ビルの受変電設備を置く部屋(変電室)には、消防の基準があります。
大阪市では、大阪市火災予防条例第12条が、変電設備を不燃材料の壁などで区画し、窓と出入口に防火戸を設けた室に置くよう定めています。
ところが大阪市消防局の「消防用設備等の設置に係る運用基準」には、変電室の開口部の戸を防火戸としないことができる場合が書かれています。
この記事では、国の省令・大阪市の条例・運用基準を分けて読み、防火戸の特例とキュービクル式・保有距離の扱いを順にたどります。
堺市の審査基準とも比べます。
大阪市のビルで、屋上に変電室を新しく設ける計画があります。
設計者から、扉を普通の鋼製の扉にしたいと相談されました。
大阪市の条例は、変電室の窓と出入口に防火戸を求めています。
ただし運用基準に、防火戸にしなくてよい場合が書かれています。
屋上で外に向いた扉でも、防火戸がいるのですか。
運用基準の条件は2つです。
根拠の順番に見ていきましょう。
- 変電設備の位置・構造は、消防法第9条にもとづき、国の省令の基準に従って市町村の火災予防条例で定められます
- 大阪市火災予防条例第12条は、屋内の変電設備を不燃材料で区画し、窓と出入口に防火戸を設けた室に置くよう定めています
- 大阪市の運用基準は、開口部が延焼のおそれのある部分以外にあり、屋上なら開口部から3m以内に外壁や開口部がない場合に、戸を防火戸としないことができるとしています
- 消防長が認める構造のキュービクル式は区画の規定から除かれ、運用基準は告示に適合するものや日本電気協会の認定品・推奨品などを挙げています
- 堺市の条例には、区画の規定に周囲5m以上・上方10m以上の空間などのただし書があり、大阪市とは書き方が違います
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目次
大阪市の変電室にはどんな基準がかかるのか

変電設備のような火災のおそれのある設備は、消防法第9条で市町村の条例に任されています。
その省令(対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令)が、変電設備を対象に挙げています。
一方、変電設備を不燃材料の室に入れるという規定は、省令には見当たりません。
省令第17条の表で、消防法施行令第5条第1項第4号(外部への延焼を防止する措置をした室に設ける基準)は、変電設備には適用しないとされています。
そのうえで、大阪市の条例は次のように定めています。
この条例の言葉を具体的にしているのが、大阪市消防局の運用基準の第12章です。
第12章 第2 変電設備には、◆の印はありません。
流れを順番に並べます。
- 消防法第9条が、火災のおそれのある設備の基準を市町村の条例に任せています
- 消防法施行令第5条と省令が、条例で定める基準を示し、変電設備は全出力20kW以下を除いて対象になります
- 省令は、浸水しない位置や屋外の3mなどを定めていますが、不燃の室に入れる規定はありません
- 大阪市火災予防条例第12条が、屋内の変電設備を不燃材料で区画し、窓と出入口に防火戸を設けた室に置くよう定めています
- 運用基準の第12章 第2が、条例の各号をどう読むかを具体的に示しています
変電室を防火戸付きの室にするのは、大阪市の条例の決まりなのですね。
はい、条例第12条第1項第3号の決まりです。
運用基準は、その号の読み方を示しています。
変電室の扉を防火戸にしなくてよいのはどんな場合か

ア 開口部は、延焼のおそれのある部分(建基法第2条第6号(括弧書を除く。)に規定するものをいう。)以外の部分であること
イ 変電室が屋上等に設けられている場合は、当該変電室の開口部から3メートル以内の部分には、外壁又は開口部が設けられていないこと。ただし、3メートル以内の部分にある外壁又は開口部が、不燃材料で造られている場合又は防火戸が設けられている場合は、この限りでない。
運用基準は「括弧書を除く」としているので、延べ面積の合計が500㎡以内の建物を一つの建物とみなす取扱いは使わずに読む、と読めます。
イは屋上の変電室の条件で、第12-1図は変電室の開口部と塔屋等の間に3mをとった例を描いています。
判断の順番を並べます。
- 変電室の開口部が、隣地境界線や道路中心線などから1階は3m・2階以上は5mの範囲に入っていないかを確かめます
- 入っていれば、その開口部の戸は防火戸のままです
- 変電室が屋上等にあるときは、開口部から3m以内に外壁や開口部がないかを確かめます
- 3m以内に外壁や開口部があっても、不燃材料で造られているか、防火戸が付いていれば条件を満たします
- アとイ(屋上等の場合)を満たせば、開口部の戸を防火戸としないことができます
壁・柱・床・天井を不燃材料で区画することや、ほかの号(換気・標識など)は、そのままかかると読めます。
条例第3号の「出入口の扉の自動閉鎖装置」について、運用基準の2(2)は触れていません。
防火戸にしない場合の扉の仕様は、計画の段階で所轄の消防署と確かめておくのが確実です。
同じ2の(1)と(3)には、次の項目もあります。
屋上の変電室なら、まわり3mに何もなければ普通の扉でよいのですね。
アの延焼のおそれのある部分に当たらないことも条件です。
扉の仕様は、消防署と確かめましょう。
キュービクル式なら変電室はいらないのか

このキュービクル式は、不燃材料で区画した室に入れなくてよいことになります。
運用基準の第2の3は、その「認める構造」を次のように示しています。
たとえば外箱の板厚は次のとおりです。
屋外に置く変電設備は、条例第12条第2項で建物から3m以上離すのが原則です。
国の省令第16条第4号ロも、消防長等が認める構造のキュービクル式などを3mの対象から外しています。
ただし書の「開口部のない外壁」の読み方(運用基準 第2の6)は、大阪市の急速充電設備の記事で取り上げています。
キュービクルの確かめ方を順番に並べます。
- 変電設備がキュービクル式か、開放式(室に据え付ける形)かを分けます
- キュービクル式なら、昭和50年消防庁告示第7号への適合・認定品・推奨品のどれかに当たるかを銘板や書類で確かめます
- どれにも当たらなければ、運用基準3の(1)〜(9)の構造に合っているかを確かめます
- 当たれば、条例第3号の室の規定と、第2項の屋外3mの規定から除かれます
- 開放式なら、不燃材料で区画し防火戸を設けた変電室に置きます
キュービクルなら、専用の室を作らなくてよい場合があるのですね。
はい、消防長が認める構造のキュービクル式なら除かれます。
銘板や認定の書類で確かめましょう。
変圧器や配電盤のまわりは何メートルあければよいのか

| 種類 | 部分 | 保有距離 |
|---|---|---|
| 変圧器・コンデンサー(キュービクル式以外) | 点検を行う面 | 0.6m以上(点検を行う面が相互に面する場合は1.2m以上) |
| 変圧器・コンデンサー(キュービクル式以外) | その他の面 | 0.1m以上 |
| 配電盤・分電盤(キュービクル式以外) | 操作を行う面 | 1.0m以上(操作を行う面が相互に面する場合は1.2m以上) |
| 配電盤・分電盤(キュービクル式以外) | 点検を行う面 | 0.6m以上(点検に支障とならない部分は除く) |
| 配電盤・分電盤(キュービクル式以外) | 換気口を有する面 | 0.2m以上 |
| キュービクル式 | 前面及び操作を行う面 | 1.0m以上 |
| キュービクル式 | 点検を行う面 | 0.6m以上 |
| キュービクル式 | 換気口を有する面 | 0.2m以上 |
ア 周囲の床又は地盤より0.1メートル以上高いものであること
イ 周囲の床若しくは地盤面からの高さが0.1メートル以上の水返しが設けられているものであること
第4号の換気設備は、5で次のように想定されています。
(2) 変電室の室温が40度以下となる性能を有するものであること
(3) 換気のための窓又は換気口は、避難上支障を生じない位置に設けるものであること
- 床が周囲より0.1m以上高いか、0.1m以上の水返しがあるかを確かめます
- 変電室の中を給排水の配管や冷房のダクトが通っていないかを確かめます
- 変圧器・配電盤ごとに、点検面・操作面・換気口の面の保有距離を図面に書き込みます
- 換気設備が室温40度以下を保てるか、換気口が避難の妨げにならない位置かを確かめます
- 保有距離に物を置かないよう、日常の管理でも空けておきます
配電盤の前は、1.0mあけておくのですね。
はい、操作を行う面は1.0m以上です。
向かい合う場合は1.2m以上になります。
堺市の変電設備の基準は大阪市とどこが違うのか

変電設備は堺市の条例では第18条です。
大阪市の条例第3号にはこのただし書がなく、運用基準で開口部の戸を防火戸としない場合を示しています。
また、大阪市の条例は出入口の扉に自動閉鎖装置を求めていますが、堺市の第3号にはその文言がありません。
対象の書き方も違い、大阪市は「全出力20キロワット未満のもの」を除き、堺市は「全出力20キロワット以下のもの」を除いています(国の省令は「以下」)。
主な違いを表にします。
| 項目 | 大阪市 | 堺市 |
|---|---|---|
| 対象から除くもの | 全出力20kW未満 | 全出力20kW以下 |
| 区画した室 | 不燃材料で区画し窓と出入口に防火戸、出入口の扉に自動閉鎖装置 | 不燃材料で区画し窓と出入口に防火戸 |
| 室の規定がゆるむ場合 | 運用基準:延焼のおそれのある部分以外の開口部で、屋上等は3m以内に外壁・開口部なし→戸を防火戸としないことができる | 条例ただし書:周囲5m以上かつ上方10m以上の空間、不活性ガス消火設備など |
| 認めるキュービクル式 | 昭和50年消防庁告示第7号に適合・日本電気協会の認定品・推奨品・運用基準の構造 | 平成20年消防局告示第3号に適合(日本電気協会の認定品は適合するものとする)・日本電気協会の推奨基準に適合 |
| 保有距離 | 変圧器・配電盤ごとの表(相互に面する場合1.2mなど) | 前面又は操作面1.0m・点検面0.6m・換気面0.2m |
| 浸水の対策 | 床を0.1m以上高くするか0.1m以上の水返し | 床を10cm以上高くするか10cm以上の水返し等 |
屋外の3mのただし書については、堺市の解説14(2)がはめ殺しの防火戸や常時閉鎖式の防火戸を開口部のないものとして運用してよいとしています。
東大阪市消防局の公開資料(消火器具・自動火災報知設備・誘導灯・避難器具・連結送水管・非常コンセントの6基準)には、変電設備の位置・構造の節はありません。
東大阪市火災予防条例の変電設備の条文は、今回は確かめていません。
大阪市で変電室を計画するときの確かめ方を整理します。
- 変電設備の全出力が20kW以上か(大阪市の条例の対象か)を確かめます
- キュービクル式か開放式かを分け、キュービクル式なら認める構造に当たるかを確かめます
- 開放式なら、不燃材料で区画した変電室と、窓・出入口の防火戸を計画します
- 戸を防火戸にしない場合は、延焼のおそれのある部分と、屋上等の3mを図面で確かめます
- 保有距離・浸水・換気を図面に書き込み、所轄の消防署と確かめます
堺市と大阪市では、変電室がゆるむ条件の書き方が違うのですね。
はい、堺市は条例のただし書、大阪市は運用基準で示しています。
建物のある市の基準で確かめましょう。
よくある質問
まとめ
まず、変電室の開口部と、まわりの外壁の位置を図面で確かめます。
扉の仕様を消防署に相談します!
条件が図面ではっきりすれば、変電室の計画が早く固まります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」前文・凡例、第12章 電気設備 第2 変電設備 1〜5(図12-1) https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 大阪市火災予防条例 第12条(大阪市例規データベース)
- 堺市消防局 審査基準(堺市火災予防条例 第2章 第18条【解説及び運用】) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 東大阪市消防局 消防用設備等の運用基準(公開6基準) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法 第9条、消防法施行令 第5条
- 対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令 第3条、第12条、第16条、第17条
- 建築基準法 第2条第6号
※本記事は公表されている法令および大阪市・堺市・東大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々の建物の扱いは、所轄の消防署にご確認ください。





