屋内消火栓設備が必要な大きさの建物には、国の基準で動力消防ポンプ設備も必要になります。屋内消火栓設備を1階と2階に置けば、その範囲の動力消防ポンプ設備は置かなくてよいと定められています。
では、不燃性の物だけを置く倉庫のように、屋内消火栓設備そのものを特例で置かない建物では、動力消防ポンプ設備はどうなるのでしょうか。
大阪市消防局の運用基準は、動力消防ポンプ設備の第6で、屋内消火栓設備の特例を借りて動力消防ポンプ設備も置かないことができるとしています。
この記事では、国の基準と大阪市の運用を分けて読み、借りている先の項目を1つずつたどります。堺市と東大阪市の資料とも比べます。
大阪市で、鋼材だけを置く倉庫を建てる計画があります。
屋内消火栓設備は特例で置かない方向で相談しています。
その場合は、動力消防ポンプ設備の扱いも確かめておきましょう。
国の免除の規定が使えないためです。
屋内消火栓設備がいらなければ、ポンプもいらないと思っていました。
大阪市の運用基準には、屋内消火栓設備の特例を借りる定めがあります。
つながりを順にたどりましょう。
- 国の消防法施行令第20条は、屋内消火栓設備が必要な防火対象物(地下街を除く)と屋外消火栓設備が必要な建築物に動力消防ポンプ設備を求めています
- 第20条第5項は、屋内消火栓設備などを「設置したとき」に、その有効範囲内の動力消防ポンプ設備を置かなくてよいとしています
- 大阪市の運用基準は、動力消防ポンプ設備の第6で令第32条を適用し、3つの場合に動力消防ポンプ設備を置かないことができるとしています
- 3つとも、屋内消火栓設備の特例基準(第12)の項目を借りる形です。電気設備などの場所を定めた第12の1(6)は借りる対象から除かれています
- 堺市の審査基準の動力消防ポンプ設備(第11)には特例基準の項目が見当たらず、東大阪市の公開資料には動力消防ポンプ設備の基準がありません
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目次
国の基準では動力消防ポンプ設備はどんな建物に必要なのか

一 第十一条第一項各号(第四号を除く。)に掲げる防火対象物又はその部分
二 前条第一項の建築物
2号の「前条第一項の建築物」は、屋外消火栓設備が必要な建築物です。1階と2階の床面積の合計などで決まります。
つまり国の基準では、屋内消火栓設備や屋外消火栓設備が必要な大きさの建物には、動力消防ポンプ設備も必要になる、という作りです。
ただし、第20条第5項に免除の定めがあります。
一 第一項各号に掲げる防火対象物又はその部分に屋外消火栓設備を前条に定める技術上の基準に従い、又は当該技術上の基準の例により設置したとき。
二 第一項第一号に掲げる防火対象物の一階又は二階に屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備を第十一条、第十二条、第十三条、第十四条、第十五条、第十六条、第十七条若しくは第十八条に定める技術上の基準に従い、又は当該技術上の基準の例により設置したとき。
免除が1階と2階に限られる理由や、規格放水量の決まりは、動力消防ポンプ設備の国の基準の記事で解説しています。
屋内消火栓設備を置けば、1階と2階の動力消防ポンプ設備は外れるのですね。
はい、設置したときの有効範囲内が免除の対象です。
この「設置したとき」が次の話の鍵です。
屋内消火栓を特例で置かないと動力消防ポンプ設備はどうなるのか

1 次に掲げる防火対象物又はその部分のうち、不燃材料で造られており、かつ、出火の危険がないと認められるもの又は出火若しくは延焼のおそれが著しく少ないと認められるものについては、屋内消火栓設備を設置しないことができる。
(1) 倉庫等で、不燃性の物品のみを収納するもの
(2) 浄水場又は汚水処理場等で、内部の設備が水管、貯水池又は貯水槽のみであるもの
(3) サイダー・ジュース工場その他これらに類するもの
(4) 不燃性の金属、石材等の加工工場で、可燃性の物品を収容又は取り扱わないもの
(5) プール又はスケートリンク(滑走部分に限る。)
(6) 発電設備、変電設備等の電気設備又は金属溶解設備等屋内消火栓設備による注水によっては、消火不能又は消火困難と認められる設備のある場所
第5項の免除は、屋内消火栓設備などを「設置したとき」の定めです。屋内消火栓設備を特例で置かない建物は、この文言には当てはまりません。
そのままでは、第20条第1項によって動力消防ポンプ設備だけが残ると読めてしまいます。大阪市の動力消防ポンプ設備の第6は、この場合の扱いを定めています。
1 屋内消火栓設備の基準(第12.1((6)を除く。)又は7)に適合するもの
2 仮設建築物のうち、屋内消火栓設備の基準(第12.2.(1)から(4)まで)に適合するもの
3 ガス充塡所の製造施設のうち、屋内消火栓設備の基準(第12.13又は14)に適合するもの
第6と第12の見出しには、◆の印がありません。大阪市の凡例では、印の意味は次のとおりです。
◆ :行政手続法上の行政指導に該当する事項(行政指導基準)
特例で屋内消火栓設備を外すと、国の免除の文言には当たらないのですね。
はい、そこを大阪市の第6が令第32条で補っている形です。
判断するのは消防長や消防署長です。
大阪市の特例は屋内消火栓の基準のどこを借りているのか

- 国の消防法施行令第11条第1項が、延べ面積などで屋内消火栓設備が必要な防火対象物を決める
- 第20条第1項第1号が、同じ防火対象物(地下街を除く)に動力消防ポンプ設備を求める
- 大阪市の屋内消火栓設備の第12の1が、不燃材料で造られ、不燃性の物品のみを収納する倉庫等は屋内消火栓設備を置かないことができるとする
- 屋内消火栓設備を置かないので、第20条第5項第2号の「設置したとき」の免除は使えない
- 大阪市の動力消防ポンプ設備の第6の1が、第12の1に適合するものは令第32条を適用して動力消防ポンプ設備を置かないことができるとする
| 屋内消火栓設備 第12の項目 | 内容(要約) | 動力消防ポンプ設備 第6 |
|---|---|---|
| 1(1) | 倉庫等で、不燃性の物品のみを収納するもの | 1で借りる |
| 1(2) | 浄水場・汚水処理場等で、内部の設備が水管・貯水池・貯水槽のみ | 1で借りる |
| 1(3) | サイダー・ジュース工場その他これらに類するもの | 1で借りる |
| 1(4) | 不燃性の金属・石材等の加工工場で、可燃性の物品を収容・取扱いしないもの | 1で借りる |
| 1(5) | プール・スケートリンク(滑走部分に限る) | 1で借りる |
| 1(6) | 発電・変電設備等の電気設備、金属溶解設備等の、注水では消火不能・困難な設備のある場所 | 借りない(「(6)を除く」) |
| 7 | 安全センターのガス系消火設備等評価委員会の評価を受けた不活性ガス・ハロゲン化物消火設備の有効範囲内 | 1で借りる |
| 2(1)〜(4) | 仮設建築物(存続期間6か月以内など) | 2で借りる |
| 13・14 | ガス充塡所の製造施設 | 3で借りる |
| 3〜6・8〜12・15・16 | プラットホーム、浴室・便所、昇降路、機械室の階、ホース接続口の位置など | 第6に番号の記載なし |
(6)の電気設備などの場所は、屋内消火栓設備は特例で外せても、動力消防ポンプ設備のほうは第6の1の対象になりません。除いた理由は運用基準に書かれていないので、該当するときは所轄の消防署に確かめましょう。
7の「安全センター」は、運用基準の中で一般財団法人日本消防設備安全センターの略として使われています。
大阪市には、金属だけの倉庫で自動火災報知設備の感知器を省略できる特例もあります。同じ倉庫で設備ごとに別の特例を確かめることになります。
電気設備のある場所だけは、動力消防ポンプ設備の特例に入っていないのですね。
はい、第6の1は「(6)を除く」と書いています。
対象の項目を1つずつ当てはめましょう。
仮設建築物やガス充塡所はどう扱われるのか

(1) 存続期間が6カ月以内であること
(2) 火災時に容易に避難できると認められる位置及び構造形態であること
(3) 火災を早期に発見し、かつ、報知することができる措置が講じられていること
(4) 初期消火のための措置が講じられていること
第6の3はガス充塡所の製造施設です。屋内消火栓設備の第12の13(液化石油ガス)と14(可燃性ガス)を借りています。13は次のとおりです。
(1) 液石則第6条から第8条までの規定に適合すること
(2) 製造施設の主要構造部が不燃材料で造られていること
(3) 製造施設の壁及び天井の仕上げが不燃材料又は準不燃材料であること
(4) 製造施設において火気の使用がない等、火気管理が徹底していること
(5) 製造施設においては、整理・清掃、不必要な物品の除去、可燃物の存置がなく、出入りする者の管理等、適正な維持管理が行われていること
つまり、ガス充塡所では高圧ガス保安法の側の基準に適合していることが前提です。LPガス充てん所の消防用設備等の考え方は、LPガス充てん所の記事で解説しています。
仮設建築物もガス充塡所も、屋内消火栓設備の条件をそのまま借りるのですね。
はい、第12の2と13・14の条件を満たすことが前提です。
動力消防ポンプ設備の節に条件は書き直されていません。
堺市や東大阪市と比べると何が違うのか

かわりに、概要の冒頭に次の囲みがあります。
(2) 屋外消火栓設備の代替として設置する場合は、B-3 級以上のポンプとすること。
東大阪市消防局が公開している運用基準は、避難器具・自動火災報知設備・非常コンセント設備・連結送水管・消火器具・誘導灯の6つです。屋内消火栓設備と動力消防ポンプ設備の運用基準は公開資料に見当たりませんでした。
比べると次のとおりです。
| 項目 | 大阪市 | 堺市 | 東大阪市 |
|---|---|---|---|
| 動力消防ポンプ設備の基準 | 第1章 第12節 | 第11 | 公開資料に見当たらない |
| 動力消防ポンプ設備を置かない特例 | 第6で3つ(令第32条) | 第11に特例基準の項目は見当たらない | − |
| 屋内消火栓設備の特例を借りる書き方 | あり(第12の1・2・7・13・14) | 見当たらない | − |
| 電気設備などの場所(第12の1(6)) | 借りる対象から除く | − | − |
| 設置についての考え方 | 第12節に記載なし | 操作に習熟した従業員等が常駐できる施設に限るのが望ましい | − |
| 消火栓の代わりに置くとき | 第12節に記載なし | 屋内消火栓の代替は進入できる出入口、屋外消火栓の代替はB−3級以上(★) | − |
大阪市で屋内消火栓設備を特例で外す計画なら、次の点を確かめます。
- 建物が屋内消火栓設備又は屋外消火栓設備の必要な大きさか(令第11条第1項・第19条第1項)
- 使う屋内消火栓設備の特例が、第6で借りている第12の1(1)〜(5)・7・2・13・14のどれにあたるか
- 第12の1を使うなら、建物が不燃材料で造られていることを説明できるか
- 電気設備などの第12の1(6)の場所が含まれていないか
- 屋内消火栓設備と動力消防ポンプ設備の両方について、令第32条の適用を所轄の消防署と協議したか
堺市には、動力消防ポンプ設備を外す特例の項目がないのですね。
はい、公開資料で特例の項目を確認できたのは大阪市です。
堺市では管轄の消防署で確かめましょう。
よくある質問
まとめ
まず使う屋内消火栓設備の特例が第6の対象かを確かめます。
電気設備の場所がないかも図面で見ます!
大阪市では、第6と屋内消火栓設備の第12を並べて読むのが要点です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」凡例、第1章 第12節 動力消防ポンプ設備 第6 特例基準、第1章 第2節 屋内消火栓設備 第12 特例基準(柱書・1・2・7・13・14) https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」総則 凡例、第11 動力消防ポンプ設備 Ⅰ 概要・Ⅱ 細目 6 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 東大阪市消防局 消防用設備等の運用基準(公開6基準) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法施行令 第11条第1項、第19条第1項、第20条第1項・第5項、第32条(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および大阪市・堺市・東大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。各資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。個々の建物で屋内消火栓設備や動力消防ポンプ設備を置かないことができるかは、令第32条の適用について設計の段階で所轄の消防署にご確認ください。





