渡り廊下でつながった複数の建物は、消防法上どこまでを1つの棟として扱うのでしょうか。
縫製工場や病院、倉庫、美容教室のように用途が違う棟が渡り廊下で結ばれていると、それぞれの棟が何項になるのか迷いやすくなります。
消防庁は昭和53年に、女子刑務所の施設を例にした質疑への回答を各県に示しており、現行の別表第一と見比べて読むことができます。
五つの問いと答えを順に確かめます。
うちの施設も、渡り廊下でいくつかの建物がつながっています。
これって全部まとめて1つの防火対象物になるんでしょうか。
渡り廊下でつながっていても、別棟として扱われることがあります。
消防庁が女子刑務所を例に示した回答を見てみましょう。
縫製工場や病院、倉庫までいろんな用途が混ざっているんですが。
棟ごとに判断が変わるということですか。
はい、棟ごとに実態の用途で項が決まります。
五つの答えを順番に確認していきましょう。
- 渡り廊下で接続された棟が別棟であれば、縫製工場の棟は(12)項イに該当します
- 病院の棟は、入院施設があれば(6)項イ、無ければ(15)項に区分が変わります
- 倉庫として使う棟は(14)項に該当します
- 各種学校のような設備の美容教室でも(15)項として扱われます
- 映画鑑賞や集会に使う棟は(1)項ロに該当します
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目次
縫製工場の棟は渡り廊下で接続されていても何項になるか

まずは縫製工場の棟から確認します。
この回答は昭和53年7月14日の消防予第131号で、消防庁予防救急課長から岐阜県総務部長あてに示されたものです。
現行の消防法施行令別表第一でも(12)項イは工場又は作業場とされており、考え方は変わっていません。
渡り廊下でつながっていても、工場としての実態がある棟はこの項で判断することになります。
自分の施設に似た棟があれば、まず設備や作業の内容を確認しましょう。
渡り廊下でつながっていても、縫製工場の棟だけは別に扱われるんですね。
工場っぽい設備があるかどうかで決まるんでしょうか。
はい、縫製工場としての実態があれば(12)項イです。
設備や作業の内容で判断されます。
病院として使う棟は入院施設の有無でなにが変わるか

入院施設の有無が、区分の分かれ目になります。
現行の消防法施行令別表第一でも(6)項イは病院や診療所にあたる区分ですが、現行の基準はさらに診療科名や病床の種類で細かく分かれています。
入院施設の有無という大枠の考え方そのものは、当時の回答と変わっていません。
医務室のような小さな棟でも、入院させる実態があるかどうかをまず確認します。
判断に迷うときは、所轄消防署に実情を伝えて確認するのが確実です。
うちの施設にも医務室があるんですが、入院設備の有無で変わるんですね。
ベッドがあるかどうかがポイントですか。
そうです、入院施設の有無が大きな分かれ目になります。
現行の基準ではさらに細かい区分もあるので、詳しくは所轄消防署に確認しましょう。
倉庫として使う棟は何項になるか

こちらは区分がはっきりしています。
現行の消防法施行令別表第一でも(14)項はそのまま倉庫とされており、昭和53年の回答と変わりません。
渡り廊下でつながった別棟の倉庫であっても、この項で判断されます。
一方で、工場敷地内にある付属的な倉庫のように、主たる用途の棟に含めて扱われる場合もあります。
この違いは後の「よくある質問」でもう少し詳しく確認します。
倉庫は特に迷わず(14)項でいいんですね。
工場の中にある倉庫でも同じでしょうか。
単独の倉庫棟であれば(14)項です。
工場敷地内の付属的な倉庫は、扱いが変わることもあります。
各種学校のような美容教室の棟は何項になるか

設備だけを見ると学校のようですが、答えは意外なものでした。
消防法施行令別表第一の(7)項は各種学校を含みますが、受刑者向けの美容教室はこの項には当たらないという答えです。
設備が学校に似ていても、実態が職業訓練としての事業場であれば(15)項になります。
用途は設備の見た目だけで決めず、利用の実態まで確認する必要があります。
似た設備がある施設は、名称ではなく実際の使われ方で項を確認しましょう。
美容教室って学校みたいな設備なのに、学校の項にはならないんですね。
意外でした。
そうなんです、実態は(15)項の事業場として扱われます。
設備の見た目だけで判断しないことが大切です。
映画鑑賞や集会に使う棟は何項になるか

不特定の者も利用する点がポイントになります。
現行の消防法施行令別表第一でも(1)項ロは公会堂又は集会場とされています。
刑務所の施設内という特殊な場所でも、不特定の者も利用しうる実態があれば、この項で判断されます。
利用が一時的であることは、項の判定そのものを変える理由にはなっていません。
これで五つの棟の答えがすべて出ました。次は全体をまとめて確認しましょう。
映画鑑賞や集会に使う棟は、劇場や公会堂と同じ項になるんですね。
一時的な利用でも変わらないんですか。
一時的な利用でも、集会場としての実態があれば(1)項ロです。
利用形態を踏まえて判断されます。
よくある質問
まとめ
渡り廊下でつながった建物でも、棟ごとにちゃんと項が決まるんですね。
これで整理ができました。
はい、実態の用途ごとに判断するのが基本です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「同一敷地内における防火対象物の用途区分について」(昭和53年7月14日・消防予第131号・消防庁予防救急課長から岐阜県総務部長あて回答)
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)別表第一
- 消防法施行令第1条の2
※本記事は、消防庁が示した回答を現行の消防法施行令別表第一に照らして解説したものです。回答当時の法令に基づく判断であり、条文番号も当時のものを含みます。その後の改正により現在の規定とは異なる場合があります。個別の建物の用途区分や消防用設備等の設置基準については、所轄の消防署にご確認ください。





