避難器具は、建物の構造やバルコニーの条件がそろえば、その階に設置しなくてよい場合があります。
国の消防法施行規則第26条第5項は「バルコニー等が避難上有効に設けられている」ことを条件にしていますが、手すりの高さや扉の大きさまでは書いていません。
鈴鹿市の審査基準は、バルコニー等の造りと、屋内からバルコニー等へ出る扉の寸法を数字で決めています。
鈴鹿市の基準を軸に、埼玉県央広域・四日市市・津市・大阪市・東大阪市・堺市の書き方を比べます。
鈴鹿市の事務所ビルで、各階のバルコニーを理由に避難器具を置かない計画になっています。
バルコニーなら何でもよいのですか。
国の条文は「避難上有効に」としか書いていません。
鈴鹿市の審査基準には手すりの高さまで数字があります。
バルコニーへ出る扉の大きさにも決まりがあるのですか。
鈴鹿市は扉を幅75cm以上と決めています。
7つの本部の書き方を順に比べます。
- 消防法施行規則第26条第5項第1号ヘと第2号ロは、バルコニー等が避難上有効に設けられていることを求めるが、手すりの高さや扉の寸法は書いていない
- 鈴鹿市は、バルコニーを耐火構造で高さ110cm以上の手すり壁等があるものとし、これに準ずるものを幅80cm以上(傾斜のない場合は50cm以上)の庇・床・突出部と定めている
- 屋内からバルコニー等に通ずる扉は幅75cm以上・高さ180cm以上、下端の床面からの高さは15cm以下(避難上支障がない場合を除く)
- 埼玉県央広域もほぼ同じ文で、昭和43年の消防予第8号などの通知を出典として示している
- 四日市市・津市・大阪市・東大阪市の基準には第26条第5項のバルコニー等の寸法は見当たらず、堺市は福祉施設等の指針でバルコニーの幅員を110cm以上としている
▼

目次
避難器具を置かなくてよい階に国はバルコニーの何を求めているのか

そのうち第1号と第2号が、バルコニー等を条件にしています。
令第二十五条第一項各号に掲げる防火対象物の階が次の各号のいずれかに該当するときには、当該階に避難器具を設置しないことができる。
一 (略)
ヘ バルコニーその他これに準ずるもの(以下「バルコニー等」という。)が避難上有効に設けられているか、又は二以上の直通階段が相互に隔つた位置に設けられ、かつ、当該階のあらゆる部分から二以上の異なつた経路によりこれらの直通階段のうちの二以上のものに到達しうるよう設けられていること。
二 次のイ及びロに該当すること。
(略)
ロ 居室の外気に面する部分にバルコニー等(令別表第一(五)項及び(六)項に掲げる防火対象物にあつては、バルコニーに限る。)が避難上有効に設けられており、かつ、当該バルコニー等から地上に通ずる階段その他の避難のための設備(略)若しくは器具が設けられ、又は他の建築物に通ずる設備若しくは器具が設けられていること。
第1号ヘは、バルコニー等が避難上有効に設けられているか、二方向避難ができることを求めています。
第2号ロは、居室の外気に面する部分のバルコニー等と、地上へ通ずる階段や避難器具などをセットで求め、(5)項と(6)項については「バルコニーに限る」としています。
どちらの号にも、手すりの高さ・バルコニーの幅・扉の大きさは書かれていません。
一方で第3号ロ(ロ)には、直通階段に面する防火戸のくぐり戸について、幅75cm以上・高さ1.8m以上・下端15cm以下という数字があります。
明日やることは、避難器具を置いていない階が第5項のどの号を使っているかを、設置届の図面で確かめることです。
バルコニーがあるだけでは足りず、避難上有効かどうかが問われるのですね。
そうです。
その中身を数字にしているのが各本部の審査基準です。
鈴鹿市はバルコニーその他これに準ずるものをどう決めているのか

バルコニーと「これに準ずるもの」とで条件が違います。
ア 省令第26条第5項第1号ヘに規定する「バルコニーその他これに準ずるもの」とは、次のものをいう。
(ア) 「バルコニー」(開放廊下を含む。)は、耐火構造とし、その周囲に高さが110㎝以上の手すり壁、柵又は金網を堅個に固定して設けるもの
(イ) 「その他これに準ずるもの」は、次のa又はbに掲げる場合において、当該各号に定める構造を有する庇、床又は構造体の突出部をいう。
a 傾斜のある場合
避難時の予想される荷重に十分耐え得るものであり、その上面の傾斜(内側に傾斜がある場合を除く。)が10分の1以下で、幅(幅は外壁、柱等の外面から測るものとする。)を80㎝以上とし、その周囲には高さが110㎝以上の手すり壁、柵若しくは金網を設けるか又は外壁、柱等に高さが90㎝前後の手すり棒を設けるもの
b 傾斜のない場合
避難時の予想される荷重に十分耐え得るものであり、その幅は50㎝以上のもの。この場合において、その幅が80㎝未満の場合は、前aの手すり壁、柵、若しくは金網又は手すり棒を設けるものとする。
イ 省令第26条第5項第2号ロに規定する「バルコニー等」とは、直接外気に開放された部分を有する煙が充満しない構造のもので一定の面積(おおむね2㎡以上)を有するものをいう。(略)
バルコニー(開放廊下を含む)は耐火構造とし、周囲に高さ110cm以上の手すり壁・柵・金網を堅固に固定したものとしています。
「これに準ずるもの」は庇・床・構造体の突出部で、傾斜があれば傾斜10分の1以下・幅80cm以上とし、110cm以上の手すり壁等か高さ90cm前後の手すり棒を付けたものです。
傾斜がなければ幅50cm以上でよく、幅が80cm未満なら同じ手すり等を付けるとしています。
第2号ロのバルコニー等は、直接外気に開放された煙が充満しない構造で、おおむね2㎡以上のものとし、建築基準法施行令第112条の防火区画をした避難用の専用スペースも当てはまれば含むとしています。
これらの項目には記号が付いておらず、鈴鹿市の凡例では記号の無い項目を法令基準として扱っています(画像で確かめました)。
明日やることは、バルコニーの手すりの高さと、庇や突出部の幅を外壁の外面から測ることです。
庇でも、幅と手すりがそろえばバルコニーと同じように扱われることがあるのですね。
第1号ヘではそう定めています。
ただし(5)項と(6)項の第2号はバルコニーに限るので、庇では足りません。
バルコニーへ出る扉は幅75cm高さ180cmでなければならないのか

避難器具の節にも、同じ数字の決まりがもう1つあります。
イ 建築物の屋内から省令第26条第5項第1号ヘ及び第2号ロに規定するバルコニー等に通ずる扉は、次の構造を有するものとしなければならない。ただし、避難上支障がない場合はこの限りではない。
(ア) 扉の大きさは、幅75㎝以上、かつ、高さ180㎝以上とすること
(イ) 扉の下端の床面からの高さは、15㎝以下とすること。
同 第4章 第15 避難器具 5⑴エ
エ 屋内からバルコニー等に設ける避難器具に至る扉は、幅0.75m以上、高さ1.8m以上、下端の床面からの高さは0.15m以下とする。▲(略)ただし、避難上支障がない場合は、この限りでない。
1⑵イは、第1号ヘと第2号ロのバルコニー等へ通ずる扉を、幅75cm以上・高さ180cm以上・下端の床面からの高さ15cm以下とし、避難上支障がない場合はこの限りでないとしています(記号なし)。
第4章 第15の5⑴エは、避難器具を設けたバルコニー等へ至る扉を同じ大きさとし、こちらには▲(鈴鹿市の行政指導基準の印)が付いています。
避難器具を置かない階のバルコニーへ出る扉は第3章、避難器具を置いたバルコニーへ出る扉は第4章と、同じ数字が2か所に書かれていることになります。
幅75cm・高さ1.8m・下端15cmという組み合わせは、国の第26条第5項第3号ロ(ロ)が直通階段に面する防火戸に求める数字と同じですが、鈴鹿市の基準は数字の出どころを書いていません。
明日やることは、バルコニーへ出る扉の幅と高さ、敷居の段差を測ることです。 鈴鹿市の基準をたどる順番は次のとおりです。
- 避難器具を置かない階が、規則第26条第5項の第1号・第2号・第3号のどれを使っているかを確かめる
- 第1号ヘか第2号ロなら、第3章 第12 4⑵アで、バルコニーか「これに準ずるもの」かを分ける
- バルコニーは耐火構造と110cm以上の手すり壁等、準ずるものは傾斜と幅(80cm・50cm)と手すりを確かめる
- 第2号ロなら、4⑵イのおおむね2㎡以上と外気への開放を確かめる((5)項と(6)項はバルコニーに限る)
- 1⑵イで、屋内からバルコニー等へ通ずる扉の幅75cm・高さ180cm・下端15cmを確かめる
- 避難上支障がないとして寸法を外すなら、計画の段階で消防本部と協議する
避難器具を置く階でも置かない階でも、扉の数字は同じなのですね。
数字は同じでも記号の有無が違います。
どちらの節の扉かを図面に書いておきましょう。
仕切りがあるバルコニーでも避難上有効といえるのはどんな場合か

なお書きには、仕切りや障害物がある場合の扱いがあります。
ウ 省令第26条第5項第1号ヘに規定する「バルコニーその他これに準ずるものが避難上有効に設けられている」とは、次の(ア)から(ウ)までに掲げる場合をいう。
なお、バルコニー等に仕切りを設け、又は障害物が置かれている場合で、当該仕切り壁等を容易に破壊し又は除去することができるときは、避難上有効なバルコニー等とみなす。
(ア) 建築物の周囲(内側を含む。)にバルコニー等を設ける場合(略)
(イ) 建築物の居室の外気に面する部分及びその他の部分にバルコニー等を設け、かつ、当該バルコニー等により避難階段等のいずれかの2以上に移行できる場合(略)
(ウ) 建築物の居室間を相互に連絡できるようバルコニー等を設け、かつ、当該バルコニー等により避難階段等のいずれかの2以上に移行できる場合(略)この場合において、居室間の隔壁は、不燃材料で造る場合に限る。
4⑵ウは、(ア)建物の周囲にバルコニー等がある場合、(イ)居室の外気に面する部分などにあって避難階段等の2以上へ移れる場合、(ウ)居室どうしをつなぎ避難階段等の2以上へ移れる場合の3つを挙げています。
(ウ)では、居室間の隔壁を不燃材料で造る場合に限るとしています。
なお書きは、仕切りや障害物を容易に破壊・除去できるときは、避難上有効なバルコニー等とみなすとしています。
避難器具を設けたバルコニーの隔板については、第4章 第15の5⑴オが、おおむね幅0.6m以上・高さ0.8m以上・下端0.15m以下の大きさと、避難経路として使う旨などの表示を▲で求めています。
明日やることは、バルコニーの仕切り板が破れる造りか、その前に動かしにくい物が置かれていないかを見て回ることです。
仕切り板の前に大きな物置を置いている部屋があると、気になりますね。
基準は容易に除去できるときとしています。
すぐに動かせない物は置かないよう、入居者にも伝えておきましょう。
埼玉県央広域や大阪府内の市の基準は鈴鹿市とどう違うのか

ほかの5本部は、そもそも書いている場所が違います。
⑵ 避難上有効なバルコニー等(昭和43年1月8日消防予第8号)
省令第26条第5項第1号ヘ及び第2号ロに規定する「バルコニー等」は、次によること。
(略)
エ 屋内から省令第26条第5項第1号ヘに規定するバルコニー等に通ずる扉は、幅75㎝以上、高さ180㎝以上、下端の床面からの高さは15㎝以下とすること。
ただし、避難上支障がない場合はこの限りではない。
埼玉県央広域(鴻巣市・桶川市・北本市)は⑵で、手すり110cm・幅80cm・50cm・手すり棒90cm前後を鈴鹿市と同じ数字で定め、見出しに昭和43年1月8日の消防予第8号を示しています。
おおむね2㎡のバルコニー等には、昭和48年10月23日の消防予第140号・消防安第42号を出典として示しています。
扉は、第1号ヘ用を⑵エ、第2号ロ用を⑷イに分けて同じ75cm・180cm・15cmとしていて、鈴鹿市はこれを1⑵イの1か所にまとめています(どちらも記号なし。画像で確かめました)。
四日市市・津市・大阪市・東大阪市の基準には、第26条第5項のバルコニー等の寸法の定めは見当たりませんでした。
堺市は「社会福祉施設及び病院等に係る指導指針」で、第26条第5項の各号に定めるほか、バルコニーの幅員110cm以上などの措置がそろえば令第32条を使って避難器具を置かないことができるとしています。
明日やることは、建物のある本部の基準で、バルコニー等と扉の決まりがどの章にあるかを確かめることです。
| 消防本部 | 第26条第5項のバルコニー等の造り | バルコニー等へ通ずる扉 | 避難器具を置いたバルコニーの扉と仕切り |
|---|---|---|---|
| 鈴鹿市 | 第3章 第12 4⑵:バルコニーは耐火構造+手すり壁等110cm以上、準ずるものは幅80cm以上(傾斜なしは50cm以上)、第2号ロはおおむね2㎡以上(記号なし) | 1⑵イ:幅75cm以上・高さ180cm以上・下端15cm以下(第1号ヘと第2号ロに共通・記号なし) | 第4章 第15 5⑴エ・オ:扉は同じ大きさ、隔板はおおむね幅0.6m・高さ0.8m以上(▲) |
| 埼玉県央広域(鴻巣市など) | 第3章 第12 ⑵ア・イ:鈴鹿市と同じ数字(消防予第8号・消防予第140号を出典に表示・記号なし) | ⑵エ(第1号ヘ)・⑷イ(第2号ロ):同じ大きさ(記号なし) | 第4章 第15 5⑴エ・オ:扉は同じ大きさ、隔板はおおむね幅60cm・高さ80cm以上(▲) |
| 四日市市 | 見当たらない | 見当たらない | 見当たらない |
| 津市 | 見当たらない | 見当たらない | 見当たらない |
| 大阪市 | 見当たらない | 見当たらない | 隔板等の大きさの定めは見当たらない |
| 東大阪市 | 見当たらない | 見当たらない | 2⑶:隔板等はおおむね幅60cm・高さ80cm以上・下端15cm以下で、避難経路である旨などを表示(●=東大阪市の行政指導基準) |
| 堺市 | 福祉施設等の指導指針:バルコニーの幅員110cm以上など(令第32条を使う条件) | 見当たらない | 第17 Ⅱ1(3)オ:共同住宅等のバルコニーの幅はおおむね60cm以上(◆)、仕切板はおおむね幅60cm・高さ80cm以上で容易に破壊できるもの(★) |
埼玉の建物でも、鴻巣市なら鈴鹿市と同じ数字で考えてよさそうですね。
県央広域の管内なら同じ数字です。
ただ行田市と羽生市は審査基準を公開していないので、所轄の消防本部に聞きましょう。
よくある質問
まとめ
まずは各階のバルコニーの手すりの高さと扉の幅を測ってみます!
測った数字を図面に書き込んでおくと、消防本部との協議も進めやすくなります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則 第26条第5項(e-Gov法令検索)
- 鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準 第3章 第12 避難器具の設置個数の減免の取り扱い 1・4、第4章 第15 避難器具 5(鈴鹿市消防本部)
- 埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準 第3章 第12 避難器具の設置個数の減免の取り扱い、第4章 第15 避難器具 5(埼玉県央広域消防本部)
- 四日市市消防同意事務審査基準 第2章 第15 避難器具(四日市市消防本部)
- 津市予防事務審査検査基準 5-16 避難器具(津市消防本部)
- 消防用設備等の設置に係る運用基準 第3章 第1節 避難器具(大阪市消防局)
- 避難器具の設置に係る運用基準 2 共通事項(東大阪市消防局)
- 堺市消防同意・消防用設備等審査基準 第17 避難器具・第2 社会福祉施設及び病院等に係る指導指針(堺市消防局)
※本記事は各消防本部が公表している審査基準・運用基準と、消防法施行規則に基づく一般的な解説です。「見当たらない」としたものは、各本部の避難器具の基準を検索した範囲の結果で、別の資料に定めがある可能性はあります。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





