特定小規模施設用自動火災報知設備の点検要領には、通常の自動火災報知設備とは別に専用の章が設けられています。
中でも目を引くのが、定温式スポット型(非再用型)感知器の点検方法です。
全数を試験しない代わりに、設置個数に応じた抜き取り数表と、不良が出たときの追加試験のルールが細かく定められています。
この記事では、抜き取り数表の読み方から輪番の記録、不良発見時の対応、試験後の交換まで、点検要領の原文に沿って解説します。
うちの民泊に特定小規模施設用自動火災報知設備を付けているんですが、点検のときに感知器を一部だけ交換しているのを見て驚きました。
あれって毎回必要なんですか。
いいえ、定温式スポット型の非再用型感知器だけ、設置個数に応じた抜き取り数で試験すればよいことになっています。
じゃあ残りの感知器は、一度も試験しないまま終わるということですか。
抜き取りは輪番で行うので、回を重ねれば一巡しますよ。
順番に見ていきましょう。
- 定温式スポット型(非再用型)感知器は、一度加熱試験を行うと再使用できない構造のため、設置個数に応じた抜き取り数だけを試験すればよいとされています。
- 抜き取り数は設置個数が10以下なら1個、11〜50以下なら2個と、第33-1表で段階的に決められています。
- 通常の自動火災報知設備の抜取表は101個以上で7個まで続きますが、特定小規模施設用の表は50個以下の2段階だけで足ります。
- 抜き取った感知器から不良が発見された場合は、その不良個数分を追加で抽出して試験します。
- 抜き取りは輪番で行い図面や点検票に位置を記録し、試験済みの感知器は新品に交換します。
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目次
定温式スポット型非再用型感知器はなぜ全数を加熱試験できないのか

点検要領は、熱感知器の点検方法を種類ごとに次のように分けています。
差動式・定温式(再用型)・熱アナログ式は、加熱試験器で作動させても壊れない構造なので、設置されている感知器を全数そのまま試験できます。
これに対し非再用型は、一度作動すると内部の感熱部分が壊れて再度使用できなくなる構造です。
全数を試験してしまうと設置してある感知器を丸ごと交換することになり、現実的ではありません。
そこで警戒区域ごとに、設置個数に応じた抜き取り数だけを試験する方法が点検要領で定められています。
加熱試験器で炙ったら、壊れてしまう感知器もあるということですか。
はい、非再用型はそういう構造です。
次は抜き取り数がどう決まるかを見てみましょう。
抜き取り数は感知器の設置個数でどう決まるのか

点検要領は、設置個数に応じた抜き取り数を表で定めています。
設置個数が少なければ抜き取り数も少なく、増えれば抜き取り数も増える、段階的な作りです。
抜き取った感知器は、再用型の感知器の加熱試験に準じて確認します。試験方法そのものは全数試験のときと変わりません。
違うのは、警戒区域の設置個数を確認し、表に当てはめて抜き取り数を決めるという一手間が加わる点です。
次の章では、この表が通常の自動火災報知設備の表とどう違うのかを見ていきます。
うちは感知器が30個くらいあるので、抜き取り数は2個ということですね。
はい、11個から50個までの区分なので2個です。
次は通常の自動火災報知設備の表と比べてみましょう。
通常の自動火災報知設備の抜取表となぜ段階数が違うのか

ただし表の段階数が、特定小規模施設用自動火災報知設備とは異なります。
通常の自動火災報知設備は大規模な建物にも設置されるため、設置個数が100個を超える現場も珍しくありません。
一方、特定小規模施設用自動火災報知設備が置かれる建物は、延べ面積又は床面積が300平方メートル未満などの小規模な建物に限られます。
設置される感知器の個数もおのずと少なくなるため、表はそもそも50個を超える区分を必要としません。
段階数の違いは、設備そのものが前提とする建物の規模の違いを、そのまま映した作りだといえます。
同じ非再用型なのに、表の中身が建物の規模で変わるんですね。
はい、特定小規模施設用は50個を超える現場をそもそも想定していません。
次は不良が見つかったときの対応を見てみましょう。
抜き取った感知器から不良が見つかったらどうするのか

点検要領は、不良が発見された場合の対応も定めています。
たとえば抜き取り数が2個の警戒区域で、そのうち1個が不良だった場合は、さらに1個を追加で抜き取って試験します。
合否判定基準は「確実に作動すること」なので、抜き取った感知器が作動しなければ不合格です。
抜き取り試験は手間を減らすための省略ではなく、疑わしい兆候が出たら範囲を広げて確かめる仕組みだということが分かります。
この対応を忘れると、警戒区域全体の感知器の状態を見誤ってしまいます。
不良が出たらそこで終わりじゃなくて、追加で確かめるんですね。
はい、不良の個数分だけ追加で抜き取ります。
最後に抜き取りの選び方と試験後の扱いを見てみましょう。
抜き取る感知器はどう選び試験後どう扱うのか

点検要領は、選び方と試験後の扱いも定めています。
毎回同じ感知器ばかり抜き取ると、残りの感知器は一度も試験されないまま放置されることになりかねません。
輪番で回せば、点検の回数を重ねるうちに警戒区域内の感知器が一巡して確認されます。
また試験を行った感知器は再度使用できないため、試験後は必ず新品と交換します。
抜き取り位置の記録と交換の実施、この2つをセットで管理することが、次回以降の点検を迷わせないコツです。
記録を取っておかないと、同じ感知器ばかり抜いてしまいそうです。
はい、図面か点検票に印を付けておくと安心です。
最後に整理しましょう。
よくある質問
まとめ
抜き取り数表も輪番の記録も、理由が分かるとちゃんと守れそうです!
はい、点検要領の原文どおりに確認するのが安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第31条の6(消防用設備等又は特殊消防用設備等の点検及び報告)
- 消防用設備等の点検の基準及び消防用設備等点検結果報告書に添付する点検票の様式を定める件(昭和50年消防庁告示第14号)の一部改正(平成21年消防庁告示第4号)別表第33 特定小規模施設用自動火災報知設備の点検の基準
- 消防庁「消防用設備等の試験基準及び点検要領の一部改正について」(平成21年3月10日消防予第102号)点検要領第33 特定小規模施設用自動火災報知設備・点検要領第11 自動火災報知設備
- 特定小規模施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成20年総務省令第156号)
※本記事は公表されている法令、告示および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。点検の基準や点検要領は改正されることがあります。個別の判断は、消防設備士や所轄消防署にご確認ください。





