ビルの地下や屋上には、停電のときにスプリンクラーのポンプなどへ電気を送る自家発電設備が置かれることがあります。
発電機は運転すると熱を出すので、発電機室には換気が欠かせません。一方で、換気ダクトが防火区画を貫くところには、火災のときに閉じる防火ダンパーを付けるのが一般的です。
ダンパーが閉じれば火や煙の広がりは防げますが、発電機室の換気も止まります。堺市消防局の審査基準は、この点について防火ダンパーを省略できる条件を書いています。
この記事では、堺市の「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第3章 第1節 第3 非常電源の3(3)と、第2章 第1節 第9 防火区画の5(2)を国の基準と分けて読み、大阪市・東大阪市の基準とも比べます。
堺市のビルで、地下の発電機室の改修を考えています。
換気ダクトに防火ダンパーが付いています。
発電機室の換気は、停電のときにも止めたくないところです。
堺市の審査基準には、ダンパーを省略できる条件があります。
ダンパーは外してもよいのですか。
堺市の基準では4つの条件に合えば省略できるとされています。
どの規定とどうつながるかを順に見ていきましょう。
- 国の消防法施行規則第12条第1項第4号ロは、自家発電設備に非常電源専用受電設備の規定(イ)の例を当てはめており、キュービクル式でない発電機は不燃材料で区画し窓と出入口に防火戸を設けた専用の室に置くのが原則です
- 堺市の審査基準 第3 3(3)アは、発電機の設置場所を受電設備の2(3)の例によるとし、その例図の換気口には「FD付」と描かれています
- 同じアのただし書は、専用のダクト・1.6mm以上の鋼板・火災時に脱落しない固定・排気口等が延焼のおそれのある部分以外の4つに合えば、防火ダンパーを省略できるとしています
- 3(3)イ・ウと第9 5(2)は、換気を直接屋外に面する換気口か専用の機械換気設備で行い、その設備に発電機の電源を供給できるようにし、換気風道を専用として耐火被覆等をするよう求めています
- 大阪市は非常電源を付置した換気装置を求めていますが、ダンパーの省略条件や換気風道の被覆を書いた項目は見当たりません。東大阪市の公開資料には非常電源の基準がありません
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目次
国の基準は発電機室に何を求めているのか

ただし、国の規則はその室の換気ダクトや防火ダンパーの扱いまでは書いていません。発電機まわりの保有距離は堺市の発電機のまわりの記事、国の設置場所の考え方は自家発電設備の置き場所の記事で解説しています。
防火戸のある専用の室に置くのが、国の基準なのですね。
はい、受電設備の(ニ)を借りた形です。
換気ダクトの扱いは、国の規則には書かれていません。
堺市の審査基準はどの規定を借りているのか

ア 前2.(3)の例によること。
ア 高圧又は特別高圧で受電する非常電源専用受電設備
消防庁長官が定める基準に適合するキュービクル式非常電源専用受電設備以外の非常電源専用受電設備が設置できる場所は、次のいずれかによること。
(ア) 不燃専用室に設ける場合(第3-11図)
換気口(FD付)
出入口(防火戸)
不燃専用室の意味は、同じ第3の用語の意義にあります。
- 消防法施行規則第12条第1項第4号ロで、自家発電設備にイ((ホ)(ト)を除く)の例がかかり、(ニ)の不燃材料で区画した専用の室が原則になる
- 堺市の第3 3の柱書で、規則第12条第1項第4号ロの規定によるほか、(1)から(4)などの項目を加える
- 3(3)アの本文で、設置場所は受電設備の2(3)の例による
- 2(3)ア(ア)の第3-11図で、不燃専用室の換気口は「FD付」と示されている
- 3(3)アのただし書で、4つの条件に合えば防火ダンパーを省略できる
- 3(3)イ・ウで、換気の取り方と機械換気設備の電源を決める
受電設備の項目を借りて、そのうえでダンパーの省略を書いているのですね。
はい、借りた先の図にFD付の換気口があります。
だから省略の条件が書かれていると読めます。
防火ダンパーを省略できる4つの条件は何か

(ア) 専用のダクトであること。
(イ) 材質は1.6mm以上の鋼板であること。
(ウ) 火災時に脱落しないよう、堅固に固定されていること。
(エ) 排気口等は、延焼のおそれのある部分以外の位置であること。
- (ア) 発電機室の換気に専用のダクトを使っているか(ほかの部屋の換気や空調と共用していないか)
- (イ) ダクトの材質が1.6mm以上の鋼板か
- (ウ) ダクトが火災のときに脱落しないよう、堅固に固定されているか
- (エ) 排気口などが延焼のおそれのある部分以外の位置にあるか
4つの条件は、ダクトを専用にして丈夫な鋼板で造り、落ちないように固定し、排気口を延焼のおそれのある部分から外すことで、ダンパーがなくても火や煙の通り道になりにくくするものと読めます。ただし、審査基準にこの理由そのものは書かれていません。
「延焼のおそれのある部分」は建築基準法の用語で、隣地境界線や道路中心線などから一定の距離にある外壁などの部分を指します。排気口の位置は、建物の配置図で確かめることになります。 なお、ただし書が省略を認めているのは防火ダンパーです。不燃専用室の区画そのものや、窓・出入口の防火戸を外す項目ではありません。
ダクトを専用にして鋼板で造れば、ダンパーなしでもよいのですね。
(ア)から(エ)の4つすべてに合うことが前提です。
排気口の位置も図面で確かめましょう。
堺市では発電機室の換気をどう取ればよいのか

ウ 前イの機械換気設備には、当該自家発電設備の電源が供給できるものであること。
ウは、イの機械換気設備にその自家発電設備の電源を供給できるようにする項目です。停電で常用の電気が止まっても、発電機が自分の部屋の換気ファンを回せるようにしておく、ということです。 換気ダクトの扱いは、第2章 第1節 第9 防火区画の「5 風道及び防火ダンパー」にもあります。
なお、当該換気風道が建基政令第112条等に規定する防火区画を貫通する場合、当該防火区画内を通過する部分の風道は、耐火構造で造る等当該区画貫通部分に防火ダンパーを設けない構造とすること。
なお書きは、風道が防火区画を貫通する場合、その区画内を通る部分の風道を耐火構造で造る等して、貫通部分に防火ダンパーを設けない構造とするよう求めています。(2)にも◆や★の印はありません。
国の建築基準法施行令は、風道が防火区画を貫通する部分に、火災のときに自動で閉じる防火設備を設けるよう定めています。
一 火災により煙が発生した場合又は火災により温度が急激に上昇した場合に自動的に閉鎖するものであること。
図面では、次の順に確かめるとよいでしょう。
- 換気風道が発電機室の専用になっているか
- 発電機室の外を通る部分に、概ね30分間以上の耐火性能を有するものの被覆等があるか(区画された機械室・ポンプ室の部分を除く)
- 防火区画を貫く部分を耐火構造で造るなど、ダンパーを設けない構造にしているか
- 換気を直接屋外に面する換気口か専用の機械換気設備で取り、機械換気設備に発電機の電源が送られるか
- 発電機室の換気口のダンパーを省くなら、3(3)アの4つの条件を満たしているか
換気ファンにも、発電機の電気を送るのですね。
はい、停電中も換気を続けるためと読めます。
ダクトの被覆も図面で確かめましょう。
大阪市や東大阪市と比べると何が違うのか

大阪市でダンパーが出てくるのは、第12章 電気設備のキュービクル式発電設備の構造の項目です。
東大阪市消防局の公開資料(消火器具・自動火災報知設備・誘導灯・避難器具・連結送水管・非常コンセントの6基準)には、非常電源の基準がありません。記載がないことは、換気やダンパーの扱いが不要という意味ではありません。
3市を並べると、次のとおりです。
| 項目 | 堺市 | 大阪市 | 東大阪市 |
|---|---|---|---|
| 国の規則とのつなぎ | 第3 3柱書 規則第12条第1項第4号ロによるほか(無印) | 第6章 第4柱書 規則第12条第1項第4号ロによるほか(無印) | 公開資料に非常電源の基準なし |
| 発電機室のダンパー | 4つの条件に合えば省略できる(3(3)ア・無印) | 見当たらない | 見当たらない |
| 換気の取り方 | 直接屋外に面する換気口か専用の機械換気設備(3(3)イ・無印) | 換気装置を設ける(第4 2(5)・無印) | 見当たらない |
| 換気の電源 | 機械換気設備に発電機の電源を供給できる(3(3)ウ・無印) | 非常電源を付置した換気装置(第4 2(5)・無印) | 見当たらない |
| 換気風道 | 専用・概ね30分間以上の耐火被覆等、区画貫通部はダンパーを設けない構造(第9 5(2)・無印) | 見当たらない | 見当たらない |
| キュービクル式の換気口 | (この記事では扱わない) | 金網・金属製ガラリ・防火ダンパー等の防火措置(第12章 第4 3(11)エ) | 見当たらない |
大阪市と東大阪市の建物で発電機室の換気ダクトをどう造るかは、管轄の消防署に確認することになります。変電室の扉の扱いは大阪市の変電室の扉の記事で比べています。
同じ大阪府内でも、ダンパーの省略条件を書いているのは堺市だけなのですね。
はい、大阪市と東大阪市の資料には見当たりません。
建物のある市の基準で確かめましょう。
よくある質問
まとめ
まず換気ダクトが発電機室の専用かを図面で確かめます。
区画を貫く部分の造りも見てみます!
堺市では、第3の3(3)と第9の5(2)をセットで読むのが決め手です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第1章 総則 4 凡例、第2章 第1節 第9 防火区画 5(2)、第3章 第1節 第3 非常電源(Ⅰ 2(1)・Ⅱ 2(3)・第3-11図・Ⅱ 3 柱書・(3)ア〜ウ) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」凡例、第6章 非常電源 第4 自家発電設備(柱書・2(5))、第12章 電気設備 第4 3(11)エ https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市消防局 消防用設備等の運用基準(公開6基準) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法施行規則 第12条第1項第4号イ・ロ(e-Gov法令検索)
- 建築基準法施行令 第112条第21項(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および堺市・大阪市・東大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。各資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。個々の建物の発電機室や換気ダクトの計画は、所轄の消防署と建築確認の審査機関にご確認ください。





