農薬や殺虫剤を保管する倉庫には、消防が把握していない物質が眠っていることがあります。
令和8年2月27日、消防庁はこうした物質の一つを新たに指定する省令改正を通知しました(消防危第23号)。
追加されたのは、ハダニ類の防除に使われる殺ダニ剤の成分「フェナザキン」です。
濃度19.4パーセントを境に、届出が必要になるかどうかが分かれます。
農薬を保管しているだけなのに、消防への届出が必要になるとは知りませんでした。
その物質はフェナザキンという殺ダニ剤の成分かもしれません。
まずは指定の経緯から確認しましょう。
フェナザキンという名前を聞いたのは今日が初めてです。
農薬の成分だったんですね。
はい、消防活動阻害物質という制度に新しく加わりました。
対策は決して難しくありません。
- フェナザキン(4-[2-(4-ターシャリ-ブチルフェニル)エトキシ]キナゾリン)及びこれを含有する製剤が、令和8年3月31日から新たに消防活動阻害物質に加わりました。
- 濃度19.4パーセント以下を含有する製剤は、規制の対象から除かれます。
- 対象になる場合は、貯蔵・取扱いを始める前に所轄消防長又は消防署長への届出が必要です。
- フェナザキンはハダニ類の防除に使われる殺ダニ剤の有効成分で、農薬の製造・保管施設での使用が想定されます。
- 濃度の確認を怠ると、届出義務があることに気づかないまま貯蔵を続けてしまう恐れがあります。
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目次
フェナザキンはなぜ消防活動阻害物質に加えられたのか

きっかけは、農薬として使われるフェナザキンが、火災予防又は消火活動に支障を生ずるおそれのある物質として新たに位置づけられたことです。
消防法第9条の3は、圧縮アセチレンガスや液化石油ガスなど、火災予防又は消火活動に重大な支障を生ずるおそれのある物質を貯蔵し、又は取り扱う者に、あらかじめ所轄消防長又は消防署長への届出を義務づけています。
フェナザキンはハダニ類を防除する殺ダニ剤の有効成分として農薬に使われている物質で、今回の改正でこの届出制度の対象に新たに加えられました。
指定されたのはフェナザキンそのものだけでなく、これを含有する製剤も対象に含まれる点がポイントです。
次は、具体的にどんな濃度・数量から届出の対象になるのかを見ていきます。
殺ダニ剤の成分が消防の制度に関係してくるとは、意外でした。
含有する製剤まで対象になる点が今回のポイントです。
次は対象になる濃度を見ましょう。
どんな製剤のどれだけの量が届出の対象になるのか

フェナザキンはどのような基準で区分されるのでしょうか。
危険物の規制に関する政令第1条の10は、圧縮アセチレンガス(40キログラム)・無水硫酸(200キログラム)・液化石油ガス(300キログラム)・生石灰(500キログラム)のように物質ごとに数量を直接定める号のほか、毒物及び劇物取締法上の毒物・劇物のうち政令別表第一・別表第二に掲げる物質については、その物質に応じた数量を総務省令で定めるという2段構えの仕組みを取っています。
フェナザキンは今回、この総務省令(平成元年自治省令第2号)が改正され、政令別表第一又は別表第二に新たに加えられました。
そして同時に、濃度19.4パーセント以下を含有する製剤は対象から除くという除外基準もあわせて定められています。
次は、この届出そのものがどんな仕組みで義務づけられているのかを確認します。
19.4パーセントという半端な数字には、なにか根拠があるのでしょうか。
通知は理由まで示していませんが、この数字が届出の要否を分ける基準です。
次は届出そのものの仕組みを見ましょう。
届出はどんな仕組みで義務づけられているのか

圧縮アセチレンガスやLPガスと同じ届出制度に、フェナザキンも加わったことになります。
フェナザキンの届出手続きそのものは、既存の消防活動阻害物質(圧縮アセチレンガス・液化石油ガス等)と同じ消防法第9条の3の枠組みに乗ります。届出先は貯蔵・取扱いの場所を管轄する消防長又は消防署長で、貯蔵・取扱いを始める前にあらかじめ届け出る必要があります。
具体的な届出書の様式や記載事項、届出が不要になる場合(船舶・自動車等による貯蔵・取扱い)については、既存の消防活動阻害物質の届出制度と共通しています。
次は、実務で見落としやすいポイントを確認します。
新しい制度ではなく、既存の届出制度に物質が1つ加わっただけなんですね。
そのとおりです。
次は見落としやすい落とし穴を確認しましょう。
濃度の記載を見落とすとどうなるのか

見落としやすい点は大きく3つです。
農薬や殺虫剤の製剤には成分表示にフェナザキンの含有率が明記されていますが、これを確認しなければ19.4パーセントを超えているかどうかを判断できません。
2つ目は、施行日より前からの在庫も確認の対象になる点です。
施行日(令和8年3月31日)より前から在庫として保管している事業者も、施行日以降は新たに届出義務の対象になるため、既存の在庫についても確認が必要です。
3つ目は、消防法第9条の3第2項が届出済みの貯蔵・取扱いを廃止する場合にも同様の届出を求めている点で、フェナザキンの使用をやめる場合も届出が必要になります。
次は、明日から確認すべき具体的な手順を整理します。
やめるときも届出が必要とは、盲点でした。
始めるときも終えるときも届出が必要です。
次は明日からの確認手順です。
明日から何を確認すればよいのか

順番に進めれば、届出漏れのリスクを大きく減らせます。
①自社が保管・取扱う農薬・殺虫剤等の製剤の成分表示を確認し、フェナザキンの含有の有無と濃度を洗い出します。
②濃度が19.4パーセントを超える製剤があれば、所轄消防署に相談のうえ、貯蔵・取扱い開始前(すでに保管している場合は速やかに)の届出手続きを進めます。
③届出を怠った場合は消防法第44条第8号により30万円以下の罰金又は拘留の対象になるため、確認結果は記録に残しておきます。
④届出済みの貯蔵・取扱いをやめる場合も同様の届出が必要になることを、あわせて確認しておきましょう。
まずは倉庫の薬剤棚から、成分表示を確認してみます。
それが一番の近道です。
よくある質問もあわせてご確認ください。
よくある質問
まとめ
フェナザキンと届出のしくみ、これで整理できました!
濃度19.4パーセントの基準を忘れずに確認してくださいね。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「危険物の規制に関する政令別表第一及び同令別表第二の総務省令で定める物質及び数量を指定する省令の一部を改正する省令の公布について」(令和8年2月27日 消防危第23号 消防庁次長)
- 消防法(昭和23年法律第186号)第9条の3・第44条第8号
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第1条の10
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





