建物の新築や改修の工事では、敷地の中や近くにプレハブの現場事務所を置くことがよくあります。
堺市では、この現場事務所を置くときに火災予防条例にもとづく消防署長への届出がいります。
期限は現場事務所等の使用開始の日の3日前までで、施行規則に様式も決められています。
さらに堺市の解説は、現場事務所も消防法の防火対象物の1つとして扱い、使用開始の届出をこの届出で代えられるとしています。
この記事では、国の基準と堺市の運用を分けて読み、届出のつながりを順にたどって、大阪市・東大阪市と比べます。
堺市で来月から新築工事が始まり、敷地の角にプレハブの現場事務所を置く予定です。
現場事務所にも消防への届出がいるのですか?
はい、堺市火災予防条例は工事を施工するための現場事務所等の設置を届出の対象にしています。
消防署長に、使用開始の日の3日前までに出します。
建物の使用開始届とは別に、両方とも出さないといけないのですか?
堺市の解説は、現場事務所の届出で使用開始の届出を代えることができるとしています。
順にたどっていきましょう。
- 堺市火災予防条例第86条第6号は、工事を施工するための現場事務所等の設置を、あらかじめ消防署長に届け出る行為に挙げています
- 期限は施行規則第8条第6項で現場事務所等の使用開始の日の3日前まで、様式は第14号です
- 堺市の解説は、現場事務所を消防法施行令別表第1(15)項の防火対象物とし、条例第84条の使用開始の届出(7日前まで)は現場事務所の届出で代えることができるとしています
- 届出義務者は行為者で、請負契約があるときは一般に請負人が行為者になると解説されています
- 大阪市(条例第58条第5号)と東大阪市(条例第67条第1項第5号)も現場事務所等の設置を届出の対象にしていて、期限は行為を行う日の3日前までです。道路工事は、堺市が前日まで、大阪市と東大阪市は3日前までです
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目次
国の基準では工事の現場事務所はどう扱われるのか

消防法施行令の別表第1は、防火対象物を用途ごとに(1)項から(20)項までに分けています。その(15)項は、前各項に該当しない事業場です。
国の基準そのものには「現場事務所」という言葉は出てきません。堺市の解説は、工事を施工するための現場事務所を(15)項に該当するものとして扱っています。
(15)項になると、消防用設備等の基準が規模に応じてかかります。たとえば消火器具は、次のとおり延べ面積300平方メートル以上の(15)項に必要です。
そのため、同じ大阪府内でも市によって書き方や期限が少しずつ違います。
堺市の扱いは、次の順にたどると読めます。
- 消防法施行令 別表第1(15)項が、前各項に該当しない事業場を防火対象物にしている
- 堺市の解説(第84条の6)が、工事を施工するための現場事務所を(15)項に該当するとしている
- 堺市火災予防条例第84条第1項が、(15)項を含む防火対象物の使用開始の日の7日前までの届出を求めている
- 同じ解説が、その届出を条例第86条第6号の現場事務所等の届出書で代えることができるとしている
- 堺市火災予防条例施行規則第8条第6項が、現場事務所等の届出の期限を使用開始の日の3日前までとしている
国の法令だけを見ていても、現場事務所の届出の期限は分からないのですね。
はい、届出の中身は市の火災予防条例と施行規則に書かれています。
工事をする市の条例を確かめましょう。
堺市では現場事務所の届出をいつまでに誰が出すのか

その第6号が現場事務所等の設置です。
(6) 工事を施工するための現場事務所等の設置
誰が出すかについて、堺市の【解説及び運用】は第86条全体について次のように説明しています。
届出が求められる理由も、解説の7に書かれています。現場事務所は仮設で出入りする業者が多く、資材や危険物に当たる物が置かれることもあり、火災の発生と延焼拡大の危険性が比較的高いという説明です。
| 第86条の号 | 行為 | 期限(施行規則第8条) |
|---|---|---|
| 第1号 | 火災とまぎらわしい煙又は火炎を発するおそれのある行為 | 行為を行う日の前日まで |
| 第2号 | 煙火の打上げ又は仕掛け | 行為を行う日の前日まで |
| 第3号 | 劇場等以外での演劇・映画その他の催物の開催 | 催物を開催する日の前日まで |
| 第4号 | 水道の断水又は減水 | 行為を行う日の前日まで |
| 第5号 | 消防隊の通行その他消火活動に支障を及ぼすおそれのある道路工事 | 道路工事を行う日の前日まで |
| 第6号 | 工事を施工するための現場事務所等の設置 | 使用開始の日の3日前まで |
| 第7号 | 祭礼・縁日などの催しに際して行う露店等の開設(対象火気器具等を使う場合) | 露店等を開設する日の3日前まで |
元請の私たちが届け出ればよいということですね。
請負契約があれば、一般に請負人が行為者と解説されています。
誰が出すかは工事の契約関係で確かめてください。
使用開始の届出と現場事務所の届出はどう関係するのか

ここで、堺市の解説が2つの届出をつないでいます。
ただし、この解説が代えられるとしているのは使用開始の届出です。
第84条第2項は、消防用設備等を設置しなければならない防火対象物に使用開始前の消防長又は消防署長の検査を求めています。解説6は、この検査を現場事務所の届出で代えるとは書いていません。
延べ面積300平方メートル以上の大きな現場事務所のように消防用設備等がいる規模なら、検査の扱いもあわせて所轄の消防署に確かめておくと安心です。
使用開始届の全般は、使用開始届は誰が出すのかの記事で解説しています。
| 届出 | 堺市の根拠 | 期限 | 現場事務所での扱い |
|---|---|---|---|
| 使用開始の届出 | 条例第84条第1項 | 使用開始の日の7日前まで | 解説6で、現場事務所等の届出で代えることができる |
| 現場事務所等の届出 | 条例第86条第6号・施行規則第8条第6項 | 使用開始の日の3日前まで | 現場事務所を置くときに出す |
| 使用開始前の検査 | 条例第84条第2項 | 使用開始前 | 解説6に代替の記載なし(消防用設備等がいる規模なら所轄署で確認) |
事務所の中に消火器を置くかどうかも、広さで決まるのですね。
(15)項として、延べ面積300平方メートル以上なら消火器具が必要です。
2階建てのプレハブは延べ面積で数えます。
大阪市と東大阪市は現場事務所の届出をどう定めているのか

大阪市は第58条第5号です。
(5) 工事を施工するための現場事務所等の設置
(5) 工事を施工するための現場事務所等の設置
2 所轄消防署長は、前項各号に掲げるそれぞれの行為について、届出の対象となる期間及び区域を指定することができる。
東大阪市は、所轄消防署長が届出の対象となる期間と区域を指定できる(第67条第2項)点が、ほかの2市にない定めです。
使用開始の届出は、大阪市が条例第56条と施行規則第5条で、東大阪市が条例第65条で、どちらも使用開始の日の7日前までとしています。
今回確認した大阪市・東大阪市の条例と施行規則の本文には、現場事務所の届出で使用開始の届出を代えるという定めは見当たりませんでした。両市で工事をするときは、所轄の消防署に扱いを確かめてください。
| 項目 | 堺市 | 大阪市 | 東大阪市 |
|---|---|---|---|
| 現場事務所の届出の根拠 | 条例第86条第6号 | 条例第58条第5号 | 条例第67条第1項第5号 |
| 届出先 | 消防署長 | 消防署長 | 所轄消防署長 |
| 期限 | 使用開始の日の3日前まで(施行規則第8条第6項・様式第14号) | 行為を行う日の3日前まで(施行規則第7条) | 行為を行う日の3日前まで(施行規則第8条) |
| 使用開始の届出 | 使用開始の日の7日前まで(第84条・(17)(19)(20)項を除く) | 使用開始の日の7日前まで(第56条・施行規則第5条) | 使用開始の日の7日前まで(第65条・(19)(20)項を除く) |
| 使用開始の届出との関係 | 現場事務所の届出で代えることができる(解説6) | 今回確認した条例・施行規則に定めなし | 今回確認した条例・施行規則に定めなし |
| その他 | 届出義務者は一般に請負人(解説1) | ― | 署長が対象の期間・区域を指定できる(第67条第2項) |
大阪市や東大阪市の現場でも、3日前までに出せばよいのですね。
期限は3市とも3日前までです。
ただ、数える起点の書き方と使用開始届の扱いは市ごとに確かめましょう。
工事のときに現場事務所のほかに出す届出はあるのか

とくに道路工事と水道の断水・減水は、堺市と大阪市・東大阪市で書き方が違います。
大阪市と東大阪市は、道路工事を独立した号にせず、「露店等の開設、路上の工事又は荷物の搬出等で消防隊の活動を困難とするおそれのある行為」としてまとめています。
水道の断水・減水は、堺市は第86条第4号で届出の対象にしています(前日まで)。大阪市の第58条と東大阪市の第67条の各号には、断水・減水の号はありません。
火災とまぎらわしい煙や断水の届出の考え方は、火災とまぎらわしい煙の届出の記事で解説しています。
| 行為 | 堺市 | 大阪市 | 東大阪市 |
|---|---|---|---|
| 道路工事 | 第86条第5号・前日まで | 第58条第4号(路上の工事等)・3日前まで | 第67条第1項第4号(路上の工事等)・3日前まで |
| 水道の断水・減水 | 第86条第4号・前日まで | 第58条に号なし | 第67条に号なし |
| 現場事務所等の設置 | 第86条第6号・使用開始の日の3日前まで | 第58条第5号・3日前まで | 第67条第1項第5号・3日前まで |
- 現場事務所の使用開始の日を決め、その3日前までに様式第14号で消防署長に届け出る
- 工事の契約関係から、届出をする行為者(一般に請負人)を決める
- 現場事務所の延べ面積を数え、300平方メートル以上なら消火器具など(15)項の消防用設備等を確かめる
- 消防用設備等がいる規模なら、使用開始前の検査の扱いを所轄の消防署に確かめる
- 片側通行や埋設工事があれば、道路工事を行う日の前日までに第86条第5号の届出をする
大阪市の現場と同じ感覚で道路工事の届出を出すと、堺市では前日でも間に合うのですね。
逆に、堺市の感覚で大阪市や東大阪市に出すと3日前に間に合わないおそれがあります。
よくある質問で整理しておきましょう。
よくある質問
まとめ
まず現場事務所の使用開始の日を決めて、届出の日程を工程表に入れます。
道路工事の日程もあわせて確認します!
現場事務所の届出は、工事の段取りの最初に出す書類の1つです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市火災予防条例 第84条・第86条、堺市火災予防条例施行規則 第8条(堺市消防局「消防同意・消防用設備等審査基準」第7章 雑則 所収) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 堺市消防局「消防同意・消防用設備等審査基準」第7章 雑則 第84条【解説及び運用】6、第86条【解説及び運用】1・6・7(同上)
- 大阪市火災予防条例 第56条・第58条、大阪市火災予防条例施行規則 第5条・第7条(大阪市例規データベース)
- 東大阪市火災予防条例 第65条・第67条、東大阪市火災予防条例施行規則 第6条・第8条(東大阪市例規集)
- 大阪市消防局 消防用設備等の設置に係る運用基準 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市消防局 消防用設備等の運用基準(公開資料) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法施行令 第10条第1項第3号・別表第1(15)項
※本記事は公表されている法令および堺市・大阪市・東大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々の工事の扱いは、所轄の消防署にご確認ください。





