長から各都道府県消防主管部長あてに示された執務資料です。
設問のカートはガソリン式と電動式でしたが、いずれも道路運送車両法第2条第2項が定める「自動車」に該当するとされました。
公道を走らない敷地内専用のカートでも、原動機で陸上を移動させる用具であれば自動車の定義に当てはまります。
私有地だから駐車場の基準から外れる、と思い込まないことが大切です。
ゴルフ場の中だけで使うカートなのに、自動車扱いになるんですね。
意外でした。
はい、原動機で動く用具であれば自動車に当たります。
置き場も駐車場と同じ扱いになります。
トレーラーハウスを宿泊施設として貸し出したらどの用途になるのか

使い方によって扱いが変わります。
現行の消防法施行令別表第一でも(5)項イは旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するものとされています。
車輪が付いた移動可能な建物でも、固定して不特定の人に宿泊施設として貸し出す実態があれば、この項で判断されます。
同じトレーラーハウスでも、自分や家族だけの住まいとして使う場合は扱いが変わることがあります。
オートキャンプ場に設備を導入するときは、貸し出し方の実態を所轄消防署に伝えて確認しましょう。
車輪が付いてるのに、旅館やホテルと同じ扱いになるんですね。
動かせる建物でも関係ないんですか。
はい、固定して宿泊施設として貸し出す実態があれば(5)項イです。
使い方が基準になります。
ドライブインに秘宝館を増設したらどの用途になるのか

複数の用途が一つの建物に入ることになります。
この回答は平成4年5月22日の消防予第108号で、消防庁予防課長から各都道府県消防主管部長あてに示されたものです。
現行の消防法施行令別表第一でも、ドライブインが該当する(3)項ロの飲食店と、秘宝館が該当する(4)項の展示場が一つの建物に混在すると、(16)項イの複合用途防火対象物として扱われます。
(16)項イは、一部が(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項又は(9)項イに掲げる用途に供されている複合用途防火対象物を指します。
増設や用途の追加を考えるときは、新しい用途が別表第一のどの項にあたるかを先に確認しておくと安心です。
飲食店に展示施設を足しただけなのに、また別の項になるんですね。
増築や増設のたびに確認が必要そうです。
そうなんです、複合用途防火対象物になると基準も変わります。
増設の計画段階で確認しておきましょう。
よくある質問
まとめ
増築やカートの置き場、トレーラーハウスまで、迷いやすい実例がちゃんと項で整理できました。
これで判断の基準がはっきりしました。
はい、建物の使い方が変わるときは実態を踏まえて確認するのが基本です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「消防用設備等の設置に関する疑義について」(昭和55年3月12日・消防予第37号・消防庁予防救急課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
- 「消防用設備等に係る執務資料の送付について」〔抄〕(平成9年2月26日・消防予第36号・消防庁予防課長から各都道府県消防主管部長あて)
- 「項の判定について」(平成4年5月22日・消防予第108号・消防庁予防課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第8条・第29条・別表第一
- 道路運送車両法(昭和26年法律第185号)第2条第2項
※本記事は、消防庁が示した回答を現行の消防法施行令等に照らして解説したものです。回答当時の法令に基づく判断であり、条文番号も当時のものを含みます。その後の改正により現在の規定とは異なる場合があります。個別の建物の区画の取り扱いや消防用設備等の設置基準については、所轄の消防署にご確認ください。





