2つの建物を渡り廊下でつないでいると、その階の避難器具の数を減らせる規定が消防法施行規則にあります。
国の規則が求めるのは、渡り廊下の構造・両端の防火戸・用途の3つの要件です。
鈴鹿市消防本部の審査基準は、これに渡り廊下の幅1.2m以上など4つの条件を足しています。
この記事では鈴鹿市の基準をたどり、埼玉県央広域・堺市・東大阪市と、渡り廊下による減免の扱いを比べます。
鈴鹿市で、本館と新館を3階の渡り廊下でつなぐ計画があります。
渡り廊下があると避難器具を減らせると聞きました。
国の規則では、渡り廊下1本につき2個を減らせます。
ただし鈴鹿市の基準には、国の要件に足した条件があります。
国の要件だけ満たしていても足りないということですか。
そうです。
渡り廊下の幅と、壁を貫く管や風道の納め方まで見られます。
- 消防法施行規則第26条第3項は、要件を満たす渡り廊下がある階の避難器具を渡り廊下の数の2倍だけ減らせると定めています
- 鈴鹿市は国の3要件に加えて、幅1.2m以上・荷重・道路上空・管と風道の貫通部の4つの条件を定めています
- 管のすき間はモルタルなどの不燃材料で埋め、風道には防火ダンパーを設けます
- 埼玉県央広域は鈴鹿市と同じ4つの条件を定め、渡り廊下の両側の建物でそれぞれ減らせると明記しています
- 堺市と東大阪市は、渡り廊下でつながった建物を別棟として扱える場合に減免を限っています
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目次
国の規則では渡り廊下があると避難器具はいくつ減るのか

e-Govの現行の消防法施行規則第26条第3項と、そこが準用する第2項後段を読みます。
令第二十五条第一項各号に掲げる防火対象物で特定主要構造部を耐火構造としたものに次に該当する渡り廊下が設けられている場合は、当該渡り廊下が設けられている階に設置する避難器具の個数は、令第二十五条第二項第一号本文又は前二項の規定により算出して得た数から当該渡り廊下の数に二を乗じた数を引いた数以上とすることができる。この場合において、前項後段の規定を準用する。
一 耐火構造又は鉄骨造であること。
二 渡り廊下の両端の出入口に自動閉鎖装置付きの特定防火設備である防火戸(防火シャッターを除く。)が設けられていること。
三 避難、通行及び運搬以外の用途に供しないこと。
消防法施行規則 第26条第2項後段
この場合において、当該引いた数が一に満たないときは、当該階に避難器具を設置しないことができる。
前提は、建物が特定主要構造部を耐火構造としたものであることです。
そのうえで渡り廊下が、耐火構造か鉄骨造であること、両端の出入口に自動閉鎖装置付きの特定防火設備の防火戸があること、避難・通行・運搬にしか使わないことの3つを満たす必要があります。
減らせるのは渡り廊下が設けられている階だけで、引いた結果が1に満たなければ、その階には避難器具を設けないことができます。
まず自分の建物の階ごとに、施行令第25条第2項第1号で何個必要かを数えておくと、渡り廊下で何個減るかがすぐ分かります。
3階に必要なのが2個なら、渡り廊下が1本あれば3階には置かなくてよいのですか。
国の規則の計算ではそうなります。
ただ鈴鹿市では渡り廊下そのものに条件が足されているので、次で確かめましょう。
鈴鹿市は渡り廊下にどんな条件を上乗せしているのか

この項目には行政指導を示す▲も、法令基準に指導を加えたことを示す●も付いていません。
ア 省令第26条第3項に規定する「渡り廊下」による避難器具の減免の例は、第12-8図のとおりとする。
イ 渡り廊下の基準は、省令第26条第3項によるほか、次による。
(ア) 渡り廊下の幅員は、1.2m以上とし、避難時の予想される荷重に十分耐えられること。
(イ) 公共用道路上空に設ける渡り廊下は、上空通路等の取扱いの例による。
(略)
国の規則第26条第3項には渡り廊下の幅の数字がありませんが、鈴鹿市はここに1.2m以上という下限を置いています。
あわせて、避難のときに人が集まっても耐えられる強さも求めています。
道路の上に架ける渡り廊下は、第3章 第12 1⑴で定義された上空通路等の取扱い、つまり昭和32年7月15日の「道路の上空に設ける通路の取扱等について」(建設省発住第37号・国消発第860号・警察庁乙備発第14号)の例によるとしています。
鈴鹿市の凡例では無印は法令基準を表すので、減免を受けたいなら設計の段階でこの幅と強さを図面に入れておくのが確実です。
幅が1.1mの渡り廊下だと、鈴鹿市では減免の対象にならないのですね。
基準の書きぶりからはそう読めます。
有効幅の測り方も含めて、図面を持って予防課に確かめましょう。
管や風道が壁を貫くところはどう納めればよいのか

渡り廊下でつながる建物の耐火構造の壁や床を貫くところに注目しています。
(ウ) 渡り廊下内の給水管、配電管その他の管が、防火対象物の耐火構造の壁又は床を貫通する場合は、当該管と耐火構造の区画とのすき間をモルタルその他の不燃材料で埋めること。
(エ) 渡り廊下内の換気、暖房又は冷房の設備の風道が、防火対象物の耐火構造の壁又は床を貫通する場合は、当該貫通する部分又はこれに近接する部分に、防火ダンパーを設けること。
給水管や配電管が建物の耐火構造の壁を貫くなら、管のまわりのすき間をモルタルなどの不燃材料で埋めます。
換気や冷暖房の風道が貫くなら、貫通する部分かそのすぐ近くに防火ダンパーを付けます。
渡り廊下の両端に防火戸を付けても、壁の穴から火や煙が回っては意味がないので、そこをふさぐための条件と読めます。
後から空調や照明を足すと貫通部が増えるので、改修のたびにすき間とダンパーを点検項目に入れておきましょう。
つまり防火戸だけでなく、壁の中の配管まで見られるということですね。
そのとおりです。
設備業者さんにも貫通部の納め方を伝えておきましょう。
ほかの市では渡り廊下による減免をどう扱っているのか

まず埼玉県央広域の基準を読み、そのあと堺市と東大阪市を見ます。
⑵ 省令第26条第3項の規定は、2以上の防火対象物における避難器具の設置義務を有する階の間に、一の渡り廊下が設置されている場合、当該2以上のそれぞれの防火対象物の階について、避難器具の設置個数の減免を行えるものであること。(第12-8図参照)
⑶ 渡り廊下は、省令第26条第3項の規定によるほか、次によること。
ア 渡り廊下の幅員は、1.2m以上とし、避難時の予想される荷重に十分耐えられるものであること。
(略)
省令第26条第3項の規定により、避難器具の設置個数を減免することができるのは、「第2章 第1節 第6 政令第8条等に規定する区画等の取扱い」により別棟として取り扱うことができる場合に限るものとする。
埼玉県央広域は、1本の渡り廊下でつながった2つの建物のどちらの階でも減免できると書き、第12-8図でも両側の階に「-2個」を示しています。
鈴鹿市の第12-8図も同じく両側の階に2個減を示しており、幅1.2m以上などの4つの条件も鈴鹿市とほぼ同じ文です。
これに対して堺市と東大阪市は、渡り廊下でつながった建物を別棟として扱える場合に減免を限っています。
東大阪市は2(17)で平成30年の例規通達第23号を引き、▲(法令基準に行政指導を加えた基準)を付けています。
| 消防本部 | 減免の節の書きぶり | 記号 | 別棟に限るか |
|---|---|---|---|
| 鈴鹿市 | 規則第26条第3項によるほか幅1.2m以上など4つの条件 | 無印 | 書かれていない |
| 埼玉県央広域 | 両側の建物でそれぞれ減免できる+鈴鹿市とほぼ同じ4つの条件 | 無印 | 書かれていない |
| 堺市 | 別棟として扱える場合に限る | 無印 | 限る |
| 東大阪市 | 例規通達第23号で別棟として扱える場合に限る | ▲ | 限る |
| 四日市市・津市・大阪市 | 避難器具の基準に渡り廊下による減免の記述は見当たらない | - | - |
一方で、渡り廊下でつながった建物が一つの棟とみなされる場合にどう数えるかも書かれていないので、その場合は所轄の消防本部に確かめてください。
同じ渡り廊下でも、市によって減らせるかどうかが変わるのですね。
別棟の扱いになるかどうかが分かれ目になる市もあります。
計画地の消防本部の基準で確かめましょう。
渡り廊下で避難器具を減らす計画では何を確かめればよいのか

国の規則と鈴鹿市の条件を、上から順に図面で確かめていきます。
- 施行令第25条第2項第1号で、渡り廊下がある階に必要な避難器具の数を数える
- 建物が特定主要構造部を耐火構造としたものか確かめる
- 渡り廊下が耐火構造か鉄骨造か、両端に自動閉鎖装置付きの特定防火設備の防火戸があるか、避難・通行・運搬以外に使わないかを確かめる
- 鈴鹿市の条件として、幅1.2m以上と荷重、道路の上なら上空通路等の取扱いを確かめる
- 管のすき間の不燃材料と、風道の防火ダンパーを確かめる
- 必要な数から渡り廊下の数の2倍を引き、1に満たなければその階は設けないことができる
鈴鹿市の第12-8図は、渡り廊下でつながった両側の階をそれぞれ2個減とする例を示しています。
ほかの市に建物があるなら、堺市や東大阪市のように別棟の扱いが前提になる場合があるので、設置単位の基準もあわせて読みます。
予防課に持っていくものは、次の3つです。
- 渡り廊下のある階ごとの収容人員と避難器具の必要数の計算
- 渡り廊下の構造・幅・両端の防火戸・用途がわかる図面
- 管と風道が壁を貫く位置と、すき間の処理と防火ダンパーの仕様
渡り廊下を後から付ける改修でも、同じ順番で確かめればよいのですね。
はい。
改修のときは既存の防火戸が国の要件に合っているかも見ておきましょう。
よくある質問
まとめ
渡り廊下の幅と貫通部を図面に入れて、予防課に相談してみます!
先に確かめておけば避難器具の数を見込み違いせずに済みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第25条第1項・第2項第1号、消防法施行規則 第26条第2項・第3項(e-Gov法令検索)
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第1章 凡例、第3章 第12 1⑴・3⑵(第12-8図) 第3章 第12のPDF
- 埼玉県央広域消防本部「消防用設備等に関する審査基準」第3章 第12 4⑴〜⑶(第12-8図) 第12のPDF
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」(第二十二版)第17 避難器具 Ⅱ 1(5) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 東大阪市消防局「避難器具の設置に係る運用基準」2 共通事項(17) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
※本記事は各消防本部が公開している審査基準と国の法令に基づく一般的な解説です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防本部で確認してください。各本部の資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。個々の建物で渡り廊下による減免が使えるかは、所轄の消防本部にご確認ください。





