空き家や古いアパートをシェアハウスやゲストハウスにするとき、最初に決まるのが消防法上の用途です。
用途が共同住宅((5)項ロ)か旅館・ホテル等((5)項イ)かで、自動火災報知設備や誘導灯、防火管理者の要否が変わります。
堺市の審査基準は、この線引きを旅館業法の適用があるかどうかで示しています。
この記事では、堺市の審査基準の用途例から旅館業法の条文までを順にたどり、建物の一部だけを宿泊用にした場合も確かめます。
堺市で古い一戸建てを買って、シェアハウスにしようと考えています。
消防の用途は共同住宅になるのですか。
堺市の審査基準では、旅館業法の適用があるかで分かれます。
名前がシェアハウスでも、宿泊施設の扱いになることがあります。
名前ではなく、営業の形で決まるのですね。
はい、用途例の表にそう書かれています。
審査基準と旅館業法を順に読んでいきましょう。
- 堺市の審査基準は、用途の判定にあたって別記1(政令別表第1に掲げる防火対象物の定義)を参考にするとしています
- 別記1では、ゲストハウスとシェアハウスは、旅館業法(第2条第5項を除く。)の適用があれば(5)項イ、なければ(5)項ロの用途例に入っています
- 審査基準が除いている「第2条第5項」は、同じ表の下宿の定義から1か月以上を単位とする下宿営業を指すと読めます(現行の旅館業法では第2条第4項)
- 建物の一部をゲストハウスにした場合、(5)項イの部分は面積が小さくても主な用途に含めないとされ、建物全体は複合用途になります
- (5)項イになると、自動火災報知設備は延べ面積にかかわらず対象になり、防火管理者の基準も収容人員50人以上から30人以上に変わります
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目次
堺市はシェアハウスやゲストハウスの用途をどこで決めているのか

消防法施行令の別表第一は、建物の用途を項ごとに分けていて、宿泊と居住に関わるのが(5)項です。
ロ 寄宿舎、下宿又は共同住宅
どちらに当たるかは、建物の使い方を見て判断することになります。 堺市は、この判断の方法を「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」(第二十二版)の第2章 第1節 第2に書いています。
なお、項ごとの使用実態等を判断するにあたっては、別記1を参考とすること。
シェアハウスとゲストハウスは、この表の(5)項イと(5)項ロの両方の該当用途例に名前が出てきます。
別記1は「参考とする」資料なので、最終的な判定は所轄の消防署が建物ごとに行います。
それでも、どこで線を引くのかを事前に知っておけば、計画の段階で用途の見当をつけられます。
国の別表には、シェアハウスという言葉はないのですね。
はい、だから堺市の別記1が参考になります。
次は、別記1の線引きを見ましょう。
旅館業法の適用があるかでなぜ(5)項イとロに分かれるのか

(5)項ロの補足事項は、ここでいうシェアハウスとゲストハウスの意味も書いています。
反対に、(5)項イの補足事項1は、会員制や社員向けでも旅館業法の適用があれば(5)項イとします。
| 補足事項5の条件 | 確かめること |
|---|---|
| (1)不特定多数の者の宿泊が継続して行われていること | 決まった人だけでなく、入れ替わる客が続けて泊まっているか |
| (2)ベッド、長いす、リクライニングチェア、布団等の宿泊に用いることが可能な設備、器具等があること | 寝られる設備や器具を置いているか |
| (3)深夜営業、24時間営業等により夜間も客が施設にいること | 夜の間も客がいる営業か |
| (4)施設利用に対して料金を徴収していること | 利用料金を取っているか |
入居者と賃貸借契約を結ぶのか、宿泊料を取って泊めるのかを、計画の最初に整理しておきましょう。
共用の台所があっても、共同住宅になり得るのですね。
はい、分かれ目は旅館業法の適用です。
次は、かっこ書きの「第2条第5項」を見ましょう。
「旅館業法(第2条第5項を除く。)」は何を除いているのか

旅館業法は、旅館業を3つの営業に分けています。
4 この法律で「下宿営業」とは、施設を設け、一月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業をいう。
5 この法律で「宿泊」とは、寝具を使用して前各項の施設を利用することをいう。
一方、別記1の(5)項ロの定義は、下宿を次のように書いています。
このため、用途例のかっこ書き「第2条第5項を除く」も、下宿営業を除くという意味だと読めます。
現行法の「旅館・ホテル営業」という名前のとおり、旅館営業とホテル営業は以前は別々の営業でした。
審査基準の項番号は、分かれていた頃の番号のまま残っている可能性があります。 下宿営業を除く理由も、国の別表第一から読み取れます。
下宿は、もともと(5)項ロに「寄宿舎、下宿又は共同住宅」と並んでいるからです。
つまり、旅館・ホテル営業や簡易宿所営業の許可を受けたシェアハウスは(5)項イ、下宿営業だけなら(5)項ロと読めます。 (5)項イの補足事項3にも、同じかっこ書きが出てきます。
かっこ書きの読み方に迷う建物は、どの営業の許可を受けるのかを決めてから所轄の消防署に相談すると話が早く進みます。
項の番号が、今の法律とずれているかもしれないのですね。
はい、下宿の定義から下宿営業を指すと読めます。
次は、建物の一部を宿泊用にする場合です。
建物の一部をゲストハウスにすると建物全体はどう扱われるのか

堺市の審査基準は、主な用途に付いてくる小さな部分を主な用途に含めて扱うルールを置いています。
ただし、かっこ書きで(5)項イの部分はこのルールから外されています。
このため、マンションの一部屋だけをゲストハウスにしても、その部屋は共同住宅に含めず、(5)項イの部分として扱うことになります。
そうなると、建物全体は(5)項イと(5)項ロが入った複合用途の建物になります。
国の別表第一の(16)項イは、一部が(5)項イなどの用途に使われている複合用途防火対象物です。
では、マンションの来客用の宿泊室はどうでしょうか。
審査基準の別記2は、共同住宅に付いてくる部分の例を挙げています。
ここでも、旅館業法の適用があるかどうかが線引きになっています。
国の通知による住宅宿泊事業(民泊)の届出住宅の扱いは、民泊の届出住宅の用途区分の記事とマンションの一部を民泊にする場合の記事で解説しています。
一部屋だけでも、建物全体が複合用途になるのですね。
はい、(5)項イは面積が小さくても独立した用途です。
最後に、設備がどう変わるかを見ましょう。
(5)項イになると消防用設備等や防火管理はどう変わるのか

まず、自動火災報知設備です。
イ 別表第一(二)項ニ、(五)項イ、(六)項イ(1)から(3)まで及びロ、(十三)項ロ並びに(十七)項に掲げる防火対象物
四 別表第一(五)項ロ、(七)項、(八)項、(九)項ロ、(十)項、(十二)項、(十三)項イ及び(十四)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が五百平方メートル以上のもの
(5)項ロは第4号で、延べ面積500平方メートル以上が対象です(地階や3階以上の階の床面積など、ほかの号も別に確かめます)。
誘導灯も、第26条第1項で(5)項イは建物全体、(5)項ロは地階・無窓階・11階以上の部分が対象です。
ハ 別表第一(五)項ロ、(七)項、(八)項、(九)項ロ、(十)項から(十五)項まで、(十六)項ロ及び(十七)項に掲げる防火対象物で、収容人員が五十人以上のもの
一方、消火器具は、第10条第1項第2号イで(5)項としてまとめて延べ面積150平方メートル以上が対象なので、イとロで基準は同じです。
延べ面積400平方メートルの2階建てで考えてみます(地階と無窓階はなく、ほかの号の条件にも当たらないものとします)。
| 項目 | (5)項ロ(旅館業法の適用なし) | (5)項イ(旅館業法の適用あり) |
|---|---|---|
| 自動火災報知設備(令第21条) | 延べ面積500平方メートル未満なので第4号では対象外 | 第1号で対象(延べ面積を問わない) |
| 避難口誘導灯(令第26条) | 地階・無窓階・11階以上がないので対象外 | 建物全体が対象 |
| 防火管理者(令第1条の2) | 収容人員50人以上で必要 | 収容人員30人以上で必要 |
| 消火器具(令第10条) | 延べ面積150平方メートル以上で対象 | 同じ |
なお、大阪市と東大阪市の公開されている運用基準には、項ごとの該当用途例の表が含まれていませんでした。
そのため、両市が堺市と同じ線引きをしているかどうかは比べられません。
国の別表第一は共通なので、大阪市や東大阪市で迷うときも、所轄の消防署に計画を早めに伝えて確かめてください。
堺市の用途判定の別の例は、堺市の学童保育と認証保育所の用途の記事で解説しています。
同じ建物でも、旅館業の許可を取るだけで設備が増えるのですね。
はい、自動火災報知設備と誘導灯がまず変わります。
営業の形を決めたら、所轄の消防署に相談しましょう。
よくある質問
まとめ
まずは旅館業の許可を取るのかどうかを決めてみます。
そのうえで用途と必要な設備を整理します!
用途が早く決まれば、改修工事の手戻りを防げます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」(第二十二版)第2章 第1節 第2 政令別表第1に掲げる防火対象物の取扱い(柱書・1共通事項(2)イ・(3))・別記1 政令別表第1に掲げる防火対象物の定義((5)項イ・(5)項ロ)・別記2((5)項ロ) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市「消防用設備等の設置に係る運用基準」 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市 消防用設備等の運用基準 https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法施行令第1条の2・第10条・第21条・第26条・別表第一
- 旅館業法第2条
※本記事は公表されている法令および各市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々の建物がどの用途に当たるかは、使用実態をもとに所轄消防署が判定します。





