駅舎の消防用設備等は、ほかの建物と同じく、延べ面積や階の床面積で設置が決まります。
ところが駅には、屋根だけ架かったホームや、外に開いたコンコースがあり、どこまでを床面積に数えるのか迷いやすいところです。
堺市消防局の「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」は、地上の駅舎と地下の駅舎について、床面積の数え方を項目を分けて定めています。
この記事では、国の法令と堺市の運用を分けて読み、どの部分を数えてどの部分を外せるのかを順にたどります。
大阪市・東大阪市の公開資料とも比べます。
堺市で、小さな駅の駅舎を建て替える計画の担当になりました。
消防用設備等の延べ面積を出すように言われています。
駅舎はホームやコンコースの数え方で延べ面積が大きく変わります。
堺市の審査基準に、その数え方があります。
屋根のあるホームは全部数えるのですか。
原則は数えますが、外気に開いたホームは数えないことができます。
根拠から順番に見ていきましょう。
- 堺市の審査基準は、床面積を建築基準法令の例で数えたうえで、消防用設備等のための数え方を付け加えています
- 地上の駅舎では、屋根と床の形があるホームとコンコースは原則としてすべて床面積に入ります
- ただし、延長方向の1面以上が直接外気に開いたホームや、2面以上が開いたコンコースなどは算入しないことができます
- 地下の駅舎では、改札口の内側は線路部分を除いてすべて算入し、改札口の外は改札口や駅務室等から歩行距離20m以内を算入します
- 大阪市・東大阪市の今回の公開資料には、駅舎の床面積の数え方の項目は見当たりませんでした
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目次
堺市の審査基準は駅舎の床面積をどこから決めているのか

駅舎は、消防法施行令の別表第一で次の用途に当たります。
屋内消火栓設備は第11条第1項第2号で、(10)項は延べ面積700㎡以上です。
さらに地階や無窓階などでは、階の床面積でも決まります(自動火災報知設備は第21条第1項第11号で地階・無窓階・3階以上の300㎡以上、屋内消火栓設備は第11条第1項第6号で地階・無窓階・4階以上の150㎡以上)。
そのため、どこまでを床面積に数えるかで、設備が必要かどうかが変わります。
床面積の数え方そのものは、建築基準法施行令に定めがあります。
壁などがない部分については、次の考え方を示しています。
堺市の審査基準の凡例では、印のない項目は法令基準及びその解釈、◆は消防庁の通知等を参考に定めた指導基準、★は堺市消防局が定めた指導基準とされています。
キとクには、◆も★も付いていません。
流れを順番に並べます。
- 消防法施行令が、(10)項の駅舎に延べ面積や階の床面積で設備を求めます
- 床面積は、建築基準法施行令第2条第1項第3号の壁などの中心線で囲まれた部分の水平投影面積です
- 堺市の審査基準1(1)は、建設省住指発第115号の例で算定するとしています
- 住指発第115号は、壁などがない部分を屋内的用途に使うかどうかで判断するとしています
- 審査基準1(2)は「建築基準法令によるほか」として、キで地上の駅舎、クで地下の駅舎の数え方を加えています
駅舎の収容人員や(10)項の避難器具は駅や空港のターミナルの記事で取り上げています。
床面積は、まず建築の数え方が土台なのですね。
はい、建築基準法令の数え方が土台です。
堺市は、そこに駅舎の項目を足しています。
地上の駅のホームはどんな場合に床面積から外せるのか

プラットホームで、屋根を有し、かつ、床としての形態を有している部分又はコンコースの部分はすべてを床面積に算入すること。
ただし、次のいずれかに該当する部分は、床面積に算入しないことができるものであること。
ただし書の1つ目が、外に開いたホームです。
第4-7図は、線路に面した長い側が1面開いた例と、2面開いた例を算入しない例として描いています。
一方、2本のホームの屋根が線路の上でつながっている例は、括弧書きにより床面積に算入される例とされています。
線路の部分には、別の項目があります。
- ホームに屋根があり、床としての形をしているかを確かめます
- そのホームは、原則としてすべて床面積に算入します
- 線路に沿った長い側の1面以上が直接外気に開いているかを確かめます
- 開いていれば、そのホームは床面積に算入しないことができます
- ただし、2本以上のホームにまたがって屋根が続いている場合は、この扱いから除かれます
「算入しないことができる」という書き方なので、計画の段階でどの部分を外すかを消防署と確かめておくことになります。
屋根がホーム2本にまたがっていると、外せないのですね。
はい、上屋の屋根が2本以上のホームに連続する場合は除かれます。
図面で屋根の範囲を確かめましょう。
地上駅のコンコースはどこまで開いていれば外せるのか

第4-8図では、通路の長い側の2面が開いた例などが算入しない例です。
通路の両端だけが開いた形は、ただし書により算入される例として描かれています。
cは、開いているのが1面でも、開いた面の長さ(幅)が奥行きのおおむね2倍以上あるコンコースです(第4-9図)。
コンコースの判断を、順番に並べます。
- コンコースの外気に開いた面の数と、その面にシャッター等がないかを確かめます
- 2面以上が開いていれば、算入しないことができます(b)
- ただし、通路で延長方向以外の面(両端など)だけが開いている場合は除かれます
- 1面だけ開いている場合は、開いた面の幅が奥行きのおおむね2倍以上かを確かめます(c)
- どれにも当たらないコンコースは、すべて床面積に算入します
床面積と収容人員は、別々に数えるものだとわかります。
シャッターが付いているコンコースは、開いていても外せないのですか。
bもcもシャッター等がないことが条件です。
閉められる面は、開いた面として扱われません。
地下の駅舎は改札の内と外でどう数えるのか

(ア)改札口内にあっては、軌道部分を除き、すべてを算入する。
(イ)改札口外のコンコース等にあっては、改札口及び駅務室等の施設から歩行距離20m以内の部分を算入すること。ただし、20m以内に随時開くことができる自動閉鎖装置付のもの又は感知器の作動と連動して閉鎖する方式の特定防火設備が設置されている場合は、当該シャッターまでとするものであること。
※誘導灯及び放送設備については、20mを超える部分にあっても、必要となるので注意すること。
改札口の外のコンコース等は、改札口や駅務室等から歩いて20mまでの部分を算入します。
その20mの間に、随時開くことができる自動閉鎖装置付きのものか、感知器の作動と連動して閉まる方式の特定防火設備があれば、そのシャッターまでです。
地下の改札外の数え方を、順番に並べます。
- 改札口の内側は、線路の部分を除いてすべて床面積に算入します
- 改札口の外は、改札口と駅務室等の施設から歩行距離20mの範囲を算入します
- 20m以内に、自動で閉まる方式の特定防火設備があるかを確かめます
- あれば、算入する範囲はそのシャッターまでになります
- ただし、誘導灯と放送設備は、20mを超える部分にも必要になります
(10)項の誘導灯は、床面積ではなく階で設置が決まります。
どちらも床面積の大きさで決まる設備ではないため、床面積の算定から外れた部分にも必要になる、と読めます。
同じ1(2)のコには、地下街の地下道についても、店舗等の各部分から歩行距離20mの範囲を算入する項目があります(◆=昭和53年消防予第32号を参考に定めたもの)。
地下街の地下道の国の質疑は地下街の面積算定の記事で取り上げています。
地下駅の通路は、20mから先は数えなくてよいのですね。
床面積は20mまたはシャッターまでです。
ただし誘導灯と放送設備は、その先にも必要です。
大阪市や東大阪市にも駅舎の床面積の決まりはあるのか

駅舎の床面積の数え方の項目は見当たりませんでした。
ホームについては、屋内消火栓設備の特例基準に項目があります。
こちらは床面積の数え方ではなく、屋内消火栓設備の置き方の特例です(大阪市の屋内消火栓の特例の記事で取り上げています)。
「長辺方向の1面以上が直接外気に開放」という条件は、堺市のキ(ア)aと似た書き方です。
東大阪市消防局の公開資料(消火器具・自動火災報知設備・誘導灯・避難器具・連結送水管・非常コンセントの6基準)には、駅舎や床面積の算定の節がありません。
| 項目 | 堺市 | 大阪市 | 東大阪市 |
|---|---|---|---|
| 地上のホーム | 延長方向の1面以上が開けば算入しないことができる(キ(ア)a) | 床面積の項目は見当たらず(屋内消火栓の特例3あり) | 今回の資料に該当の節なし |
| 地上のコンコース | 2面以上開放か、開いた面の幅が奥行きのおおむね2倍以上(キ(ア)b・c) | 見当たらず | 今回の資料に該当の節なし |
| 軌道部分 | 屋根があっても算入しない(キ(イ)) | 見当たらず | 今回の資料に該当の節なし |
| 地下の改札外 | 改札口等から歩行距離20m以内、または特定防火設備まで(ク(イ)) | 見当たらず | 今回の資料に該当の節なし |
大阪市や東大阪市の駅舎では、床面積の数え方を所轄の消防署で確かめることになります。
堺市の駅舎での確かめ方を整理します。
- 駅舎が地上か地下かを分けます
- 地上なら、ホームの屋根の範囲と外気に開いた面を図面に書き込みます
- コンコースは、開いた面の数・シャッター等の有無・幅と奥行きを測ります
- 地下なら、改札口と駅務室等から歩行距離20mの線と、特定防火設備の位置を書き込みます
- 外す部分を決めたら、延べ面積と階の床面積を出して所轄の消防署と確かめます
大阪市の駅だと、堺市と同じ数え方になるとは限らないのですね。
はい、この数え方は堺市の審査基準の項目です。
ほかの市では、その市の消防署に確かめるのが確実です。
よくある質問
まとめ
まず、ホームの屋根の範囲と、外に開いた面を図面で確かめます。
外す部分を消防署に相談します!
外す部分がはっきりすれば、延べ面積の協議が早く進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第1章 総則 4 凡例、第2章 第1節 第4 床面積、階及び高さの取扱い 1(1)(昭和61年4月30日建設省住指発第115号)・1(2)キ・ク・ケ・コ https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第1章 第2節 屋内消火栓設備 第12 特例基準 3 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市消防局 消防用設備等の運用基準(公開6基準) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法施行令 第11条第1項、第21条第1項、第24条第3項、第26条第1項、別表第一
- 建築基準法施行令 第2条第1項第3号
※本記事は公表されている法令および堺市・大阪市・東大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々の建物の扱いは、所轄の消防署にご確認ください。





