BLOG

危険物の品名判定はどこまで数値や規格で決まるのか|ギヤー油の日本工業規格からカーボンブラックの除外まで五つの質疑応答を現行の省令と照らして解説

危険物の品名は規格や試験で決まっているのかのアイキャッチ画像

ギヤー油やカーボンブラックのような物品は、名前や見た目だけでは消防法上の品名が決まりません。
日本工業規格に適合するかどうか、融点が明確かどうか、化学的にどこまで加工されたかといった基準で判定されています。
本記事では、消防庁の執務資料をもとに、品名判定の境目を五つの質疑応答から解説します。
製品名や表示された含有率だけでは、危険物に該当するかどうかは決まりません。

うちの倉庫にあるギヤー油、危険物かどうか気にしたことなかったです。

実は品名は製品の呼び名ではなく、日本工業規格に適合するかどうかで決まるんです。

規格で決まるんですか。
てっきり呼び名で決まると思ってました。

呼び名ではなく規格や試験で決まるものが多いんです。
今日は五つの質疑応答で見ていきましょう。

この記事の結論
  • ギヤー油とは日本工業規格K2219「ギヤー油」に適合するものをいい、シリンダー油とは日本工業規格K2238に規定するISO VG680・VG1000・VG1500に適合するものをいいます
  • 動植物油を水素添加させた物品は、第四類の動植物油類に該当するものとして扱って差し支えありません
  • 動植物油をグリセリンの代わりにしょ糖やソルビトール等でエステル化した物品は、引火点に応じた第四類の石油類に該当します
  • 明確な融点のない混合物は、100度未満で液状であれば融点100度未満と判断してよいとされています
  • カーボンブラックは原料・製法が異なるため、令別表第四の「石炭・木炭類」には該当しません

▼

危険物の品名判定が規格や試験で決まる五つの事例をまとめた図解

ギヤー油・シリンダー油はどんな規格の製品をいうのか

工業規格の証を付けた油缶の図
第四類の第四石油類には、品目としてギヤー油・シリンダー油の名前が挙がっています。
ただし、この呼び名がついていれば何でも該当するわけではありません。
問 法別表備考第16号において品目指定されているギヤー油、シリンダー油とはいかなるものか。
答 ・ギヤー油とは、日本工業規格K2219「ギヤー油」に適合するものをいう。・シリンダー油とは、日本工業規格K2238「マシン油」に規定するISO VG680、ISO VG1000及びISO VG1500に適合するものをいう。
品名は商品の呼び名ではなく、日本工業規格への適合性で決まります。
消防法別表第一備考第十六号は、第四石油類について「ギヤー油、シリンダー油その他一気圧において引火点が二〇〇度以上二五〇度未満のもの」と定めています。
条文はこの二つの油を名指ししていますが、どんな製品でもこの名前で呼べば該当するわけではありません。
回答は、具体的な日本工業規格の番号を挙げることで線引きをしています。ギヤー油は日本工業規格K2219に適合するもの、シリンダー油は日本工業規格K2238が規定するISO粘度グレードのVG680・VG1000・VG1500に適合するものに限られる、という整理です。
同じ「ギヤー油」という呼び名の製品でも、この規格に適合しなければ、名指しされた品目としてではなく、引火点の数値から判断することになります。

規格に適合するかどうかまで確認しないといけないんですね。
ただの呼び名では判断できないんですね。

はい、呼び名ではなく規格の番号で確認してください。
次は動植物油を加工した製品の判定を見ていきましょう。

動植物油の加工品はどこまでが動植物油類になるのか

油の容器から別の容器へ矢印が伸びる図
動植物油類は、動物の脂肉等又は植物の種子若しくは果肉から抽出したものと定義されています。
しかし実際の製造現場では、抽出した油をさらに加工する工程が数多くあります。
問 法別表第4類の動植物油類を原料として加工製造された次のような液状の物品は、いかなる品名に該当するか。A 水素添加させたもの B 複数の動植物油をグリセリンと脂肪酸に分解し、エステル交換により元の動植物油とは異なるグリセリドとしたもの C 動植物油をグリセリンと脂肪酸に分解し、グリセリンの代わりに、しょ糖、ソルビトール、プロピレングリコール等を用いて、しょ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等としたもの
答 A及びBは、第四類の「動植物油類」に該当するものとして扱って差し支えない。Cは、引火点に応じた第四類の「石油類」に該当する。
「抽出した油」の範囲にとどまるか、別の物質に変わったかが判定の境目です。
A(水素添加)やB(グリセリンと脂肪酸への分解とエステル交換)は、どちらも動植物油を構成する脂肪酸とグリセリンの組み合わせを変えているだけで、動植物油から得られたグリセリドという性質を保っています。だから動植物油類のまま扱って差し支えないとされました。
一方Cは、グリセリンの代わりにしょ糖やソルビトールといった別の物質を使ってエステル化しており、できあがる物質はもはや動植物油由来のグリセリドではありません。
別の原料を使って新しく作られた物質という扱いになるため、動植物油類ではなく引火点に応じた石油類で判定することになります。原料が動植物油かどうかではなく、できあがった物質がグリセリドの範囲にとどまっているかどうかで線引きされている点に注意しましょう。

水素を足しただけなのか、別の物質に作り替えたのかで分かれるんですね。

はい、グリセリンの代わりに別の物質を使うと動植物油類から外れます。
次は融点の分からない物品の判定を見てみましょう。

融点の分からない混合物はどう可燃性固体類と判断するのか

温められて溶ける立方体と温度計の図
可燃性固体類は、引火点や燃焼熱量に加えて融点でも線引きされています。
しかし実際の製品は混合物であることが多く、明確な融点が存在しないケースが出てきます。
問 令別表第4備考第5号ニの融点について、明確な融点の存在しない混合物である物品の場合は、100℃未満の温度において液状の確認を行い、液状であるものは、当該物品の融点は、100℃未満であると判断してよいか。
答 差し支えない。
融点が測れない物品は、液状かどうかの確認で代用できます。
危険物の規制に関する政令別表第四備考第六号ニは、可燃性固体類のうち「引火点が二〇〇度以上で、かつ、燃焼熱量が三四キロジュール毎グラム以上であるもので、融点が一〇〇度未満のもの」を対象に含めています。
単一の化合物であれば融点は一つの数値で決まりますが、複数の成分が混ざった製品では、融点という概念そのものがはっきりしないことが珍しくありません。
回答は、そうした混合物について、100度未満の温度で液状かどうかを確認する方法に置き換えることを認めています。100度未満で液状であれば、融点は100度未満とみなしてよい、という実務的な代替基準です。
なお、この号はもともと備考第五号として運用されていましたが、再生資源燃料に関する号が新設されたことにより、現行では備考第六号に繰り下がっています。古い回答を読むときは号番号のずれに注意しましょう。

融点がはっきりしない製品でも、液状かどうかを見ればいいんですね。

はい、100度未満で液状であれば融点100度未満とみなせます。
次はカーボンブラックの扱いを見てみましょう。

カーボンブラックは石炭・木炭類に含まれるのか

黒い粉の山と石炭貯蔵の箱が離れて置かれた図
指定可燃物には「石炭・木炭類」という区分があり、指定数量は10,000キログラムです。
コークスや活性炭なども含まれると備考に書かれていますが、工業的によく使われる黒色の微粉末であるカーボンブラックはどうでしょうか。
問 カーボンブラック(天然ガス又は液状炭化水素の不完全燃焼又は熱分解によって得られる黒色の微粉末)は、令別表第4の「石炭・木炭類」に該当するか。
答 該当しない。
見た目が黒い粉末でも、原料と製法が違えば石炭・木炭類にはなりません。
危険物の規制に関する政令別表第四備考第七号は「石炭・木炭類には、コークス、粉状の石炭が水に懸濁しているもの、豆炭、練炭、石油コークス、活性炭及びこれらに類するものを含む。」と定めています。
これらはいずれも石炭や木材を由来とする燃料系の物品です。
これに対しカーボンブラックは、天然ガスや液状炭化水素を不完全燃焼させたり熱分解させたりして得られる微粉末で、原料も製法もまったく異なります。
黒い粉末という見た目の印象だけで同じ区分に含めてしまうと、指定数量や貯蔵方法の規制を誤って適用することになりかねません。品名や区分の判定では、外見ではなく原料と製法にさかのぼって確認する必要があります。

黒い粉だから石炭の仲間かと思ってました。
原料が違うんですね。

はい、見た目ではなく原料と製法で判断してください。
最後は含有率の表示について見てみましょう。

「含有率◯◯%」という表示だけで危険物かどうかを判断してよいか

ラベル付きの容器と試験管ラックが離れて置かれた図
薬品や工業製品には、成分の含有率がパーセントで表示されているものがあります。
表示された数字を見れば、危険物に該当するかどうかすぐに判断できそうに思えますが、実務ではそう単純にはいきません。
問 「硫酸ヒドロキシルアミン40wt%含有」と表示のある商品が危険物に該当したが、これをもって硫酸ヒドロキシルアミンを45wt%含有するものは、製造元にかかわらず危険物と考えてよろしいか。また、硫酸ヒドロキシルアミン10wt%と表示のある商品は、非危険物と考えてよろしいか。
答 適当でない。硫酸ヒドロキシルアミンは、水分、硫安及びその他添加剤を含むものであり、中には危険物としての危険性を抑制する物質を含有することもある。その割合は各製造元ごとに異なることから、一概には言えない。また、ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩類が危険物に該当するか否かは、濃度により判断するのではなく、消防法別表備考に定めるように、政令で定める熱分析試験及び圧力容器試験の結果により、確認する必要がある。
含有率の表示だけでは、危険物に該当するかどうかは決まりません。
消防法別表第一は、第五類の自己反応性物質としてヒドロキシルアミン・ヒドロキシルアミン塩類を品名に掲げています。
同じ化学物質を含む製品であっても、水分や硫安その他の添加剤がどれだけ含まれているかによって危険性は変わり、その配合は製造元ごとに異なります。ある製品の含有率で危険物と判定されたからといって、別の製造元の近い含有率の製品にそのまま当てはめることはできません。
消防法別表第一備考第十八号は、自己反応性物質の爆発の危険性を判断する試験として、危険物の規制に関する政令第一条の七が定める熱分析試験と圧力容器試験を挙げています。該当性は表示された含有率の数字ではなく、これらの政令で定める試験の結果によって確認するべきだ、というのが回答の趣旨です。

表示の数字だけで安心していました。
試験をしないと確定しないんですね。

はい、添加剤の割合は製造元ごとに違います。
政令で定める試験で確認してください。

よくある質問

Qギヤー油やシリンダー油は、製品名が同じなら必ず第四石油類になるのか?
Aいいえ。日本工業規格K2219(ギヤー油)やK2238(シリンダー油、ISO VG680・VG1000・VG1500)に適合するものに限られます。
Q動植物油を加工した製品は、すべて動植物油類になるのか?
Aいいえ。水素添加やグリセリンとのエステル交換による製品は動植物油類ですが、グリセリンの代わりに別の物質を使ったエステルは引火点に応じた石油類になります。
Q融点の分からない混合物は危険物の判定をあきらめるしかないのか?
Aいいえ。100度未満の温度で液状かどうかを確認すれば、融点100度未満とみなしてよいとされています。
Q製品に表示された含有率の数字だけで危険物かどうかを判断してよいか?
Aいいえ。添加剤の割合は製造元ごとに異なるため、政令で定める熱分析試験・圧力容器試験等の結果で確認する必要があります。

まとめ

✔危険物の品名判定は、製品名や表示された数字だけでは決まらず、規格や試験で確認します
✔ギヤー油とは日本工業規格K2219に適合するもの、シリンダー油とは日本工業規格K2238が規定するISO VG680・VG1000・VG1500に適合するものをいいます
✔動植物油を水素添加した物品、グリセリンとエステル交換した物品は動植物油類として扱って差し支えありません
✔グリセリンの代わりに別の物質でエステル化した物品は、動植物油類ではなく引火点に応じた石油類に該当します
✔明確な融点のない混合物は、100度未満で液状かどうかを確認すれば融点100度未満と判断してよいとされています
✔カーボンブラックは原料・製法が異なるため、令別表第四の石炭・木炭類には該当しません
✔硫酸ヒドロキシルアミン等の含有率は表示の数字ではなく、政令で定める熱分析試験・圧力容器試験の結果で確認する必要があります

うちの品名判定も、もう一度確認してみます!

品名判定や試験方法で迷ったら、組成や規格の資料をそろえたうえでご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法(昭和23年法律第186号)別表第一備考第十六号(第四石油類の定義)・第十七号(動植物油類の定義)・第十八号(自己反応性物質の爆発の危険性に係る試験) e-Gov法令検索
  • 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)別表第四備考第六号(可燃性固体類の定義)・第七号(石炭・木炭類の定義)・第1条の7(第五類の危険物の試験及び性状) e-Gov法令検索
  • 危険物の試験及び性状に関する省令(平成元年自治省令第1号)第5条・別表第十二(熱分析試験の細目)
  • 「危険物規制事務に関する執務資料の送付について」(平成2年10月31日付け消防危第105号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
  • 「危険物規制事務に関する執務資料の送付について」(平成14年2月26日付け消防危第29号 危険物保安室長から各都道府県消防主管部長あて回答)
  • 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)の危険物の規制に関する政令の質疑応答を参考に、独自に解説を作成

※本記事は2026年10月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の物品が危険物に該当するかどうかの判定は、組成・規格・試験データ等をそろえたうえで所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
危険物の品名は規格や試験で決まっているのかのアイキャッチ画像
ギヤー油やカーボンブラックのような物品は、名前や見た目だけでは消防法上の品名が決まりません。 日本工業規格に適合するかどうか、融点が明確かどうか、化学的にどこまで加工されたかといった基準で判定されています。 本記事では、...
リクルート 採用情報はこちら →
採用ページ 一緒に働く仲間を募集中 → フランチャイズ (株)防災屋と一緒に開業する → 協力業者 協力業者さん募集中 →