BLOG

屋内消火栓設備はどこまで特例が認められるのか|昭和の質疑五問で配管や電源や距離の判断基準を解説

屋内消火栓設備はどこまで特例が認められるのかの質疑五問をテーマにしたアイキャッチ画像

屋内消火栓設備の配管やポンプや非常電源は、規則が材料から設置場所まで細かく基準を定めています。
ところが、建物の立地や構造によっては、規定どおりの部材や方式がそろわない場面も出てきます。
昭和50年代の消防庁の通知には、水道用ポリエチレン管、放水圧力を抑える消火栓バルブ、繋がりのない階の距離測定、非常電源の共用、屋根材の倍読み規定について答えた質疑が残っています。
この記事では、その質疑を五つの論点に分け、現行の条文に照らして読みます。屋内消火栓設備が、どこまで部材や運用の特例を認められているのかを順に見ていきます。

屋内消火栓の配管や非常電源って、規定の部材しか使えないんですか。

質疑では、条件つきで特例を認めた例が残っています。
順番に見ていきましょう。

うちの建物だと、配管や電源の取りまわしに悩んでいます。

では、質疑の答えと条文を見比べていきましょう。
番号は、現行の規則に合わせて引いています。

この記事の結論
  • 水道用ポリエチレン管は、令第32条を適用して埋設施工する場合に限り使用を認めると答えています
  • 放水圧力を抑える消火栓バルブは、耐久性や耐圧試験など4つの条件に適合すれば特例として認めると答えています
  • 繋がりのない階部分は、平面図上で直線的に測定した距離でよいと答えています
  • 非常電源専用受電設備は、遮断時間が起動時間より短い場合に限り一般回路と共用してよいと答えています
  • 屋根材に準難燃材料を使う場合は、倍読み規定は適用されず設置を免除できないと答えています

▼

屋内消火栓設備はどこまで特例が認められるのかとして、ポリエチレン管の配管、放水圧力の調整弁、階の距離の測り方、非常電源の共用、屋根材の倍読み規定、を並べた図解

水道用ポリエチレン管は屋内消火栓の配管に使ってよいのか

山の中腹にある貯水槽から旅館まで、黒いポリエチレン管が地中に埋設されているイメージ
規則第12条第1項第6号ニは、屋内消火栓設備の配管に、日本産業規格に適合する金属管か、消防庁長官が定める基準に適合する合成樹脂製の管を使うよう定めています。当時は合成樹脂管の基準がまだ整っておらず、水道用ポリエチレン管を使えるかどうかが個別に問われました。
落差方式で貯水槽を山の中腹に設けた旅館で、配管の多くをポリエチレン管で地中に埋設する計画が照会された例です。
問(要旨) 別添資料による水道用ポリエチレン管及び鉱山用ポリエチレン管は、消防法施行規則第12条第1項第6号ニに定める配管の規定中「又はこれらと同等以上の強度、耐食性及び耐熱性を有する管」として認められるか。また、消防法及び水道施設基準等に基づき地下埋設利用してよいか。
(昭和54年6月15日消防予第117号・消防庁予防救急課長から宮城県総務部長あて回答)
答 消防法施行令第32条を適用して、埋設して施工する場合に限り水道用ポリエチレン管を使用してよいものと解する。なお、使用にあたつては、呼称50以上のものを使用することとし、水道用ポリエチレン管及び水道用ポリエチレン管継手は日本工業規格に適合するもの又はこれと同等以上の性能を有するものであること。
令第32条の特例を使えば、埋設する部分に限りポリエチレン管を使ってよいと答えています。
地上に露出する部分まで無条件に認めたわけではなく、埋設施工という条件つきの特例です。現行の規則第12条第1項第6号ニは、消防庁長官が定める基準に適合する合成樹脂製の管を正面から認めており、今では個別の令第32条の審査を経なくても使える道が用意されています。

配管は金属管しか使えないと思っていました。

答えは埋設部分に限り使用可です。
現行は合成樹脂管も正面から認められています。

放水圧力を抑える消火栓バルブは加圧送水装置の特例になるのか

屋内消火栓のノズルの手前に、灰色の円筒形をした圧力調整バルブが取り付けられているイメージ
規則第12条第1項第7号ホは、加圧送水装置に、ノズルの先端における放水圧力が0.7メガパスカルを超えないための措置を求めています。当時は定格全揚程を高くする設計上の都合から、ノズル手前で圧力を調整する専用バルブを使ってよいかが問われました。
問(要旨) 消防法施行規則第12条第7号ニの規定により講じることとされている放水圧力の措置について、今回、下記の消火栓バルブ(定圧定流量器ハイコン2型)を用いることにより放水圧力を制御することについて、消防法施行令第32条の規定を適用してその使用を認めてさしつかえないか。
(昭和54年6月7日消防予第112号・消防庁予防救急課長から大阪府生活環境部長あて回答)
答(要旨) 添付された資料から判断すれば、弾性オリフィスが長期間の使用に耐え、保守点検や部品交換が容易で、所定の耐圧試験に適合し、使用圧力範囲を容易に消えないよう表示するものである場合に限り、その使用を認めてさしつかえない。
製品の名称ではなく、耐久性・保守性・耐圧性能・表示という4つの条件を満たすかどうかで特例を認めると答えています。
最大使用圧力の2倍以上の水圧を3分間、4倍以上の水圧を1分間加えても壊れないことを確かめる耐圧試験が条件に含まれており、圧力を抑える部材なら何でもよいわけではありません。

放水圧力を抑える部品って、好きなものを選べるんですか。

答えは耐圧試験など4条件を満たす製品のみです。
性能試験の結果が前提になります。

繋がりのない階部分はホース接続口までの距離をどう測ればよいのか

同じ階で2つに分かれた建物の平面図の上に、点線で最短距離が描かれているイメージ
令第11条第3項第1号イは、屋内消火栓を防火対象物の階ごとに、その階の各部分から一のホース接続口までの水平距離が25メートル以下になるよう設けることを定めています。同じ階でも建物の形状によっては、一か所でつながっていない飛び地のような部分が出てくることがあります。
問(要旨) 令第11条第3項第1号の規定によると、屋内消火栓は防火対象物の階ごとに、その階の各部分から一のホース接続口までの水平距離が25メートル以下になるように設けることとなつているが、別添図のように2階部分相互に繋がりのない場合でも、平面図上で直線的に測定した最短距離内に入れば、その離れた2階部分も有効範囲内と認められるか。
(昭和56年10月13日消防予第246号・消防庁予防救急課長から鳥取県総務部長あて回答)
答 お見込みのとおり。なお、設問のような防火対象物で同一階が相互に繋がりがない場合には、両方にホース接続口を設けるよう指導されたい。
廊下を歩いて届く距離ではなく、平面図上の直線距離で25メートル以内に収まればよいと答えています。
ただし答えは同時に、繋がりのない部分にはそれぞれホース接続口を設けるよう指導するとも述べており、距離の計算だけで済ませず、実際に消火栓まで歩いて行けるかという視点も欠かせません。

うちの建物、同じ階でも廊下が繋がっていない部分があります。

答えは平面図上の直線距離で判定可です。
ただし両方への接続口の設置が指導されます。

非常電源専用受電設備は一般回路と共用してよいのか

灰色の非常電源専用受電設備が切替スイッチを介して一般回路の分電盤とつながっているイメージ
規則第12条第1項第4号イは、非常電源専用受電設備について、他の電気回路の開閉器や遮断器によって遮断されないことなどを定めています。受電設備の容量が不足する非特定防火対象物で、一般回路と共用してよいかが問われました。
問(要旨) 非特定防火対象物で受電設備の容量が不足するため、非常電源専用受電設備と他の一般回路の電源とを共用する場合、通常は一般回路に接続されており、消防用設備等が作動状態になつた場合においては、昭和53年4月28日消防予第83号問1に対する回答(2)〜(7)までを準用して認めて差し支えないか。
(昭和56年7月6日消防予第149号・消防庁予防救急課長から長崎県総務部長あて回答)
答 設問の場合、屋内消火栓設備の起動用スイッチの投入時間よりも揚水ポンプのマグネットスイッチの遮断時間が短い場合に限り認めて差し支えないものと解する。
一般回路との共用そのものは認めつつ、遮断の速さに条件を付けて答えている点がポイントです。
消防用設備等が作動した瞬間に、一般負荷側のスイッチが消火栓の起動より先に切れることが前提で、切り分けの速さが逆転していれば認められません。自家発電設備の共用を認めた別の質疑と同じく、確実な自動遮断の仕組みが条件になっています。

受電設備の容量が足りなくて、一般回路と分けられません。

答えは遮断が起動より速ければ共用可です。
切替えの速さを確かめる必要があります。

倍読み規定で屋内消火栓を免除するには屋根材に何が求められるのか

平屋建ての倉庫の屋根材の一部が波板で示され、禁止マークが添えられているイメージ
令第11条第2項は、特定主要構造部を耐火構造とし、壁及び天井の室内に面する部分を難燃材料で仕上げた防火対象物について、屋内消火栓設備が必要となる延べ面積の基準を2倍または3倍に緩和する、いわゆる倍読み規定を定めています。建築基準法上の別の基準で屋根を造ったとき、この倍読み規定をそのまま使えるかが問われました。
問(要旨) 延べ面積1,000平方メートルの簡易耐火構造の倉庫(平屋建、天井なし、壁はスレートあらわし)の屋根を建設省告示第101号の規定を適用し建築する場合、消防法施行令第11条第2項の倍読み規定を適用し、屋内消火栓設備を免除することができるか。なお、同告示で規定する強化ポリエステル板又は網入硬質塩化ビニール板は準難燃材料である。
(昭和56年6月18日消防予第129号・消防庁予防救急課長から静岡県知事公室長あて回答)
答 建設省告示第101号の規定により施行しても、屋根材の一部に準難燃材料が使用されるため、倍読み規定は適用されず屋内消火栓設備の設置は免除できない。
建築基準法側の告示に適合していても、それだけでは倍読み規定の「難燃材料仕上げ」を満たしたことにならないと答えています。
倍読み規定が求めているのは難燃材料そのものであって、準難燃材料では一段階足りません。屋根の建て方が別の基準に適合しているかどうかと、消防法上の緩和を受けられるかどうかは、別々に確かめる必要があります。

告示どおりの屋根なら、倍読みで免除されると思っていました。

答えは準難燃材料では免除できないです。
難燃材料かどうかを別途確かめます。

よくある質問

Qポリエチレン管は地上に露出する部分にも使えますか?
A質疑の答えは、令第32条を適用して埋設して施工する場合に限り使用を認めるとしています。現行の規則では消防庁長官が定める基準に適合する合成樹脂製の管という枠組みも用意されているので、所轄の消防署に確かめてください。
Q放水圧力を抑えるバルブなら、どの製品でも使えますか?
A質疑の答えは、耐久性・保守性・所定の耐圧試験・使用圧力範囲の表示という4つの条件を満たす場合に限り認めるとしています。製品ごとに性能試験の結果を確かめる必要があります。
Q非常電源専用受電設備を一般回路と共用するには、何が条件になりますか?
A質疑の答えは、揚水ポンプのマグネットスイッチの遮断時間が、屋内消火栓の起動用スイッチの投入時間より短い場合に限り認めるとしています。
Q質疑の回答は、今もそのまま使えますか?
A質疑の回答は昭和50年代のものです。その後の改正で変わっている条文や運用があります。現行の規則、告示と、所轄の消防署の運用に確かめてください。

まとめ

✔水道用ポリエチレン管は、令第32条を適用して埋設施工する場合に限り使用を認められた
✔放水圧力を抑えるバルブは、耐久性・保守性・耐圧試験・表示という4条件を満たせば特例として認められた
✔繋がりのない階部分は、平面図上の直線距離で25メートル以内を判定してよいとされた
✔非常電源専用受電設備は、遮断が起動より速い場合に限り一般回路と共用できるとされた
✔屋根材が準難燃材料では、倍読み規定による屋内消火栓の免除は認められなかった
✔質疑は昭和50年代のもの。現行の条文と運用は、その後の改正で変わっている場合がある
✔自分の建物の部材や運用の扱いは、所轄の消防署に確かめる

屋内消火栓設備も、条件つきで特例が認められる場合があるんですね。
まずは、うちの配管や電源がどれに当たるか見てみます!

進める前に、所轄の消防署へ確かめておくのが安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行令第11条第2項、第3項第1号イ、第32条
  • 消防法施行規則第12条第1項第4号イ、第6号ニ、第7号ホ
  • 建設省告示第101号
  • 消防庁の通知・回答(昭和54年6月7日消防予第112号、昭和54年6月15日消防予第117号、昭和56年6月18日消防予第129号、昭和56年7月6日消防予第149号、昭和56年10月13日消防予第246号)

※本記事は公表されている法令および通知に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や言葉づかい等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄の消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
屋内消火栓設備はどこまで特例が認められるのかの質疑五問をテーマにしたアイキャッチ画像
屋内消火栓設備の配管やポンプや非常電源は、規則が材料から設置場所まで細かく基準を定めています。 ところが、建物の立地や構造によっては、規定どおりの部材や方式がそろわない場面も出てきます。 昭和50年代の消防庁の通知には、...
リクルート 採用情報はこちら →
採用ページ 一緒に働く仲間を募集中 → フランチャイズ (株)防災屋と一緒に開業する → 協力業者 協力業者さん募集中 →