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トリメチルクロロシランはなぜ第4類に分類し直されたのか|水溶性液体と引火点の判定基準も解説

薬品の分類は試験結果で変わることを示すラボの写真

「危険物に該当するかどうか」は、物質の名前や分類表の建前だけでは決まりません。
同じ物質でも、実際の試験で示す挙動によって、該当する類や品名が変わることがあります。
本記事では、第3類の「有機金属化合物」として扱われていた物質が後日第4類へ分類し直された事例と、水溶性液体・引火点の判定基準を、消防庁の執務資料をもとに解説します。
危険物の判定は、名前ではなく試験結果で決まります。

うちで扱ってる薬品、ラベルには「有機金属化合物」と書いてあるんです。
でも実際の試験結果とは違う扱いになることもあると聞いて不安です。

おっしゃるとおりです、名称だけでは判定できません。
消防庁の執務資料でも、試験結果に応じて分類が見直された実例があります。

水に溶ける溶けないの判断も、見た目だけでは難しそうですね。
濁った液体でも水溶性液体になることがあるんでしょうか。

はい、濁っていても均一な外観を保てば水溶性液体に該当します。
今日は具体的な判定基準を一緒に見ていきましょう。

この記事の結論
  • トリメチルクロロシランは水との反応で生じるガスが不燃性のため、第3類ではなく引火点に応じた第4類「石油類」として扱われます
  • 界面活性剤を含む物品は、コロイド溶液になっても均一な外観を保てば水溶性液体に該当します
  • 水と反応してゲル化し沈殿する物品は、水溶性液体に該当しません
  • 引火点が100℃以上の物品の水溶液は、沸騰後に引火しても引火点がないものと扱われます
  • タグ密閉式で引火点が測定されない物品は、クリーブランド開放式の試験結果が危険性判断の基準になります

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トリメチルクロロシランの分類変更と水溶性液体引火点の判定基準をまとめた図解

トリメチルクロロシランはなぜ第3類から第4類に判定し直されたのか

密閉容器と炎の試験装置が並ぶ図
ある薬品が法別表の「有機金属化合物」に該当すると一度は回答されていました。
ところが後日、同じ物質について消防庁から別の回答が示されました。
問 法別表第3類の項第7号の「有機金属化合物(アルキルアルミニウム及びアルキルリチウムを除く。)」に該当する、例えば「トリメチルクロロシランSi(CH3)3Cl」は、自然発火性試験においては自然発火せず、かつ、ろ紙を焦がさないが、水との反応性試験においては火炎により着火をする。しかし、この場合、水と接触して生成するガスは不燃性の塩化水素(HCl)だけであり、また、トリメチルクロロシランは、試験実施条件下で引火性を示す物品であることから、このような物品については、第3類ではなく、引火点に応じた第4類の「石油類」としてよいか。
答 お見込みのとおり。
分類は試験で示す挙動で決まります。
この物質は以前、水と接触すると火炎で着火するという結果から第3類の「有機金属化合物」として扱われていました。
しかし発生したガスは不燃性の塩化水素だけで、着火はガスそのものの燃焼ではありませんでした。
一方で物質自体は引火点を持ち、試験条件下で引火性を示すことが確認されました。
そのため消防庁は後日、同じ物質を第4類の「石油類」として扱い直す回答を示しました。
取扱う薬品の分類は、ラベルや初出の回答をそのまま信じず、最新の試験結果に基づいているかを確認することが大切です。

同じ物質でも、試験の結果次第で扱いが変わることがあるんですね。
うちの薬品も一度調べたきりで安心していました。

はい、消防庁の回答は後から見直されることもあります。
気になる薬品があれば、最新の執務資料や通知を確認しておくと安心です。

界面活性剤を含む物品はなぜコロイド溶液でも水溶性液体になるのか

濁った液体と透明な液体のビーカーが並ぶ図
界面活性剤を含む製品は、水に混ぜると白く濁ることがあります。
この濁りがあるだけで「水に溶けない」と判断してよいのでしょうか。
問 界面活性剤を含有する物品を、1気圧、温度20℃で同容量の純水と緩やかにかき混ぜたとき、流動がおさまった後も混合液が均一な外観を維持する場合は、当該混合液が懸濁液(コロイド溶液)となる場合であっても、当該物品は令別表第3備考第10号に規定する水溶性液体に該当するか。
答 お見込みのとおり。
合い言葉は均一な外観を保つかどうかです。
水溶性液体の定義は、純水と混ぜて流動がおさまったあとも混合液が均一な外観を維持するかどうかで判断されます。
見た目が白く濁っていても、物品と水とが二つの相に分離せず、色も均一であれば条件を満たします。
つまり透明かどうかは判定基準に含まれていません。
洗剤や乳化剤を含む製品を保管するときは、濁りの有無でなく分離の有無を確認する習慣をつけましょう。

濁ってても分離してなければ水溶性液体になるんですね。
見た目だけで判断してたら間違えるところでした。

そうなんです、色や濁りではなく分離するかどうかがポイントです。
迷ったら実際にかき混ぜて確認してみてください。

水と反応してゲル化する物品はなぜ水溶性液体にならないのか

沈殿物のあるビーカーとかくはん棒が並ぶ図
中には、水と混ぜるとその場では溶けたように見える物品もあります。
ところがしばらく置くと、様子が変わることがあります。
問 水と混合すると加水分解して溶解し、さらに放置すると、縮合しゲル化して沈殿する物品は、令別表第3備考第10号に規定する水溶性液体に該当するか。
答 設問のような、水と反応する物品は水溶性液体に該当しない。
水と反応して性質が変わる物品は対象外です。
水溶性液体の定義は、あくまで水と混ざり合うかどうかを見るものです。
いったん加水分解して溶けたように見えても、その後縮合してゲル化し沈殿するなら、それは水との反応であって溶解ではありません。
前の項目とは逆に、見た目が一時的に透明になっても安心はできません。
時間を置いて状態を確認することが、正しい判定につながります。

最初は溶けたように見えても、あとで分離するなら話が変わるんですね。
うちの在庫も一晩置いて確認してみます。

その確認はとても有効です。
時間が経ってからの状態まで見ておくと安心です。

引火点100℃以上の物品の水溶液はなぜ沸騰後に引火しても引火点なしとされるのか

湯気の立つ容器と温度計が並ぶ図
引火点の高い物品を水に溶かして試験すると、思わぬ現象が起きることがあります。
水そのものが沸騰し、気化したあとに引火してしまうのです。
問 引火点が100℃以上の物品の水溶液の引火点をクリーブランド開放式引火点測定器により測定すると、水が沸騰し、気化した後、引火する場合があるが、この場合、当該水溶液は引火点がないものと解してよいか。
答 お見込みのとおり。
水の沸騰による引火は、物品本来の引火点とは別の現象です。
法別表備考第10号の引火性液体は、引火の危険性を判断する試験で引火性を示すかどうかで決まります。
水溶液を加熱すると、まず水そのものが沸騰・気化し、その蒸気が引火することがあります。
この現象は物品自体が引火点を持つこととは別であり、設問の水溶液は引火点がないものとして扱われます。
高沸点の物品を水で薄めた状態だけを見て、引火点があると早合点しないよう注意しましょう。

水が沸騰して引火しただけなのに、薬品自体の引火点があると勘違いしそうです。
見分け方が難しいですね。

はい、水の沸騰による引火と物品本来の引火点は別物として扱われます。
試験結果を見るときはその点を意識してください。

塩素系溶剤とアルコールの混合物はどちらの試験器の結果で危険性を判断するのか

密閉式と開放式の引火点測定器が並ぶ図
引火点の測定には複数の試験器があり、結果が食い違うことがあります。
どちらを優先すべきか、基準が定められています。
問 塩素系溶剤とアルコールの混合物は、タグ密閉式引火点測定器により引火点を測定する場合には引火しないが、クリーブランド開放式引火点測定器により引火点を測定する場合には引火点が測定される。このような物品については、引火の危険性を判断する試験をいかに行うのか。
答 法別表備考第10号の引火の危険性を判断するための試験は、タグ密閉式引火点測定器により引火点を測定する試験において引火点が80℃以下の温度で測定されない場合にあっては、クリーブランド開放式引火点測定器により引火点を測定する試験とされている。したがって、設問の場合には、クリーブランド開放式引火点測定器により引火点を測定する試験が法別表備考第10号の引火の危険性を判断するための試験となる。
試験器の選択にも優先順位があります。
まずタグ密閉式で測定し、引火点が80度以下で測定されなければクリーブランド開放式の結果を採用するという順番が、令第1条の6で定められています。
タグ密閉式で引火しなかったからといって、その物品が危険でないとは言い切れません。
開放式で引火点が出るなら、その結果が法令上の判断基準になります。
複数の試験結果があるときは、どちらを優先すべきかを法令の順番で確認しましょう。

密閉式で引火しなくても、それで安全と決めつけちゃだめなんですね。
優先順位があるのを知りませんでした。

そうなんです、順番を間違えると判断を誤ります。
迷ったら両方の試験結果を並べて確認してください。

よくある質問

Qトリメチルクロロシランは今も第3類として扱われることはあるのか?
A試験結果次第では第4類の「石油類」として扱われます。水との反応で生じるガスが不燃性で、かつ引火点に応じた引火性を示す場合は、第3類の「有機金属化合物」ではなく第4類として判定されます。
Q水溶性液体かどうかは誰がどうやって確認するのか?
A純水と緩やかにかき混ぜる試験で、流動がおさまったあとも混合液が均一な外観を維持するかどうかを目視で確認します。色や相の分離がなければ水溶性液体に該当します。
Q自社で扱う薬品の引火点はどちらの試験器で測ればよいのか?
A原則としてタグ密閉式から始め、引火点が80度以下で測定されない場合にクリーブランド開放式へ切り替えます。この順番は令第1条の6で定められています。
Q過去に危険物でないと判定された薬品は、そのままでよいのか?
A判定は試験結果に基づく回答であり、製法や成分が変われば結果も変わります。扱う薬品の組成に変更があった場合は、改めて確認することをおすすめします。

まとめ

✔物質の分類は、名称や従来の回答ではなく実際の試験結果で決まります
✔トリメチルクロロシランは水との反応で生じるガスが不燃性のため、第4類の「石油類」として扱われます
✔界面活性剤を含む物品は、濁っていても均一な外観を保てば水溶性液体に該当します
✔水と反応してゲル化し沈殿する物品は、水溶性液体に該当しません
✔引火点100℃以上の物品の水溶液は、水の沸騰による引火と物品本来の引火点を区別して扱います
✔引火点の試験はタグ密閉式を優先し、測定できない場合にクリーブランド開放式を使います
✔扱う薬品の組成や製法が変わったときは、改めて危険物該当性を確認することが実務での見落としを防ぎます

うちの薬品も、名前だけで安心せずに試験結果を確認し直します!

判定に迷う薬品があれば、組成や試験データをそろえたうえでご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法別表第一備考第十号(引火性液体の定義)
  • 危険物の規制に関する政令(昭和三十四年政令第三百六号)第1条第2項・第1条の6・別表第三備考第十号
  • 「危険物規制事務に関する執務資料(給油取扱所を除く)の送付について」(平成元年7月4日付け消防危第64号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
  • 「危険物規制事務に関する執務資料の送付について」(平成元年12月21日付け消防危第114号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
  • 「同前」(平成2年10月31日付け消防危第105号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて)

※本記事は消防庁の執務資料をもとに作成した一般的な解説です。個別の薬品・製品が危険物に該当するかどうかの判定は、組成・引火点等のデータをそろえたうえで所轄消防署にご確認ください。

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