廊下の壁や床に貼る緑色の誘導標識は、ほとんどの建物に必要です。国の基準は、廊下の各部分から一の誘導標識まで歩行距離7.5メートル以下となる箇所と曲り角に設けるとしています。
東大阪市消防局の運用基準は、ここに廊下の長さから枚数を出す式と、令第32条を適用して誘導標識を設置しないことができる2つの部分を足しています。そのうちの1つは、誘導灯の特例基準を借りる書き方です。
この記事では、国の基準と東大阪市の運用を分けて読み、式の使い方、特例が借りている項目を順にたどります。大阪市と堺市の書き方とも比べます。
東大阪市で事務所ビルを改修しています。
廊下の誘導標識は何枚貼ればよいのですか?
東大阪市の運用基準には、廊下の長さから枚数を出す式があります。
まず国の基準から確かめましょう。
短い廊下で、出口のドアがよく見えるところもあります。
そういう廊下でも貼るのですか?
見とおせて近い避難口には令第32条を適用した特例があります。
条件を順に見ていきます。
- 国の基準は、避難口と階段を除き、廊下や通路の各部分から一の誘導標識まで歩行距離7.5メートル以下となる箇所と曲り角に誘導標識を設けるとしています
- 東大阪市は、両端に主要な避難口がある15メートル超の廊下で設置個数≧直線部分の長さ÷15-1(切り上げ)とし、間隔をおおむね等しくするとしています
- 一端だけに避難口がある廊下は行き止まり側から7.5メートル以下の箇所に置いてから式を使い、曲がった廊下は直線部分ごとに最長の距離で数えます
- 令第32条を適用して設置しないことができるのは、避難口誘導灯や通路誘導灯の特例基準を適用できる部分と、廊下等の各部分から見とおせて歩行距離15メートル以下の主要な避難口です
- 大阪市は同じ内容で、堺市は国の7.5メートルの文のままで式を置いていません。最新の内容は管轄の消防署で確認します
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目次
国の基準では誘導標識をどこに付けるのか

(略)
四 誘導標識 別表第一(一)項から(十六)項までに掲げる防火対象物
(略)
五 誘導標識は、避難口である旨又は避難の方向を明示した緑色の標識とし、多数の者の目に触れやすい箇所に、避難上有効なものとなるように設けること。
どこに付けるかの細目は、消防法施行規則第28条の3第5項第1号です。
一 避難口又は階段に設けるものを除き、各階ごとに、その廊下及び通路の各部分から一の誘導標識までの歩行距離が七・五メートル以下となる箇所及び曲り角に設けること。
誘導標識が要らなくなる国の決まりは2つあります。1つは令第26条第3項で、避難口誘導灯や通路誘導灯を基準どおりに付けたときは、その誘導灯の有効範囲内の部分に誘導標識を設置しないことができます。詳しくは誘導灯と誘導標識の有効範囲の記事で解説しています。
もう1つは規則第28条の2第3項第1号で、居室の各部分から主要な避難口を容易に見とおし識別でき、歩行距離が30メートル以下の階です。この記事では、その先の東大阪市の運用を読みます。
国の基準は「7.5メートル以内に1つ」で、枚数までは決めていないのですね。
はい、距離と曲り角だけです。
東大阪市は枚数を出す式を示しています。
東大阪市では廊下の誘導標識を何枚付けるのか

⑴ 避難口に設ける誘導標識の設置位置は、避難口誘導灯の例によること。
⑵ 廊下等に設ける誘導標識は、次の箇所に設けること。
ア 曲り角のない廊下等の両端に主要な避難口があり、かつ、当該廊下等の歩行距離が15メートルを超えるものにあっては、次式により設置個数を算出し、その設置間隔がおおむね等しくなる箇所。この場合、主要な避難口から最初の位置に設ける誘導標識は、当該避難口からの歩行距離が15メートル以下となる箇所(設置個数が1となる場合は当該廊下等の中央)
(小数点以下は切り上げる)
たとえば両端に主要な避難口がある直線40メートルの廊下なら、40÷15-1=1.66…で、切り上げて2枚以上です。等間隔に並べると、避難口と標識、標識と標識の間はそれぞれ約13.3メートルになります。
30メートルなら30÷15-1=1で1枚です。設置個数が1のときは廊下の中央に置くので、両側の避難口まで15メートルずつになります。20メートルでも20÷15-1=0.33…で、切り上げて1枚を中央に置きます。
運用基準は「15」の由来を書いていません。ただ、間隔を15メートル以下にそろえると、その間のどこからでも近いほうの端まで7.5メートル以下になります。避難口に設ける誘導標識(⑴)も端に数えて間隔をそろえる形と読めますが、この点は運用基準に明記がないので、迷う配置は所轄の消防署に確かめましょう。
15で割って1を引くと、間の枚数が出るのですね。
はい、小数点以下は切り上げです。
間隔はおおむね等しくそろえます。
避難口が片側だけの廊下や曲がった廊下はどう数えるのか

ウ 廊下等に曲り角がある場合は、直線部分ごとにアの計算式により設置個数を算出し、その設置間隔がおおむね等しくなる箇所。設置個数を算出する場合の直線部分の長さは、当該廊下等の直線部分ごとに最長の距離をもってその長さとすること。
たとえば行き止まりの直線30メートルの廊下で、行き止まりから7.5メートルの位置に1枚置くと、残りは22.5メートルです。22.5÷15-1=0.5で、切り上げて1枚を足し、合計2枚になります。
ウは曲がった廊下です。直線部分ごとに分けてアの式を使い、直線部分の長さは直線部分ごとに最長の距離で数えます。運用基準の図13では、2か所で曲がる廊下の縦・横の直線部分を、それぞれ外側の端から端までの長さ(図の記号でL1・L2・L3)で測る例が示されています。
なお、曲り角そのものに付けることは国の規則第28条の3第5項第1号の決まりです。東大阪市の柱書は「規定によるほか」なので、曲り角の誘導標識は式とは別に必要と読みます。
曲がった廊下は、まっすぐな部分ごとに式を当てはめるのですね。
はい、最長の距離で直線部分を測るのが要点です。
曲り角にも国の基準どおり付けます。
東大阪市で誘導標識を付けなくてよいのはどんな場合か

⑴ 避難口誘導灯又は通路誘導灯の設置に関し特例基準を適用できる部分
⑵ 次に適合する主要な避難口
ア 廊下等の各部分から容易に見とおし、かつ、識別することができること。
イ 廊下等の各部分から歩行距離が15メートル以下であること。
⑴は、別の節の特例をそのまま借りる書き方です。同じ運用基準の中で「特例基準」と呼ばれているのは、第2 避難口誘導灯の5 特例と第3 通路誘導灯の4 特例です。
(略)
次に掲げる部分については、令第32条又は条例第52条の規定を適用し、通路誘導灯を設置しないことができる。
ア 避難上採光が十分な開放式の廊下等及び階段(図10)
イ 廊下等への出入口に避難口誘導灯の設置を要しない居室
ウ 避難階の廊下等のうち、屋外を見とおすことができ、かつ、屋外の安全な場所へ容易に避難できる廊下等の当該部分
- 国の基準(令第26条第3項・規則第28条の2第3項)は、誘導灯の有効範囲内や見とおせる30メートル以下の階で誘導標識を不要としている
- 東大阪市は、第5 7で令第32条を適用し、誘導標識を設置しないことができる部分を2つ挙げる
- 7⑴は「避難口誘導灯又は通路誘導灯の設置に関し特例基準を適用できる部分」とし、中身を自分では書かずに誘導灯の特例を借りる
- 借り先は第2 5 ⑴(避難口誘導灯を設置しないことができる出入口)と第3 4 ⑴(通路誘導灯を設置しないことができる部分)と読める。たとえば玄関ホール等の見とおせる出入口、開放式の廊下等や階段、客席誘導灯を設けた客席部分などが並ぶ
- その結果、誘導灯の特例で誘導灯が要らない部分は、誘導標識も設置しないことができる。誘導灯を省いた場所に標識だけ残す必要は無い、という整理になる
大阪市で避難口誘導灯が要らない出入口の一覧は大阪市の避難口誘導灯の特例の記事で解説しています。東大阪市の第2 5 ⑴は、アからケまでの出入口を挙げています。
誘導灯が要らない場所なら、誘導標識も要らないという借り方なのですね。
はい、第2 5と第3 4の特例を借りる形です。
借り先の条件も最後まで確かめます。
大阪市や堺市では誘導標識の決まりは同じなのか

(1) 避難口誘導灯又は通路誘導灯の設置に関し特例基準を適用できる部分
(2) 次に適合する主要な避難口
ア 廊下等の各部分から容易に見とおし、かつ、識別することができること
イ 廊下等の各部分から歩行距離が15メートル以下であること
(ア) 避難口に設ける誘導標識は、避難口である扉又はその上部に設置すること。★
(イ) 廊下又は通路に設ける誘導標識は、廊下又は通路及びその曲り角の床又は壁に設置すること。
イ 設置要領
(ア) 誘導標識は、避難口である旨又は避難の方向を明示した緑色の標識とし、多数の者の目に触れやすい箇所に、避難上有効なものとなるように設けること。
(イ) 避難口に設けるものを除き、各階ごとに、その廊下及び通路の各部分から一の誘導標識までの歩行距離が7.5m以下となる箇所及び曲り角に設けること。
(ウ) 誘導標識の周囲には、誘導標識とまぎらわしい又は誘導標識をさえぎる広告物、掲示物等を設けないこと。
(エ) 誘導標識は、努めて蓄光式誘導標識を用いること。★
(オ) 誘導標識は、容易にはがれないよう接着剤等で固定すること。★
(略)
(4) 誘導標識
前(1)から(3)に規定する部分。
| 項目 | 東大阪市 | 大阪市 | 堺市 |
|---|---|---|---|
| 廊下の間隔 | 国の7.5m+直線部分の長さ÷15-1以上◆ | 同じ◆ | 国の7.5mの文のまま(式なし) |
| 一端だけ避難口の廊下 | 行き止まりから7.5m以下に置いてから式 | 同じ | 記載なし |
| 曲がった廊下 | 直線部分ごとに最長の距離で式 | 同じ | 曲り角の床又は壁に設置 |
| 避難口の標識の位置 | 避難口誘導灯の例による | 同じ | 扉又はその上部★ |
| 標識の種類と固定 | 同様の文は見当たらない | 同様の文は見当たらない | 努めて蓄光式・接着剤等で固定★ |
| 誘導灯の特例を借りる | 避難口誘導灯・通路誘導灯の特例基準 | 同じ | 避難口・通路・客席誘導灯の特例適用基準★ |
| 見とおせる主要な避難口 | 見とおせて15m以下なら設置しない | 同じ | 記載なし |
| 特例の根拠 | 令第32条 | 令第32条 | 令第32条又は堺市火災予防条例第72条 |
ただし、書いていないことは「求められない」という意味ではありません。特例はどの市でも令第32条の適用なので、個々の建物ごとに所轄の消防署が判断します。東大阪市の建物で誘導標識を割り付けるときの確認の順番は次のとおりです。
- 各階の廊下・通路を、両端に避難口・一端だけ避難口・曲り角ありの3つの形に分ける
- 直線部分ごとに最長の距離を測り、15メートルを超える部分は「長さ÷15-1」を切り上げて枚数を出す
- 曲り角にも付け、どこからでも7.5メートル以内に標識があるかを図面で確かめる
- 誘導灯の有効範囲内や、第2 5・第3 4の特例で誘導灯が要らない部分を図面に落とし、標識を省ける範囲を確かめる
- 省く部分は令第32条の適用なので、所轄の消防署と事前に協議し、借り先の項目の条件(標識の設置を求めるものを含む)も一緒に確認する
大阪市は東大阪市と同じで、堺市は国の文のままなのですね。
はい、式で割り付けるか、7.5メートルの文で書くかの違いです。
どの市でも特例は所轄との協議が前提です。
よくある質問
まとめ
まず廊下の形と長さから誘導標識の枚数を出してみます。
誘導灯の特例で省ける範囲も確かめます!
東大阪市では、特例も令第32条の適用なので事前の協議が要点です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 東大阪市消防局「消防用設備等の運用基準(誘導灯及び誘導標識)」凡例、第2 避難口誘導灯 5 特例、第3 通路誘導灯 4 特例、第5 誘導標識 1 設置場所及び設置方法・7 特例(図13) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」凡例、第3章 第2節 誘導灯及び誘導標識 第5 誘導標識 1・7(図3-2-12) https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第1章 総則 4 凡例、第18 誘導灯及び誘導標識 Ⅱ 細目 3(7) 誘導標識・6 特例適用基準 (4) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 消防法施行令 第26条・第32条/消防法施行規則 第28条の2第3項・第28条の3第5項(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および東大阪市・大阪市・堺市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。各資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。特例は消防法施行令第32条の適用なので、個々の建物で誘導標識を設置しないことができるかは、設計の段階で所轄の消防署にご確認ください。





