果樹や野菜のハダニ防除に使う殺ダニ剤の倉庫にも、消防への届出が必要な物質があります。
平成25年7月4日、消防庁は酸化フェンブタスズという有機スズ化合物を新たに指定する省令改正を通知しました(消防危第107号)。
対象になるのはフェンブタスズそのものだけでなく、これを含有する製剤も同じです。
この物質には濃度による除外基準が無く、含有していれば量だけで判断されます。
殺ダニ剤を保管しているだけなのに、消防への届出が必要になるとは知りませんでした。
その物質は酸化フェンブタスズという殺ダニ剤の成分かもしれません。
まずは指定の経緯から確認しましょう。
酸化フェンブタスズという名前を聞いたのは今日が初めてです。
殺ダニ剤の成分だったんですね。
はい、消防活動阻害物質という制度に新しく加わりました。
対策は決して難しくありません。
- 酸化フェンブタスズ(ヘキサキス(β,β―ジメチルフェネチル)ジスタンノキサン)及びこれを含有する製剤が、平成26年2月1日から消防活動阻害物質に加わりました。
- 根拠は消防危第107号(平成25年7月4日)による総務省令の改正です。
- 対象になる場合は、貯蔵・取扱いを始める前に所轄消防長又は消防署長への届出が必要です。
- 酸化フェンブタスズはハダニ類を防除する殺ダニ剤の成分で、果樹や野菜の栽培施設での使用が想定されます。
- 濃度による除外基準が定められていないため、含有していれば量だけで届出の要否が決まります。
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目次
酸化フェンブタスズはなぜ消防活動阻害物質に加えられたのか

きっかけは、殺ダニ剤として使われる酸化フェンブタスズが、火災予防又は消火活動に支障を生ずるおそれのある物質として新たに位置づけられたことです。
消防法第9条の3は、圧縮アセチレンガスや液化石油ガスなど、火災予防又は消火活動に重大な支障を生ずるおそれのある物質を貯蔵し、又は取り扱う者に、あらかじめ所轄消防長又は消防署長への届出を義務づけています。
酸化フェンブタスズはハダニ類を防除する殺ダニ剤の成分として果樹や野菜の栽培に使われている有機スズ化合物で、今回の改正でこの届出制度の対象に新たに加えられました。
指定されたのは酸化フェンブタスズそのものだけでなく、これを含有する製剤も対象に含まれる点がポイントです。
次は、具体的にどれだけの量から届出の対象になるのかを見ていきます。
殺ダニ剤の成分が消防の制度に関係してくるとは、意外でした。
含有する製剤まで対象になる点が今回のポイントです。
次は対象になる量を見ましょう。
どんな製剤のどれだけの量が届出の対象になるのか

酸化フェンブタスズはどのような基準で区分されるのでしょうか。
危険物の規制に関する政令第1条の10は、圧縮アセチレンガス(40キログラム)・液化石油ガス(300キログラム)のように物質ごとに数量を直接定める号のほか、毒物及び劇物取締法上の毒物・劇物のうち政令別表第一・別表第二に掲げる物質については、その物質に応じた数量を総務省令で定めるという2段構えの仕組みを取っています。
酸化フェンブタスズは今回、この総務省令(平成元年自治省令第2号)が改正され、政令別表第一に新たに加えられました。
別表第一に掲げる物質の数量は一律30キログラムと定められており、酸化フェンブタスズもこの基準で判断されます。
次は、この届出そのものがどんな仕組みで義務づけられているのかを確認します。
30キログラムという量は、農業用の保管ではすぐに超えてしまいそうです。
在庫を合算した数量で判断してください。
次は届出そのものの仕組みを見ましょう。
届出はどんな仕組みで義務づけられているのか

圧縮アセチレンガスやLPガスと同じ届出制度に、酸化フェンブタスズも加わったことになります。
酸化フェンブタスズの届出手続きそのものは、既存の消防活動阻害物質(圧縮アセチレンガス・液化石油ガス等)と同じ消防法第9条の3の枠組みに乗ります。届出先は貯蔵・取扱いの場所を管轄する消防長又は消防署長で、貯蔵・取扱いを始める前にあらかじめ届け出る必要があります。
具体的な届出書の様式や記載事項、届出が不要になる場合(船舶・自動車等による貯蔵・取扱い)については、既存の消防活動阻害物質の届出制度と共通しています。
次は、実務で見落としやすいポイントを確認します。
新しい制度ではなく、既存の届出制度に物質が1つ加わっただけなんですね。
そのとおりです。
次は見落としやすい落とし穴を確認しましょう。
濃度の除外基準がないことを見落とすとどうなるのか

他の指定物質との違いを見落とすと、届出漏れにつながります。
政令別表第一には濃度50パーセント以下を含有するものを除くといった除外規定を持つ物質も並んでいますが、酸化フェンブタスズの項目にはそうした除外規定が一切付いていません。
2つ目は、他の農薬成分と同じ感覚で濃度を確認してしまう点です。
他の消防活動阻害物質には濃度の除外基準が設けられているものもあり、低濃度なら対象外だろうという思い込みは酸化フェンブタスズには通用しません。
3つ目は、製剤の成分表示に酸化フェンブタスズという名称ではなく、ジスタンノキサンや商品名だけが記載されていることがある点で、成分表示の読み替えが必要になる場合があります。
次は、明日から確認すべき具体的な手順を整理します。
除外基準が無いとは、盲点でした。
含有していれば量だけで判断されます。
次は明日からの確認手順です。
明日から何を確認すればよいのか

順番に進めれば、届出漏れのリスクを大きく減らせます。
①自社が保管・取扱う農薬・殺ダニ剤等の成分表示を確認し、酸化フェンブタスズの含有の有無と総量を洗い出します。
②含有する製剤の総量が30キログラム以上になる場合は、所轄消防署に相談のうえ、貯蔵・取扱い開始前(すでに保管している場合は速やかに)の届出手続きを進めます。
③届出を怠った場合は消防法第44条第8号により30万円以下の罰金又は拘留の対象になるため、確認結果は記録に残しておきます。
④届出済みの貯蔵・取扱いをやめる場合も同様の届出が必要になることを、あわせて確認しておきましょう。
まずは薬剤棚から、成分表示を確認してみます。
それが一番の近道です。
よくある質問もあわせてご確認ください。
よくある質問
まとめ
酸化フェンブタスズと届出のしくみ、これで整理できました!
濃度の除外基準が無い点を忘れずに確認してくださいね。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「危険物の規制に関する政令別表第一及び同令別表第二の総務省令で定める物質及び数量を指定する省令の一部を改正する省令の公布について(通知)」(平成25年7月4日 消防危第107号 消防庁次長)
- 消防法(昭和23年法律第186号)第9条の3・第44条第8号
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第1条の10
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





