地階に燃えにくい壁で囲まれた設備室があっても、連結散水設備は原則どおり全部に付けなければならないのでしょうか。
実は消防法施行令には、他の消火設備がすでにその場所を守っているなら連結散水設備を重ねて付けなくてよいという規定があります。
条件を満たさないまま省略すると、いざというときに消防隊の送水先が足りなくなります。
今回は連結散水設備の設置義務がどんな設備の組み合わせで免除されるのかを、条文から確認します。
うちの地階にはスプリンクラーが入ってるんですが、それでも連結散水設備は別に必要なんですか。
両方付けるのは大変なんですけど。
消防法施行令第28条の2第3項に、免除できる条件がはっきり書かれています。
まずはその条文を一緒に見てみましょう。
点検業者からは何も言われたことがないので、うちは大丈夫だと思い込んでいました。
自己判断で外していい話じゃないですよね。
そのとおりです。
有効範囲という言葉がポイントになるので、そこを一緒に整理していきましょう。
- 連結散水設備は地階の床面積の合計が七百平方メートル以上の防火対象物に設置義務がある
- 送水口を附置したスプリンクラー設備等を技術基準どおりに設置していれば、その有効範囲内の部分は連結散水設備を設置しなくてよい
- 連結送水管と排煙設備の両方をあわせて設置した部分も、消火活動上支障がないものとして連結散水設備を省略できる
- 免除されるのは条件を満たした部分だけで、地階全体が自動的に免除されるわけではない
- 免除を主張する前に設備の有効範囲が図面と現地で一致しているかを確認する必要がある
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目次
連結散水設備はなぜ地階に義務付けられるのか

そこで考え出されたのが、建物の外から水を送り込む連結散水設備です。
建物の消火設備が自動で消すためのものであるのに対し、こちらは消防ポンプ自動車が外の送水口から水を送り、地階の天井に付いた散水ヘッドから水をまくための設備です。
だから設置義務は建物の用途ではなく、地階の床面積の合計という規模で判定されます。
七百平方メートルという線引きは、それだけの広さがあると消防隊の携帯ホースだけでは届きにくくなるという実務上の限界から来ています。
この義務を前提にしたうえで、次にどんな設備があれば免除されるのかを見ていきます。
消防隊が持ち込むホースだけじゃ足りないから、建物側にあらかじめ送水の口を用意しておくということですね。
言われてみれば納得です。
そのとおりです。
ただし他の消火設備がすでに同じ役目を果たしているなら、重ねて付けなくてよい場合があります。
どんな消火設備があれば連結散水設備を免除できるのか

同じ役目を果たす設備がすでにあるなら、二重に設置させる必要はないという考え方です。
スプリンクラー設備・水噴霧消火設備・泡消火設備・不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備の六種類が対象で、それぞれ令第12条から第18条までの技術基準どおりに設置されていることが前提です。
ここでいう免除は、設備そのものを無くしてよいという意味ではありません。
免除されるのはあくまで当該設備の有効範囲内の部分だけで、その外側にははみ出しません。
次は連結散水設備だけに用意されているもう一つの免除の道を見ていきます。
うちの地階はスプリンクラーの散水範囲がちゃんと図面に描いてあります。
あれが有効範囲そのものなんですね。
はい、その図面が根拠になります。
スプリンクラーが無い建物にも別の免除の道があるので、続けて見てみましょう。
連結送水管と排煙設備を組み合わせても免除できるのか

それが連結送水管と排煙設備の組み合わせです。
連結送水管だけで送水経路はできても、地階にこもった煙を外に出す手段が無ければ消防隊は活動できません。
排煙設備があって初めて、送り込んだ水と外に逃がす煙がセットになり、消火活動上の支障が無いと判断されます。
つまりこの免除は「送水経路」と「排煙経路」の両方がそろって成り立つものです。
片方だけでは条文の求める条件を満たしません。
うちは連結送水管しか入っていないんですが、それだけでは免除にならないということですか。
排煙設備も別に確認が必要なんですね。
そのとおりです。
この勘違いが実務でいちばん起きやすいところなので、次でくわしく整理します。
免除の範囲を誤解しやすいのはどこか

この線引きを取り違える相談が実務では少なくありません。
地階の一室にスプリンクラーが入っていても、廊下を挟んだ別の部屋まで散水が届かないなら、その部屋は免除の対象外です。
地階のどこか一箇所に対応設備があるからといって、地階全体が免除されるわけではありません。
同じように、連結送水管だけを設置して排煙設備を後回しにしている状態も、条文が求める組み合わせを満たしていないので免除は成立しません。
免除を主張する前に、範囲がどこまで届いているかを図面で確認する必要があります。
地階にスプリンクラーがあると聞いて、全部免除されると思い込んでいました。
部屋ごとに確認しないといけないんですね。
はい、部屋単位で見ていく話です。
最後に、明日から確認できることをまとめます。
明日からなにを確認すればよいのか

まずは次の三点をそろえておくと話が早くなります。
一点目はスプリンクラー等の散水範囲図で、地階のどこまでが有効範囲に入っているかを見ます。
二点目は連結送水管と排煙設備が同じ部分に揃って設置されているかで、片方しか無い区画は免除の対象から外します。
三点目は連結散水設備そのものの送水口の位置で、消防ポンプ自動車が容易に接近できる場所にあるかを見ておきます。
免除を主張したい部分があれば、この三点を消防計画や点検記録に添えて所轄消防署に相談するのが確実です。
散水範囲図と設備の組み合わせを一緒に見てもらえば、うちの地階がどこまで免除の対象か分かりそうです!
図面と現地を突き合わせるところまで、ぜひご一緒させてください。
次はよくある質問を見ていきましょう。
よくある質問
まとめ
まずはうちの地階の図面を引っ張り出して、散水範囲がどこまで届いているか確認します!
図面の突き合わせでお困りのことがあれば、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第28条の2(連結散水設備に関する基準)
- 消防法施行令別表第一
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





