小規模な福祉施設に多い特定施設水道連結型スプリンクラー設備は、廊下や脱衣所にヘッドを付けなくてよいと消防法施行規則で決まっています。
ところが鈴鹿市の審査基準は、談話スペースや玄関ホール、洗濯機を置いた脱衣所をその「廊下」や「脱衣所」に当たらないと読んでいます。
同じ読み方は埼玉県央広域消防本部と四日市市にもあり、反対に風除室や玄関を省略できる側に入れている本部もあります。
この記事では鈴鹿市の4項目を条文の言葉から追い、近隣と大阪府の5本部と比べます。
うちのグループホームで、廊下の一角にソファを置いて談話スペースにしたいんです。
廊下ならヘッドはいらないと聞いたんですが、そのままで大丈夫ですか。
国の規則では廊下にヘッドを付けなくてよいことになっています。
ただ鈴鹿市は、通行に使わない談話スペースを廊下として扱わないと決めています。
脱衣所に洗濯機を置く予定もあるんです。
そこにもヘッドが要るんでしょうか。
鈴鹿市では、洗濯機や衣類乾燥機を置いた脱衣所にはヘッドを設置するとしています。
まずは条文と市ごとの線引きを順に見ていきましょう。
- 国の規則(消防法施行規則第13条第3項第9号の2)は、(6)項イ(1)(2)・ロの基準面積1,000平方メートル未満の部分で、廊下・2平方メートル未満の収納設備・脱衣所その他これらに類する場所にヘッドを設けなくてよいとしている
- 鈴鹿市は、通行に使わない談話スペースと玄関ホール・エレベーターホールを「廊下」や「廊下その他これらに類する場所」に当たらないとしてヘッドを設置させる
- 洗濯機・衣類乾燥機を置いた脱衣所と洗濯室、物置や倉庫に使う便所にもヘッドを設置させる(いずれも記号のない項目)
- 県央広域と四日市市も談話スペースと洗濯機のある脱衣所は同じ扱いだが、県央広域は通行専用の風除室や条件つきの玄関を省略できる側に入れている
- 大阪市は収納設備の中身を書き、津市と堺市の水道連結型の項目には同じ記述が見当たらないので、建物の所在地の基準で場所ごとに確かめる
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目次
国の規則では水道連結型スプリンクラーのヘッドをどこで省略できるのか

ヘッドを付けなくてよい場所は、ほかのスプリンクラー設備と同じく消防法施行規則第13条第3項に並んでいます。
一 階段(略)、浴室、便所その他これらに類する場所
九の二 令別表第一(六)項イ(1)及び(2)並びにロに掲げる防火対象物並びに同表(十六)項イ、(十六の二)項及び(十六の三)項に掲げる防火対象物のうち同表(六)項イ(1)若しくは(2)又はロの用途に供される部分(当該防火対象物又はその部分の基準面積が千平方メートル未満のものに限る。)の廊下(第六号に掲げるものを除く。)、収納設備(その床面積が二平方メートル未満であるものに限る。)、脱衣所その他これらに類する場所
9号の2は、病院・有床診療所・老人ホームなど(6)項イ(1)(2)とロの用途で、基準面積が1,000平方メートル未満の部分に限った規定です。
水道連結型を付けられるのも(6)項イ(1)(2)とロを中心とした1,000平方メートル未満の部分なので、小規模な福祉施設ではこの号がよく使われます。
ただ条文には「廊下」「脱衣所」と場所の名前が書いてあるだけで、ソファを置いた一角や洗濯機を置いた脱衣所まで含むのかは書かれていません。
その線を引いているのが、各消防本部の審査基準です。
条文に「廊下」と書いてあれば、廊下の形をしていればどこでも省略できると思っていました。
条文は場所の名前しか書いていないので、使い方で判断が分かれます。
設計図に家具の配置まで書いて、所轄の消防本部に見せておくと安心です。
鈴鹿市は談話スペースや玄関ホールをなぜ廊下として扱わないのか

ヘッドの設置を定めた5 ⑵には、9号の2の言葉を狭く読む項目が並びます。
イ 椅子、ソファ、テーブル等が設置された娯楽、談話スペース等の通行の用に供しない部分は、省令第13条第3項第9号の2の「廊下」には該当しないものとし、ヘッドを設置する。
ウ 玄関ホール、エレベーターホール部分については、省令第13条第3項第9号の2の「廊下その他これらに類する場所」には該当しないものとし、ヘッドを設置する。
イは、椅子やソファ、テーブルを置いて娯楽や談話に使う部分を、通行の用に供しない部分として「廊下」から外しています。
廊下の一部にソファを置いただけでも、その部分は通行の用に供しない部分として扱われるという読み方です。
ウは、玄関ホールとエレベーターホールを「廊下その他これらに類する場所」からも外しています。
鈴鹿市の凡例ではどちらも記号のない項目で、法令の解釈や運用の基準として示されています。
玄関ホールは通るだけの場所だと思っていましたが、廊下とは別の扱いなんですね。
鈴鹿市の基準では、玄関ホールとエレベーターホールにはヘッドを付ける前提です。
平面図でホールと廊下の境目をはっきり描いておきましょう。
洗濯機を置いた脱衣所や物置にした便所にもヘッドが要るのか

便所は9号の2ではなく、第13条第3項第1号の「浴室、便所その他これらに類する場所」を読んだものです。
エ 省令第13条第3項第9号の2に規定する「脱衣所その他これらに類する場所」に洗濯機又は衣類乾燥機が設置されている場合は、ヘッドを設置する。また「洗濯室」も同様とする。
オ 省令第13条第3項第1号の「便所その他これらに類する場所」を物置や倉庫の用として使用する場合は、ヘッドを設置する。
エは、脱衣所に洗濯機や衣類乾燥機があるときは省略を認めず、洗濯室も同じ扱いにしています。
理由は審査基準に書かれていないので、機器を置くかどうかを事実として確かめておくのが確実です。
オは、便所に段ボールや掃除用具をため込んで物置や倉庫として使うと、1号の省略から外れるという項目です。
完成時は省略できていても、使い始めてから置く物が変わると条件が崩れる点に注意が要ります。
開設したあとで、脱衣所に洗濯機を移すことはよくあるんです。
鈴鹿市の基準では、洗濯機を置いた脱衣所はヘッドを設置する側の部屋になります。
配置を変える前に、設備業者と所轄の消防署に相談するのが確実です。
県央広域や四日市市や大阪市はどこで線を引いているのか

一方で県央広域は、省略できる側にも場所を書き足しています。
4 ⑴ ヘッドの設置を省略できる部分は、第3スプリンクラー設備7を準用すること。
4 ⑵ 通行の用に供する用途のみの風除室は、省令第13条第3項第9号の2に規定する「その他これらに類する場所」として取り扱うことができる。
5 ⑵ウ 洗濯室は、省令第13条第3項第9号の2の「脱衣所」には該当しないものとし、ヘッドを設置すること。
| 場所 | 鈴鹿市 | 県央広域 | 四日市市 | 大阪市 |
|---|---|---|---|---|
| 談話スペース(通行に使わない部分) | ヘッドを設置(記号なし) | ヘッドを設置(記号なし) | ヘッドを設置(下線=行政指導) | 項目なし |
| 玄関ホール・エレベーターホール | ヘッドを設置(記号なし) | 風除室・玄関・勝手口等は多量の可燃物と火気使用設備がなければ「類する場所」(準用先の第3 7 ⑼ア・記号なし) | 項目なし | 項目なし |
| 風除室 | 項目なし | 通行専用なら「類する場所」(4 ⑵・記号なし) | 項目なし | 項目なし |
| 洗濯機・衣類乾燥機のある脱衣所 | ヘッドを設置(記号なし) | ヘッドを設置(▲=行政指導) | ヘッドを設置(下線=行政指導) | 項目なし |
| 洗濯室 | ヘッドを設置(記号なし) | ヘッドを設置(記号なし) | 項目なし | 項目なし |
| 物置や倉庫に使う便所 | ヘッドを設置(記号なし) | 項目なし | 項目なし | 項目なし |
| 収納設備の中身 | 項目なし | 押入れ・クローゼット・リネン庫等で2㎡未満(第3 7 ⑼イ・記号なし) | 項目なし | 押入・物入・納戸・リネン庫・クローゼット等(人が内部に入って収納作業を行うものを除く・記号なし) |
談話スペースと洗濯機のある脱衣所は、鈴鹿市・県央広域・四日市市で同じ結論ですが、四日市市は全文に下線を引いた行政指導の扱いです。
県央広域は通行専用の風除室を省略できる側に入れ、準用するスプリンクラー設備の基準で玄関や勝手口も条件つきで同じ扱いにしています。
大阪市は第9 3で収納設備の中身を書き、人が中に入って作業する納戸などを外しています。
津市(5-3 17)と堺市(第4 Ⅱ6)の水道連結型の項目には、談話スペースや洗濯機のある脱衣所を扱う記述は見当たりませんでした。
同じ玄関でも、鈴鹿市と鴻巣市では扱いが逆になることがあるんですね。
鈴鹿市はヘッドを付ける側、県央広域は条件つきで省略できる側です。
建物の所在地の消防本部の基準で確かめてください。
設計や模様替えのときは何を確かめればよいのか

ヘッドを付けない部分を広く取ると、屋内消火栓設備のほうに影響が出ることもあります。
設計の段階では、平面図に家具の配置と洗濯機の置き場所を書き込み、ヘッドを省略する部屋の名前と使い方を所轄の消防本部と突き合わせます。
開設後に談話コーナーを作る、脱衣所へ洗濯機を移す、便所を物置にするといった変更は、鈴鹿市の基準ではヘッドを設置する側への変更になります。
消防法施行令第11条第4項は、スプリンクラー設備の有効範囲内の部分について屋内消火栓設備を設置しないことができるとしており、ヘッドのない部分はこの範囲に入りません。
堺市は9号の2の部分にもヘッドを付けた場合に屋内消火栓設備を免除して差し支えないとしているので(★=堺市消防局として定めた指導基準)、省略するかどうかは消火栓の要否と合わせて決めてください。
省略できる場所を増やすより、最初から付けておいたほうが楽な場面もあるんですね。
後から用途を変える予定があるなら、最初からヘッドを付けておく選択もあります。
設計の段階で所轄の消防本部に相談しておきましょう。
よくある質問
まとめ
談話コーナーと洗濯機の置き場所を図面に書いて、所轄の消防本部に確認します!
使い方が決まれば、ヘッドの要否もはっきりします。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第11条第4項・第12条第2項第3号の2(e-Gov法令検索)
- 消防法施行規則 第13条第3項第1号・第9号の2(e-Gov法令検索)
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第4章 第3の5 特定施設水道連結型スプリンクラー設備・第3 スプリンクラー設備 6(令和6年4月1日制定、令和7年9月1日改正)
- 埼玉県央広域消防本部「埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準」第4章 第3 スプリンクラー設備 7・第3の5 特定施設水道連結型スプリンクラー設備
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」第2章 第3 スプリンクラー設備 11 特定施設水道連結型スプリンクラー設備
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第1章 第3節の2 特定施設水道連結型スプリンクラー設備 第9
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」5-3 スプリンクラー設備
- 堺市消防局「消防同意・消防用設備等審査基準」第4 スプリンクラー設備
※本記事は公表されている法令および各消防本部の審査基準・運用基準に基づく一般的な解説です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の建物の判断は所轄消防署にご確認ください。





