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避難器具の設置数は区画ごとに数えるのか|令第25条第1項第5号が求める階段と収容人員の数え方を解説

避難器具の数は区画ごとに数えるのかを示すアイキャッチ

一つの階にある避難器具の数は、図面のどこを見て決まるのでしょうか。
壁で仕切られた部分があると、階段の数え方まで変わることがあります。
消防法施行令第25条第1項第5号は、この数え方の基本ルールを定めています。
区画された部分ごとに数えるのは階段だけで、人数と設置個数は階全体でまとめて判断します。

うちのビルは真ん中に仕切りの壁があるんですが、避難器具の数はどう決めればいいんですか。

階段の数え方と人数の数え方が、実は別々のルールになっています。
まず条文を確認しましょう。

壁で区切られていると、階段も人数も別々に数えるんですか。

いいえ、そこがポイントです。
階段だけ区画ごとで、人数は階全体でまとめます。

この記事の結論
  • 避難器具の設置基準(令第25条第1項第5号)は、新宿区歌舞伎町ビル火災を教訓に趣旨が明確化されました(平成13年)。
  • 地上に直通する階段の個数は、避難上有効な開口部を有しない壁で区画された部分ごとに数えます。
  • 収容人員の算定は、区画ごとではなく階全体で行います。
  • 避難器具の設置個数も階全体の収容人員で判断し、区画ごとに算定しません。
  • 設置個数が区画の数より少なくても基準は満たしますが、できる限り均等に配置することが望ましいとされています。

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避難器具の数え方が区画ごとと階全体の二重ルールになっている4ステップの図解

避難器具の設置基準はなぜ見直されたのか

高層建物から煙が上がり階段が隣に伸びるイラスト
ふだん使っている避難器具の設置基準は、昔からそのままの条文に見えます。
実はある大きな火災をきっかけに、運用の考え方が明確にされました。
消防予第8号「避難器具に係る技術上の基準の改正に伴う消防法令の運用について」(平成15年1月8日、消防庁予防課長) 令第25条第1項第5号の規定については、従来から直通階段が二以上設けられていない部分がある階に避難器具を設置することを目的としたものであったが、平成13年9月1日に発生した新宿区歌舞伎町ビル火災の教訓を踏まえ、その規定の趣旨を明確にしたものであること。
直通階段が2つ以上ない階に避難器具を設置する、という考え方自体は以前からありました。
ただ、新宿区歌舞伎町ビル火災(平成13年)では、建物の内部が壁で仕切られていたことが被害の背景として指摘されました。
「小規模雑居ビルの防火安全対策に関する答申」も踏まえ、
消防庁は改めて「仕切られた部分ごとに数える」という条文の趣旨を明文化しました。
条文そのものは変わっていませんが、数え方の運用がはっきり示された通知です。

条文はずっと同じなのに、なぜ今さら通知が出たんですか。

歌舞伎町のビル火災を受けて、仕切られた部分の数え方を明確にする必要があったからです。

区画された部分とはどの壁を指すのか

一つの階が壁で二つに仕切られ片方だけに窓があるイラスト
「区画された部分」と言われても、どの壁のことか分かりにくいかもしれません。
実はこの区画は、特定の条件を満たす壁だけが対象です。
消防予第8号 令第25条第1項第5号に規定する地上に直通する階段の個数の算出については、消防法施行規則第4条の2の2に規定する避難上有効な開口部を有しない壁で区画された部分(以下「区画された部分」という。)ごとに、地上に直通する階段の個数を算出するものであること。
消防法施行規則第4条の2の2 令第4条の2の2第2号及び令第25条第1項第5号の総務省令で定める避難上有効な開口部は、直径1メートル以上の円が内接することができる開口部又はその幅及び高さがそれぞれ75センチメートル以上及び1.2メートル以上の開口部とする。
区画になるかどうかは、壁の種類ではなく窓の有無で決まります。
具体的には、直径1メートル以上の円が入る開口部か、幅75センチメートル以上かつ高さ1.2メートル以上の開口部が無い壁で仕切られている部分が対象です。
窓や開口部があっても、格子など避難を妨げる構造なら区画扱いになります。
開口部は常に使える状態で維持されていることも条件です。
「区画された部分」は、避難できる開口部が無い壁の内側だけを指す言葉です。

普通の壁と区画された部分って、見た目で分かるものなんですか。

窓の寸法と壁の構造で判断します。
図面上で開口部の大きさを確認するのが確実です。

通知は階段と人数をどう数えるよう求めているのか

仕切られた二つの区画にそれぞれ階段があるイラスト
階段の数と人数の数え方は、実は同じ単位では数えません。
通知はこの違いをはっきり書き分けています。
消防予第8号 令第25条第1項第5号に規定する地上に直通する階段の個数の算出については(略)区画された部分ごとに、地上に直通する階段の個数を算出するものであること。令第25条第1項第5号に規定する収容人員の算定については、階全体で収容人員を算定するものであること。
消防法施行令第25条第1項第5号 前各号に掲げるもののほか、別表第一に掲げる防火対象物の三階以上の階のうち、当該階(当該階に総務省令で定める避難上有効な開口部を有しない壁で区画されている部分が存する場合にあつては、その区画された部分)から避難階又は地上に直通する階段が二以上設けられていない階で、収容人員が十人以上のもの
階段の数を数える単位と、人数を数える単位は別々です。
地上に直通する階段の個数は、区画された部分ごとに数えます。
一方、収容人員は区画を無視して階全体でまとめて算定します。
同じ条文の中で、数える範囲が途中で切り替わっている点に注意が必要です。
階段は区画ごと、人数は階全体という二重のルールで数えます。

階段も人数も同じ範囲で数えるものだと思っていました。

そこが見落としやすい点です。
数える範囲が項目ごとに違います。

設置個数の判断で見落としやすいのはどこか

仕切られた区画の片方だけに避難器具が設置されているイラスト
避難器具を実際に何個設置するかは、どの単位で決めるのでしょうか。
ここでも区画と階全体の関係が出てきます。
消防予第8号 令第25条第2項第1号に規定する避難器具の設置個数の算定については、階全体の収容人員で判断するものであり、当該区画された部分ごとに収容人員を算定するものではないこと。区画された部分を有する階において、収容人員の算定の結果、避難器具の設置個数が一である場合等避難器具の設置個数よりも区画された部分の数が多い場合は、当該区画された部分のいずれかに避難器具が設置されていればよいものであるが、規定の趣旨からも、できる限り当該区画された部分ごとに均等に避難器具を設置することが望ましいものであること。
設置する避難器具の個数も、階全体の収容人員から決まります。
区画が2つあっても、必要な個数が1個しかないことはあり得ます。
その場合、基準上はどちらか一方の区画に置くだけで足ります。
ただし通知は、できる限り区画ごとに均等に配置することが望ましいと付け加えています。
基準を満たすだけでなく、使いやすい配置まで考えるのが実務の視点です。

区画が2つあるのに、器具が1個しかないビルを見たことがあります。

それ自体は基準違反ではありません。
ただ、できれば両方の区画に分けて置くほうが望ましいとされています。

明日からなにを確認すればよいのか

図面に巻尺と拡大鏡が置かれたイラスト
考え方が分かったところで、実際の図面ではどこを見ればよいのでしょうか。
確認の順番を押さえておくと迷いません。
消防予第8号「別添1 区画された部分の取扱いについて」 区画された部分の具体例は、別添1によるものであること。
確認の順番は、まず壁、次に人数、最後に個数です。
仕切り壁に避難上有効な開口部があるかどうかを図面で確認します。
無ければ、その部分を区画された部分として階段の個数を数えます。
収容人員は区画を無視して階全体で算定し、設置個数を決めます。
壁→人数→個数の順に図面を見れば、数え間違いを防げます。

つまり、壁を見てから人数を見る順番なんですね。

そのとおりです。
順番を守れば、区画の数え方で迷うことはありません。

よくある質問

Q避難器具の設置基準はなぜ平成15年に通知が出たのですか?
A新宿区歌舞伎町ビル火災を教訓に、令第25条第1項第5号の趣旨を明確にするため消防庁予防課長が通知を出しました。条文自体は変わっていません。
Q区画された部分とは具体的に何を指しますか?
A避難上有効な開口部を有しない壁で区切られた、階の中の一部分を指します。開口部の寸法は規則第4条の2の2が定めています。
Q階段の数と収容人員は同じ単位で数えるのですか?
Aいいえ。階段の個数は区画ごとに数えますが、収容人員と設置個数の判断は階全体でまとめて行います。
Q区画が複数あるのに設置個数が1個しかない場合はどうすればよいですか?
Aいずれかの区画に設置していれば基準は満たしますが、できる限り区画ごとに均等に配置することが望ましいとされています。

まとめ

✔避難器具の設置基準は令第25条第1項第5号が定めています。
✔平成15年の通知(消防予第8号)は、新宿区歌舞伎町ビル火災を教訓に趣旨を明確化したものです。
✔区画された部分は、規則第4条の2の2が定める避難上有効な開口部を有しない壁で区切られた部分を指します。
✔階段の個数は区画された部分ごとに数えます。
✔収容人員の算定と設置個数の判断は、区画ごとではなく階全体で行います。
✔設置個数が区画の数より少ない場合でも基準上は問題ありませんが、できる限り均等に配置することが望ましいとされています。
✔図面を確認するときは、まず仕切り壁に避難上有効な開口部があるかどうかを見ます。

区画ごとの数え方がよく分かりました!

図面の確認さえ押さえれば大丈夫です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防予第8号「避難器具に係る技術上の基準の改正に伴う消防法令の運用について」(平成15年1月8日、消防庁予防課長)
  • 消防法施行令第25条第1項第5号・第2項第1号、消防法施行規則第4条の2の2

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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