「電気室に消火器が足りない」と指摘されたものの、どの設備から追加が必要なのか分からないという相談があります。
国の消防法施行規則は「変圧器、配電盤その他これらに類する電気設備」と書くだけで、電圧や出力の数値は条文にありません。
大阪市消防局の消防用設備等の設置に係る運用基準は、この範囲を300ボルト以上の電路を目安に示しています。
この記事では、大阪市の線引きを参照の順にたどり、東大阪市と堺市の基準とも比べます。
大阪市内の工場で防火管理者をしています。
動力用の盤がある部屋にも消火器を足すよう言われて、どこまでが対象なのか困っています。
電気設備のある場所には、建物の消火器とは別に消火器を置く決まりが国の規則にあります。
対象になる設備の範囲は、大阪市の運用基準が300ボルト以上の電路を目安に示しています。
以前いた東大阪市の工場では、同じような盤で何も言われませんでした。
市によって違うものなのでしょうか。
はい、公開されている基準を読み比べると線引きが違います。
同じ配電盤でも、市によって対象になるかどうかが変わります。
- 国の基準は消防法施行規則第6条第4項で、電気設備がある場所の床面積100平方メートル以下ごとに消火器を1個求めています
- 大阪市の運用基準は、変圧器と配電盤を300ボルト以上の電路に接続されるものとし、電動機や溶接器なども対象に挙げています
- 床面積の出し方は消火器具の節には書かれておらず、第13章の基準を開いて読みます
- 大阪市は建物用の消火器との兼用を認めていますが、東大阪市は別に設置するとしています
- 東大阪市と堺市は、配電盤や分電盤、制御盤だけのものを対象から除いています
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目次
電気設備のある場所にはなぜ建物の消火器とは別に消火器が要るのか

消火器の数は建物の用途と面積から計算しますが、電気設備のある場所には、その計算とは別に置く決まりがあります。
条文は「前三項の規定によるほか」と書いており、建物全体の能力単位が足りていても、電気設備のある場所には電気設備の消火に適応する消火器を置くことになります。
数は、その場所の床面積100平方メートル以下ごとに1個です。
配置は同条第6項第4号により、階ごとに、電気設備のある場所の各部分から歩行距離20メートル以下となるようにします。
一方で、どの電圧や出力の設備からが「変圧器、配電盤その他これらに類する電気設備」に当たるのかは、この条文そのものには書かれていません。
まずは自分の建物のどこに変圧器や盤があるのかを、図面と現地で拾い出してください。
建物全体では消火器の数は足りていると聞いていました。
それでも電気室の分は別に数えるのですね。
はい、建物の分とは別に足す付加設置と呼ばれる決まりです。
まずは変圧器や盤がどこにあるのかを図面で拾い出しましょう。
大阪市は変圧器や配電盤の範囲をどこで線引きしているのか

大阪市の運用基準は、消火器具の節(第1章第1節)の「第1 消火器」の「2 付加設置」で、規則第6条第4項の読み方を次のように示しています。
ア 「変圧器」は、300ボルト以上の電路に接続されるもので出力が5キロボルト以上のものとする。
イ 「配電盤」は、300ボルト以上の電路に接続されるものとする。
ウ 「その他これらに類する電気設備」は、次に掲げるものとする。
(ア) 条例第9条の2の2に規定する燃料電池発電設備
(イ) 条例第12条の2に規定する急速充電設備
(ウ) 条例第14条に規定する蓄電池設備
(エ) 300ボルト以上の電路に接続される電気機器で次に掲げるもの(可搬式のものを含む。)
A 電動機
B 溶接器(出力が5キロボルトアンペア以上のものに限る。)
C 静電塗装設備
D 整流器(出力が5キロボルトアンペア以上のものに限る。)
E その他AからDに類するもの
変圧器と配電盤は、どちらも300ボルト以上の電路に接続されるものとされています。
「その他これらに類する電気設備」には、燃料電池発電設備、急速充電設備、蓄電池設備のほか、300ボルト以上の電路に接続される電動機や溶接器、静電塗装設備、整流器が挙げられ、可搬式のものも含まれます。
この(2)には大阪市の行政指導基準を示す◆の記号が付いておらず、凡例のうえでは法令基準とその解釈の側に置かれています。
なお、変圧器の「出力が5キロボルト以上」は運用基準の表記のままで、溶接器と整流器は「5キロボルトアンペア以上」と書かれています。
自分の建物では、盤や機器の銘板で電圧を確かめ、300ボルト以上の電路につながるものを一覧にしておいてください。
うちの工場には400ボルトで動く大きなモーターが何台もあります。
変圧器や盤だけでなく、モーターまで対象に入るとは思いませんでした。
大阪市の運用基準は、300ボルト以上の電路につながる電動機も挙げています。
まずは銘板の電圧を確かめて、対象になりそうな機器を一覧にしましょう。
電気設備がある場所の床面積はなぜ第13章の基準を開かないと出せないのか

大阪市の消火器具の節は、この出し方を自分では書かず、別の章に預けています。
「第13章」は同じ運用基準の第13章「電気設備及び火気使用設備に係る消火設備」のことで、電気設備は「第1 電気設備が設置されている部分に関する基準」の2が参照先です。
読むときは、次の順番でたどります。
- 国の消防法施行規則第6条第4項を読み、電気設備がある場所の床面積100平方メートル以下ごとに消火器を1個置くことを確かめる
- 大阪市の消火器具の節の「第1 消火器」2(2)を開き、対象になる変圧器、配電盤、その他の電気設備の範囲を読む
- 同じ2の(3)から第13章の「第1」の2へ進み、床面積の出し方を読む
- 消火器具の節に戻り、求めた床面積から消火器の数を出して、同じ2の(7)で建物用の消火器と兼用できるかを確かめる
- 不燃材料の壁、床、天井又は一定の防火戸で区画された部分の面積
- 電気設備がすえ付けられた部分の水平投影面の周囲に、水平距離5メートルの線で囲まれた部分の面積(同じ室内に2以上あるときは合計し、重なる部分は重ねて数えない)
屋上に置く場合は、周囲5メートルの線で囲まれた部分の面積が基本です。
ここで注意したいのは、借りているのが床面積の出し方だけだという点です。
第13章の「第1」の1は、消防法施行令第13条の水噴霧消火設備等が必要になる電気設備の範囲を、全出力20キロワット以上の変電設備などと定めていますが、消火器具の節の(3)が参照しているのは2であり、対象の範囲は消火器具の節の300ボルト以上の電路のままです。
図面に電気設備の位置を落とし、周囲5メートルの線と区画の両方で面積を出して、小さい方を控えておいてください。
消火器のページだけを読んで、部屋全体の面積で数えるものだと思っていました。
面積の出し方は別の章に書いてあったのですね。
運用基準は、別の章の決まりを借りる書き方がよく出てきます。
借りているのがどの項目だけなのかを確かめてから、元の節に戻りましょう。
建物用の消火器と電気設備用の消火器は大阪市では兼用できるのか

大阪市の運用基準は、同じ「2 付加設置」の(7)でこう書いています。
ア 能力単位は、それぞれの数値の合計数以上とすること
イ 種別は、それぞれに適応するものであること
条件は、能力単位がそれぞれの数値の合計数以上であることと、消火器の種別がそれぞれに適応することの2点です。
設置場所などは「1 設置場所等」によるとされているので、歩行距離などの配置の決まりも満たす必要があります。
これに対して東大阪市の「消火器具の設置に係る運用基準」は、「4 消火器具の設置単位」の(1)で、規則第6条第3項から第5項に規定する場所があれば、建物用に設置した消火器具とは別に消火器具を設置することとしています。
東大阪市で兼用が認められているのは、同じ項に規定される設備等が2以上ある場合に限られます。
堺市の審査基準の消火器具の節には、確認した範囲で兼用についての記載は見当たりませんでした。
大阪市の建物で兼用を考えるときは、電気設備に適応する消火器かどうかを本体の表示で確かめ、能力単位の合計を計算し直してください。
電気室の入口のすぐ横に、廊下用の消火器が1本あります。
これを電気室の分として数えてもよいのでしょうか。
大阪市では、能力単位の合計と種別の適応を満たせば兼用できると書かれています。
消火器の表示で電気設備に適応するかを確かめてから数え直しましょう。
東大阪市や堺市では同じ配電盤でも扱いが変わるのか

同じ規則第6条第4項の読み方でも、線の引き方が違います。
(ア) 配電盤、分電盤又は制御盤のみのもの
(イ) 内燃機関を原動力としない発電設備
(ウ) 電気設備のうち、冷却又は絶縁のために油類を使用せず、かつ、可燃性ガスを発生するおそれのないもの
ア 配電盤、分電盤又は制御盤のみのもの
(略)
キ 配線、照明、電動機等
各市の公開資料で確認できた範囲を表にまとめます。
| 比べる点 | 大阪市 | 東大阪市 | 堺市 |
|---|---|---|---|
| 変圧器 | 300ボルト以上の電路に接続されるもの(出力は「5キロボルト以上」と表記) | 発電機又は変圧器の特別高圧・高圧の電路に接続する電気機器で、全出力が20キロワットを超えるもの | 使用電圧が交流600ボルト、直流750ボルトを超えるもの |
| 配電盤 | 300ボルト以上の電路に接続されるもの | 配電盤、分電盤又は制御盤のみのものは除く | 交流600ボルト、直流750ボルトを超えるものが対象。ただし配電盤、分電盤又は制御盤のみのものは除く |
| 電動機 | 300ボルト以上の電路に接続されるものは対象(可搬式を含む) | 対象の列挙に電動機の記載はない | 「配線、照明、電動機等」は除く |
| 蓄電池設備、燃料電池発電設備、急速充電設備 | 条例に規定するものを対象に列挙 | 対象に列挙 | 対象に列挙(蓄電池容量が10キロワット時以下の蓄電池設備や、全出力20キロワット以下の急速充電設備などは除く) |
| 床面積の出し方 | 第13章 第1の2による(区画された部分と周囲5メートルの線のうち小さい方) | 周囲5メートルの線で囲まれた部分。不燃材料の壁などで区画された部分に設ける場合はその部分の床面積とすることができる | 第2章第1節 総論の「第4 床面積、階及び高さの取扱い」によるとし、屋上は設備の据付面積(水平投影面積)とする |
| 建物用の消火器との兼用 | できる(能力単位の合計と種別の適応が条件) | 別に設置する(同じ項の設備等どうしは兼用可) | 消火器具の節に記載は見当たらない |
堺市の600ボルトと750ボルトは、電気設備に関する技術基準を定める省令第2条が低圧と高圧を分けている数値と同じです。
たとえば400ボルトの電路につながる配電盤は、大阪市の書き方では300ボルト以上に当たりますが、堺市の交流600ボルトを超えるものには当たりません。
さらに東大阪市と堺市は、配電盤、分電盤又は制御盤のみのものを対象から除いています。
規則第6条第4項は全国共通の規定ですが、ある市で言われたことを別の市の建物にそのまま当てはめることはできません。
複数の市に建物がある場合は、建物ごとに管轄の消防署が示す基準で、対象の設備を拾い直してください。
つまり、東大阪市の工場で指摘がなかった盤でも、大阪市の工場では対象になることがあるのですね。
はい、公開されている基準の書き方では、そう読める違いがあります。
建物ごとに管轄の消防署の基準で確かめるのが確実です。
よくある質問
まとめ
どの設備が対象で、面積をどう出すのかが分かってすっきりしました。
まずは工場の盤と機器の電圧を一覧にしてみます!
一覧と図面があれば、消防署への相談もスムーズに進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」(最近改正:令和8年6月1日)第1章第1節 消火器具 第1 消火器 2 付加設置 (2)、(3)、(7) https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 同 第13章 電気設備及び火気使用設備に係る消火設備 第1 電気設備が設置されている部分に関する基準 1、2
- 東大阪市「消火器具の設置に係る運用基準」細目 1 消火器 (3) 付加設置 イ、ウ、4 消火器具の設置単位 (1)、(2) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」(第二十二版・令和8年4月1日改正)第3章第1節 第1 消火器具 Ⅱ 細目 2 付加設置(2)、(4) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 消防法施行規則第6条第4項、第6項第4号
- 消防法施行令第10条、第13条、別表第2
- 電気設備に関する技術基準を定める省令第2条
※本記事は公表されている法令および各市消防局の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。対象になる設備や消火器の数についての個別の判断は、所轄消防署にご確認ください。





