地階の床面積の合計が700㎡以上の建物には、消防隊が外から水を送り込む連結散水設備が要ります。
ただ、地階の外まわりが深く掘り下げられたドライエリアになっていると、地階の窓が外気に面することになります。
鈴鹿市の審査基準は、こうした地階について政令第32条を適用し、連結散水設備を設置しないことができる4つの条件を書いています。
この記事では鈴鹿市の条件を国の条文から順にたどり、埼玉県央広域・堺市・大阪市・四日市市・津市の書き方と比べます。
鈴鹿市で地階の広い店舗ビルを計画しています。
まわりにドライエリアを取れば連結散水設備は要らないと聞いたのですが、本当でしょうか。
条件がそろえば、消防長の判断で設置しないことができます。
ただ、ドライエリアがあれば自動的に不要になるわけではありません。
その条件は、どの市でも同じなのでしょうか。
鈴鹿市と埼玉県央広域と堺市はほぼ同じ文で、大阪市は別の書き方です。
まず国の決まりから順に見ていきましょう。
- 連結散水設備は施行令第28条の2第1項により、地階の床面積の合計が700㎡以上の建物に要ります
- スプリンクラー設備等や連結送水管と排煙設備で省くルートは政令にあり、ドライエリアで省くのは政令第32条による個別の判断です
- 鈴鹿市は外周2面以上かつ周長の2分の1以上がドライエリア等に開いた耐火構造の建物に、開口部・幅2.5m以上・降り口・外壁30m超なら降り口2以上の4条件を挙げています
- 開口部の条件は、無窓階の判定に使う施行規則第5条の5の開口部から「道に面する」要件を外した形です
- 埼玉県央広域と堺市も同じ4条件で、大阪市は規則第5条の5の開口部を有する地階とだけ書き、四日市市と津市には省く規定がありません
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目次
連結散水設備はどんな地階に必要なのか

設置が必要になる建物と、設置しないことができる部分は、施行令第28条の2が決めています。
連結散水設備は、別表第一(一)項から(十五)項まで、(十六の二)項及び(十七)項に掲げる防火対象物で、地階の床面積の合計(同表(十六の二)項に掲げる防火対象物にあつては、延べ面積)が七百平方メートル以上のものに設置するものとする。
3 第一項の防火対象物に送水口を附置したスプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備を(略)技術上の基準に従い、又は当該技術上の基準の例により設置したときは、同項の規定にかかわらず、当該設備の有効範囲内の部分について連結散水設備を設置しないことができる。
4 第一項の防火対象物に連結送水管を次条の技術上の基準に従い、又は当該技術上の基準の例により設置したときは、消火活動上支障がないものとして総務省令で定める防火対象物の部分には、同項の規定にかかわらず、連結散水設備を設置しないことができる。
1つは第3項で、送水口を附置したスプリンクラー設備などを基準どおりに設けた有効範囲内の部分です。
もう1つは第4項で、連結送水管を設けたうえで、施行規則第30条の2の2が定める排煙設備を設けた部分などです。
鈴鹿市の基準は第4項の部分を「原則として、排煙設備及び連結送水管が設置されている部分」と言い換えています。
そのうえで鈴鹿市と埼玉県央広域は、地下4階以下の階又は地盤面から深さ15m以上の階には、努めて連結散水設備を設置するよう行政指導(▲)をしています。
ドライエリアで省く話は、その2つのルートには入っていないのですね。
入っていないので、政令第32条の出番になります。
次に鈴鹿市の条件を読みます。
鈴鹿市はドライエリアのある地階をどう扱うのか

建物の形の前提と4つの条件が、すべてそろうことを求めています。
7 連結散水設備を設置しないことができる防火対象物
特定主要構造部を耐火構造としたもので、外周(外壁)が2面以上及び周長の2分の1以上がドライエリアその他の外気(この項において「ドライエリア等」という。)に開放されており、かつ、次の条件のすべてを満足する防火対象物は、政令第32条の規定を適用し、連結散水設備を設置しないことができる。(第19-16図参照)
⑴ ドライエリア等に面して消火活動上有効な開口部(直径1m以上の円が内接することができる開口部又はその幅及び高さがそれぞれ0.75m以上及び1.2m以上の開口部)を2以上有し、かつ、当該開口部は、省令第5条の3第2項(第2号を除く。)の規定に該当するものであること。
⑵ 開口部が面するドライエリア等の幅は、当該開口部がある壁から2.5m以上であること。ただし、消火活動上支障ないものは、この限りでない。
⑶ ドライエリア等には、地上からその底部に降りるための傾斜路、階段等(この項において「傾斜路等」という。)の施設が設けられていること。
⑷ ドライエリア等の面する部分の外壁の長さが30mを超えるものは、2以上の傾斜路等を有すること。
前提は、特定主要構造部が耐火構造で、外周の2面以上かつ周長の半分以上がドライエリア等に開いていることです。
この7は無印で、凡例では法令の基準の側に入りますが、文の中で「政令第32条の規定を適用し」と書いているので、消防長の判断を経る扱いです。
⑵の幅にはただし書があり、消火活動上支障のないものは2.5m未満でもよいとしていますが、どこまでかは書かれていません。
| 項目 | 鈴鹿市の条件 |
|---|---|
| 前提(構造) | 特定主要構造部を耐火構造としたもの |
| 前提(開放) | 外周(外壁)が2面以上、かつ周長の2分の1以上がドライエリア等に開放 |
| ⑴ 開口部 | 直径1m以上の円が内接する開口部、又は幅0.75m以上・高さ1.2m以上の開口部を2以上。規則の要件(第2号を除く)にも該当 |
| ⑵ 幅 | 開口部のある壁から2.5m以上(消火活動上支障ないものを除く) |
| ⑶ 降り口 | 地上からドライエリアの底部へ降りる傾斜路・階段等 |
| ⑷ 長い外壁 | ドライエリア等に面する外壁の長さが30mを超えるなら傾斜路等を2以上 |
外壁が30mを超えるなら、降りる階段を2か所にするのですね。
そうです、数えるのはドライエリア等に面する部分の外壁の長さです。
建物全体の外周ではない点に注意してください。
開口部の条件はどこから借りているのか

施行規則が無窓階の判定に使う開口部と、同じ数字になっています。
(避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階)
第五条の五 (略)十階以下の階にあつては直径一メートル以上の円が内接することができる開口部又はその幅及び高さがそれぞれ七十五センチメートル以上及び一・二メートル以上の開口部を二以上有する普通階以外の階とする。
2 前項の開口部は、次の各号(十一階以上の階の開口部にあつては、第二号を除く。)に適合するものでなければならない。
一 床面から開口部の下端までの高さは、一・二メートル以内であること。
二 開口部は、道又は道に通ずる幅員一メートル以上の通路その他の空地に面したものであること。
三 開口部は、格子その他の内部から容易に避難することを妨げる構造を有しないものであり、かつ、外部から開放し、又は容易に破壊することにより進入できるものであること。
四 開口部は、開口のため常時良好な状態に維持されているものであること。
鈴鹿市の⑴の寸法は、第5条の5第1項が10階以下の階に求める開口部と同じです。
鈴鹿市が引く「省令第5条の3第2項」は条番号が動く前の番号で、第2号が道に面することという中身から、現行の第5条の5第2項にあたると読めます。
たどると次の順になります。
- 施行令第28条の2第1項で、地階の床面積の合計が700㎡以上なら設置が必要になる
- 第3項・第4項のルートに当たらなければ、省くには政令第32条による消防長又は消防署長の判断が要る
- 鈴鹿市 第19 7が、その判断の条件として前提と⑴〜⑷を示している
- ⑴の開口部は、規則第5条の5第1項の寸法と、同条第2項の第1号・第3号・第4号を借りている
- 第2号(道に面すること)は外し、⑵〜⑷でドライエリアの幅と降り口を別に見ている
無窓階の判定で見る窓と、同じ目で見ればよいのですね。
そうです、内側から逃げにくくする格子の付いた窓は数えられません。
防犯の格子を付ける前に設計者と相談しましょう。
ほかの消防本部でも同じ条件なのか

堺市は、その出典として昭和50年の消防庁の通知を挙げています。
5 特例適用基準◆④
(1)特定主要構造部を耐火構造としたもので外周(外壁)が2面以上及び周長の1/2以上がドライエリアその他の外気(以下「ドライエリア等」という。)に開放されており、かつ、次の条件のすべてを満足する防火対象物は、政令第32条の規定を適用し、連結散水設備を設置しないことができること。(ア〜エ 略)
◆④「消防法施行令第28条の2第1項に該当する防火対象物で連結散水設備を省略してよい部分」(昭和50年6月16日消防安第65号)
堺市の◆は、消防庁の通知等を参考に定めた指導の印で、鈴鹿市と埼玉県央広域は出典を書いていませんが、条件の文はほぼ同じです。
埼玉県央広域は「主要構造部」という改正前の言葉のままで、政令第32条の語も書かずに「設置しないことができること」としています。
開口部の条番号も、鈴鹿市と堺市は「第5条の3」、埼玉県央広域は「第5条の2」と、それぞれ改正前の番号を引いています。
大阪市は4つの条件を書かず、特例基準の一つとして「規則第5条の5に定める開口部を有する地階」を挙げています。
| 消防本部 | ドライエリア等で省く規定 | 書き方 | 記号 |
|---|---|---|---|
| 鈴鹿市 | 第4章 第19 7(前提+⑴〜⑷) | 特定主要構造部・政令第32条を適用・開口部は「省令第5条の3第2項(第2号を除く)」 | 無印 |
| 埼玉県央広域 | 第19 8(前提+ア〜エ) | 主要構造部・政令第32条の語なし・開口部は「省令第5条の2第2項(第2号を除く)」 | 無印 |
| 堺市 | 第21 Ⅱ5(1)(前提+ア〜エ) | 特定主要構造部・政令第32条を適用・開口部は「省令第5条の3第2項各号(第2号を除く)」 | ◆④(昭和50年 消防安第65号) |
| 大阪市 | 第5章 第2節 第12 特例基準4 | 「規則第5条の5に定める開口部を有する地階」に政令第32条を適用。ドライエリアの幅や降り口の条件は書かれていない | 無印 |
| 四日市市 | 第19 連結散水設備に省く規定なし | 配管・選択弁・散水ヘッド・送水口などの基準のみ | ― |
| 津市 | 5-20 連結散水設備に省く規定なし | 散水方式・散水ヘッド・配管・送水口の基準のみ | ― |
東大阪市は手元の運用基準に連結散水設備の節がなく、行田市と羽生市は審査基準を公開していないので、表に入れていません。
つまり、鈴鹿市と埼玉県央広域と堺市は同じ物差しで、大阪市は無窓階の開口部の考え方で見るということですね。
そう読めますが、どれも最後は消防長の判断です。
四日市市や津市で同じ計画なら、事前相談から始めましょう。
ドライエリアで省くときは何から確かめればよいのか

判断するのは、政令第32条に書かれた消防長又は消防署長です。
この節の規定は、消防用設備等について、消防長又は消防署長が、防火対象物の位置、構造又は設備の状況から判断して、この節の規定による消防用設備等の基準によらなくとも、火災の発生又は延焼のおそれが著しく少なく、かつ、火災等の災害による被害を最少限度に止めることができると認めるときにおいては、適用しない。
計画の順番は次のとおりです。
- 地階の床面積の合計が700㎡以上か、スプリンクラー設備等や連結送水管と排煙設備のルートで足りないかを確かめる
- 耐火構造か、外周の2面以上かつ周長の2分の1以上がドライエリア等に開いているかを平面図で確かめる
- 開口部の大きさと数、下端の高さ1.2m以内、格子の有無を立面図で確かめる
- ドライエリアの幅2.5mと降りる傾斜路・階段を描き、面する外壁が30mを超えるなら2か所目を描く
- 地下4階以下や深さ15m以上の階なら、鈴鹿市と埼玉県央広域では設置を求める指導があることを踏まえる
- 図面を持って所轄の消防本部に相談し、政令第32条の適用の手続きを確かめる
完成後にドライエリアを物置き代わりにすると、条件が崩れてしまいそうですね。
規則は開口部を常時良好な状態に保つことを求めています。
窓の前と降り口は空けておきましょう。
よくある質問
まとめ
平面図にドライエリアの幅と降り口を描き込んでから、鈴鹿市消防本部に相談します!
窓の下端の高さと格子の有無も一緒に見せると話が早く進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第28条の2・第32条(e-Gov法令検索)
- 消防法施行規則 第5条の5・第30条の2の2(e-Gov法令検索)
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第4章 第19 連結散水設備 6・7 第4章第19のPDF
- 埼玉県央広域消防本部「消防用設備等に関する審査基準」第19 連結散水設備 7・8 第19のPDF
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第21 連結散水設備 Ⅱ5 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第5章 第2節 連結散水設備 第12 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」第19 連結散水設備 審査基準のページ
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」5-20 連結散水設備 5-20のPDF
- 「消防法施行令第28条の2第1項に該当する防火対象物で連結散水設備を省略してよい部分」(昭和50年6月16日消防安第65号。堺市の基準が出典として挙げる通知)
※本記事は各消防本部が公開している審査基準・運用基準と国の法令に基づく一般的な解説です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防本部で確認してください。各本部の資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。政令第32条の適用は個別の判断なので、同じ条件でも結論が異なることがあります。





