地下に物販店と飲食店が並ぶような複合用途ビルでは、連結散水設備がいるかどうかを地階の床面積の合計で判断します。
ところが消防法施行令第28条の2は、対象の用途に(16)項(複合用途防火対象物)を並べていません。
四日市市消防本部の「四日市市消防同意事務審査基準」は、この(16)項の地階をすべて含めて扱うと書いています。
国の条文の読み方から四日市市の取扱いまでを順にたどり、津市・鈴鹿市・埼玉県央広域・堺市などの書き方と比べます。
四日市市で、地下に物販店と飲食店が入るビルを計画しています。
店ごとに見ると、どちらも700㎡には届きません。
四日市市では、地階をまとめて数える取扱いが審査基準に書かれています。
まず国の条文の並びから確かめましょう。
連結散水設備は、用途ごとに面積を数えるものだと思っていました。
条文だけを見るとそう読めるので、迷いやすいところです。
違いは令第9条の当てはめ方から生まれます。
- 消防法施行令第28条の2第1項は、連結散水設備の対象を(1)項から(15)項・(16の2)項・(17)項で地階の床面積の合計が700㎡以上のものとしていて、(16)項は並んでいない
- 令第9条は(16)項の用途ごとの部分を一の防火対象物とみなし、かっこ書きの除外に第28条の2は入っていないため、条文の仕組みでは用途ごとの地階の面積で見る形になる
- 四日市市の審査基準 第19 7は、(16)項の地階で床面積の合計が700㎡以上なら、すべて令第28条の2第1項に含めて扱うとし、全文に行政指導の下線がある
- 連結散水設備の基準を定めた昭和47年の政令改正の施行通知は、用途に関係なく地階の合計700㎡以上のものに設けると説明していた
- 津市の令第9条の解説は除外の設備に連結散水設備を挙げず、鈴鹿市・埼玉県央広域・堺市は令8区画で地階を分ければ区画ごとに判断する例を載せている
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目次
連結散水設備はどんな建物の地階に要るのか

設置がいるかどうかは、建物の用途と地階の床面積で決まります。
第1項 連結散水設備は、別表第一(1)項から(15)項まで、(16の2)項及び(17)項に掲げる防火対象物で、地階の床面積の合計(同表(16の2)項に掲げる防火対象物にあつては、延べ面積)が700平方メートル以上のものに設置するものとする。
「地階の床面積の合計」なので、地下1階と地下2階があれば、その2つの階を足した面積で700㎡を判断します。
地下街にあたる(16の2)項だけは、地階ではなく延べ面積で見ます。
そして、この並びには複合用途防火対象物の(16)項が入っていません。
(16)項のビルをどう扱うかは、次に見る令第9条で決まる仕組みになっています。
地下が2階あると、足すとすぐに700㎡を超えそうですね。
そのとおりです。
まず図面で地階の各階の床面積を拾い出してください。
複合用途ビルの地階は国の条文では用途ごとに数えるのか

消防用設備等の基準をどの単位で当てはめるかを決めているのが、令第9条です。
別表第一(16)項に掲げる防火対象物の部分で、同表各項((16)項から(20)項までを除く。)の用途のいずれかに該当する用途に供されるものは、この節(第12条第1項第3号・第10号から第12号まで、第21条第1項第3号・第7号・第10号・第14号、第21条の2第1項第5号、第22条第1項第6号・第7号、第24条第2項第2号・第3項第2号・第3号、第25条第1項第5号並びに第26条を除く。)の規定の適用については、当該用途に供される一の防火対象物とみなす。
かっこ書きで外されているのは、スプリンクラー設備や自動火災報知設備などの特定の号と、誘導灯の第26条で、第28条の2は挙がっていません。
そのため条文の仕組みだけで見ると、(16)項のビルは用途ごとに一つの建物とみなされ、地階の床面積も用途ごとに数える形になります。
津市の「津市予防事務審査検査基準」1-7 消防法施行令第9条の解説も、(16)項は用途単位ごとに一の防火対象物とみなし、かっこ書きの設備だけは棟単位の原則によると説明しています。
その一覧に挙がるのはスプリンクラー設備から誘導灯までの7設備で、連結散水設備は入っていません。
除外の一覧に無いものは、用途ごとに数えるということですね。
条文の仕組みとしてはそうなります。
ただし四日市市は別の扱いを書いているので、次で見ていきます。
四日市市は(16)項の地階をどう扱うと決めているのか

用途ごとに数える読み方とは、結論が分かれる場面があります。
政令別表第一の(16)項に掲げる防火対象物の地階で、床面積の合計が700㎡以上になるものは、すべて政令第28条の2第1項に含むものとして取り扱う。
この7は全文に下線が引かれていて、四日市市の審査基準の総則は、市の行政指導であることが明白な部分に下線を付けたと説明しています。
なぜ全体で数えるのかという理由は、基準には書かれていません。
参考になるのは、連結散水設備の基準を定めた昭和47年の政令改正の施行通知(昭和47年3月29日消防予第74号)で、地下は煙が充満して消防活動が難しくなるため、用途に関係なく地階の合計700㎡以上のものに設けるとしていました。
四日市市で地下に複数の用途が入るビルを計画するときは、用途ごとの面積だけで判断せず、地階全体の合計を先に出しておくことになります。
数字は説明のための例です(地下1階だけのビル)。
| 地階の使い方(例) | 用途ごとに数える読み方 | 四日市市の第19 7 |
|---|---|---|
| (4)項 物販店 400㎡ | 400㎡(700㎡未満) | 地階全体で750㎡ |
| (3)項ロ 飲食店 350㎡ | 350㎡(700㎡未満) | (同じ地階として合計に入る) |
| 結果 | どちらの用途も700㎡に届かない | 700㎡以上なので令第28条の2第1項に含めて扱う |
つまり四日市市では、店ごとに700㎡未満でも、地下全体で超えれば対象になるのですね。
そのとおりです。
計画の早い段階で地階全体の合計を消防本部に示してください。
鈴鹿市や埼玉県央広域は地階の数え方をどう書いているのか

鈴鹿市・埼玉県央広域・堺市の基準は、同じ形の図でこの扱いを示しています。
防火対象物が次に掲げる当該防火対象物の部分で区画されているときは、その区画された部分は、この節の規定の適用については、それぞれ別の防火対象物とみなす。
一 開口部のない耐火構造の床又は壁
二 (略)
鈴鹿市の審査基準 第3章第2の第2-14図(例5)は、地下2層の地階が合わせて700㎡以上でも、令8区画で分けた左側(300㎡+300㎡)と右側(200㎡+200㎡)がそれぞれ700㎡未満なら、令第28条の2第1項を適用しないとしています。
埼玉県央広域消防本部の審査基準 第3章第2にも同じ例5があり、堺市の審査基準 第6(6)の例2は、開口部のない耐火構造の壁で同じ数字の例を示しています。
埼玉県央広域は第3章第6の第3-3図で、地階の専用駐車場・機械室2,000㎡を用途ごとに按分し、排煙設備(令第28条第1項第3号)を地階に適用しない例も載せています。
ただし四日市市の第19 7は、令8区画との関係には触れていません。
| 消防本部 | (16)項の地階と連結散水設備 | 地階の数え方に関わる例 |
|---|---|---|
| 四日市市 | 第19 7:地階の合計700㎡以上はすべて令第28条の2第1項に含めて扱う(下線=行政指導) | 令8区画との関係は記載なし |
| 津市 | 連結散水設備の節に記載なし。1-7の令第9条の解説で、除外の設備の一覧に連結散水設備は無い | ― |
| 鈴鹿市 | 連結散水設備の節に記載なし。第3章第3で用途ごとに規制し、令第9条が適用されないものは全体で判断 | 第2-14図:令8区画で地階を分けた例 |
| 埼玉県央広域 | 連結散水設備の節に記載なし。第3章第6で共用部分を用途ごとに按分 | 第2-14図(同じ例)・第3-3図(排煙設備の按分の例) |
| 堺市 | 連結散水設備の基準に記載なし | 第6(6)例2:耐火構造の壁で地階を分けた例 |
| 大阪市 | 連結散水設備の基準に記載なし | ― |
区画で分ければ、四日市市でも面積を分けて見てもらえるのでしょうか。
四日市市の基準はそこまで書いていません。
区画の図面を持って事前に相談するのが確実です。
四日市市で地階に連結散水設備が要るときは送水口に何を示すのか

四日市市の第19は、送水口の位置と3種類の表示を定めています。
(1) 送水口に設ける標識は、地を赤、文字を白色で「連結散水設備送水口」と表示し、大きさを30cm×10cm以上とする。
(2) 送水口の付近に、各送水区域・選択弁・送水系統・送水圧力を明示した20cm×20cm以上の標識板を設ける。
(3) 選択弁の設置位置に、その弁である旨と受け持つ送水区域を明示した標識板を設ける。
この8の(1)から(3)も全文に下線が引かれていて、四日市市の行政指導として示されています。
送水口そのものは、第19 2(1)で、地階に至る出入口付近の、前面道路などから見分けやすい位置に設けるとされています。
なお令第28条の2は、第3項で送水口を付けたスプリンクラー設備などを基準どおり設けた有効範囲の部分を、第4項で連結送水管を設けたうえで規則第30条の2の2の部分(排煙設備を設けた部分など)を、連結散水設備を設置しないことができるとしています。
地階全体で700㎡以上と分かったら、代わりの設備で足りる部分と標識板に書く送水区域を、同じ図面で整理しておくと協議が進めやすくなります。
標識の色と大きさまで決まっているのですね。
標識板は送水区域の図と一緒に作ると食い違いが出ません。
選択弁の位置も図面に落としておきましょう。
よくある質問
まとめ
地下の店ごとの面積と地階全体の合計を、両方出してから相談してみます!
区画で分ける案があるなら、その図面も一緒に持っていくと話が早いです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」総則1、第2章 第19 連結散水設備 2・4・7・8 審査基準・告示・ガイドラインのページ
- 消防法施行令 第8条・第9条・第9条の2・第28条・第28条の2、消防法施行規則 第29条・第30条の2・第30条の2の2(e-Gov法令検索)
- 「消防法施行令の一部を改正する政令の施行について」(昭和47年3月29日消防予第74号 消防庁次長通知)6 連結散水設備
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」1-7 消防法施行令第9条の解説 https://www.info.city.tsu.mie.jp/kurashi/bousai_kyuukyuu_shoubou/1003213/1003292/1003293.html
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第3章 第2 政令第8条に規定する区画等の取り扱い・第3 政令第9条の取り扱い https://www.city.suzuka.lg.jp/shobo/1012943/1016101/index.html
- 埼玉県央広域消防本部「埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準」第3章 第2 政令第8条に規定する区画等の取り扱い・第6 政令第9条の取り扱い https://www.ken-o.or.jp/notifiappli/equipment-style/page-9867/
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第6 政令第8条等に規定する区画等の取扱い https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」連結散水設備 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
※本記事は四日市市消防本部などが公表している審査基準と、消防法令・消防庁の通知に基づく一般的な解説です。審査基準の文章は要旨を自分の言葉でまとめ、四日市市の下線と各本部の図は原本の画像で確かめました。「記載なし」としたものは、各本部の該当する節を確認した範囲の結果です。東大阪市は今回確認した資料に連結散水設備の節が無かったため比較から外しました。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。





