消火器を置いた場所には、「消火器」と表示した標識を見やすい位置に設けることが、消防法施行規則で決められています。
四日市市の審査基準は、消火器が直接見える置き方なら、日本産業規格のピクトグラムでこの標識に代えられると定めています。
ただし、同じ扱いを認める市でも、大きさの下限や使用方法の併記など、付ける条件が少しずつ違います。
この記事では四日市市の基準を起点に根拠の連鎖をたどり、三重・埼玉・大阪の7つの基準を並べて比べます。
四日市市の店舗で、消火器の上の赤い「消火器」の標識を、絵の表示に替えたいと考えています。
そのまま付け替えてしまってよいのでしょうか。
四日市市の基準では、消火器が直接見えることと、日本産業規格のピクトグラムを使うことが条件です。
まず消火器の置き方から確かめましょう。
ほかの市にある店舗でも、同じやり方で大丈夫ですか。
大きさや使い方の表示まで求める市もあります。
市ごとの基準を並べて見ていきましょう。
- 消防法施行規則第9条第4号は、消火器を設けた箇所に「消火器」と表示した標識を見やすい位置に設けるよう定めています
- 四日市市は、消火器を直接視認できる状態で置き、JIS Z 8210のピクトグラムを設ければ、令第32条を適用してこの標識を設けないことができるとしています
- 四日市市は、(1)項イ・(5)項イ・(10)項など外国人来訪者の多い施設にピクトグラムの設置を指導するとしていて、この一文は下線の付いた行政指導です
- 大阪市と東大阪市は、一辺9センチメートル以上のピクトグラムと、消火器の使用方法の併記を条件にしています
- 鈴鹿市と埼玉県央広域消防本部は図で概ね0.8メートル以上の高さに置く例を示し、津市と堺市の基準にはピクトグラムで代える記述が見当たりません
▼

目次
消火器の標識はなぜピクトグラムで代えられるのか

その第4号が、消火器のそばに設ける標識を決めています。
ピクトグラムで代える道は、規則そのものではなく令第32条の特例を使って開かれています。
令第32条は、消防長又は消防署長が認めるときに、施行令の基準によらないことを認める規定です。
国の通知の考え方は、記事の終わりに挙げたピクトグラムの記事で解説しています。
この記事では、その特例を各市が審査基準の中でどう書いているかを見ていきます。
国の規則のままだと、絵の表示だけでは足りないということですか。
規則の文言は「消火器」と表示した標識です。
代えるときは、消防長などが認める令第32条の特例を使います。
四日市市の審査基準は何を条件にしているのか

欄外には、根拠として平成29年11月20日の消防予第355号が示されています。
また、令別表第1(1)項イ、(5)項イ及び(10)項に掲げる用途に供される防火対象物等、多数の外国人来訪者の利用が想定される施設に対しては、本ピクトグラムを設置するよう指導すること。
扉の付いた箱に入れて外から見えない消火器は、1つ目の条件を満たしません。
基準の図には、縦横とも9cmのピクトグラムが描かれています。
後半の外国人来訪者向けの一文には下線が引かれていて、四日市市の基準では下線は行政指導の印です。
つながりを番号順に並べると、次のとおりです。
- 消防法施行規則第9条第4号:消火器を設けた箇所に「消火器」と表示した標識を見やすい位置に設ける
- 消防法施行令第32条:消防長又は消防署長が認めるときは、施行令の基準によらないことができる
- 四日市市消防同意事務審査基準 第1 4:直接視認できる状態とJIS Z 8210のピクトグラムで、令第32条を適用して規則の標識を設けないことができる
- 同じ項の後半(下線=行政指導):(1)項イ・(5)項イ・(10)項など外国人来訪者の多い施設には、ピクトグラムの設置を指導する
外国人来訪者の多い施設への設置は「お願い」で、代えるための条件とは別の話です。
消火器を扉付きの箱にしまっている場所は、ピクトグラムだけでは足りないのですね。
外から見えないなら、規則どおり「消火器」の標識を付けます。
見える置き方に変えられるかも合わせて検討しましょう。
ピクトグラムの大きさや高さは市によって違うのか

大阪市は、本文で一辺の長さに下限を設けています。
(1) 消火器を直接視認することができる状態で設置すること
(2) JISZ8210に定める消火器のピクトグラム(大きさは、一辺の長さがそれぞれ9センチメートル以上に限る。)を設けること(図1-1-2)
(3) 第10章に定める消火器の使用方法を併記すること
鈴鹿市と埼玉県央広域消防本部は、図で概ね0.8メートル以上の高さの見やすい位置に置く例を示しています。
鈴鹿市は、日本産業規格(JIS)と国際標準化機構(ISO)に定めるピクトグラムと書いています。
規則第9条第1号の「床面から1.5メートル以下」は、消火器具そのものを置く高さの決まりです。
ピクトグラムの高さとは別の話なので、図面では2つの高さを分けて書き込みます。
| 基準 | ピクトグラムで代える条件 | 大きさ | 高さの例 |
|---|---|---|---|
| 四日市市 | 直接視認・JIS Z 8210・令第32条を適用 | 図で9cm角 | 記載なし |
| 鈴鹿市 | 直接視認・JISとISOのピクトグラム | 記載なし | 図で概ね0.8m以上 |
| 津市 | 記述が見当たらない | ― | ― |
| 埼玉県央広域消防本部(鴻巣市など) | 直接視認・JIS Z 8210(消防予第355号) | 記載なし | 図で概ね0.8m以上 |
| 大阪市 | 直接視認・JIS Z 8210・使用方法の併記 | 一辺9cm以上 | 記載なし |
| 東大阪市 | 特例基準として直接視認・JIS Z 8210・使用方法の併記 | 一辺9cm以上 | 記載なし |
| 堺市 | 記述が見当たらない | ― | ― |
大阪市の店舗なら、9センチメートル角以上を選べば安心ですね。
大阪市はさらに使用方法の併記も条件です。
次の見出しで確かめましょう。
使い方の表示まで求められるのはどの市か

東大阪市は、この扱いを消火器具の基準の「特例基準」の節に置いています。
(略)
(4) 次に適合する場合は、規則第9条第4号に規定する消火器の標識を設置しないことができる。
ア 消火器を直接視認することができる状態で設置すること
イ JISZ8210に定める消火器のピクトグラム(大きさは、一辺の長さがそれぞれ9センチメートル以上に限る)を設けること(図10)
ウ 標識等の基準告示に定める消火器の使用方法を併記すること。
「標識等の基準告示」は、東大阪市の基準が定義する「標識及び掲示板等の表示基準」(昭和53年東大阪市消防局告示第1号)です。
同じ特例基準の(3)は、消火器本体に図示された使用方法が容易に識別できれば、使用方法の標識を省略できるとしています。
(3)と(4)ウの関係は基準に書かれていないため、本体の図示で足りるかは所轄に確かめます。
堺市の基準にはピクトグラムで代える記述が見当たらず、標識は短辺8cm以上・長辺24cm以上で、近くに使用方法を簡記するとしています。
津市の「津市予防事務審査検査基準」の消火器具の節には、標識やピクトグラムの記述が見当たりません。
| 基準 | 使用方法の表示 | 記号(義務か指導か) |
|---|---|---|
| 四日市市 | 記載なし | 本文は下線なし(外国人来訪者向けの一文は下線=行政指導) |
| 鈴鹿市 | 記載なし | 無印(法令基準) |
| 埼玉県央広域消防本部 | 記載なし | 標識の項に●(法令基準に行政指導を加えた基準) |
| 大阪市 | 第10章の使用方法を併記 | ◆(行政指導)の印なし |
| 東大阪市 | 標識等の基準告示の使用方法を併記 | 無印(特例基準の節) |
| 堺市 | 標識の近くに使用方法を簡記 | ◆②(国の通知を参考にした指導)・文字概ね2.5cm角以上は★(堺市独自の指導) |
| 津市 | 記述が見当たらない | 凡例の記号なし |
大阪市と東大阪市にも店舗がありますが、使い方の表示まで用意する必要があるのですね。
両市はピクトグラムだけでは足りず、使用方法の併記が条件です。
市ごとに表示板の版を分けておきましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

確かめる順番は次のとおりです。
- 建物を管轄する消防本部の審査基準に、ピクトグラムで代える記述があるかを確かめる(四日市市・鈴鹿市・埼玉県央広域消防本部・大阪市・東大阪市にはあり、津市と堺市の基準には見当たらない)
- 消火器を直接見える状態で置けるかを現地で確かめる。扉付きの箱や物陰に置く場所は「消火器」の標識のままにする
- ピクトグラムの大きさ・高さ・使用方法の併記を、その市の条件に合わせて用意する
- 今の標識を外す前に、所轄の消防署に配置図と写真で相談する
四日市市の基準は令第32条を適用すると書いていて、令第32条は消防長又は消防署長が認めるときの規定です。
ホテルや飲食店など外国人来訪者の多い施設では、四日市市はピクトグラムの設置を指導するとしています。
消防用設備等の点検や改修の機会に、標識の付け替えも合わせて計画すると手戻りがありません。
まず各店舗の消火器の置き方を写真に撮って、外から見えるかを確かめます。
写真と配置図がそろえば、所轄への相談も早く進みます。
市ごとの条件を一覧にしておくと便利です。
よくある質問
まとめ
まず四日市市の店舗から、消火器が見える置き方かどうかを写真で確かめます!
市ごとの大きさと併記の条件を一覧にしておくと迷いません。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則第9条第1号・第4号
- 消防法施行令第10条・第32条
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」(令和6年4月1日適用)総則、第1 消火器具 4 標識 四日市市消防本部「審査基準・告示・ガイドライン」のページ
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第4章 第1 消火器具 5 標識・第1-8図 https://www.city.suzuka.lg.jp/shobo/1012943/1016101/index.html
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」(令和8年3月1日現在)5-1 消火器具 津市消防本部「予防関係審査基準」のページ
- 埼玉県央広域消防本部「埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準」(令和5年4月1日適用)第1 消火器具 6 標識・第1-8図 https://www.ken-o.or.jp/notifiappli/equipment-style/page-9867/
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第1章 第1節 消火器具 第1 消火器 8 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市「消火器具の設置に係る運用基準」用語の定義、凡例、5 特例基準 ⑶・⑷ https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第二十二版 第1 消火器具 3 標識 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
※本記事は各市の消防本部が公開している審査基準・運用基準と法令に基づく一般的な解説です。運用基準・審査基準・条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防本部で確認してください。標識をピクトグラムに代えられるかは個々の建物ごとに判断されるため、付け替えの前に所轄の消防署にご確認ください。





