防火管理者を選ぶ必要があるか、避難器具が要るかは、建物の収容人員で決まります。
事務所や工場の収容人員は、その多くが従業者の数です。
ところが国の消防法施行規則は「従業者の数」と書くだけで、派遣社員や交替勤務の数え方までは決めていません。
鴻巣市を受け持つ埼玉県央広域消防本部の審査基準は、雇用形態・交替勤務・外勤者・社員食堂の扱いを5つの項目で定めています。
うちの事務所は正社員が少なくて、派遣さんとアルバイトさんが多いんです。
防火管理者が要るかどうか、誰まで数えればいいのか迷っています。
鴻巣市なら、埼玉県央広域消防本部の審査基準に数え方が書いてあります。
雇用形態を問わず、ふだんいちばん多く勤務する人数で数えます。
交替勤務や社員食堂のことまで決まっているんですか。
はい、引継ぎで重なる時間や食堂の面積の扱いまで書いてあります。
鈴鹿市・四日市市・津市・堺市とも比べながら見ていきましょう。
- 消防法施行規則第1条の3は用途ごとに従業者の数を足すと定めるだけで、派遣社員や交替勤務の数え方は書いていない
- 埼玉県央広域の審査基準は、正社員・契約社員・派遣社員・アルバイトを問わず、平常時の最大勤務者数を従業者の数とする
- 短期間かつ臨時的に雇う人は数えず、交替勤務では引継ぎで重なる時間の人数を足さない
- 階ごとの収容人員では、従業者用の食堂や会議室を3㎡で割った数の従業者がいるものとし、従業者の数を上限にする
- 鈴鹿市はほぼ同じ書き方で、四日市市は食堂をいすの数で数え、津市と堺市は食堂の扱いを共通的な項目に置いていない
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目次
国の規則は従業者の数え方を決めているのか

収容人員という言葉の意味は施行令に、数え方は施行規則に書かれています。
3 ……当該防火対象物に出入し、勤務し、又は居住する者の数(以下「収容人員」という。)……
4 収容人員の算定方法は、総務省令で定める。
令別表第一(十)項及び(十二)項から(十四)項までに掲げる防火対象物 従業者の数により算定する。
令別表第一(十五)項に掲げる防火対象物 従業者の数と、主として従業者以外の者の使用に供する部分の床面積を三平方メートルで除して得た数とを合算して算定する。
工場や倉庫は従業者の数だけで、事務所は従業者の数に来客用の部分の面積を3㎡で割った数を足して収容人員を出します。
施行令第1条の2第3項では、事務所は50人以上、飲食店は30人以上で防火管理者を選ぶ必要が出てきます。
どの用途でも従業者の数が土台になりますが、規則は誰を従業者に入れるかを書いていません。
派遣社員を入れるのか、交替勤務の重なりをどうするのかは、各消防本部の審査基準が決めています。
規則に書いていないところを、消防本部の基準が埋めているのですね。
そうです、まず埼玉県央広域の雇用形態の書き方から見ていきます。
派遣社員やアルバイトの扱いがはっきり書いてあります。
埼玉県央広域では派遣社員やアルバイトも従業者に入るのか

「2 共通的取り扱い」の⑴が、従業者の数え方です。
ア 従業者の数は、正社員、契約社員、派遣社員、アルバイト等の雇用形態を問わず平常時における最大勤務者数とすること。
ただし、短期間、かつ、臨時的に雇用される者にあっては、従業者として取り扱わないこと。
ウ 指定された執務用の机等を有する外勤者は、従業者の数に算入すること。
派遣社員もアルバイトも、ふだんの最大勤務者数に入れて数えます。
ただし書で外れるのは、繁忙期だけ短く雇うような短期間かつ臨時的な人です。
営業職のように外に出ていることが多い人でも、自分の机が決まっていれば従業者に入ります。
⑴のアからオには、行政指導を示す▲も法令と指導を示す●も付いていません。
数えるときは、シフト表で「ふだんいちばん多く勤務する日」の人数を拾っておくと確実です。
外回りの営業担当でも、机があれば数に入るのですね。
机が決まっていれば入ります。
次は交替勤務の数え方です。
交替勤務では引継ぎで重なる人数も足すのか

埼玉県央広域の審査基準は、⑴イで交替制勤務を扱っています。
イ 交替制勤務制度の場合、従業者の数は通常の勤務時間帯における数とし、勤務時間帯の異なる従業者が重複する交替時の数としないこと。
ただし、引継ぎ以後も重複して就業する勤務体制にあっては、その合計とすること。
日勤20人と夜勤10人の職場で、引継ぎのあいだだけ30人がいても、従業者の数は日勤の20人です。
ただし、引継ぎのあとも両方の班がそのまま働き続ける体制なら、合計して数えます。
鈴鹿市・四日市市・津市も同じ考え方で、堺市は「一日の中で勤務人員が最大となる時間帯」の数とし、交代時の重なりは合計しないと書いています。
堺市の基準には、引継ぎ以後も重なって働く場合のただし書はありません。
自社のシフトが「引継ぎだけ重なる」のか「重なったまま働く」のかを、勤務表で確かめておきます。
つまり引継ぎのときだけ人が増えても、その人数で数えなくていいのですね。
はい、引継ぎ以後も重なって働くかどうかが分かれ目です。
次は社員食堂や会議室の扱いを見ます。
社員食堂や会議室は階ごとの収容人員にどう入るのか

埼玉県央広域の審査基準は、階をまたいで動く従業者の扱いを⑴エとオに書いています。
1 収容人員の算定 ⑶ 政令第25条の規定については、階収容人員により適用する。
2 ⑴ エ 階収容人員を算定する場合、2以上の階で執務する者については当該階に指定された執務用の机等を有し、継続的に執務するとみなされる場合は、それぞれの階の収容人員に算入すること。
オ 階収容人員を算定する場合、従業者が使用する食堂、休憩所、会議室及びこれらに類する用に供する部分は、当該部分を3㎡で除して得た数の従業者があるものとして算定すること。
ただし、その数が従業者の数よりも大きい場合は、当該従業者の数とすること。
従業者が40人の事務所で、2階に90㎡の社員食堂があれば、2階を数えるときに食堂の部分を30人とします。
食堂が150㎡なら割った数は50人ですが、従業者の40人を超えるので40人で止めます。
2つの階に机があり、両方で継続的に働く人は、それぞれの階に数えます。
同じ基準の1⑴は法第8条の防火管理者を棟の収容人員で判断するとしているので、この階ごとの数え方が効くのは避難器具のような階単位の設備です。
食堂のある階だけ、収容人員が増えることがあるのですね。
そうです、避難器具の階ごとの判断に効いてきます。
ほかの市では食堂の数え方が少し違います。
鈴鹿市・四日市市・津市・堺市の数え方とどこが違うのか

4本部とも、この項目には行政指導を示す記号や下線が付いていません。
| 項目 | 埼玉県央広域(鴻巣市) | 鈴鹿市 | 四日市市 | 津市 | 堺市 |
|---|---|---|---|---|---|
| 雇用形態 | 正社員・契約社員・派遣社員・アルバイト等を問わず最大勤務者数 | 同じ | 正社員又は臨時社員等の別を問わず最大勤務者数 | 四日市市と同じ | 四日市市と同じ |
| 短期・臨時の雇用 | 数えない | 数えない | 記載なし | 記載なし | 数えない(中元・歳暮時のアルバイト等) |
| 交替時の重なり | 足さない(引継ぎ以後も重なって働くなら合計) | 同じ | 足さない(交代後も引き続き勤務するなら加算) | 四日市市と同じ | 足さない(一日の最大の時間帯で数える) |
| 外勤者 | 机があれば数える | 机があれば数える。外商など勤務時間の過半をその建物にあてる人も含む | 机があれば数える | 記載なし | 机があれば数える |
| 2以上の階で働く人 | 机があり継続的ならそれぞれの階に数える | 同じ | 継続的に執務するとみなされる階で数える | 記載なし | 記載なし |
| 従業者用の食堂・会議室 | 3㎡で割る(従業者の数が上限) | 利用できる者の数(階の合計は全従業者数が上限) | 会議室は3㎡で割り、食堂はいすの数(従業員の数が上限) | 記載なし | 記載なし |
埼玉県央広域は面積を3㎡で割り、鈴鹿市は利用できる者の数とし、四日市市は食堂をいすの数で数えます。
どれも従業者の数を上限にしている点は同じで、四日市市は棟の収容人員では通常勤務する階で数えるとも書いています。
鈴鹿市は、棟の収容人員を出すときに同じ従業者を重ねて数えないことも、冒頭に書いています。
大阪市と東大阪市は、確認した審査基準に収容人員の共通的な扱いの章が見当たらなかったため、表に入れていません。
人数が選任の境目に近いときは、シフト表を持って管轄の消防本部に相談するのが確実です。
同じ食堂でも、市によって数える人数が変わることがあるのですね。
はい、面積で割るかいすの数で数えるかで変わります。
建物のある市の基準で数え直しておきましょう。
よくある質問
まとめ
まずはシフト表で最大勤務者数を数え直してみます!
人数が境目に近いときは、消防本部への確認も忘れずに。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第1条の2(e-Gov法令検索)
- 消防法施行規則 第1条の3(e-Gov法令検索)
- 埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準 第2章 第2 収容人員の算定(埼玉県央広域消防本部)
- 鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準 第2章 第2 収容人員の算定(鈴鹿市消防本部)
- 四日市市消防同意事務審査基準 第1章 第1 収容人員算定の共通事項(四日市市消防本部)
- 津市予防事務審査検査基準 1-2 収容人員の算定(津市消防本部)
- 堺市消防同意・消防用設備等審査基準 第7 収容人員の算定(堺市消防局)
※本記事は公表されている法令および各消防本部の審査基準に基づく一般的な解説です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防本部でご確認ください。個別の判断は管轄の消防署にご相談ください。





