大きな敷地の建物や高さ31メートルを超える大規模な建物には、消防用水の設置が求められることがあります。
消防用水には、消防ポンプ自動車が吸管を入れる吸管投入口や、吸管をつなぐ採水口を設けます。
ところが政令は「適当の大きさの吸管投入孔」としか書いておらず、寸法や個数は各消防本部の基準に任されています。
この記事では四日市市消防本部の審査基準を入口に、鈴鹿市・津市・埼玉県央広域・大阪市・堺市の基準と並べて比べます。
四日市市で大きな倉庫を建てる計画があり、敷地に消防用水の水槽を作ります。
吸管投入口のふたは何個あればいいのでしょうか。
四日市市の基準では、所要水量が80立方メートル以上なら2個以上です。
大きさは一辺か直径0.6メートル以上と決めています。
採水口のほうも水量で数が変わるのですか。
採水口は水量に応じて1個から3個で、40立方メートルのときの数が市によって違います。
政令から順に見ていきましょう。
- 消防法施行令第27条第3項は、地下の水槽の有効水量を地盤面から4.5メートル以内に限り、消防ポンプ自動車が2メートル以内に近づけることと適当の大きさの吸管投入孔を求めるだけで、寸法や個数は定めていません
- 四日市市は吸管投入口を一辺か直径0.6メートル以上とし、所要水量80立方メートル以上なら2個以上としています
- 四日市市は吸管投入口から5メートル以内に駐車場や駐輪場を設けないとし、鈴鹿市と堺市は消防車の寄りつき位置から3メートル以内に置くとしています
- 採水口は水量に応じて1個から3個ですが、40立方メートルのとき四日市市と大阪市は2個、鈴鹿市と埼玉県央広域は1個です
- 四日市市ではこれらの多くが下線つきの行政指導として書かれているので、設計の段階で管轄の消防本部と協議します
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目次
消防用水の吸管投入口は国の基準でどこまで決まっているのか

吸管投入口に関わるのは、そのうち第1号・第3号・第4号・第5号です。
一 消防用水は、その有効水量(地盤面下に設けられている消防用水にあつては、その設けられている地盤面の高さから四・五メートル以内の部分の水量をいう。以下この条において同じ。)の合計が、(略)
(第二号略)
三 消防用水の吸管を投入する部分の水深は、当該消防用水について、所要水量のすべてを有効に吸い上げることができる深さであるものとすること。
四 消防用水は、消防ポンプ自動車が二メートル以内に接近することができるように設けること。
五 防火水槽には、適当の大きさの吸管投入孔を設けること。
第1号は、地下の水槽で数えてよい水量を地盤面から4.5メートル以内の部分に限っています。
第4号は消防ポンプ自動車が2メートル以内に近づけること、第5号は吸管投入孔を設けることを求めていますが、その大きさは適当の大きさとしか書かれていません。
政令の「吸管投入孔」を四日市市の基準は「吸管投入口」と書いていますが、同じものを指しています。
寸法や個数を補っているのは各消防本部の審査基準で、つながりは次のとおりです。
- 施行令第27条第1項・第2項で、消防用水が要る建物が決まる
- 同条第3項第1号で、地下の水槽は地盤面から4.5メートル以内の水量だけを数える
- 同項第4号・第5号で、消防ポンプ自動車が2メートル以内に近づけることと吸管投入孔があることが求められる
- 吸管投入口の寸法と個数、採水口の数と高さ、4.5メートルより深い水を使う方法は各消防本部の審査基準が定めている
政令に寸法が書いていないなら、どんな穴にすればいいのか迷います。
寸法は管轄の消防本部の審査基準で決まります。
まず建てる場所の消防本部の基準を手に入れましょう。
四日市市では吸管投入口の大きさと数をどう決めているのか

大きさと数とふたの決まりが、ひとつながりで書かれています。
ア 消防用水に設ける吸管投入口は、その一辺が0.6m以上又は直径0.6m以上のものとし、所要水量が80㎥未満のものにあっては1個以上、80㎥以上のものにあっては2個以上設けること。
イ 吸管投入口には、次により鉄蓋等を取り付けること。
この場合、設置場所が車両の通行に供される場所にあっては、車両の通行に耐える強度のものとすること。
(ア)黄色塗装し、消防用水である旨を表示すること。
(イ)本市消防部隊が使用する消火栓の鍵を使用して容易に開放できること。
どの本部も吸管投入口を0.6メートル以上(直径60センチメートルの円が入る大きさ)とし、80立方メートルを境に2個以上を求めています。
大阪市だけは「60立方メートル以下1個以上・80立方メートル以上2個以上」という書き方で、1個の消防用水を40立方メートル以上とする独自の決まりも置いています。
違いが出るのはふたで、四日市市は本市消防部隊が使用する消火栓の鍵で開けられることまで求め、埼玉県央広域も消火栓の鍵で取り外せることとしています。
四日市市の凡例では下線の部分が市の行政指導で、この3(2)のアとイは全文に下線が引かれています。
| 消防本部 | 吸管投入口の大きさ | 吸管投入口の数 | 凡例の記号 |
|---|---|---|---|
| 四日市市 | 一辺か直径0.6メートル以上 | 80立方メートル未満1個以上・80立方メートル以上2個以上 | 下線(行政指導) |
| 鈴鹿市 | 直径0.6メートル以上、又は長辺・短辺とも0.6メートル以上 | 四日市市と同じ | 大きさ・数は無印、ふたの黄色は▲(行政指導) |
| 埼玉県央広域 | 原則として円型(▲)・0.6メートル以上 | 四日市市と同じ(▲) | ふたの黄色と消火栓の鍵も▲ |
| 津市 | 直径60センチメートルの円が内接する大きさ以上 | 80立方メートル以上は2カ所以上 | 凡例の記号なし |
| 大阪市 | 直径60センチメートル以上の円が内接する大きさ | 60立方メートル以下1個以上・80立方メートル以上2個以上 | 見出しに◆(行政指導) |
| 堺市 | 原則として丸型・直径0.6メートル以上 | 四日市市と同じ | ★(堺市消防局の指導) |
ふたは黄色に塗って、消防の鍵で開くものを選ぶのですね。
はい、四日市市では消火栓の鍵で開くことが求められています。
製品を決める前に図面で消防本部に確かめましょう。
吸管投入口のまわりに駐車場を作ってもよいのか

四日市市は、吸管投入口のまわりに置いてはいけないものを決めています。
ウ 吸管投入口から5m以内の部分には、駐車場、駐輪場その他消防隊が吸管の投入作業を行う際の障害物となる物件を設けないこと。ただし、設置位置の状況に応じて路面標識(黄線焼付塗装)を行うなど消火活動上支障がないと認める場合は、この限りでない。
政令が求めるのは消防ポンプ自動車が2メートル以内に近づけることまでで、吸管投入口のまわりの空きは各本部の基準です。
鈴鹿市と埼玉県央広域も同じ5メートルを▲(行政指導)として置き、鈴鹿市は路面標示にゼブラ表示も挙げています。
鈴鹿市と堺市は、消防車の寄りつき位置から吸管投入口の中心まで3メートル以内とも書いています。
歩道などで2メートル以内に近づけないとき、鈴鹿市は吸管10メートルで吸い上げられる根拠資料を出せば政令第32条を適用して認め、大阪市は吸管の長さ8メートルを考慮して取水できるものを認めるとしています。
| 消防本部 | 吸管投入口のまわり | 消防車との距離 |
|---|---|---|
| 四日市市 | 5メートル以内に駐車場・駐輪場などを設けない(路面標識などで支障がなければ例外) | この節に独自の記載なし |
| 鈴鹿市 | 5メートル以内(▲)・路面標示は黄線焼付塗装又はゼブラ表示 | 寄りつき位置から3メートル以内(▲)、2メートルを超えるときは吸管10メートルで吸える根拠資料を出して政令第32条を適用 |
| 埼玉県央広域 | 5メートル以内(▲) | 2メートルを超えるときは吸管10メートルで所要水量を吸い上げられれば可 |
| 津市 | 連結送水管があれば送水口付近に設ける | 2メートル以内に近づける場所 |
| 大阪市 | 送水口や公設消火栓の位置を考えて配置(◆) | 2メートル以内、吸管の長さ8メートルを考えて取水できれば例外 |
| 堺市 | この節に記載なし | 寄りつき位置から3メートル以内(★) |
水槽の真上を来客用の駐車場にする案は見直したほうがよさそうです。
四日市市では黄線の路面標識で支障がないと認められる場合だけが例外です。
駐車場の配置図を消防本部に見せて相談しましょう。
採水口は水量に応じて何個設けるのか

四日市市は、採水口の金具と数と高さを次のように決めています。
エ 消防用水に設ける採水口は、「消防用ホースに使用する差込式又はねじ式の結合金具及び消防用吸管に使用するねじ式の結合金具の技術上の規格を定める省令」(平成25年総務省令第23号)に規定される呼称75のメネジに適合する単口とし、設置個数は下表によること。
カ 採水口は、地盤面からの高さが0.5m以上1m以下又は地盤面からの深さが0.3m以内の位置に設けること。
| 消防本部 | 採水口の数 | 採水口の高さ | 凡例の記号 |
|---|---|---|---|
| 四日市市 | 20立方メートル1個/40〜100立方メートル2個/120立方メートル以上3個 | 地盤面から0.5〜1メートル又は深さ0.3メートル以内 | 下線(行政指導) |
| 鈴鹿市 | 40立方メートル以下1個/40立方メートルを超え120立方メートル未満2個/120立方メートル以上3個 | 0.5〜1メートル | 数は▲ |
| 埼玉県央広域 | 鈴鹿市と同じ | 0.5〜1メートル | 数は▲ |
| 津市 | 有効水量40立方メートル以上は2口 | 0.5〜1.0メートル | 凡例の記号なし |
| 大阪市 | 20立方メートル1個以上/40〜100立方メートル2個以上/120立方メートル以上3個以上 | 0.5〜1メートル | 見出しに◆ |
| 堺市 | 80立方メートル未満1個/80立方メートル以上は2個と3個の欄(境目は表に書かれていない) | 0.5〜1メートル | ★ |
四日市市と大阪市は40立方メートルから2個ですが、鈴鹿市と埼玉県央広域は40立方メートル以下なら1個で、2個になるのは40立方メートルを超えてからです。
津市は40立方メートル以上で2口とし、3口目の決まりは置いていません。
堺市は80立方メートルを境にしていて、採水口を並べて2口以上設けるときは2台目以降の消防車が8メートル以内に近づけるようにすることも求めています。
高さはどの本部も地上0.5〜1メートルですが、四日市市だけは地盤面から0.3メートル以内の深さに設ける形も認めています。
40立方メートルの水槽なら、四日市市では採水口を2つ用意するのですね。
そのとおりで、同じ水槽でも鈴鹿市なら1個という読み方になります。
別の市の図面を使い回さないよう気をつけましょう。
地盤面下4.5メートルより深い水槽はどう扱うのか

それより深い部分の水を使う方法を、四日市市は次のように決めています。
ア 消防用水の所要水量が地盤面下4.5mを超える部分にある場合は、前(2)(アからウを除く)によるほか、採水口及び非常電源を附置した加圧送水装置を設けること。
イ 加圧送水装置は、(略)次によること。
(イ)加圧送水装置の吐出量及び採水口の個数は、下表によること。
(ウ)加圧送水装置の全揚程は、(イ)に定める吐出量時において採水口までの落差及び配管摩擦損失水頭に15mを加えた数値以上とすること。
四日市市は、採水口と非常電源付きの加圧送水装置を設け、吐出量を20立方メートルで毎分1,100リットル、40〜100立方メートルで2,200リットル、120立方メートル以上で3,300リットルとしています。
起動は採水口の直近か防災センター等からの遠隔起動とし、採水口の直近で遠隔起動ができないときは防災センター等との間に直通通話装置を設けます。
同じ仕組みを堺市は政令第32条を適用するものとして書き、埼玉県央広域は「政令第27条第3項第1号の規定にかかわらず」、大阪市は「4.5メートル以内の部分」の規定は適用しないと書いていて、根拠の書き方が本部ごとに違います。
地下深くに水槽を置く計画なら、ポンプ室と非常電源と起動装置の位置まで含めて早めに協議しておくと手戻りを防げます。
| 消防本部 | 4.5メートルより深い水の扱い | ポンプの吐出量 |
|---|---|---|
| 四日市市 | 採水口と非常電源付きの加圧送水装置を設ける | 毎分1,100/2,200/3,300リットル(20/40〜100/120立方メートル以上) |
| 埼玉県央広域 | ポンプと採水口を設ければ政令第27条第3項第1号にかかわらず消防用水にできる | 毎分1,100/2,200/3,300リットル(40以下/40超120未満/120立方メートル以上) |
| 大阪市 | 加圧送水装置を設けるものは「4.5メートル以内の部分」の規定を適用しない(◆) | 四日市市と同じ水量の区分、採水口で0.1メガパスカル以上 |
| 堺市 | 政令第32条を適用して消防用水にできる(★) | 毎分1,100リットル(80立方メートル未満)、80立方メートル以上は2,200と3,300リットルの欄 |
| 津市 | 水源の落差や配管の長さで吸えないものは専用の加圧送水装置を設ける | 毎分2,000リットル、採水用の金具で0.25メガパスカル以上 |
| 鈴鹿市 | 消防用水の基準に4.5メートルを超える部分の項目なし | |
地下深くの水槽を消防用水に使うと、ポンプ設備まで要るのですね。
4.5メートルより深い部分は加圧送水装置が前提になります。
設備設計の初めの段階で消防本部と協議しましょう。
よくある質問
まとめ
水槽の位置とふたの数を、四日市市の基準で図面に落としてみます!
駐車場の配置とあわせて事前協議しておくと安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第27条・第32条
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」第17 消防用水 2・3(2)(3) 四日市市消防本部「審査基準・告示・ガイドライン」のページ
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第4章 第17 消防用水 3⑵・4⑵ 鈴鹿市「消防用設備等に関する審査基準」のページ
- 埼玉県央広域消防本部「埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準」第4章 第17 消防用水 3⑵・4⑵・5 埼玉県央広域消防本部「消防用設備等に関する審査基準」のページ
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」5-18 消防用水 1〜3 津市消防本部「予防関係審査基準」のページ
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第4章 消防用水 第2・第3 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第19 消防用水 Ⅱ 細目 1〜3 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
※本記事は各消防本部が公開している審査基準・運用基準と法令に基づく一般的な解説です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防本部で確認してください。行田市・羽生市は審査基準を公開していないため比較に含めていません。凡例の記号(下線・▲・◆・★)の意味は各本部の凡例に従っており、同じ記号でも本部によって意味が異なります。





