ビルの屋上には、屋内消火栓設備に水を送る高架水槽が置かれていることがあります。
給水用の水槽ではガラス繊維強化プラスチック、いわゆるFRP製のパネル水槽がよく使われますが、消火設備の水槽でも同じものを使ってよいのでしょうか。
国の消防法施行規則は水槽の材質を決めておらず、答えは消防本部の審査基準によって変わります。
鈴鹿市の基準は高架水槽を鋼板製かステンレス鋼製に限り、埼玉県央広域・堺市・大阪市・四日市市・津市は置き場所の条件を付けてFRP製を認めています。
屋上の消火用の水槽が古くなったので、交換を考えているんです。
安いFRPのパネル水槽にしてもいいのか分からなくて。
建物のある市の審査基準で、答えが変わるところです。
鈴鹿市はとくに書き方が厳しいので、先に確かめましょう。
同じ消火栓なのに、市によって違うんですか。
国の規則が材質を決めていないので、各消防本部が基準を書いています。
6つの消防本部の基準を順に見ていきましょう。
- 消防法施行規則第12条第1項第7号イ(ロ)は高架水槽に付ける機器を定めているが、水槽の材質は定めていない
- 鈴鹿市の審査基準は高架水槽の貯水槽を鋼板製かステンレス鋼製とし、FRP製にできるただし書を置いていない
- 鈴鹿市でFRP製を認めているのは動力消防ポンプ設備の水槽で、5m以上の離隔や有効水量5.2立方メートル以下などの条件が付く
- 埼玉県央広域と堺市は、不燃区画の専用室か、外壁から3m以上離して周りに可燃物のない屋外ならFRP製にできるとしている
- 大阪市・四日市市・津市も置き場所を条件にFRP製を認めており、四日市市は地盤面下に埋設する場合も挙げている
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目次
国の規則は屋内消火栓の水槽の材質を決めているのか

水槽そのものより、水を送る加圧送水装置の置き場所と付属の機器を定めた条文が中心です。
ホ 水源に連結する加圧送水装置は、点検に便利で、かつ、火災等の災害による被害を受けるおそれが少ない箇所に設けること。
七 加圧送水装置は、次のイからチまでに定めるところによること。
イ 高架水槽を用いる加圧送水装置は、次の(イ)及び(ロ)に定めるところによること。
(ロ) 高架水槽には、水位計、排水管、溢水用排水管、補給水管及びマンホールを設けること。
九 貯水槽、加圧送水装置、非常電源、配管等(以下「貯水槽等」という。)には地震による震動等に耐えるための有効な措置を講じること。
施行令は加圧送水装置を火災等の災害による被害を受けるおそれが少ない箇所に置くよう求め、施行規則は高架水槽に付ける機器と地震への備えを求めているだけです。
昭和の消防庁の質疑には、FRP製の水槽は耐熱性がほとんど無いとして、地盤面下に埋設する場合に限って認めた回答があります。
その後の扱いは、各消防本部が審査基準の中で「どこに置けばFRP製でよいか」として書き分けています。
水槽を新しくするときは、施工業者のカタログではなく、建物のある市の審査基準から読み始めます。
国の決まりに書いていないから、市ごとに違ってくるのですね。
そうです、まず鈴鹿市の高架水槽の書き方から見ていきます。
ほかの本部と同じ文なのに一か所だけ違うんです。
鈴鹿市では屋上の高架水槽をFRP製にできるのか

高架水槽を使う加圧送水装置の「機器」の項に、貯水槽の材質が書いてあります。
ア 貯水槽、水位計、送水管、溢水用排水管、減水警報装置、補給水管、マンホール、通気管、排水管その他必要な機器により構成する。
イ 貯水槽の材質は、耐火性能を有し、かつ、有効な防食処理を施した鋼板製又はステンレス鋼製とする。
このイには行政指導を示す▲が付いておらず、鈴鹿市の凡例では法令の基準として扱う項目になります。
同じ基準の3⑶イ(イ)は、建物の中間などに置く床置き水槽にも「第2の2⑵(アを除く。)」を準用しているので、床置きの水槽にも同じ材質の決まりがかかります。
後で見る埼玉県央広域の基準はこのイとほぼ同じ文ですが、その後ろに「ただし、次による場合は、FRP製にすることができる」というただし書が続きます。
鈴鹿市の基準にはこのただし書がないため、屋上の高架水槽をFRP製に替える計画は、着手前に鈴鹿市消防本部へ相談しておくのが確実です。
つまり鈴鹿市では、屋上の消火用の水槽は金属製と考えておけばいいのですね。
はい、基準の書き方からはそう読めます。
ただし、動力消防ポンプの水槽だけは別の書き方があります。
鈴鹿市でFRP製の水槽が使えるのはどんな設備のときか

屋内消火栓設備の条文を借りたうえで、ただし書でFRP製を認める作りになっています。
第2屋内消火栓設備第3⑶イを準用する。
ただし、水源を設置する場所が、不燃区画された専用の室(第2屋内消火栓設備第2イ(ア)の例による場所)又は貯水槽面から建築物の外壁までの水平距離が5m以上離れている場所(外壁が不燃材料で造られ、かつ、その外壁の開口部に防火設備が設けられている場合を除く。)で、かつ、次の全てを満たす場合については、ガラス繊維強化ポリエステル製等のもの(以下「FRP製」という。)を用いることができる。
(ア) 貯水槽の周囲に可燃物を保管しないこと。
(イ) 有効水量が5.2㎥以下の水槽であること。
(ウ) ⑿~⒁項以外の用途部分がない防火対象物であること。
条文のつながりを順にたどると、次のようになります。
- 第9 2⑶ウは、屋内消火栓設備の「第3⑶イ」(床置き水槽)を準用する
- その床置き水槽は「第2の2⑵」を準用するので、本来は鋼板製かステンレス鋼製になる
- 第9 2⑶ウのただし書が、置き場所の条件を満たすときに限ってFRP製を認める
- 置き場所の1つ目「第2イ(ア)の例による場所」は、屋内消火栓設備のポンプ室と同じく、不燃材料の柱・壁・床・天井で区画した専用の室を指す
- 置き場所の2つ目は、貯水槽から建物の外壁まで5m以上離した場所で、外壁が不燃材料で開口部に防火設備があるときは離隔を問わない
- どちらの場所でも、周囲に可燃物を置かない・有効水量5.2立方メートル以下・(12)項から(14)項以外の用途がない、の3つを全部満たす
なお鈴鹿市はこの節の冒頭で、使い方が難しく外気温などの影響を受けやすいとして、動力消防ポンプの設置を推奨していないと書いています。
FRP製の水槽を使いたいからといって、屋内消火栓設備の代わりに動力消防ポンプ設備を選ぶ理由にはなりません。
5mという数字は、屋内消火栓の話ではないのですね。
はい、あくまで動力消防ポンプ設備の水源の条件です。
屋内消火栓の水槽に当てはめないよう注意しましょう。
埼玉県央広域と堺市は屋上のFRP製の高架水槽をどう認めているのか

堺市消防局の基準も、置き場所の考え方がよく似ています。
イ 貯水槽の材質は、耐火性能を有し、かつ、有効な防食処理を施した鋼板製又はステンレス鋼製であること。●
ただし、次による場合は、ガラス繊維強化ポリエステル製等のもの(以下「FRP製」という。)にすることができる。
(ア) 前3⑴イ(ア)の例による場所に設ける場合
(イ) 次のすべてに適合する外気に面する屋上等の場所に設ける場合
a 高架水槽面から当該建築物の外壁等及び隣接する建築物の外壁までの水平距離が3m以上離れていること。ただし、外壁が不燃材料で造られ、かつ、その外壁の開口部に防火設備が設けられている場合は、この限りではない。
b 周囲に可燃物がないこと。
(ア)の「前3⑴イ(ア)の例による場所」は、ポンプを屋内に置くときの不燃区画の専用の室です。
(イ)は屋上などの外気に面する場所で、水槽から自分の建物の外壁と隣の建物の外壁まで3m以上離し、周りに可燃物を置かないことが条件です。
外壁が不燃材料で、開口部に防火設備があれば、3mより近くてもかまいません。
埼玉県央広域の●は、法令の基準に行政指導を加えた項目を示す印です。
床置き水槽も「前3の2⑵(アを除く。)」を準用しているので、同じただし書でFRP製にできます。 堺市の「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第2 屋内消火栓設備も、原則として高架水槽を鋼板かそれと同等以上のものとしたうえで、次の場合にFRP製にできるとしています。
(ア)ポンプ室と同じ不燃区画の専用の室に置く場合と、(イ)外気に面する場所で、屋外にポンプを置くときの場所の条件を満たし、周囲に可燃物等がない場合です。
屋外のポンプの条件は、延焼のおそれのある部分を避け、隣の建築物等から3m以上離すか、その部分を不燃材料と防火設備にすることです。
この項目に付いた◆②は、国の通知(昭和50年消防安第82号・昭和52年消防予第12号)を参考にした指導であることを示しています。
屋上の水槽なら、隣の建物との距離を測っておけばいいのですね。
はい、自分の建物の外壁までの距離も測っておきましょう。
外壁や窓の仕様が分かる図面もそろえておくと相談が早いです。
大阪市・四日市市・津市はFRP製の水槽をどこまで認めているのか

まず大阪市消防局の基準を引用します。
(1) 水槽等は、コンクリート又は鋼板等の不燃材料で造ること。ただし、不燃専用室若しくは不燃材料で有効に遮蔽されている場所又は屋外(特定主要構造部を耐火構造とした建築物の屋上を含む。)に設ける場合で、隣接する建築物若しくは工作物から3メートル以上の距離を有するとき又は3メートル未満の範囲の隣接する建築物等の部分が不燃材料で造られ、かつ、当該建築物等の開口部に防火戸が設けられているときは、ガラス繊維強化プラスチックで造られたものとすることができる。
(2) 腐食のおそれのあるものについては、有効な防食のための措置を講じること
大阪市の◆は市の行政指導を示す印で、屋外なら隣の建築物等から3メートル以上という数字も共通しています。
四日市市消防本部の「四日市市消防同意事務審査基準」第2章第2 屋内消火栓設備 1 水源⑸は、水槽を鉄筋コンクリートやステンレス鋼板製など耐食性と耐熱性のあるものとし、ポンプを置く場所として定めた場所なら合成樹脂製にできるとしています(この部分は行政指導を示す下線付き)。
そのうえでFRP製の水槽を使う場合として、規則第12条第1項第4号イ(ニ)による専用の室で周囲に可燃物がない場合、地盤面下に埋設した場合、屋外か耐火構造の屋上で隣の建築物等から3m以上離すか防火上有効に措置した場合の3つを挙げ、横に昭和52年消防予第12号を注記しています(この3つには下線がありません)。
津市消防本部の「津市予防事務審査検査基準」5-2 屋内消火栓設備も、水槽を鉄筋コンクリートやステンレス鋼板製などとしたうえで、不燃専用室、不燃材料で区画した屋外や耐火構造の屋上、3m以上の離隔、不燃材料の塀に面する場所などなら合成樹脂製にできるとしています。
津市は配管を満水にしておくための補助高架水槽について、ステンレス鋼板か繊維強化プラスチック製と書いており、ここでは置き場所の条件を付けていません。
鈴鹿市以外は、置き場所しだいでFRP製にできるのですね。
そうなんです、鈴鹿市だけが高架水槽の材質にただし書を置いていません。
市をまたいで設計するときは、基準を取り違えないようにしましょう。
6つの消防本部の書き方を表にまとめます。
| 消防本部 | 原則の材質 | FRP製・合成樹脂製を認める場所 | 印 |
|---|---|---|---|
| 鈴鹿市 | 鋼板製かステンレス鋼製(高架水槽・床置き水槽) | 屋内消火栓の水槽にはただし書なし。動力消防ポンプ設備の水槽だけ、不燃区画の専用室か外壁から5m以上で、可燃物なし・5.2立方メートル以下・(12)項から(14)項のみの建物 | 材質は無印(法令の基準) |
| 埼玉県央広域 | 鋼板製かステンレス鋼製 | 不燃区画の専用室、または屋上等で外壁から3m以上(不燃の外壁と防火設備なら問わない)かつ周囲に可燃物なし | ●(法令+行政指導) |
| 堺市 | 鋼板かそれと同等以上 | 不燃区画の専用室、または屋外ポンプの場所の条件を満たし周囲に可燃物等なし | ◆②(国の通知を参考にした指導) |
| 大阪市 | コンクリートか鋼板等の不燃材料 | 不燃専用室、不燃材料で遮蔽した場所、屋外で隣の建築物等から3メートル以上(不燃と防火戸なら問わない) | ◆(市の行政指導) |
| 四日市市 | 鉄筋コンクリート・ステンレス鋼板製等 | ポンプを置く場所として定めた場所。FRP製は専用の室で可燃物なし、地盤面下に埋設、屋外か耐火屋上で3m以上 | 水槽の材質は下線(行政指導) |
| 津市 | 鉄筋コンクリート・ステンレス鋼板製等 | 不燃専用室、不燃材料で区画した屋外や耐火屋上、3m以上の離隔、不燃の塀に面する場所など | 記号なし |
よくある質問
まとめ
まずは屋上の水槽の材質と、外壁までの距離を確かめてみます!
鈴鹿市なら、FRP製に替える前に消防本部へ相談しておきましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第11条第3項(e-Gov法令検索)
- 消防法施行規則 第12条第1項第7号・第9号(e-Gov法令検索)
- 鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準 第4章第2 屋内消火栓設備・第4章第9 動力消防ポンプ設備(鈴鹿市消防本部)
- 埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準 第3章第2 屋内消火栓設備(埼玉県央広域消防本部)
- 堺市消防同意・消防用設備等審査基準 第2 屋内消火栓設備(堺市消防局)
- 消防用設備等の設置に係る運用基準 第2節 屋内消火栓設備 第3 水源(大阪市消防局)
- 四日市市消防同意事務審査基準 第2章第2 屋内消火栓設備(四日市市消防本部)
- 津市予防事務審査検査基準 5-2 屋内消火栓設備(津市消防本部)
※本記事は公表されている法令および各消防本部の審査基準に基づく一般的な解説です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防本部でご確認ください。水槽の交換は消防設備士・施工業者とご相談ください。





